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2013年9月

2013年9月27日 (金曜日)

293.【リースED】貸手の会計処理ータイプAに自由なし

2013/9/27

前回(9/26)の記事では、このシリーズの前々回(9/19)の記事の会計処理の表から、貸手と借手で非対称になっていると思われるものを2点リストアップし、そのうちの①について検討した。そして、不動産の大家さんは、B/Sの表現について選択肢を与えられているが、それは大家さんの経営戦略を適切に表現するためと考えるのが良いのではないか、というのが僕の結論だった。今回は、もう一方の②についてだ。

 

② 貸手のP/Lの処理は、タイプBについては借手の処理と概ね対称になっているが、タイプAについては「貸手の事業モデルを適切に反映する方法」と記載されているのみ。

 

「貸手の事業モデルを適切に反映する方法」とは、原則主義のIFRSらしい。基本的に僕はこういう大雑把な表現が好きだ。だが、タイプAの借手のP/Lの会計処理にはこのような選択の自由、或いは、経済実態の多様性は認められておらず、ただ減価償却費と利息費用を計上することになっている。なぜ、貸手の側には自由、或いは、多様性が認められているのか。

 

ということで、今回は、この背景になっている貸手の事業モデル、経済実態がどんなものなのかを考えてみたい。

 

結論からいえば、規程の書き方は大雑把だが、この公開草案は貸手に会計処理の選択の自由を認めていない。しかし、貸手の経済実態や事業モデルについて一定の多様性は認めているので、P/Lの表示についてのみ、状況に応じた適切な方法の選択を貸手に対して要求している。しかし、選択といっても、ほとんど判断の介入する余地はない。よって、借手にも自由はないが、貸手にも自由はない。結局両者の会計処理は、この意味で対称的だ。

 

 

それではまず、この「貸手の事業モデルを適切に反映する方法」が記載されているこの公開草案の91項を詳しく見てみよう。

 

91  貸手は、開始日に認識された利益又は損失があれば、貸手の事業モデルを最も適切に反映する方法(注:原文は太字ではない)で表示しなければならない。表示の例として、次のものがある。

 

(a) 貸手が販売により物品から価値を実現する代替的手段としてリースを使用している場合には、貸手は、リース活動に関連した収益及び売上原価を独立の表示科目に表示して、売却した項目とリースした項目から生じた収益及び費用を整合的に表示するようにしなければならない。

 

(b) 貸手が融資を提供する目的でリースを使用している場合には、貸手は当該損益を単一の表示科目で表示しなければならない。

 

この91項は、「貸手」の「タイプAのリース」の「表示」とタイトルされているブロックの中にある。したがって、僕は「貸手のP/L処理」と書いているが、正確には「P/Lにおける表示科目の使い方」について、「事業モデルを適切に反映する方法にせよ」といっているに過ぎない。

 

だが、会計処理といえば、「受取リース料を、いつ、いくらで、記帳するか」ということだから、「P/Lにおける表示科目の使い方」以外に、受取リース料の期間配分の方法(借手でいうところの減価償却方法の選択のようなもの)の規程があってもよさそうである。

 

例えば、日本基準でいえば、リース適用指針の51項がこれに当たる。この51項は、ファイナンス・リースの貸手の会計処理を規定しており、(1)リース開始日に売上・売上原価に計上する方法、(2)リース料受取時に売上・売上原価を計上する方法、(3)売上を計上せず利息収入を各期へ配分する方法、の3つから取引の実態に合ったものを選択するとしている。

 

もう少し詳しく書くと、日本基準は次のような状況を想定して、3つの会計処理の選択を認めている。

 

(1)リース開始日に売上・売上原価に計上する方法

 

コピー機リースを例に考えてみよう。まず、コピー機メーカーの地域サービス子会社が、顧客とリース契約を締結するケースだ。コピー機メーカーは子会社に対し売上を計上し、子会社はそれを顧客に貸与し、リース期間にリース料を受取る。ただ、連結ベースでみると、コピー機メーカーが顧客に延払いでリース機を販売したのと非常によく似た経済実態がある。このような場合、連結ベースでは、リース開始日に売上・売上原価を計上する方法が採用される(可能性がある)。この方法では、コピー機の販売利益がリース開始日に一括計上されるが、(受取)利息相当分は各期へ配分される。

 

(2)リース料受取時に売上・売上原価を計上する方法

 

上の例で、地域サービス会社が、特定メーカーの系列に属さず、複数のメーカーから顧客の要望に応じてコピー機を仕入れることができるとしよう。地域サービス会社は、このリース契約と同時に締結されるメンテナンス契約(コピー機の修理や、コピー用紙・インクなどの消耗品の供給)によって、顧客と継続的な関係を維持し、そこからメインの利益を得ている。このような場合は、(1)のような物品販売とは異なり、顧客との継続的な関係を維持するサービス提供がメインなので、リース期間にわたり、リース料を受取る都度、売上・売上原価を計上する方法が採用される(可能性がある)。この方法では、(もしあれば)コピー機の販売利益もリース期間にわたって計上され、かつ、(受取)利息相当分も各期へ配分される。

 

(3)売上を計上せず利息収入を各期へ配分する方法

 

上の例で、顧客が既にコピー機のメーカー・機種を決定していて、価格交渉も完了しているが、その対価を延払いしたいと希望しているとする。しかし、メーカーが長期の与信を嫌うので、メーカーから直接購入せず、間にリース会社に入ってもらう場合がある。このようなリース会社の利益は、この顧客に与信を与えた対価を含む利息収入となる。よって、利息収入を各期へ配分する方法を採用する。この事業モデルでは、上の2つにあるコピー機の販売利益は存在しないため、売上と売上原価に相当する部分はちょうど相殺消去され、(受取)利息相当分のみが各期へ配分される。

