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2013年6月 6日 (木曜日)

253.【製造業】固定資産台帳の不吉な福音

2013/6/6

今日は66日。いつも記事を6時台にアップするので、この記事の誕生には、6 が3つ揃ってしまう。すると我々世代はあのオカルト映画の名作「オーメン」を思い出す。闇の王子ダミアンの誕生だ。もしかしたら、この記事は不吉な福音となるかもしれない・・・

 

 福音 : 減損しても固定資産台帳は修正しなくてよい。

 不吉 : もちろん、出自だ。こんなブログは怪しすぎる。

 

僕自身にダミアンの父、即ち「悪魔」の自覚はないが、まあ、この福音を信じる、信じないは、読み手のみなさんにお任せするしかない。

 

 

さて、僕の奇策にはAEの問題点があった(5/10の記事)。このうち、BDE は、主に資産管理単位の問題で、減損損失累計額に明細がないことに関連した。しかし、これらについては、経営上は個々の資産に注目するより、資金生成単位というビジネスの最小単位の資産をグループとして見ることがより重要で意味があるから、会計上はそのレベルで数字を把握していればよいとして退けた。そして残りの AC (減損後の減価償却計算)については、投資回収管理をベースにした事業計画があれば、容易に計算できるとした。

 

では、個別資産単位の固定資産台帳(=減価償却台帳)はいらないのか?

 

そんなことはない。一定規模以上の生産設備を持ち、設備の維持管理を担当する専門部署がある製造業では、その部署が詳細な個別資産の台帳をもっているが、そうでない会社は、固定資産台帳(=減価償却台帳)がその代りをしている。また、将来の見通しが明るいなど、ライフ・サイクルの終わりを意識する必要のない恵まれた事業では、個別資産から減価償却計算を積上げることになる。しかし、なんといっても必要となる理由は、税務計算だ。税務計算上はすべての個別資産ごとに減価償却計算が必要だ。税法準拠の耐用年数、残存価額及び減価償却方法で減価償却計算し、税務調査のときに調査官の机にど~んと積上げるあの台帳が必要になる。

 

 

5/16の記事で、次のような計算式を記載した。

 

  減損損失累計額の戻入= 固定資産台帳の減価償却費 -減損後の減価償却費

 

これは、次のように書き換えることができる。

 

  減損損失累計額の戻入= 税務上の減価償却費 -減損後の減価償却費

 

すると、次のような関係になることもお分かりいただけるだろう。

 

  減損損失累計額 = 税効果会計の将来減算一時差異

 

減損損失累計額とその戻入額は、税効果会計や税務申告書の作成にも、そのまま役立つことがご理解いただけると思う。

 

 

う~ん、ここまで来ると、次のような法人税法側の問題点にも触れざるを得ない。

 

 ◆ 繰延税金資産の回収可能性

 

法人税法上は、有形固定資産の減損会計に当たるものがない。したがって、減損損失累計額は上式のように一時差異になってしまうが、そのために繰延税金資産の回収可能性の問題が浮上する。その他の事業が好調で、会社が常に一時差異を余裕で上回るような課税所得を稼いでいれば問題はないが、そうでない場合は、繰延税金資産を回収できるか確実でないとして繰延税金資産を計上できない可能性がある。それは業績の変動を過度に増幅させることに繋がる。(まあ、減損損失がそのまま繰越欠損金になるような状況であれば、たいした違いはないかもしれないが。)

 

 ◆ 法定耐用年数より長い耐用年数を設定した場合の税務ディメリット

 

減損後の減価償却計算を行うにあたって、耐用年数を延長することは考えられるか? メンテナンスの工夫等によって更新投資を延期できるケースはあり得る。また、不幸にして稼働率が低い結果、物理的に長持ちする可能性もある。しかし、通常は、税務上の償却限度額が少なくなるようなこと(=課税所得が大きくなるので納税額が増える)、即ち、耐用年数の延長はしないと思う。会計上は、減価償却費の過大計上に繋がるので好ましくないが。

 

