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2013年9月 4日 (水曜日)

284.【リースED】リース取引の識別のまとめ~庸車取引、外注加工取引

2013/9/4

8/9の記事で、お盆休みに詳細を記載するとしていた「庸車取引や外注加工取引にリースが含まれるかどうか」について、未だ記載していない。「リース期間」にたくさん時間を割き過ぎたのだが、しかし、「リース期間はリース契約書に書いてあるもの」というイメージを持っている我々が、「リース期間は経済実態によって決まるもので、契約書そのままではない」というこの公開草案の趣旨を理解するには、大変な頭の切り替えが必要だ。ということで、ご容赦願いたい。

 

ここでざっとお浚いをしよう。リースの公開草案は、

 

 1.リース取引の識別

 2.タイプA、タイプBの区別

 3.それぞれのタイプごとの会計処理

 

と進んでいくが、このブログは 7/25から「1.リース取引の識別」をずっとやっている。進捗が遅いと思われるかもしれないが、「リース」のイメージが従来とは異なるので、そのイメージをしっかり持ちたい。ここが肝心と思っている。そこで今回は、もう一度復習をしながら、庸車取引や外注加工取引の問題も合わせて考えていく。以下、記事を日付順に要約し、庸車取引や外注加工取引についての僕の考察をこの色(黄色の背景色)で追記する。

 

7/25271.【リースED】リースの識別の取っ手」「」「

従来は「ファイナンス・リース」か否かが問題であったため、我々はリースと言えば「ファイナンス・リース」をイメージする。しかし、この公開草案のリースは、もっと幅が広い。

 

7/27「272.【リースED】リース契約のイメージを変える」

7項に示された(a)(b)の2つのリース識別の条件は、(b)については違和感はないし、(b)だけで足りるような気がした。それなのに(a)があるのはなぜか。そこに「リース」のイメージをどのように変えたらよいかのヒントがあるに違いない。そこで、(a)についての詳細を記載している811項を見ると、そこには「資産の入替権を供給者が持っていないこと」や「リース対象資産を物理的に区別可能なこと」が記載されていた。

 

7/31「273.【リースED】供給者の入替権」

ここでは公開草案に付属している「貨車」の設例を見ながら「供給者の入替権」を具体的に理解することに努めた。その結果、「供給者が入替権を持っていないこと=対象資産が具体的に特定されていること」だが、単に契約上「対象資産が具体的に特定されていること」に留まらず、(契約に記載がなくても)実質的にそういう状況になっていれば該当することになる。したがって、リース契約・賃貸契約以外の通常のサービス契約でも、使用される資産が一年を超えて具体的に特定され、特定顧客(借主)に紐付いている状況にあれば、リースに該当する可能性がある。

 

従来なら「サービス契約」と考えられている庸車取引や外注加工取引も、リースが含まれるかどうかを識別する対象となりうる。特に、契約書に明示されているかどうかに関わらず、庸車取引で車両が特定されているとか、外注加工取引で製造設備が物理的に特定される場合(例えば、特定顧客専用となっている車両や製造設備)は要注意だ。

 

8/1「274.【リースED】対象資産の物理的な区別」

ここでも「光ファイバー」設例を見ながら「対象資産の物理的な区別」を具体的に理解することに努めた。設例は「光ファイバー容量の一部」が契約対象となっている場合は、物理的な区別ができないと判断することになっていた。「物理的な区別ができない=対象資産が具体的に特定されない」であるために、この設例はリースを含まないと説明されていた。そういう意味では供給者の入替権と似ている。一方、同じ光ファイバーでも物理的にカウントできる一本・二本という単位で丸ごと顧客が自由に使用できる状況は、「物理的な区別ができる=対象資産が具体的に特定される」であるため、リースが含まれることになる。

 

庸車取引や外注加工取引の場合でも、その運搬能力の一部、製造能力の一部のみを借手に提供している状況ならリースではない。通常は、庸車費用や外注加工費用の固定費負担を借主側が軽減したいため、このケースになる(=リースに該当しない)ことが多いと思う。