 

なお、上記(1)(2)については、「採用される(可能性がある)」と書いたが、この両者は、現実には上記のような事業モデルに紐付く厳密な選択になってないと思うので、このように書いた。

 

これと同じような選択、即ち、販売利益をいつ計上するか、或いは、販売利益がない場合の選択が、この公開草案ではできるのだろうか。もしこれができないとすると、自由がないどころか、多様な事業モデルを画一的に表現することになり、上記のような経済実態を適切に表現できなくなるのではないか。

 

ということで、これらを、この公開草案がどのように扱っているか見ていこう。

 

これも結論からいうと、この公開草案は選択を認めていない。だが、規定された手続きを進めていくと、(1)(3)が自動的に分かれていく。(2)については、2011年の収益認識の公開草案でも物品販売としては容認されていない処理なので、自動的に(1)に相当する処理へ導かれていく(あるとしても、例のタイプBの“ささいな”ケースであり、今回の検討の対象外)。

 

即ち、事業モデルについて一定の多様性は認めるが、その表現(=会計方針)を選択させるのではなく、自然とあるべき表現になっていくという規定の仕方をしている。そして、P/Lの表示方法についてのみ、選択の形式を残している。

 

まず、次の68項を見て欲しい。これは、「貸手」の「タイプAのリース」の「認識」というタイトルの直後にある。

 

68  開始日において、貸手は下記のすべてを行わなければならない。

 

(a) 原資産の帳簿価額の認識の中止(過去に認識している場合)

(b) リース債権の認識

(c) 残存資産の認識

(d) リースに生じた損益があれば、純損益に認識(第74 項に記述)

 

なにやら難しい書き方だが、要は、リース開始日に物品販売の仕訳をしなさいと言っている。(d)の「リースに生じた損益」に、物品販売利益が含まれる。

 

次に、(d)に指示されている74項を見てみよう。これは、上記68項と同じ「貸手」の「タイプAのリース」の、「利益」というタイトルのブロックにある。

 

74  貸手は、リースに関して開始日に認識する利益を、開始日直前の原資産の公正価値と帳簿価額の差額に、リース料総額の現在価値(貸手が借手に課す利率で割り引く)を乗じて、原資産の公正価値で除した金額として計算しなければならない。

 

これは、上記の例でいう物品の販売利益の計算方法を規定している。リースの場合、リース期間後に原資産が貸手に戻ってくる(=残存資産)。その残存資産は、さらに別の借手に貸して利益を上げたり、処分することで売却利益を獲得できる。今回のリースで認識する利益(=開始日に認識する利益)からは、このような残存資産の利益を除かなければならない。その計算を次のように指示している。

 

(現金販売価格-製品原価)xリース料総額の現在価値/現金販売価格

 

「現金販売価格=リース料総額の現在価値+残存資産(の現在価値)」だから、粗利を、今回のリースと残存資産へ、それぞれの現在割引価値の比率で按分することになる。

 

ということで、販売利益はすべてリース開始日に計上されるので、日本基準の(2)のように、リース期間にわたって計上することはできない。

 

一方、利息相当分はどうなるかというと、上記とは別に、リース債権の割引の巻戻しによって認識する。割引の巻戻しについては、9/10の記事で説明したので、必要に応じてご覧いただきたいが、9/10の記事では、リース負債から生じる利息費用としての説明だった。貸手の場合は、逆にリース債権の期間が年々短くなることで、利息収入が発生する。

 

この公開草案では、このように販売に係るものと、財務要素に係るものを区別して整理している。この考え方は、2011年の収益認識の公開草案とも、金融商品の規準とも、整合している。これによって、上記日本のケースの(1)(3)は、自動的に分類・対応されることになる。

 

即ちリースは、物品販売的な要素と、残存資産と、財務要素の3つに分解され、物品販売的な要素のあるものは、リース開始時点で残存資産分を除いた販売利益を認識し、それとは別に財務要素に係る利益がリース期間にわたって毎期計上される。一方、物品販売的な要素のないリース(=原資産の簿価とその公正価値が等しいケース)は、財務要素に係る利益のみがリース期間にわたって毎期計上される。これらは、手続きを進めていくと、事業モデルの内容を意識しなくても、自動的にそうなっていく。

 

そして、冒頭の91項のP/Lの表示方法の規程で初めて、事業モデルの内容を意識し、その経済実態に合った表示方法を選択することになる。しかし、選択するといっても、手続きを進めていく過程で、既に分類されているので、(例外はありえるが)普通はもう決まっている。

2013年9月26日 (木曜日)

292.【リースED】貸主の会計処理-大家さんの経営戦略の適切な表現

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容の一部は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/9/26

このシリーズの前回(9/19の記事)では、借主と貸主の会計処理を表にしてみた。その結果、次の2点が非対称になっていると思われた。

 

① 借主については、タイプAとBの両方について、(使用権資産と)リース負債をB/Sに計上するのに対し、貸主については、タイプAでは借主の処理に見合ったリース資産(=リース債権+残存資産)を計上するが、タイプBのB/Sの処理には特に定めがない。

 

② 貸主のP/Lの処理は、タイプBについては借主の処理と概ね対称になっているが、タイプAについては「貸主の事業モデルを適切に反映する方法」と記載されているのみ。

 

このように、借主と貸主の会計処理には非対称の部分がある。特に貸主に対して、IASBは自由や多様性を認めているかのように見える。IFRSには経済実態を忠実に表現するという基本的な質的特性があるから、自由や多様性を認めているのであれば、そうすべき経済実態があるということなのだろうか。

 