また、減損に関係ないが、新規投資を行う際に、税務上の耐用年数以上の使用期間を想定することは考えられるか? 或いは、既存の設備をより長く使用する明確な方針変更はあり得るか? いずれもあり得ると思うが、耐用年数を長く設定したり、延長することはあまり想像できない。税務上のメリットがないからだ。困ったことに、税務上得にならないような戦略・戦術は、経営上、積極的な検討対象になりにくい傾向がある。しかし、これでは経営の発想を縛るようで好ましくない。もちろん、会計上も好ましくない(投資回収管理をちゃんとやってる会社限定だが)。

 

減損を計上するような状況でも税金はしっかり取られる、とか、企業の創意工夫で資産の使用期間を延ばすとペナルティのように税金を取られる、というのは、課税の公平性とか、負担能力主義に照らして果たして適切と言えるだろうか? (アベノミクスの成長戦略で解決して!)

 

 

 

(重要な固定資産の移動・除却 ・・・ここで償却可能額だ!)

 

ちょっと話が逸れたが、もう一度固定資産台帳に戻る。というか、書き始める前は、このことを今日のメインテーマに据えようと思っていたのに、話が大きく逸れてしまった。残念だが、長くなるので、これについてはコンパクトにまとめたい。

 

僕の奇策だと、減損損失累計額は個別資産ごとの明細はなく、資産グループ単位の残高しかない。しかし、減損後にその資産グループの重要な資産を移動したり、除却したりする場合は、その重要な資産に対応する減損損失累計額が必要になる。僕は、固定資産台帳を個別修正しなくても、必要になったそのときに比例配分による計算をすれば良いと主張した(5/22の記事)。

 

これに対し、ちょっと疑念を持たれた方がいらしたのではないだろうか。減損後数年経ち、固定資産台帳の簿価も、減損損失累計額も、減損したときとは変わってしまっている。それなのに、いったいどうやって比例配分するんだ? 或いは、そのとき、そのときの固定資産台帳の簿価でアバウトに比例配分すれば良いということか? などと。違うのだ。何かを使うと正確に比例配分できる。これが償却可能額だ!(5/22の記事でも同じフレーズを使った。) 次の式を見ていただきたい。

 

 移動・除却する簿価 = 固定資産台帳の個別簿価 - 減損損失累計額の比例配分額⋆1

 

.                        現在の償却可能額⋆2

  ⋆1 減損損失累計額の比例配分額 = ―――――――――――――――――――

                     減損損失(= 減損時の減損損失累計額)

  ⋆2 移動・除却する個別資産に関する固定資産台帳のデータ。

 

 

簡単でしょ!

 

もし、対象資産が古く、すでに償却が進んでいれば、現在の償却可能額はゼロに近いので、減損損失累計額の比例配分額もほとんどゼロになる。逆に、減損時にまだ新品同然であって、いまだに償却が進んでいない資産であれば、減損損失累計額の比例配分額も大きくなる。直感的に、上式に違和感はないと思う。

 

しかし、分かり難いようであれば、「(個別資産の)減損時の償却可能額」を、分子と分母に加えて、下記のように「減損損失に占めるこの資産の償却可能額の割合 × この資産の減損時と現在の償却可能額の減少率」と考えてもらっても良いと思う。

 

      減損時の償却可能額      現在の償却可能額

  ⋆1 = ――――――――――― × ――――――――――――

.        減損損失         減損時の償却可能額

 

 

ということで、「あとからでも正確に比例配分できるなら、固定資産台帳を修正する必要はない」とご納得いただけただろうか。なんて素晴らしいアイディアだろうか! このことを多くの方が信じてくれて、固定資産台帳の個別修正は不要と考えていただけることを僕は信じたい。だが、それを周りの人に、そして監査人に上手に説明するのが大変だ。しかし、信じてしまったあなたはそれを語らずにいられない。困難にチャレンジするのだ。だが、それについては僕は関知しない。信じたその先は自己責任で・・・。(ん~、やはりちょっと悪魔っぽい。)

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