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2013年9月27日 (金曜日)

293.【リースED】貸手の会計処理ータイプAに自由なし

2013/9/27

前回(9/26)の記事では、このシリーズの前々回(9/19)の記事の会計処理の表から、貸手と借手で非対称になっていると思われるものを2点リストアップし、そのうちの①について検討した。そして、不動産の大家さんは、B/Sの表現について選択肢を与えられているが、それは大家さんの経営戦略を適切に表現するためと考えるのが良いのではないか、というのが僕の結論だった。今回は、もう一方の②についてだ。

 

② 貸手のP/Lの処理は、タイプBについては借手の処理と概ね対称になっているが、タイプAについては「貸手の事業モデルを適切に反映する方法」と記載されているのみ。

 

「貸手の事業モデルを適切に反映する方法」とは、原則主義のIFRSらしい。基本的に僕はこういう大雑把な表現が好きだ。だが、タイプAの借手のP/Lの会計処理にはこのような選択の自由、或いは、経済実態の多様性は認められておらず、ただ減価償却費と利息費用を計上することになっている。なぜ、貸手の側には自由、或いは、多様性が認められているのか。

 

ということで、今回は、この背景になっている貸手の事業モデル、経済実態がどんなものなのかを考えてみたい。

 

結論からいえば、規程の書き方は大雑把だが、この公開草案は貸手に会計処理の選択の自由を認めていない。しかし、貸手の経済実態や事業モデルについて一定の多様性は認めているので、P/Lの表示についてのみ、状況に応じた適切な方法の選択を貸手に対して要求している。しかし、選択といっても、ほとんど判断の介入する余地はない。よって、借手にも自由はないが、貸手にも自由はない。結局両者の会計処理は、この意味で対称的だ。

 

 

それではまず、この「貸手の事業モデルを適切に反映する方法」が記載されているこの公開草案の91項を詳しく見てみよう。

 

91  貸手は、開始日に認識された利益又は損失があれば、貸手の事業モデルを最も適切に反映する方法(注:原文は太字ではない)で表示しなければならない。表示の例として、次のものがある。

 

(a) 貸手が販売により物品から価値を実現する代替的手段としてリースを使用している場合には、貸手は、リース活動に関連した収益及び売上原価を独立の表示科目に表示して、売却した項目とリースした項目から生じた収益及び費用を整合的に表示するようにしなければならない。

 

(b) 貸手が融資を提供する目的でリースを使用している場合には、貸手は当該損益を単一の表示科目で表示しなければならない。

 

この91項は、「貸手」の「タイプAのリース」の「表示」とタイトルされているブロックの中にある。したがって、僕は「貸手のP/L処理」と書いているが、正確には「P/Lにおける表示科目の使い方」について、「事業モデルを適切に反映する方法にせよ」といっているに過ぎない。

 

だが、会計処理といえば、「受取リース料を、いつ、いくらで、記帳するか」ということだから、「P/Lにおける表示科目の使い方」以外に、受取リース料の期間配分の方法(借手でいうところの減価償却方法の選択のようなもの)の規程があってもよさそうである。

 

例えば、日本基準でいえば、リース適用指針の51項がこれに当たる。この51項は、ファイナンス・リースの貸手の会計処理を規定しており、(1)リース開始日に売上・売上原価に計上する方法、(2)リース料受取時に売上・売上原価を計上する方法、(3)売上を計上せず利息収入を各期へ配分する方法、の3つから取引の実態に合ったものを選択するとしている。

 

もう少し詳しく書くと、日本基準は次のような状況を想定して、3つの会計処理の選択を認めている。

 

(1)リース開始日に売上・売上原価に計上する方法

 

コピー機リースを例に考えてみよう。まず、コピー機メーカーの地域サービス子会社が、顧客とリース契約を締結するケースだ。コピー機メーカーは子会社に対し売上を計上し、子会社はそれを顧客に貸与し、リース期間にリース料を受取る。ただ、連結ベースでみると、コピー機メーカーが顧客に延払いでリース機を販売したのと非常によく似た経済実態がある。このような場合、連結ベースでは、リース開始日に売上・売上原価を計上する方法が採用される(可能性がある)。この方法では、コピー機の販売利益がリース開始日に一括計上されるが、(受取)利息相当分は各期へ配分される。

 

(2)リース料受取時に売上・売上原価を計上する方法

 

上の例で、地域サービス会社が、特定メーカーの系列に属さず、複数のメーカーから顧客の要望に応じてコピー機を仕入れることができるとしよう。地域サービス会社は、このリース契約と同時に締結されるメンテナンス契約(コピー機の修理や、コピー用紙・インクなどの消耗品の供給)によって、顧客と継続的な関係を維持し、そこからメインの利益を得ている。このような場合は、(1)のような物品販売とは異なり、顧客との継続的な関係を維持するサービス提供がメインなので、リース期間にわたり、リース料を受取る都度、売上・売上原価を計上する方法が採用される(可能性がある)。この方法では、(もしあれば)コピー機の販売利益もリース期間にわたって計上され、かつ、(受取)利息相当分も各期へ配分される。

 

(3)売上を計上せず利息収入を各期へ配分する方法

 