 

ということで、リース識別条件の(a)は、その取引において使用される資産が特定・固定されるかどうかに焦点を当てていた。特定されれば、他の条件次第でリースになり得るし、特定されないのであればリースではない。契約書名称が「リース」や「賃貸借」に関連しているかどうかは関係ない。

 

 

8/9「276.【リースED】資産の使用を支配する権利」

8/1の記事までは、7項のリース識別の2条件のうち、(a)に関する検討だったが、この記事でようやく(b)の検討となる。(b)についても1319項に詳細があるが、要約すれば、「特定された資産の使用を指図する能力」と「それにより便益を得る能力」が借手の側にあることだった。即ち、その資産を「一定の期間、借手が支配している」状況にあれば、リースの条件の一つを満たすということだ。

 

貸主が、その車両や製造設備を他の顧客のために使用できず、ほとんど借主の意図に従って動かされている状況、そして、その車両や製造設備から得られる経済的便益を借主が享受している状況は、それら資産の使用を借主が支配している状況といえる。例えば、資産がその借主(顧客)専用仕様で、他社用に転用できないとか、借主(顧客)が、事業戦略上の理由で、「その資産を使用する他社からの受注を禁止している場合」などが該当すると思う。

 

ここまでで、「資産が具体的に特定され」、かつ、「その資産が借手(顧客)に支配されている」状況が一定期間継続する見込みであれば、その取引はリースの識別条件に合致する、即ち、リースを含むと判断されることが分かった。この判断は実質ベースで行われる。

 

8/14「278.【リースED】契約の構成部分の区別」

サービス契約も含めた幅広い取引からリースを識別するので、従来は1つの取引としてまとめて会計処理していたものを分解して、その一部をリース(=使用権資産として資産計上)とする必要が出てくる。これはちょうど、建物等の最終見積書から資本的支出と収益的支出を分類する作業に当たる。

 

仮に、庸車取引や外注加工取引にリースが含まれるとすれば、車両や製造設備に関連する部分を庸車契約や外注加工契約から抜き出して、使用権資産として識別し、資産計上することになる。リース以外の部分は、従来通りサービス契約として発生時に費用処理する。

 

8/19「279.【リースED】リース期間~a period of time」

公開草案の6項や付録Aの用語の定義「リース」では、リース期間のことを「一定期間」、英語の原文では「a period of time」と表現している。英語では「a cup of tee」が紅茶を表すので、「a period of time」は時間を表す。即ち、「一定期間(=a period of time)」とは「時間で表現された期間」ということになる。これに対して、時間による期間は明示されないものの、発注量や生産量などの数量が取引条件として明示され、生産能力などから期間が推定できるケースも考えられる(これを便宜的に「野球タイプ」と呼ぶ)。しかし、野球タイプは時間の明示がないので、リース期間とは認められず、リースには当てはまらないのか?

 

もし当てはまらないとなれば、庸車取引や外注加工取引は、通常野球タイプなので、仮に生産能力等を考慮して一年を超えると推定できるような大量な発注が予定されていても、その取引はリースを識別する対象とならないことになる。

 

8/21「280.【リースED】リース期間を決定する」

25項では、会社はリース期間を、「リース期間=解約不能期間±オプション期間」として決定しなければならないとしている。これは、リース期間はリース契約書等から拾い出すものではなく(固定資産の(自主)耐用年数と同様に)、会社が経済環境、事業環境から見積もって決定するという意味と考えられる。

 

8/27「281.【リースED】野球タイプの合理性」

8/19の記事で野球タイプのリース期間はありえないのか?と疑問を呈したが、具体的に野球タイプのリース期間を想像してみると、あまり合理性のある取引、ケースが思い浮かばなかった。契約当事者にとって期間が重要なら、素直に時間によって期間を表現した方が、取引条件として都合が良さそうだ。だが、もし、この公開草案が「野球タイプはリースに含めない」とすると、敢えて野球タイプで期間を表現することで、使用権資産を資産計上する会計処理を避けることができてしまう(潜脱行為を可能にしてしまう)。

