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2013年7月12日 (金曜日)

266.【リースED】オペレーティング・リースの問題

2013/7/12

今回のリースの公開草案では、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区分は出てこない。(タイプAとタイプBが出てくるが、これはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分とは関係がないようだ。ちょっと似ているが、現時点では、僕は別ものと考えた方が良さそうと思っている。タイプAB については、また後日。)

 

しかし、なぜこの公開草案が出てきたかを理解するために、今一度オペレーティング・リースの復習をしておこう。

 

ファイナンス・リースは、支払方法と所有権の所在に特徴があるが、実態は普通の資産の取得と変わらないもの。これに対してオペレーティング・リースは、その資産を特定期間借りて使用する契約であり、借りる側に、その資産を所有しようという意図はない。ただ一定期間使えればよい。その間、その資産で事業のオペレーションができればよい。だから現行の会計基準では、使用の対価としての賃借料を発生ベースで費用計上するという会計処理が採用されている。

 

これに何か問題が? みなさんはそう思われないだろうか。

 

僕も最初は、オペレーティング・リースのこの賃借料計上の処理を否定し、資産計上すべきと主張する理由が分からなかった。僕はオペレーティング・リースのことをレンタルと思っていたから、「レンタルしてきたものを資産計上するって、いくら何でもやり過ぎでしょう」と思っていた。それではまるで、泥棒みたいではないか!

 

ただ、ツイーディー卿の飛行機(7/4の記事)は、どうみてもレンタルではない。なぜなら、機材・機体を航空会社の責任できっちり、自分のものとして整備してもらわなければ、怖くて乗っていられない。「ちょっとレンタルで」と気軽に貸し借りされているなら、知らせてもらわなければ乗客としては困る。(「共同運航」というのがあるが、これは相手の航空会社名が分かり、信用できるかどうか乗客が判断できる。)

 

要するに、「レンタル」とは言えないオペレーティング・リースがあるということを、恥ずかしながら当時の僕は知らなかったのだ。では、どういうケースが「レンタル」とは言えないオペレーティング・リースとなるのか。

 

例えば、レンタルというにはあまりに使用期間が長いケースだ。航空機についていえば、JALの2013/3期の有価証券報告書(JALホームページ)P33の「主要な設備の状況」の表の付表「賃借航空機(オペレーティング・リース)」を見ると分かる。最も長いものは、平成36年(11年先)までという契約もある。ちなみに航空機の耐用年数については、P65に記載があり、「12~27年」とされている。

 

十数年も使い続けるとすれば、購入したものと何が違うだろうか。購入したものでも、耐用年数の途中で売却することがあるから、結果として使用期間が変わらないこともあり得る(実際に、JAL本体でこの事業年度に12機売却している)。

 

とはいえ、単にリース期間が長いとか、使用期間がオペレーティング・リースと購入したもので変わらないことがある、というのは、形式的な話だ。着眼点としては重要だが、結論を出す前にもっと突っ込んで考える必要がある。でも突っ込むって何を? どこを?

 

それは、事業にとっての意味だ。購入とオペレーティング・リースは違うのか、同じなのか。違うとすれば事業において本質的な差か、それとも多少経路が違うだけで目的は同じか。同じであれば、会計処理が一方は資産計上で減価償却、もう一方は賃借料を費用計上というのはおかしいということになる。

 

 

ここからは、JALやANAに関わったことがない僕の推測交じりの話になるのでご容赦願いたい。

 

JALのビジネス・モデルは、旅客機を使って人やものを運んで収益を得て、旅客機その他への投資を回収するというところは、みなさんも同意いただけると思う。そのために何が重要になるかというと、「お客さまに世界一の安全性、定時性、快適性、利便性を提供するということ」(JALホームページのJALグループ企業理念より)だ。

 

安全性も、定時性、快適性、利便性の何れにとっても、飛行機の機材・機体は重要だ。もちろん、“世界一”になるには、整備や運航に係る人的資源の優秀さがさらに重要だろうが、これらを一定の経済性の下に実現するには、高性能な機材・機体を合理的な価格で調達し、事業に投入する必要がある。そして陳腐化した機体は、随時、新しい機体に入替えていく必要があるだろう。

 

では、これらに比べて次のことは重要だろうか。

 

 A. 機材・機体の法的な所有者が誰か

 B. 機材・機体購入の支払は、一括払いか分割払いか

 C. 機材・機体は、税法の耐用年数の75%より長い使用期間が予定されているか否か

 D. 機材・機体の価値の概ね9割以上を航空会社が支払うか否か

 

既に、お分かりと思うが、機材・機体を事業に投入できるのであれば、そして、タイミングよく入替ができるのであれば、AD は二の次ということになる。大雑把に言って、A B は、購入かリースかの違い、C D は、ファイナンス・リースかオペレーティング・リースかの違いを分ける現行の基準だ。しかし、購入かリースか、ファイナンス・リースかオペレーティング・リースかは、事業に投入する機材・機体を調達するための手段に過ぎず、事業を遂行するための本質的な目的・問題ではないだろうと思う。

 

さて、ここで上記有報のJALの連結財務諸表の具体例を見てみよう。

 

総資産が1兆21百億円、うち航空機が38百億円計上されており、これらを使用して、1兆23百億円の営業収益と17百億円の当期純利益、26百億円の営業キャッシュフローを稼ぎ出していると読める。ほう、38百億円の航空機でこんなに稼げるとは素晴らしい。それを12年~27年も使うことができるなら、儲かるはずだ(但し、法人税等をほとんど計上していない状態の数字だが)。

 

ところが、こういう読み方は、恐らく間違いだ。すでに何度か記載したように、オペレーティング・リースで調達した機材・機体は、現行基準ではB/Sに計上されていない。JALは、実際にはもっと多くの航空機を事業に投入して利益やキャッシュを稼いでいるはずだ。多分、上記有報のP76にひっそり記載されている「オペレーティング・リース取引」の注記を考慮する必要がある。そこには、解約不能オペレーティング・リースの未経過リース料として20百億円あることが明らかにされており、(それが航空機かどうかの記載がないが、)恐らく、これの多くが機材・機体なのだろう。

 

まあ、それでも凄い数字だが、こちらの方が経済実態に近いはずだ。もしかしたら、解約不能でないオペレーティング・リースで調達している機材・機体もあって、その数字がまだ隠れているのかもしれない。そのあたりは、もう現行の開示では分らない。

 

これが現行基準の限界であり、問題点だ。

 

だとすれば、なんとかこの20百億円+αをB/Sに計上したくなる。そうしないと事業の経済実態が良く分からないことになる。例えば、他の航空会社と比較をするにも、オペレーティング・リースによる調達の割合が大きな航空会社は、その分の航空機をB/S計上しないので総資産利益率が凄く良く見えることになるが、オペレーティング・リースによって調達すれば事業効率が良いように見えるのは、経済実態を正しく表現していないかもしれない。同じようなことはこの業種に限らず、例えば、小売業で店舗が自前かどうか、とか、運送業界で車両が自前かどうかなど、色々あるに違いない。

 

これを改善しようというのが、この公開草案の目的となっているはずだ。

 

ということで、次回以降は、公開草案がどのようにこの問題を解決しようとしているかを中心に具体的に見ていこう。

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