今回から、そこに如何なる経済実態があるのか、或いは、経済実態ではなく他の理由によるものか、そして、借主にはそれがないのか、について考えてみたい。今回はまず、①のタイプBの貸主のB/Sについて。

 

今回の結論としては、タイプBのB/Sの表現(=会計処理)について、不動産賃貸の貸主には、公正価値モデルか原価モデルかを選択する自由がある。賃貸用不動産には、投資不動産(IAS40)の規定が適用されるからだ。IAS40の結論の根拠には、公正価値モデルの方が好ましいが、B/Sに計上するほどの信頼できる公正価値が計算できないなどの実際の制約から原価モデルの選択肢が残されているような感じのことが書いてある。しかし、僕は、選択肢があるのは貸主の事業モデルの差ではないかと思う。

 

即ち、公正価値モデルが相応しい貸主の事業モデルと、原価モデルが相応しい貸主の事業モデルがあり、企業が自らの事業モデルをどちらに分類しているかで、会計方針が決定される。そう思った方が、この公開草案を前向きに捉えられると思っている。

 

不動産賃貸以外のタイプBの貸主については、従来のオペレーティング・リースと同様の処理が継続される。但し、あまり重要な取引はなさそうだ。

 

ということで、以下で、より詳細に検討してみよう。

 

 

今まで見てきたように(9/13の記事など)、タイプBは、概ね不動産賃貸に適用される。不動産の貸主といえば“大家さん”だから「大家さんの財政状態が忠実に表現されるにはどのようなB/Sであれば良いか」というのが今回のメイン・テーマだ。ところが、①に記載したように、この公開草案には、大家さんのB/Sの処理については記載がない。

 

実際には、93項に「貸手は、リース料をリース期間にわたりリース収益として純損益に認識しなければならない。」などと、そして96項に「貸手は、タイプBのリースの対象となっている原資産の測定及び表示を、他の該当する基準に従って継続しなければならない。」とは書いてあるが、これだけ読むと、何も書いてないに等しいと思ってしまう。即ち、大家さんは、普通に有形固定資産の会計処理(IAS16)を適用すればよいのではないか、と。

 

ところが、この「他の該当する基準」が、主にIAS40「投資不動産」であることに気付くと、相当に印象が変わる。この規準は、賃貸不動産等を「投資不動産」と呼び、会計方針として公正価値モデルと原価モデルを用意し、いずれかを大家さんに選択させる。原価モデルを選択した場合でも、公正価値の注記が必要になるので、いずれの場合も賃貸不動産について、(できる限り)公正価値を計算しなければならない(IAS40.3253)。

 

IAS40は、この公開草案の影響による変更が多数に及ぶので、その変更案もこの公開草案の末尾に添付されている。その5項では、投資不動産の定義は次の通りとされている。

 

投資不動産とは、次の目的を除き、賃貸収益若しくは資本増価又はその両方を目的として(所有者又はリースの借手が)保有する(土地若しくは建物又は建物の一部又はそれら両方の)不動産をいう。

 

除かれる「次の目的」の不動産とは、仕掛不動産を含む販売用不動産と、生産活動や営業活動などで使用する自己使用不動産(従業員社宅用賃貸不動産を含む)だ。これら以外はすべて投資不動産に含まれる。

 

さらに、上記の投資不動産の定義では、「…リースの借手…が保有する…不動産」も対象となっている。これは、主に転貸不動産(=リースの借手がさらに又貸しする不動産、使用権資産)のことだ。

 

ということで、投資不動産には、転貸の大家さんも含めた大家さんが保有する賃貸用不動産が含まれることになる。これらは、この公開草案で原則タイプBに分類されるが、残存耐用年数や公正価値などの例外規定に該当するとタイプAになるものもある(293031項。或いは9/10の記事の表)。

 

 

以上をまとめると、大家さんの財政状態を表現する会計処理・会計方針は、次のように整理できる。

 

           
 

タイプBの賃貸不動産

 
 

「公正価値モデル」か
    「原価モデル+公正価値の注記」の選択

 
 

タイプAの賃貸不動産
    (例外規定に該当したもの)

 
 

リース資産(=リース債権+残存資産)

 
 

転貸不動産(使用権資産)

 
 

「公正価値モデル」か
    「リース資産(=リース債権+残存資産)」の選択

 

 

投資不動産の会計方針の選択、公正価値モデルや原価モデルの適用については、IAS40の30-56項に記載されている(上述したように、この公開草案にも変更案が添付されている)。

 

公正価値モデルは公正価値でB/S計上し、その変動を純損益とする会計方針(リース収益は別途純損益に計上)。原価モデルは取得原価でB/S計上し、お馴染みの減価償却と減損を行う会計方針で、IAS16「有形固定資産」で規定されている。

 

リース資産とは、リース債権の回収キャッシュ・フローや返還された賃貸資産のその後の運用・処分キャッシュ・フローを現在価値に割引いたものであり、計算の形式は、市場価格のない資産の公正価値を見積る方法に似ている。参考までに、公正価値と異なる点を以下に記載する。

 

・公正価値には売却時の利益を含むが、リース資産の残存資産の見積りでは利益相当額が控除される。

 

・理論上、公正価値の見積りの方が、より客観性が高いと位置付けられている。(使用価値は、その会社固有の見積りだが、公正価値は、理論上、市場の見積り、独立した第三者による見積りとされている。)

 

・公正価値は毎期見直し変動分を純損益に計上するが、リース資産で毎期見直されるのは割引の巻戻しと減損テストだけ。(一定の場合以外は、リース資産の見積りにおけるリース料総額や割引率などの見直しは行われない。)

 

こうしてみると、大家さんの財政状態について表現するときに、次の3つのタイプの経済実態が想定されているように思われる。(下表の「~タイプ」という名称は、僕が勝手に付けたもの。)

