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2013年6月11日 (火曜日)

254.【番外編】統合報告の真髄

2013/6/11

先週、東京へ出張して、統合報告のセミナーに参加してみた。統合報告には注目していたつもりだったが、どうやらまだまだ認識が甘かったらしい。凄いぞ。もしかしたら、IFRS以上に企業経営に重要なインパクトを持つかもしれない。いっそ、このブログのタイトルも「統合報告を学ぶ」に変えようか!

 

 

さて、主な講演者名と、それぞれで最も印象に残った部分を簡単に記載する。

 

 国際統合報告評議会(IIRC)CEO Paul Druckman

 

統合報告によって企業行動が変わる。統合報告は、単なるコンプラ対策や制度対応ではない。

 

 一橋大学教授 伊藤邦雄氏(基調講演)

 

日本企業は統合報告で経営革新し、企業競争力3.0へ進化する。

 

 日本公認会計士協会 研究員 森洋一氏(フレームワークの草案の解説)

 

企業は、あらゆる経営資本を、企業理念と将来像を基礎にしたビジネスモデルへ投入し、管理(ガバナンス)する。その長期に渡る価値創造能力を統合報告へ提示する。その結果、投資家の行動を短期から長期へ変化させうる。

 

 ローソン IR室マネジャー 藤森このみ氏(パネル・ディスカッションのパネラー)

 

今年の8月期の統合報告公表へ向けて準備中だが、目標を決め、担当組織を作り、既存の組織に風穴を開け・・・というプロセスは、まさに、伊藤氏が説明した企業競争力3.0への進化へ向けた活動となっている。(他のパネラーの方々の話も面白かったが、代表で。)

 

 

何から説明したら良いのかとても迷うが、とにかく、大きなポジティブ・サプライズだったことをまず伝えたい。もし、僕の座席にガッテン・ボタンがあれば連打していたに違いない。最後には、聴衆の多くが惜しみなく大音量の拍手を送っていた。もし、司会の市村清氏(日本公認会計士協会常務理事)が、両手を上げて格好よくお辞儀をしていたら、「ブラボー」と叫ぶ人がいたかもしれない。僕は、伊藤先生にサインを求めたい衝動に駆られたが、ラフな格好で失礼になりそうだったので、代わりに著作を発注した。この方は、会計学者の枠に嵌らない経営に詳しい方のようだ。こういう会計学者がきっと世のため、人のためになると思う。きっと、僕と同じで、細則主義より原則主義が好みに違いない。著作を読むのが楽しみだ。

 

 

Druckman氏は、統合報告作成のプロセスで、経営が持続可能性への意識を高め、意思決定を変えていくと言われていた。統合報告は、一時点の企業の状況を説明する“静止画”ではなく、企業の将来像への道筋を描いていく“動画”であるということだった。多分、統合報告を作ろうとすると、短期・中期・長期にわたる企業の価値創造プラン(≒事業計画)を真面目に意識(=策定・実行)せずにいられなくなり、企業経営が社会にとってより良い方向へ改善される。すでに試行している企業の意見では、98%が企業の価値創造に対する理解が深まり、93%が他に何らかの改善があった(データ収集・管理、組織の縦割り、アナリストからの質問内容等)と回答しているという。

 

伊藤氏は、最もイノベーティブな国(=日本)の企業が持続的に低収益であるというパラドックスを解消するには、現在の日本企業の競争力のバージョンを2.0から3.0へ進化させる必要があるとし、そのために横断的・統合的発想と取組みが行える自律的全体最適化の経営モデルの達成しなければならないとした。

 

懐かしい言葉で言えば“大企業病”、十数年前の言葉で言えば“部分最適から全体最適へ”、要するにタコ壺化して風通しの悪くなった組織をなんとかしろ~、ということだと思う。まったく、その通りだ。

 

これって昔から言われていることなのに、ちっとも良くなっていない気がする。むしろ、悪くなっているのではないか。実は、欧米企業の方が余程真面目に取組んでいて(多分'90年代ぐらいから)、日本が取り残されている。(新興国企業は成長段階にあって、まだタコ壺の弊害が大きくなっていないかもしれない。) これは企業だけじゃなくて、政府組織も含め、社会全体にそんな感じがする。そんなことにハッと気づかされた。

 

経営者が「(会社として)価値創造する」と掛け声をかけているのは見知っているが、それをどう実現するか、その方法がなかなか分からなかった。単に会議体を設けるとか、巡回するなどしてもダメなのだ。あちこちで事業部や部門の利害が衝突して話が進まない。衝突を避ければ改革ができない。ところが統合報告は、硬直したタコ壺組織に風穴を開ける道具(ドライバー)になりえそうだ。なぜなら、共通目標を協働して実現させようという意識を持たせやすくなるからだ。そこではきっと、投資回収管理も役立つ。

 

 

ところで研究員の森氏が、フレームワーク草案を見てくれ、IIRCへ意見を提出してくれ、と強調されていたので、このブログにもリンクを付けて、みなさんにご紹介したい。(いずれも、日本公認会計士協会のお知らせページ)

 

IIRC 国際統合報告フレームワーク草案の公表(4/19付)

国際統合報告フレームワークコンサルテーション草案の仮訳の公表について(5/17付)

 

僕もできれば貢献したいと思うが、日本語でもよい? (監査法人時代に、海外子会社の外国人の監査人から僕宛に直接メールが来ることがあったが、僕が英語で返答しても、大体反応がないか、薄かった。特にジョークのつもりで書いた文章はことごとく無視された。文法はあってたと思うのだが・・・。センスか?)

 

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