 

8/29「282.【リースED】リース期間とサッカーの試合時間」

結局、リース期間は「a period of time」なので、「時間」で表現されなければならない。しかし、その「時間」は関係するあらゆる状況から判断するものなので、もし、発注量や生産量がリース期間に関係するならば、それも考慮される。そういう意味で、野球タイプの契約、取引条件であっても(=時間による期間が明示されてなくても)リースとなり得る。

 

庸車契約や外注加工契約についても、時間によって期間が明示されていないとしても、予め発注量等で解約不能期間が長期になることが予測されるケースは、リース識別の対象となる。即ち、見積られた期間にわたり、上記の、「資産が具体的に特定され」、かつ、「その資産が借手に支配されている」という条件に合致するかチェックし、リースが含まれていないかを検討する。

 

「リースを含む」と識別した契約・取引から、リースを区分したり、リース期間を決定する作業は、一見、リース会計特有の作業のように見えるが、実際には固定資産を計上する際に、資本的支出と収益的支出を分類したり、(自主)耐用年数を決定する作業と同じ意味だ。特にリース期間を決定する作業は、(自主)耐用年数の設定と同様に、事業計画が前提になるので日本企業には苦手な分野だと思う。注意が必要だ。

 

ただ、多くの庸車取引・外注加工取引ではリースは識別されないと思う。庸車取引や外注加工取引にリースが含まれる可能性はあるが、8/9の記事の末尾にも書いたように、特に外注加工取引においては、通常はほとんど見られないのではないだろうか。

 

例えば、「事業計画上、関連する製品を長期間生産するので、外注取引も長期間にわたる予定になっている」だけでは、リースにはならない。その期間にわたって、車両や製造設備が具体的に特定され、かつ、(借手が)その使用を支配する状況が続くのでなければ、リースとはならないからだ。仮に製造ライン等の資産が具体的に特定できる状況であっても、貸手(=下請け先)が、発注量が予想を下回るリスクを負って設備投資をしている場合は、一定期間、資産の使用を支配しているとはいえず、リースとならないだろう。逆に、大量の発注を(暗に)確約するなど、その投資リスクを、一定期間、借手に(実質的に)転嫁している状況が見られる場合は、その期間、借手(顧客)が、資産の使用を支配している可能性があるので、リースが含まれていると識別される可能性がある。

 

このように考えると、庸車取引・外注加工取引などサービス取引については、リース会計のためにリースを識別する特別なプロセスを追加するというより、下請け先(貸手)の投資リスクを借手が負担するような契約がないか、もしあれば、その契約に合理性があるか、というリスク管理プロセスが適正に働いているかどうかに注意を向けた方が良い。これを機会に、このようなプロセスで把握されたリスクや経済実態を適切に会計に反映させる体制を整える、という観点からの内部統制の整備・補強・運用を考えることが重要だ。そのリスク転嫁の方法によっては、リース会計より、何らかの引当金を計上する方が適切なこともあるかもしれない。

 

また、以前は、系列内で上位の会社が下位の会社の投資リスクを実質的に負担するようなケースもあったと思うが、80年代からの度重なる円高や、新興国の躍進で、上位の会社にそのような余裕はなくなっている。それが系列依存からの脱却を促し、系列が解体される流れに繋がっている(しばしば言われるように、株式の時価評価だけで系列が解体されたわけではない)。しかし、もし、今でもそのような保証を何らかの形で与えているとすれば、実質支配力を考慮して、下位の会社を連結の範囲に含めるか否かを検討することが適切な場合もあるだろう。

 

ということで、経済実態を如何に把握し表現するかが、経営にとって重要で、この公開草案によって、リース会計はその手段の一つとしてより適切なもの、役立つものになってきたと考えることができそうだ。

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コメント

おはようございます。おひさしぶりです。

このリースの基準ですが、純会計理論を突き詰めた結果としてのものなのか、それとも主なターゲットが想定されたものなのか、どうなんでしょう。

日本でいえば、たとえば自動車産業の『系列』。町の部品製造会社がトヨタ専用の設備を持っていたなら、契約内容によっては対象資産がトヨタのリース資産になる可能性もある、ということでしょうか?