 

                 
 

公正価値タイプ

 
 

タイプB及び転貸不動産の一部

 
 

公正価値モデルの適用が適切な経済実態

 
 

原価タイプ

 
 

タイプBの一部

 
 

原価モデルの適用が適切な経済実態

 
 

リース資産タイプ

 
 

タイプAと、転貸不動産の一部

 
 

リース資産の計上が適切な経済実態がある

 

 

 

さて、公正価値とは、「測定日時点で、市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取るであろう価格」(IFRS13.9から抜粋)、平たく言えば「時価」だ。しかし、時価をB/S価額にした方が適切な表現になるような経済実態、即ち、上表の公正価値タイプとは、一体どんなものだろうか。そもそも、そんなものは本当にあるのか? という疑問が浮かぶ。

 

それについては、まず、次の事実を上げておきたい。

 

・債権者として、銀行は、不動産会社が保有する投資不動産の時価を確認する。

・投資家は、地価が上がると上場不動産会社の株を買う(株価が上がる)。

 

確かに、不動産会社の投資不動産の時価は重要な財務情報だ。だが、これだけのことなら、原価モデルによる公正価値額の注記情報があれば十分だ。公正価値モデルによって、公正価値の変動を純損益に計上するような会計処理までは必要ないと思う。

 

しかし、債権者や投資家より重要な会計の利用者がいる。それはその会社自身、或いは、その会社の経営者だ。会社や経営者にとっては、どうなのだろうか。

 

もし、経営者が、投資不動産を公正価値評価した方が適切と考える場合があるとすれば、経営努力が、或いは、経営戦略が、投資不動産の時価に重大な影響を与えることを目指している場合だろうと思う。経営努力や経営戦略の成果を測定・評価をするのに、発生主義による不動産収益と原価モデルによる減価償却と減損では不十分で、不動産価値の上昇にも目を向ける必要があると考える場合だ。

 

だが、時価は、通常市場参加者の需給で決まるものであり、その変動は、会社の外部の出来事だ。それをその会社の経営努力だとか、経営戦略の成果だとかと、言い得るものなのだろうか。そんなことを目指している会社はあるのだろうか。

 

そこで僕は、大手不動産会社のホームページを何社か閲覧してみた。以下は、経営方針や中長期計画などから気になったところを抜き出したものだが、特に、オレンジ色にしたところに注目していただくと、投資不動産の価値を上げることが、経営的に強く意識されていると想像できる。(以下、五十音順。)

 

 (住友不動産)

基本使命

より良い社会資産を創造し、それを後世に残していく

 

 (三井不動産)

GROUP STATEMENT

都市に豊かさと潤いを

 

主要な取り組み(の一部)

街づくりの推進

「多機能、多彩なコンテンツの融合」、「コミュニティの創造」、「経年優化」の好循環による付加価値の高い街づくりを基本姿勢としつつ、・・・

 

 (三菱地所)

トップメッセージ(の末尾)()

・・・そして、当社グループの全ての行動のベースにはコーポレートブランド・スローガンに掲げる「人を、想う力。街を、想う力。」に込められた価値創造への決意と不断の自己革新があります。

 

中期戦略(の一部)

丸の内地区の価値最大化

 

 (森ビル)

トップメッセージ(のタイトルの一部)

都市を創り、都市を育む

 

歴史(の冒頭)

森ビルの歩みは、今の感覚から言えば比較的小さな、1棟のビル建設からはじまりました。

やがてビル単独の「点的開発」は、複数の街路や街区を合わせた「面的開発」へ、そして「都市づくり」へと進みます。・・・

 

特徴的なのは、三井不動産や森ビルの「街」とか「都市」とか、自社の不動産物件に限らない、周辺地域を含めた“価値”にフォーカスしていることだ。住友不動産はそれを「社会的資産」と表現しているし、三菱地所は「丸の内地区の価値最大化」と、より直接的に公正価値をイメージさせるような表現をしている。これらの会社の経営成績を測る際に、不動産の公正価値の変動は必要ないだろうか。償却・減損後の簿価が付されたB/Sで、これらの会社の財政状態を表現できるだろうか。

 

不動産単体として、工場用の土地・建物を貸しているとか、物流センターとして賃貸しているといった場合は、経営上、その不動産への投資を回収できるかどうか、或いは、投資をどれだけ上回ってキャッシュ・フローを生み出せるかに着目すればよい。このような事業モデルでは、原価モデルの減価償却と減損会計で、投資回収管理をすれば良い。森ビルの言葉にある「点的開発」であれば、原価モデルが、経済実態を表現するのに適切だと思う。

 

しかし、上記の各社は、少なくともホームページを見る限り、その範囲を超えた目標を掲げて開発・運営している不動産があるようだ。即ち、公正価値モデルが、経済実態を表現するのに適切となるような事業モデルがあると、僕は思う。

 

以上が僕の考えだが、みなさんはいかが感じられただろうか。

 

最後に、上表にはもう一つ、「リース資産タイプ」という経済実態がある。これはどういうものかというと、そのリースの実態が、金融取引、或いは、資金調達の手段の提供であると見なされたケースだ。タイプAに分類された不動産リース(貸主側)と、転貸不動産(又貸しの貸主が計上する使用権資産)の一部が該当する。

 

 

さて、長くなって恐縮だが、実はもう一つ問題がある。それは、「不動産以外でタイプBに分類されたリースがもしあれば、その貸主はB/S上の処理をどうすれば良いか」という問題だ。9/13の記事でみたように、可能性は「ささい(些細)」だと思うが、全く否定することはできない。

 

