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2013年8月27日 (火曜日)

281.【リースED】野球タイプの合理性

2013/8/27

民主化か、秩序か。いや、現実はこんな単純な図式ではない。大統領を解任されたエジプトのモルシ氏は本当に民主的だったか。或いは、暫定政府はもっと融和的にモルシ派と向き合えなかったのか。いずれにしても、ご存じの通り、エジプトの平和的な事態打開の方向性はまだ見えてこない。それは両者の対話が成立していないためだ。

 

宗教に基づく統治か、否か。宗教絡みの国の支配権をめぐるテーマをまともに議論しても対話にならない。そこで、両者共通の利益になる別の議題を中心に据え、宗教については共通利益を実現するためにお互いに妥協するという枠組みで対話する必要がある。しかし、この枠組みの設定自体が難しい。

 

 

ところで、国の支配権をめぐる対話は難しいが、ビジネスなら共通の利益を見つけやすい。例えば、耐用年数が10年の機械を5年だけ使いたいAさんについて考えてみよう。

 

Aさんに対して「10年使えるものは10年使いなさい、だから、代金を100%支払って購入しなさい。」と言ったら、宗教の議論と同じで、話が先に進まない。Aさんは事業戦略上10年も使いたくないのだから、100%の支払は割に合わないと思っている。

 

そこに、「では、代金の8割を支払ってくれるなら応じましょう。」というBさんが現われる。Bさんは5年後に2割なら、転売するなど別に回収できる事業戦略上の見通しがあるのだ。

 

Aさんは8割でも支払い過ぎと思っているが、Bさんとなら話ができる。この取引が成立することで、Aさんは事業の可能性が広がるし、Bさんもこの機械を購入してもらうほどではないが利益を得られる。共通の利益が生まれる。そこでAさんは「5年間賃借料として支払うのはどうか。代金の8割相当になる。」と提案してみる。Bさんは信用コストを含む金利相当額は不利になるものの、「5年間支払い続けてくれるならいいですよ、即ち、5年間は解約不能期間ですね。」と応じる。

 

これは、解約不能期間が5年という「時間」によって決まるサッカー・タイプのリース期間だ。解約不能期間は、両者に事業戦略上の共通の利益をもたらす連結環、或いは、利益調整弁のような存在になっている。さて、同じような対話が野球タイプ(=最低発注量等の「数量」を決める)でも成立するだろうか。

 

ということで、この野球タイプの対話パターンをこの数日考えていたが、なかなか思いつかない(それで前回の記事から間隔が空いてしまった)。例えば、次のような話を考えてみたが、最終的に合理性がなく、国の支配権をめぐる話と同様、話がまとまらないような気がするのだ。

 

Cさんは、ライバルが真似をするまでに数年はかかりそうな革新的な機能を持つ製品を開発した。市場調査の結果、最初に百万人の顧客、ユーザーを確保した企業が、その後も市場の主導権を握れる可能性が高いことが分かった。そこでCさんは、市場の主導権を握りつつ、かつ、原価を抑えるために、次のことを考えた。即ち、この製品の中核部品について、百万個まではCさんのみに供給することを外注業者へ義務付け、百万個を超えたら、他社へ販売してもよいとすることで、この部品の固定費負担を軽減し、外注加工単価を下げることができる。

 

このようなケースで、部品百万個の生産能力やCさんの販売計画から割出した期間をリース期間と言えるだろうか。・・・と、続けたいが、その前に考えなければいけないことがある。果たしてこれは合理的だろうか?