トミーさん、こんにちは。鋭いですね。お読みいただいてありがとうございます。

公開草案の趣旨を考えると、そういうことがあり得ると思います。また、経営として、把握しておくべきリスクがあるように思います。

相手が町工場だとしても、その資産の投資リスクをどう負担しているかを着眼点として、トヨタが自分で投資したのと同じような効果が想定される期間があるならこの公開草案に従ってリースに、そこまでではないけど、何か約束があるなら引当などの他の対応が必要になるかもしれないと僕は思います。ただ、外注加工取引については、実際に該当するケースはあまりないような気もしています。

とはいえ、リースのイメージを相当拡大させる必要がありそうと思ったので、その象徴として書いてみました。

なるほど。ありがとうございます。
『支配してるか否か』ということになると、そもそも他社の設備なわけで、「リースに該当しません」という言い逃れが簡単にできるような気がしますね。

もともとリース基準の趣旨は、資産と負債(特に負債額)の全貌を明示しなさいよ、というものと理解してましたが、新しい基準の趣旨は、連結の範囲の話に近いような気がしました。

自動車の系列よりも、ユニクロの中国などにある提携工場が関係してくるかもしれないなあ、と思いました。「連結しなくてもいいけど資産負債はオンバランスしてくださいね」、と。
中国でビジネスするときは、中国サイドが株の過半数を持って合弁企業を設立することが多いと聞きました。なので、実態は外資側が運営してる工場でも持分法を適用してると思います。この分がリースとしてオンバランスされてくるかも?ですね。

その他、『ファブレス』を謳いながら実態は支配してる、そんなケースが該当するかもしれません。。が、言い逃れの余地はおおいにありそうですね。。
しかしこの基準の適用が徹底されたとしたら、ROAが下がる会社が出てきますね。。なるほど。。

トミーさん、おっしゃる通り、もしかしたら、航空会社のような一部の業界だけでなく、製造業というより大きな業界がターゲットかもしれませんね。「言逃れは時間の無駄、そんなことより経済実態を正確に把握したい」という経営の当たり前の意思に期待したいところです。

7月12日の記事に書いてありましたね。
航空会社ですね。スカイマークなんかは四季報だと有利子負債ゼロとなってるんですが、当然オペレーティングリースがどっさりあります。
いままで注記だったものがオンバランスされるかもよ、というくらいかもしれませんね。

光ファイバーの事例から類推するに、サーバーのレンタルなんかも該当するかもしれません。インターネット関連企業やクラウドサービスのクライアントなど。専用に設置したものがあるでしょうから。
20年とか長期契約のオフィス家賃がオペレーティングリースとして記載されてることもありますが、こういうのは従来通り注記かな。オンバランスすると逆に誤解を招く、なんてものもあるかもしれませんね。

先のコメントに書いたような製造業の提携工場のケースだと、資産額はわかるけどリース負債額が不明でしょうから、リースとして処理するのは難しいでしょう。専用の機械設備だったとしても。

トミーさん、よく読んでくださってありがとうございます。

考えてみると、リースはありそうでない、けど、なさそうである。なかなか油断禁物です。(^^;;

借主(顧客)側では「当社に(投資)リスクがあるか」という観点が、リース識別の着眼点になるように思います。取引を止めるとペナルティを要求される取引は、なぜペナルティが必要になるか、じっくり考えてみる必要がありそうです。解約不能オペレーティングリースはその典型ですね。負債額も、ペナルティの金額が参考になるようです。

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