公開草案には、上述した93項、96項の記述しかないので、その場合は、従来のオペレーティング・リースの処理と同様の、その原資産の種類に対応した会計処理を継続することになる。ちょっと肩すかしにあったような感じもするが、IASBも、不動産以外のタイプBにあまり重要性を感じていないのかもしれない。

2013年9月21日 (土曜日)

291.【東電決算】海江田経産相(当時)の責任

2013/9/21

恐ろしいニュースを目にしてしまった。ご覧になった方が多いと思うが、読売新聞が次のように報道している。

 

民主党の海江田代表は18日、東京電力福島第一原発事故の汚染水流出を防ぐ遮水壁を巡り、東電が事故直後の2011年6月、設置を検討しながら経営破綻の恐れがあるなどとして先送りを求めていたと語った。(YOMIURI ONLINE 9/18

 

当時、遮水壁に1000億円かかるとの試算も出ていたが、東電が「これを計上すれば破綻の不安を持たれる」ことを理由に先送りを要請し、海江田氏がそれを容認したのだという。続いて日経新聞が同日、当時首相補佐官だった馬淵澄夫氏が同様の証言を行ったと報じた。Googleで検索してみたところ、このニュースの封を切ったのは、朝日新聞のようだ。17日に、民主党政権幹部(当時)の話として報じている。

 

さて、何が“恐ろしい”のか。

 

上の記事に、海江田氏の言い訳(東電の主張)が書いてあるが、粉飾しようとする経営者、或いは、不正を隠蔽しようとする者と同じことを言っているのだ。僕も何度か聞いたことがある。「・・・だから、見逃してくれ」と。

 

・中長期的課題とすることを条件にした。

・東電が破綻すれば、被災者の賠償はどうなるかと考えた。

・国費を投入することは、「東電に責任を持たせるべきだ」という当時の世論では難しかった。

 

「何が同じか?」と思われるかもしれない。要するにこういうことだ。下の文章を、最初に()を外して読んでいただいて、次に()の中も合わせてご覧いただきたい。

 

1000億円の引当金追加計上という)情報開示を行えば、会社(東電)が大変なことになる。従業員が路頭に迷い、連鎖倒産する取引先も出るかもしれない(被災者の賠償ができないかもしれない)。倒産しないまでも、株主や投資家から経営者の責任を厳しく問われる(世論が怖い)。悪いことは直す(中長期的課題にする)から、今回だけは、情報開示を勘弁してくれ。

 

切羽詰まった経営者が、“ダメ元”で、監査人にこんなふうに懇願することがある。もちろん、これを容認してはダメだ。しかし、海江田氏はこれを聞き入れてしまった。監査人が粉飾決算を認めたのと同じことだ。粉飾を知りながら、適正意見の監査報告書を提出したカネボウの監査人がどうなったか。監査人個人だけの問題ではなく、その監査人が所属していた監査法人(当時の四大監査法人の一つ)が解体され、消滅した。

 

さて、現在は民主党の代表となっている海江田氏はどのように責任を取るつもりだろうか。民主党のホームページに、こんな記事が載っている。なんと、まったく反省がない。

 

「政府がしっかり前に出て財源も含めて責任を負うべき」汚染水問題で海江田代表(8/26)

 

監査人は、粉飾決算で損害を受けた株主・投資家に対して損害賠償責任を負う。それと同じで、海江田氏(或いは、民主党)も、追加支出する国費を一部率先して肩代わりしたらどうか。我々が納税者として、汚染水対策費用を負担するのはやむを得ないと思う。ただ、海江田氏も納税者として同じ割合の負担しかしないというは、違うのではないか。まあ、現実的な提案ではないが、海江田氏や民主党に、そういう緊張感が欲しい。

 

要するに、一時は国の指導者になろうかと目された人(野田氏が首相になった時の民主党代表選では、海江田氏が本命候補だった)でさえも、情報開示の重要性が分かっていないという事実が、僕には恐ろしい。汚染水問題の責任は、第一義的には東電にあるとしても、海江田氏も“連帯”責任者の一人だと思う。

 

 

情報開示を怠れば、悲惨な結末へつながる。知っている経営者は多いと思うが、国の指導者は?

 

東電は、2011/3期の決算で「継続企業の前提に重大な疑義がある」とは開示したが、何が重大な疑義であるか、非常に不明瞭な開示だった(2012/6/23の記事など)。ただ、福島第一原発の廃炉に関して見積もりきれない費用があるという趣旨のことは記載していた(災害損失引当金)。

 

しかし、1000億円と具体的に試算されている遮水壁は、見積りきれないわけではないから、最初から引当計上するか、最低でも2011/3期には注記として、その後は第1四半期から引当計上すべきであった。だが、その後僕がフォローしていた2012/3期の期末決算まで、追加引当てされた形跡がない。少なくとも、有価証券報告書等に明示されていない。そしてその翌期(2013/3期)からは、「継続企業」の注記もなくなった。恐らく、災害損失引当金の金額を見る限り、当年度の第1四半期報告書にも引当されてないのではないか。

 

結局、東電は汚染水問題を隠し通してきた。臭いものに蓋をする隠蔽体質、見たくない現実を避けて通る重大な欠陥のあるリスク管理体制は、相変わらず、と思わざるえない。そして、その体質・体制を温存させたのは、海江田経産相(当時)だ。

 

その結果、今月末に期末日を迎える第2四半期決算では、汚染水対策として1000億円では済まない金額の引当が必要になるかもしれない。国家予算の予備費が投入されるというが、すでに問題は拡大している。東電の廣瀬社長は「さらに1兆円を確保していく」と回答したとのこと(NHK NEWS WEB 9/19)。もしかしたら再開されるかもしれない「継続企業の前提」の注記の内容を含め、今度こそ、しっかり、明瞭な情報開示と決算をしてほしい。それでこそ、「リスクがコントロールされた状態」になる。