 

その製品の革新性や将来性に賛同できたとして、外注業者が最も困るのは、営業活動をやりにくいことだ。Cさんへの供給だけでは元を取れない。だからCさん以外の顧客を見つけなければならないから営業活動をしたい。なるべく早く始めた方が有利だから、Cさんへの供給が百万個になる前から始めたい。しかし、百万個の供給が終えられるのは、Cさんの製品の売れ具合に依存しているので、Cさん以外の顧客に供給開始時期を明確に伝えられない。営業がしにくい。営業されても、顧客の側が困ってしまう。

 

よって外注業者は、「百万個を供給するまでの間」ではなく、明確に何年、とか、何か月といった時間で期間を明示して欲しいと希望するだろう。Cさんにしても、部品コストを下げるには外注業者の言い分に耳を傾けざるえないに違いない。すると、時間でリース期間・解約不能期間が決まることになりそうだ。ということは、結局、野球タイプのリース期間になりそうにない。

 

これは、このケースに限らず、かなり一般的な気がする。というのは、時間によるリース期間・解約不能期間はいつ終わるのかはっきりしているが、生産量とか発注量によるリース期間・解約不能期間は不安定で将来予測が難しいからだ。両者が共通して利益を出せるための連結環であるべきリース期間や解約不能期間が、野球タイプにすることで不安定になってしまう。その結果、一方(このケースでは外注業者)が著しく不利になる可能性があり、利害調整が難しい。利益調整弁としてはふさわしくない。ということで、野球タイプの解約不能期間を設定する契約は、あまり一般的になりそうにない。

 

それでも野球タイプの契約が成立するとすれば、次のようなケースに限定される気がする。

 

 1.解約不能期間が、この契約に関する両者の利益にとってあまり重要でない場合

 2.解約不能期間を野球タイプにすることで、会計上リースとして扱われなくなる場合

 

1については、次のような場合が考えられる。

 ○ そもそも、その契約はリースに該当しないか、

 ○ 或いは、リースには該当するが、

・リース料を高く設定できるので、比較的短期間で投資回収が可能なケース。

・解約されても容易に他の借手・貸手を見つけられ、かつ、他の借手・貸手へ乗換えるのにあまりコストがかからないケース。

(これらのケースでも、実際の契約では野球タイプより、サッカー・タイプの方が好まれるはず。)

 

2については、この公開草案が、野球タイプで解約不能期間が表現されている契約をリースとして扱わない場合が当たる。B/Sに使用権資産やリース負債を計上すると投資家が行う財務分析で不利になるとか、リースとして扱えば会計処理他手続が複雑になるとか、そういう意図が働いて、リースとして扱われないように契約の形式を調整してしまうケースだ。即ち、もし、この公開草案が野球タイプの契約をリースから除外しているとすれば、このような潜脱行為を行う手段を自ら提供することになりかねない。

 

前回(8/21の記事)では最後に、「それではいよいよ、野球タイプのリース期間はありえるか、という問題に移りたい」と書いた。そして今回その結論は、「ありえるが、少なそう。少ないとしても公開草案がそれをリースに含めないと、変なことになる」ということになった。よって、次回は「公開草案は、野球タイプの契約をリースに含めているか」に移ることになる。次回はその点に絞って、公開草案を読み解いていきたい。

 

 

冒頭、大上段に構えて「民主主義か、秩序か」で始めたが、宗教が絡んだ国の支配権をめぐる争いと違い、ビジネス上の対話は多様だし、アイデア次第で色々な可能性が出てくる。重要なのは対話できることで、それができないエジプトの道のりは、残念ながら、まだ遠いに違いない。エジプトばかりではない。日本の尖閣問題や竹島問題の道のりも、同様だ。

 

ただ実際には、ビジネスにおいても、アイディアや能力を持つ多様な人々とのチャネルは、簡単に発見・獲得・維持できるものではない。また提供する方も、顧客ごとに特有の要望に応えながら利益を確保するには大変な苦労がいる。ビジネスでも、決して簡単に問題解決しているわけではない。比較するのはおかしいかもしれないが、エジプトも、日本も、なんとか対話の糸口を見つけて欲しい。そして“戦略”によって共通の利益を見い出し、お互いに“妥協”が許される枠組みが設定できることを願いたい。シリアのようにならないうちに・・・

 

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