上の例で、顧客が既にコピー機のメーカー・機種を決定していて、価格交渉も完了しているが、その対価を延払いしたいと希望しているとする。しかし、メーカーが長期の与信を嫌うので、メーカーから直接購入せず、間にリース会社に入ってもらう場合がある。このようなリース会社の利益は、この顧客に与信を与えた対価を含む利息収入となる。よって、利息収入を各期へ配分する方法を採用する。この事業モデルでは、上の2つにあるコピー機の販売利益は存在しないため、売上と売上原価に相当する部分はちょうど相殺消去され、(受取)利息相当分のみが各期へ配分される。

 

なお、上記(1)(2)については、「採用される(可能性がある)」と書いたが、この両者は、現実には上記のような事業モデルに紐付く厳密な選択になってないと思うので、このように書いた。

 

これと同じような選択、即ち、販売利益をいつ計上するか、或いは、販売利益がない場合の選択が、この公開草案ではできるのだろうか。もしこれができないとすると、自由がないどころか、多様な事業モデルを画一的に表現することになり、上記のような経済実態を適切に表現できなくなるのではないか。

 

ということで、これらを、この公開草案がどのように扱っているか見ていこう。

 

これも結論からいうと、この公開草案は選択を認めていない。だが、規定された手続きを進めていくと、(1)(3)が自動的に分かれていく。(2)については、2011年の収益認識の公開草案でも物品販売としては容認されていない処理なので、自動的に(1)に相当する処理へ導かれていく(あるとしても、例のタイプBの“ささいな”ケースであり、今回の検討の対象外)。

 

即ち、事業モデルについて一定の多様性は認めるが、その表現(=会計方針)を選択させるのではなく、自然とあるべき表現になっていくという規定の仕方をしている。そして、P/Lの表示方法についてのみ、選択の形式を残している。

 

まず、次の68項を見て欲しい。これは、「貸手」の「タイプAのリース」の「認識」というタイトルの直後にある。

 

68  開始日において、貸手は下記のすべてを行わなければならない。

 

(a) 原資産の帳簿価額の認識の中止(過去に認識している場合)

(b) リース債権の認識

(c) 残存資産の認識

(d) リースに生じた損益があれば、純損益に認識(第74 項に記述)

 

なにやら難しい書き方だが、要は、リース開始日に物品販売の仕訳をしなさいと言っている。(d)の「リースに生じた損益」に、物品販売利益が含まれる。

 

次に、(d)に指示されている74項を見てみよう。これは、上記68項と同じ「貸手」の「タイプAのリース」の、「利益」というタイトルのブロックにある。

 

74  貸手は、リースに関して開始日に認識する利益を、開始日直前の原資産の公正価値と帳簿価額の差額に、リース料総額の現在価値(貸手が借手に課す利率で割り引く)を乗じて、原資産の公正価値で除した金額として計算しなければならない。

 

これは、上記の例でいう物品の販売利益の計算方法を規定している。リースの場合、リース期間後に原資産が貸手に戻ってくる(=残存資産)。その残存資産は、さらに別の借手に貸して利益を上げたり、処分することで売却利益を獲得できる。今回のリースで認識する利益(=開始日に認識する利益)からは、このような残存資産の利益を除かなければならない。その計算を次のように指示している。

 

(現金販売価格-製品原価)xリース料総額の現在価値/現金販売価格

 

「現金販売価格=リース料総額の現在価値+残存資産(の現在価値)」だから、粗利を、今回のリースと残存資産へ、それぞれの現在割引価値の比率で按分することになる。

 

ということで、販売利益はすべてリース開始日に計上されるので、日本基準の(2)のように、リース期間にわたって計上することはできない。

 

一方、利息相当分はどうなるかというと、上記とは別に、リース債権の割引の巻戻しによって認識する。割引の巻戻しについては、9/10の記事で説明したので、必要に応じてご覧いただきたいが、9/10の記事では、リース負債から生じる利息費用としての説明だった。貸手の場合は、逆にリース債権の期間が年々短くなることで、利息収入が発生する。

 

この公開草案では、このように販売に係るものと、財務要素に係るものを区別して整理している。この考え方は、2011年の収益認識の公開草案とも、金融商品の規準とも、整合している。これによって、上記日本のケースの(1)(3)は、自動的に分類・対応されることになる。

 

即ちリースは、物品販売的な要素と、残存資産と、財務要素の3つに分解され、物品販売的な要素のあるものは、リース開始時点で残存資産分を除いた販売利益を認識し、それとは別に財務要素に係る利益がリース期間にわたって毎期計上される。一方、物品販売的な要素のないリース(=原資産の簿価とその公正価値が等しいケース)は、財務要素に係る利益のみがリース期間にわたって毎期計上される。これらは、手続きを進めていくと、事業モデルの内容を意識しなくても、自動的にそうなっていく。

 

そして、冒頭の91項のP/Lの表示方法の規程で初めて、事業モデルの内容を意識し、その経済実態に合った表示方法を選択することになる。しかし、選択するといっても、手続きを進めていく過程で、既に分類されているので、(例外はありえるが)普通はもう決まっている。

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