 

さらに東電は、9/19、福島第一原発5・6号機の廃止を決定するよう安倍首相から要請を受けた(上記 NHK NEWS WEBの同じ記事か、下記ロイターの記事)。廣瀬社長は年内に判断すると回答したそうだが、まさか“再稼働の可能性が全くない(ロイター 9/19)”5・6号機廃止の結論を、第3四半期決算まで先延ばしにする気ではあるまい。第2四半期決算で、この廃止費用も含めて開示するのが当然だ(ロイターの記事にある廃炉会計云々は損失を取戻す方法のことであり、可能なら未収計上、そうでなければ注記すればよい。総額で計上される損失引当額の見積りとは関係ないから、言い訳にならない)。まだ東電に当事者能力が残っているなら、しっかり決断してほしい。

 

もし、これが第2四半期で開示(引当、または、注記)されないのであれば、上記の1000億円と同じだ。そして今度は、茂木経産相、そして、安倍首相の指導力と情報開示姿勢が問われることになる。

 

 

2013年9月19日 (木曜日)

290.【リースED】会計処理の概要

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/9/19

このシリーズをご覧のみなさんは、既に借主(=顧客)の会計処理についてかなりイメージができていらっしゃると思う。短期リースは従来の発生主義による費用計上が選択可能で、1年を超えるリースは、使用権資産とリース負債をB/Sに計上する。P/Lには、タイプAについては償却費と利息費用が逓減的に(=先に行くほど計上額が減少する)、タイプBについてはそれらを合算した単一のリース費用が概ね定額で計上される。

 

では、貸主は? 減損は? 使用する割引率は? 表示科目や注記は?

 

といったところが気になっていると思う。それとも、もうリースは厭きた、と思われているだろうか。そういえば、昨年の収益認識の公開草案では進行基準しか取上げなかったのに、今回は最初から細かくやっている。おかげでリースを始めて、もう2カ月半が経過した。

 

北半球の猛暑、豪雨、竜巻、山火事。そしてシリア化学兵器使用疑惑による緊張。これらも、同時期に始まって、もう落着こうとしている。そうそう、あまちゃんも、半沢直樹も最終回が近づいている。終わりが見えないのは、アベノミクスの成長戦略の議論と福島第一原発の汚染水、日中韓の緊張ぐらいか。そしてこの「リースED」シリーズ。

 

ということで、ちゃっちゃと話を進め、今月中には終わりたい。

 

 

さて、それでは貸主の会計処理について、簡単に借主と対比してみよう。それには次のような表があると便利だ。概ね、対になっているが、そうでない部分が浮き上がってくる。なかでも茶の太文字の2か所が注目のような気がするが、いかがだろうか。だが、具体的には、次回以降としたい。

 

                                                                                       
 

 

 
 

 

 
 

借主

 
 

貸主

 
 

B/S

 
 

資産

 
 

使用権資産

 
 

(タイプA)
    リース資産(=リース債権+残存資産
1
    一定の場合は評価を見直し、差額は純損益。
    割引の巻戻しは毎期実施。

 

(タイプBの規定はない)

 
 

 

 
 

負債

 
 

リース負債

 

一定の場合は評価を見直す。原則相手勘定は使用権資産。割引の巻戻しは毎期実施。

 

 

 
 

 

 

  (該当なし)

 
 

P/L

 
 

タイプA

 
 

使用権資産の償却

 

割引の巻戻し(金利費用)

 
 

貸主の事業モデルを適切に反映する方法

 

割引の巻戻し(金利収益)

 
 

 

 
 

タイプB

 
 

単一のリース費用

 

 

 
 

定額ベース又は別の規則的方法

 
 

減損

 
 

 

 
 

他のIFRS(資産の減損)の規程による

 

 

 
 

他のIFRS(金融資産の減損、資産の減損)の規程による

 
 

割引率

 
 

 

 
 

貸主が借主に課す利率

 
 

同左

 
 

 

 
 

見直し

 

 

 
 

一定の場合のみ

 
 

同左

 
 

=参考==

 
 

====

 
 

========

 
 

========

 
 

リース期間

 
 

見直し

 
 

一定の場合のみ

 
 

同左

 
 

分類

 
 

見直し

 
 

しない

 
 

同左

 

 

1 貸主には、原資産をリース期間終了後に取戻す権利が残存しているので、それに相当する資産。

 

上記以外にも、なにを使用権資産に含めるか、とか、リース負債に含まれる項目にどういうものがあるかなど、色々規定があるが、このブログでは触れないと思う。また、詳細な注記やB/Sの表示方法の選択など規定もあるが、これらについても触れないと思う。公開草案が確定したら、取上げるかもしれない。

2013年9月17日 (火曜日)

289.【リースED】“タイプB”への反対意見(代替的見解)⇒訂正あり!

