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2013年8月 9日 (金曜日)

276.【リースED】資産の使用を支配する権利

2013/9/4末尾の赤文字部分を追加。

 

2013/8/9

みなさんは『目に見えないヘルメット』なるものをご存じだろうか。もしよろしければ、下のリンク(ITproのニュース記事)を、一瞬でよいので、ご覧いただきたい。冒頭に美人モデルが自転車に寄りかかって遠くを眺めている写真があるが、このモデルは『目に見えないヘルメット』を装着しているという。確かにヘルメットは見えないが、驚いたのは、モデルの髪が全く乱れていないことだ。ヘルメットを被っているのに風が吹けばそよぐのではないか?

 

「目に見えない」自転車用ヘルメット:スウェーデンの女子大生が発明(WIRED.jp)

 

一体どうなっているのか。謎解きはこの記事に任せるが、僕が強調したいのは発想の転換だ。『目に見えない』というのは、単にヘルメットが見えないというより、『ヘルメットを被っているように見えない』のだ。実は実際に被ってないので、これをヘルメットと呼ぶのか疑問がある。しかし、頭部は安全だという。目的は果たされている。その意味ではヘルメットを被っている。

 

『リース』も、そういう発想の転換の産物と思う。生産するには製造設備が必要だ。それには製造設備を所有しなければならない、と考えずに、所有しなくても使えればよいと。しかも、従来は、所有するのとほぼ同等な場合に限って『リース(=ファイナンス・リース)』と言って資産計上していたが、この公開草案では、一時的であっても特定期間使用を支配する権利があるなら、資産計上となる可能性がある。資産の本質が、『所有』ではなく、『キャッシュフローの生成能力』(=使用の支配)にあるという発想の転換の結果が、ここに見える。(これは、概念フレームワークの資産の定義と整合する。)

 

ということで、今回は、7/25の記事に記載したリースを識別する2要件の2つ目「b)当該契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転するかどうか(第12項から第19項に記述)」(7 項)について考えてみたい。

 

 

この b)について 12 項では、『資産の使用を支配する権利』の内容を2つのポイントで示しており、それらが、借手(=顧客)に移転していれば、リース契約になるとしている。

 

12 契約は、当該契約の期間全体を通じて、顧客が次の両方を行う能力を有する場合には、特定された資産の使用を支配する権利を移転する。

 

(a) 特定された資産の使用を指図する能力(第13 項から第17 項に記述)

 

(b) 特定された資産の使用により便益を得る能力(第18 項から第19 項に記述)

 

即ち、一定期間、特定された資産の使用を支配する権利を顧客(=借手)に移転している(=資産をどのように使うか顧客が決められ、その結果をすべて顧客が享受する)なら、リース契約ということになる。あまり難しいことではないと思うが、今まで引用した設例をもう一度思い出しながら、ここにいうリース契約のポイントについても確認してみよう。

 

まず、供給者の入替権(7/31の記事)で引用した鉄道車両の設例(設例1)について。

 

この設例では、ABC の3パターンから、どれがリース契約を含むかを説明していたが、リース契約を含むとされた A は、一定期間、車両を貸しっぱなしにするという設定だった。貸しっぱなしにしている間、車両を輸送に使ってもよいし、倉庫代わりに何かの保管に使うこともできた。即ち、車両をどのように使うかを顧客が決めることができた。また、輸送や保管の結果得られた便益は顧客に帰属する。一方、リース契約を含まないとされていた B C では、車両は輸送にしか使えないという設定だったので、使用を指図することが完全にはできない。ということで、この面から見ても B C はリース契約ではなかったし、A はリース契約の要素を備えていた。

 

次に、対象資産の物理的な区別(8/1の記事)で引用した光ファイバー・ケーブルの設例(設例4)について。

 

この設例では15本の東京-香港間の光ファイバー・ケーブルのうちの3本分に関する2つのパターンの契約を示し、一方はリース契約を含むがもう一方は含まないとされていた。リース契約を含む方は、3本の光ファイバー・ケーブルの両端がいずれも顧客の端末機器に繋がれていたが、含まない方は、15本すべてが通信会社(=貸主)の端末機器に繋がれ、通信会社の管理下で3本分の通信能力を顧客に提供する契約だった。

 

両端を顧客の端末機器に接続されているリースを含むとされた契約では、その3本は、使用する・しないは顧客が決定し、その結果も顧客に帰属している。一方、リースを含まないとされた方の契約では、15本すべての光ファイバーは通信会社が管理し、顧客の求めがあったときに3本分の通信能力をその顧客に配分できればよかったので、空いていれば他の顧客のために使うことができた。どの光ファイバーを使うかは通信会社が決定し、その結果も通信会社に帰属している。したがって、指図する能力、便益を得る能力のいずれも、前者はリース契約の要素も持ち、後者は持っていなかった。

 

以上を見ていると、(これまで見てきたリースを識別する要件2つ、その2つを判断するポイントもそれぞれに2つずつの)計4つのポイントは、バラバラに、或いは、契約条件と個別対応するものというより、「1つの事象の様々な面」という形で表れてくるようだ。

 

それから、この4ポイントを考えるうえで重要なのは、「一定期間」、或いは、「期間全体を通じて」有効なことだ。この“期間”は、契約書に記載された期間というより、「4ポイントが有効な期間」こそが、この公開草案でいうところの「リース期間」ということかもしれない。僕はこの“期間”も、リース契約を識別するうえで重要な要素になると思う。

 

 

さて、以上で、「リースの識別」に関する規程はすべてとなったので、上記の設例に加えて、7/31の記事で「引続きフォローする」としていた庸車契約や外注加工取引についても考えてみよう。供給者に入替権がなく、或いは、対象資産が物理的に特定できる状況で、顧客(=借主)がその資産の使用を指図でき、かつ、その便益を得る能力がある状況は、これらの契約においてもあり得るのだろうか。

 

結論から言えばあり得る(が、そう多くない?)と思う。特に外注加工取引では殆どないのではないか(僕の意見)。

 

さて、具体的な検討内容については次回としたい(※1。来週から夏休みに入る方も多いと思うが、申し訳ないが休み明けにご覧いただきたい。このブログは、(これ以上暑さが厳しくならない限り、)来週・再来週も続ける予定だ。

 

(※1)具体的な検討内容については、9/4の「283.【リースED】リース取引の識別のまとめ~庸車取引、外注加工取引」をご覧ください。

 

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