290.【リースED】会計処理の概要
2014/5/7
2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。
2013/9/19
このシリーズをご覧のみなさんは、既に借主(=顧客)の会計処理についてかなりイメージができていらっしゃると思う。短期リースは従来の発生主義による費用計上が選択可能で、1年を超えるリースは、使用権資産とリース負債をB/Sに計上する。P/Lには、タイプAについては償却費と利息費用が逓減的に(=先に行くほど計上額が減少する)、タイプBについてはそれらを合算した単一のリース費用が概ね定額で計上される。
では、貸主は? 減損は? 使用する割引率は? 表示科目や注記は?
といったところが気になっていると思う。それとも、もうリースは厭きた、と思われているだろうか。そういえば、昨年の収益認識の公開草案では進行基準しか取上げなかったのに、今回は最初から細かくやっている。おかげでリースを始めて、もう2カ月半が経過した。
北半球の猛暑、豪雨、竜巻、山火事。そしてシリア化学兵器使用疑惑による緊張。これらも、同時期に始まって、もう落着こうとしている。そうそう、あまちゃんも、半沢直樹も最終回が近づいている。終わりが見えないのは、アベノミクスの成長戦略の議論と福島第一原発の汚染水、日中韓の緊張ぐらいか。そしてこの「リースED」シリーズ。
ということで、ちゃっちゃと話を進め、今月中には終わりたい。
さて、それでは貸主の会計処理について、簡単に借主と対比してみよう。それには次のような表があると便利だ。概ね、対になっているが、そうでない部分が浮き上がってくる。なかでも茶の太文字の2か所が注目のような気がするが、いかがだろうか。だが、具体的には、次回以降としたい。
|
|
借主 |
貸主 |
B/S |
資産 |
使用権資産 |
(タイプA) (タイプBの規定はない) |
|
負債 |
リース負債 一定の場合は評価を見直す。原則相手勘定は使用権資産。割引の巻戻しは毎期実施。
|
(該当なし) |
P/L |
タイプA |
使用権資産の償却 割引の巻戻し(金利費用) |
貸主の事業モデルを適切に反映する方法 割引の巻戻し(金利収益) |
|
タイプB |
単一のリース費用
|
定額ベース又は別の規則的方法 |
減損 |
|
他のIFRS(資産の減損)の規程による
|
他のIFRS(金融資産の減損、資産の減損)の規程による |
割引率 |
|
貸主が借主に課す利率 |
同左 |
|
見直し
|
一定の場合のみ |
同左 |
=参考== |
==== |
======== |
======== |
リース期間 |
見直し |
一定の場合のみ |
同左 |
分類 |
見直し |
しない |
同左 |
※1 貸主には、原資産をリース期間終了後に取戻す権利が残存しているので、それに相当する資産。
上記以外にも、なにを使用権資産に含めるか、とか、リース負債に含まれる項目にどういうものがあるかなど、色々規定があるが、このブログでは触れないと思う。また、詳細な注記やB/Sの表示方法の選択など規定もあるが、これらについても触れないと思う。公開草案が確定したら、取上げるかもしれない。
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はじめまして、会計学の初心者です。
貸手における「割引の巻戻し(金利収益)」についてよく分からないですが、ご教授していただけませんでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: nnzz | 2014年6月 9日 (月曜日) 18時37分
nnzzさん、はじめまして。質問をありがとうございます。そうですね、これ分かりにくいですね。
「割引の巻戻し」というのは、「割引いて減額したものを、元へ戻していくこと」です。“巻戻し”というのは、割引を取り消していくようなイメージですね。
例えば、5年後に100万円の収入が得られる債権(割引現在価値を80万円とする)があるとします。今は80万円でB/Sに計上されますが、回収期日直前の決算では100万円に戻されますね。回収期間(=割引期間)が短くなるにつれて、債権の現在価値が段々上がって、最終的に100万円に戻ります(現在価値が増える分は、受取利息が発生したと考えます)。これが割引の巻戻しです。
また、次のように考えるのもよいと思います。5年後の100万円は、実は元本80万円と利息20万円であると。今後5年間複利で受取利息が発生する(=利息は元本に加えていく)と、最終的には元利合わせて100万円の債権となります。これも、いったん80万円に割引いたものを、元に戻していくこと(=巻戻し)なので、上と同じことです。
リース債権の場合は、この例のような一括回収の返済条件ではなく分割返済なので、その分計算が複雑ですが、“割引の巻戻し”の原理は同じです。
こんな説明で良いでしょうか?
2013/9/10の記事「287.【リースED】リースの分類方法⇒訂正あり!」も参考にしていただけるとありがたいです。
投稿: はみだし | 2014年6月 9日 (月曜日) 19時42分