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容の一部は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/9/178時過ぎに末尾の赤文字の部分を訂正しましたので、その前に読まれた方はご確認ください。

僕の印象では、この公開草案には反対意見(代替的見解)が多い。しかも、リースの分類及びタイプBへ批判が集中している。反対意見(代替的見解)とは、公開草案や確定後の各IFRSの「結論の根拠」の末尾に記載された、公表へ反対票を投じたIASBメンバーの見解だ(このリースのようにFASBとの合同プロジェクトの場合は、FASBメンバーの反対意見も記載される)。今回は、これらを理解することが特に重要と思うので、ちょっと立ち寄っていきたい。

 

(今回のポイント)

 

★ 分類原則(=分類に関する規定)には、リースの本質、償却方法や利息費用の会計処理の合理性、規準運用などの面から、IASB・FASB両審議会メンバーの反対意見がある。批判はタイプBの分類方法や借手の会計処理に集中しており、タイプBの範囲の縮小や廃止が求められている。(今回は取上げないが、タイプBの貸手の会計処理への批判も多い。)

 

★ これらは、将来、規準を実際に理解し運用する際に、財務諸表の読者や監査人の注目を浴びやすい。特に、規準の趣旨が曲解されるような問題が発生すれば、タイプBの存続は危うくなるかもしれない。よって、慎重な解釈・運用が期待される。

 

 

反対票を投じたメンバーの意見(=代替的見解)のうち、タイプBに関する部分を下記に要約する。(以下は、僕が勝手な理解で要約しているので、正確に知りたい方は、この公開草案の結論の根拠の末尾をご覧いただきたい。)

 

 

(IASBメンバー)

 

● プラブハカー・カラバチェラ氏(元KPMGパートナー、アメリカ)

● 張為国氏(元中国証券規制委員会(CSRC)の主任会計士及び国際業務部長?)

 

カラバチェラ氏と張氏は、借手と貸手の両方について提案されている二本立ての会計モデルに反対している(即ち、“分類”規準を修正すべきとしている)。理由は、使用権モデルの原則を損ない、運用が複雑で、ストラクチャリング(=取引形態の操作)の機会を作り出すものだから、としている。

 

具体的には、次の理由で、短期リースと土地を除き、すべてのリースをタイプAで処理すべき。そのために、不動産以外のリースがタイプBに分類される規定は廃止し、不動産リースについては、土地と建物に区分し、土地部分のみをタイプBと分類する。

 

(理由)

 

・タイプBの借手のリース費用(=使用権資産の償却費+利息費用)は概ね定額で計上される。利息費用はリース負債の支払いに応じて逓減していくので、残りの使用権資産の償却部分は逓増的になると考えられる。しかし、IASBは逓増的(将来に行くほど費用が増加する)償却方法を合理的と考えていない。よって、償却資産をタイプBに分類することは避けるべき。

 

・分類の規準の運用に疑問を持っている。即ち、例の「重大ではない」とか、「ほとんどすべて」及び「大部分」の意味がちゃんと理解され運用されるか。また、不動産の場合には、リース期間を原資産の“残り”の経済的耐用年数との比較で行うが、不動産以外の資産の場合には、原資産の経済的耐用年数“全体”との比較で行う。これは恣意的で複雑である。

 

・解約不能期間が短いリース取引のリース期間の決定に際して、借手は、例の“重大な”経済的インセンティブという高いハードルを理由に、延長オプションを行使しないと評価して、リース期間を短くすることができる。するとタイプBへ分類されやすくなる。その後リース期間延長のオプションを行使しても分類の変更は禁止されているので、タイプBが維持される。この弊害を減少させるため、リース期間を変更する場合は、分類の見直しも行うべき。

 

以上の2名のIASBメンバーの意見は、規準を単純化できるが、タイプBの分類を土地に限定する。

 

 

(FASBメンバー)

 

● トーマス・J・リンズマイヤー氏

 

タイプAとタイプBがあることで、以下のように財務諸表が複雑になるので、どちらかに統一すべき。

 

・P/Lの会計処理が短期リースやタイプA・Bなどで異なる。これを理解しないと、リース契約の影響の総額を算定することができない。

 

・C/S(キャッシュ・フロー計算書)にも問題がある。タイプAの元本の返済は財務キャッシュ・フローだが、割引の巻戻しやタイプB、短期リースなどは、営業キャッシュ・フローの区分に表示される。

 

・注記においても、包括的な開示を1か所で要求するようにしておらず、リース契約に固有のすべての権利及び義務並びに関連する損益上及びキャッシュ・フロー上の影響を理解するのに必要な情報を財務諸表利用者に提供する形になっていない。

 

リンズマイヤー氏は、リースの本質・経済実態に関して定見がないので、財務諸表の読者が、リースに関する自らの見解(金融機能か、一時的なレンタルか)に基づいて財務諸表を容易に組み替えることができるよう、会計処理の単純化(=統一)と注記の充実を求めている。(説明は省くが、同氏のリースの理論・見解は、かなりユニーク。)

 

● R・ハロルド・シュレーダー氏

 

リース負債はタイプAとタイプBで同じ性質なのに、P/Lにおける利息の取扱いが異なる。また、タイプBの単一のリース費用(=使用権資産の償却+利息)が毎期一定になることについて、理論的な根拠がないと考えている。即ち、タイプBの単一のリース費用の定額償却は、貨幣の時間的価値と使用権資産の価値の減少を合理的に反映していない(上記のIASBメンバーの見解と同じ)。即ち、経済実態を反映していない。このことを理由にタイプBに反対している。短期リースについても同様の懸念を示している。

 

シュレーダー氏は短期リース及びタイプBを廃止し、すべてをタイプAへ統一することを求めている。もしそれができないのであれば、財務諸表の読者が短期リースやタイプBをタイプAに組み替えられるよう、注記などの充実(単一の包括的なリース開示注記)が必要としている。

 

以上のFASBメンバーの反対意見をまとめると次のようになる。

 

(a) リースの本質や経済的実態の見方について、リンズマイヤー氏はまだ定見がないと考え、シュレーダー氏はタイプAが実態を現わすと考えている。しかし、注記をより充実させ、財務諸表の読者が容易に組替できるようにすべきと主張している点は共通している。

 

