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2013年7月 4日 (木曜日)

263.【リースED'13】規準改正の“肝”

2013/7/4

2011年まで10年もの間IASBを率いたデイビッド ツイーディー卿が、かつて、「自分が死ぬまでに、航空会社のB/Sに資産計上されている飛行機に乗りたい」と語ったことは、かなり良く知られていると思う。

 

これを聴いて・・・

 

  • 「この人は、もし、羽田から博多へ飛ぶ飛行機をANAとJALから選ぶとしたら、値段とか乗り心地じゃなく、B/Sに計上されている方を選ぶのか」

 

とか、

 

  • 「さすが、IASB議長(当時)。自分が乗る飛行機の会計処理にまで、興味を持つのか」

 

などと思われた方は、残念ながらちょっと違う。(そんな人、いない?)

 

この言葉の意味は、みなさんもお分かりの通り、航空会社が運航する飛行機の会計処理が、経済実態に合っていないと嘆いている。即ち、飛行機がオペレーティング・リースとして、まるで家賃でも払うように毎月賃貸料が費用計上処理され、B/S上オフ・バランスになっているが、それが総資産利益率(ROA)などの重要な経営指標を歪めている。それを許容しているIASBに厳しい批判があったのだろう。

 

こういう批判に応えることが、この新しい公開草案(ED'13)の趣旨だと思うが、実はもう一つ重要な改正がある。上記に「まるで家賃でも払うように」と書いたが、その家賃の対象たる不動産の賃借契約も、資産計上されるように変更される。

 

飛行機については「そうかもね」と思われた方も、不動産については驚かれたのではないだろうか。

 

ということで、「解約不能オペレーティング・リースの未経過リース料」の注記をしている会社は、恐らくこの改正の影響を受ける。この注記をしていない会社も、きっと該当する取引があると思った方が良さそうだ。

 

いったい、IASB(とFASB)は、何をもって“資産”と考えているのだろうか。飛行機と不動産に共通点はあるのか。いや、現行のファイナンス・リースとこれら飛行機や不動産は何が同じなのだろうか。さらに言えば、所有権を取得してB/S計上した普通の資産とこれらは何が共通しているのだろうか。

 

きっと、みなさんにも、むくむくとこんな疑問が湧いているに違いない。僕には湧いている。よって今回のシリーズは、次回以降、この観点からED'13(=2013年に公表された公開草案の意)を眺めて見ることにする。

 

 

ちなみに、ANAやJALの2013/3期決算短信を見ると、飛行機にはB/S計上されているものと、オペレーティング・リースとして簿外処理されているものの両方があるようだ。したがって、ツイーディー卿は、日本に来れば今すぐにでも念願のB/S計上された飛行機に搭乗できる。

 

但し、予約表には示されてないと思うので、チケットを購入する時点で、その便の機体がB/S計上されているか否かをANAやJALの経理部に問い合わせる必要がある。しかし、その質問に答えてくれるかどうかについては、僕は何とも言えない。なぜなら、乗客にとっては機体が航空会社の資産であろうが、リースであろうが関係ないことであり、かつ、航空会社の運航上もそれは同じらしいのだ。つまり、資産計上しているかどうかは、収益獲得のうえで、或いは、運航上で大きな差はない。飛行機で旅客を運ぶビジネス上、両者を区別する必要がない。

 

したがって、「B/S計上云々に関係なくお客様はご搭乗いただけますから、お答えできません。」と冷たくあしらわれたとしても、ツイーディー卿は「そら見たことか。やはりどちらも資産計上だ。」とほくそ笑むのかもしれない。

 

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