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2013年6月20日 (木曜日)

258.【製造業】最後のテーマの前に・・・会計のメンタル

2013/6/20

SAMURAI BLUE ことサッカー日本代表は、みなさんもご存じの通りブラジル代表に完敗した。しかし僕には、なんとなくまだ全力を出せていないような気がした。全力を出すことができればもっとやれるんじゃないだろうか。僕はもっと期待できると思っている。そして、この記事が公開されるころには、イタリア代表との試合が始まる。イタリアも非常に強い。だが、2-1で勝つと僕は予想している。

 

 

さて、前回(6/18の記事)にも記載したように、「IFRSは製造業に合わない」という批判が説明されているオックスフォード・レポートを参考に、この批判が的を得たものかどうか検証してきたが、いよいよ残るテーマは一つとなった。再掲すると次のような問題提起だ。

 

<IFRS推進派の関心は投資家のため会計の推進という点(或いはもっと狭義にIFRSという投資家のための会計とその技術論)に限られているのに対し、IFRS慎重派は会計が投資家のためのものになっていること自体に懸念ないしは不満があり、そもそもの議論のスターティングポイントが異なる(P124)。>

 

前回も書いたが、これは扱いにくそうだ。3/12の記事225.【製造業】残っている論点は?(まとめ2)」には、「投資家と経営者の間には立場の違いがあり、IFRSは投資家に寄り過ぎている」という意味ではないかと書いたが、改めて読んでみると、その理解はあまり正確ではないかもしれない。

 

そこで、もう一度、オックスフォード・レポートの関係しそうなところを読み直し、意図を良く理解してから、このテーマに入りたい。ということで、少々時間を頂きたい。

 

代わって今回は、以前から気になっていた問題、そしてこのブログを書くようになって増々頭にチラつくようになった問題、しかし、じっくり意識的に向き合ったことのなかった問題、「会計って、なに?」について、少し書いてみたい。

 

 

「資産は、金を生むもの」流の簡単な表現を使えば、「会計は、経済実態の表現」になると僕は思う。以前、IFRSの資産の定義を説明する際に、この「資産は、金を生むもの」を使った(2011/11/1の記事など)。IFRSの資産の定義は難しくてイメージが伝わりにくいからだ。では「会計は、経済実態の表現」は、イメージが伝わりやすいか? 多分、否だろう。自分でいうのもなんだが、それほど分かりやすくない。

 

では、もっと分かりやすい表現はないか? 多分、ない。それにこの表現はコンパクトなので気に入っている。ちなみに、Wikipedia の「会計」の冒頭には次のように書いている。

 

会計(かいけい,英語: Accountancy)とは、一般に、金銭や物品の出納を、貨幣を単位として、記録、計算、管理等することであり、「情報の利用者が、事情に精通した上で、判断や意思決定を行うことができるように、経済的な情報を識別し、測定し、伝達するプロセスである。」といわれる。

 

恐らく、日本ではこれが一般的な定義に近いのだろうと思う。会計を勉強したことのある方々にとって、違和感なく受入れられるのではないだろうか。しかし、僕には長過ぎる点以外にも、ちょっと違和感がある。

 

同じ Wikipedia でも、英語版は次のようになっている。

 

Accountancy, or accounting, is the production of information about an enterprise and the transmission of that information from people who have it to those who need it.
(会計は、企業情報の作成と、それを持つ人から必要とする人への伝達である。)

 

僕も、実はこれを書きながら知ったのだが、僕の定義はどちらかというと英語版に近いようだ。どういう点が近いかというと・・・

 

  • 日本語版の定義は、「会計はプロセスである」と言っているが、英語版は「会計は情報の作成と伝達である」と言っている。そして僕の定義は「会計は表現である」と言っている。

 

  • 「プロセス」は「表現」にはなり得ないが、「情報の作成と伝達」は「表現」と言い得る。

 

要するに、会計は「コミュニケーション」を言うのであり、その材料を作成するプロセスのみを言うのではないという点が、英語版や僕の定義の日本語版と異なる部分だ。では、僕の定義は英語版と同じかというとそうでもない。次の点が異なりそうだ。

 

  • 英語版は「情報」という極めて広い言葉を使っている。

 

  • 僕のは「経済実態の表現」という特殊な用語を使っている。

 

しかし、英語版は上記の文章のあとに、「そのコミュニケーションは、通常、財務諸表の形式を用い・・・。その技術(art)は、読者が関心を持つ情報を選択したり、忠実に表現された情報を選択するためにある」と続く。したがって、いったん「情報」という広い意味を持つ言葉を使ってシンプルに表現し、次の文章でその意味を限定していることになる。そこまで考えると、僕の定義とかなり似ている。

 

 

ということは・・・

 

会計を「プロセス」と思われている方は、日本では一般的だが、僕の実感しているものとはちょっと違う。

 

それがどうした? 何が違う? そう思われる方もいらっしゃるかもしれない。でも、「かなり違う」と僕は思う。

 

僕は、「会計にとっては、出来あがったものが重要なのであり、それに比べるとプロセスはあまり問題でない」と思う。一方、「会計はプロセス」という人は、「プロセスが正しければ出来あがったものも正しい」というかもしれない。しかし、僕は最終的に読み手にどう伝わるかが重要だと思う。プロセスは結果の一部を保証するに過ぎず、プロセスが良くても結果が良くないことはあり得る。だが、それでは困る。要は、会計は最終成果に対して責任がある。

 

この違いは、日本流の「継続性の原則(=前期と同様に処理していればとりあえず問題ない)」の考え方と、IFRS流の「忠実な表現(≒変更すべき理由がない場合にのみ前期と同じ処理を行い、変更すべき理由があればさっさと変更する)」の考え方の相違にも関連がありそうだし(2012/1/27の記事など)、さらには「準拠性表示」と「適正表示」の相違にも繋がりがあるように思う。IFRSは、仮にIFRSに従っていても、最終的に重要な誤解を生じる状況であれば、IFRSの規程を逸脱して適正な情報開示をしなければならないという「適正表示」の考え方を採用している。これには大きなプレッシャーがかかるので、企業には、強いメンタルが必要になる(2012/4/9の記事など)。

 

以上は、若干、理屈をこねくり回して、些細な差を大きく誇張しすぎた感じもないではない。しかし、この“感覚”の相違がお分かりいただけただろうか。もし、IFRSを導入するなら、或いは、IFRSを導入しないとしても、経営者や投資家に実態を理解してもらおうとすれば、こういう“感覚”が重要になるように思う。プロセスの重要性を否定するつもりはないが、結果がもっと重要であることは間違いない。会計がプロセスか、それとも表現(情報の作成と移転)か、という違いには、どこまで意識を広く及ばすか、高く持つかという差があるような気がしてならない。

 

 

さて、段々、イタリア戦が始まる時間が近づいてきた(みなさんが、これを読まれるころには終わっているかもしれない)。SAMURAI BLUE にも、アジア予選(=W杯へのプロセス)で満足することなく、世界での結果に拘ってほしい。それには強いメンタルが必要だが、きっとできるはずだ。そして日本の製造業も再び世界で輝いて、「Japan is back.」といわしめてほしい。もちろん、できるに違いない。そして会計も・・・

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