(b) シュレーダー氏は、長期負債には金利コストは費用逓減的な(=先に行くほど費用が減少する)利息法で測定すべきで、費用逓増的な(=先に行くほど費用が増加するような)処理は合理的でないと考えている。そして短期リースを含め、すべてタイプAに統一すべきとしている。しかし、リンズマイヤー氏はユニークな理論で、短期リースを含むすべてのリースに関して、タイプAもタイプBも肯定できるが、どちらかに統一が必要としている。

 

 

以上の指摘は、それぞれに重要な意味を持っている。しかし、この公開草案の提案には、短所ばかりでなく長所もある。そのバランスが取れているかどうかが重要だ。一応、両審議会の多数派は、リースには幅の広い経済実態があって、(P/L面で)1つの会計処理に統一するの困難で、リースを2つに分類することでバランスが取れる、との意見であることは既に記載した(9/6の記事)。

 

僕は、IASBのカラバチェラ氏と張氏の意見に、かなり魅かれた。なんといっても、シンプルで運用しやすい。不動産を土地と建物等に区分する方法に実務上の新たな課題があるが、従来も不動産購入時に両者を区分する実務上の工夫は行われているので、それをリースに応用すれば対応可能だ。(借上げ社宅契約など、貸主が個人・中小企業となるような取引に適用するのは厄介だが・・・。)

 

ただ、不動産以外の設備や機器などのリースについて、本当にタイプBの可能性を否定してしまってよいのか。前回(9/13の記事)見たように、「重大ではない=ささいな」であり、この公開草案でも、不動産以外の取引がタイプBに該当するケースはあまりたくさんないと思う。しかし、その可能性を残しておくことは重要ではないか。リースの本質・経済実態は幅広で、統一できる定見がないのだし。いや、むしろ、この提案内容でも、不動産以外をタイプBに分類するハードルが高過ぎると思われる方の方が多いかもしれない。

 

加えて両氏の代替的見解では、不動産リースでも、建物など、土地以外はすべてタイプAに分類することになる。建物などリース期間が長期のものは、利息法によって計上される利息費用が、最初のうちは多額になるかもしれない。割引率が低いうちは良いが、将来金利が上昇してくると、新規賃貸物件については馬鹿にならないかもしれない(割引率は、リース期間の変更に大きな影響を与える経済インセンティブ要因の変化などの一定の場合以外は見直さない)。それでも、移転予定のない本社や主要事業所に賃貸物件があれば、それが経済実態で、タイプAへの分類が正しいことも多いと思うが、従来考えても見なかったこと、例えば、賃貸は本当に得だろうか、どういう時に有利だろうか、といった根本までを考えさせられることになるだろう。

 

これは良いことかもしれないし、逆に、益出し(=過年度に計上した利息費用の戻入)のために、リース期間の短縮を促すことがあるかもしれない。益出し目的だけでリース期間を短縮するのであれば、移転費用の支出を増やすだけの見せかけの利益であり、企業の財務実態にはマイナスだ。また、同時に貸手には新たなリスクを生むことになる(借手の益出しと逆の効果)。この結果、賃貸契約の解約条件が厳しくなるかもしれない。これらはリース期間が長いほど影響が大きい。すべての建物を強制的にタイプAに分類するのは行き過ぎのように思う。

 

 

ところで、反対意見のFASBメンバーは、短期リースを含め、会計処理をすべて統一しようとしている。一人は理論的にタイプBを全く認めていないので、最小公倍数を取れば、会計処理をタイプAへ統一する方向になる。

 

また、IASBメンバーによってタイプBの分類に関する規準解釈や運用の恣意性が問題提起された。これで財務諸表の読者や監査人の注目がタイプBへ向かうに違いない。問題があれば、或いはその可能性が散見されれば、話題になりやすい。

 

このように考えると、タイプBの立場は意外に危ういかもしれない。公開草案の提案通りにリース規準が確定したとしても、運用面で悪い評判が立てば、縮小又は廃止の方向で見直される可能性が高まりやすいだろう。タイプBに価値を感じているユーザー、特に財務諸表作成者には、リース期間決定におけるオプション行使の経済的インセンティブの適切な評価と“消費の原則”を踏まえた慎重な分類原則の運用が期待される。

 

例えば、解約オプションを借手のみが保有し(=借手が解約を通知しない限り強制的に継続される契約で)、解約不能期間(=解約通知期間)が6ヶ月の不動産リースを、移転予定がないのに安易に短期リースやタイプBに分類すれば、タイプBどころか、短期リースさえも絶滅危惧種リスト入りするかもしれない。とはいえ、上述の通り、常に残りの経済耐用年数の大部分をリース期間に決定して、タイプAに分類することが良いとも限らない。事業の見通しや経済実態を慎重に検討し、根拠づけすることが求められると思う。但し、B2BC109によれば、貸手も、ささいなペナルティの範囲で契約を解除できるなら、このケースには該当しない(=借手のみが解約オプションを持っている状況ではない)。日本の不動産賃貸契約は、借地借家法による借主保護の制度もあり、どちらに該当するか確認が必要かもしれない。

 

これに関連して、経済耐用年数の評価は、税法基準から脱却が促される可能性があるように思う。経済耐用年数は、単に鉄筋や鉄骨などの構造材の種類等で決まるものではなく、耐震設計の優劣や陳腐化等による経済価値の低下の可能性を考慮するなど、もっと建物の個性に合わせて決定されるべきではないだろうか。

2013年9月13日 (金曜日)

288.【リースED】消費の原則と、“重大ではない”=“ささいな”

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/9/13

今年は温度計を購入し、室内環境の一部を見える化した。この数日は、最高気温が30℃を下回るようになるとともに、外出しても涼しく、秋の兆しを感じられるようになった。といっても、暑いことは暑い。さて、今は秋だろうか、それともまだ夏だろうか。

 

Wikipediaの“夏”を見ると、「日本においては、6月・7月・8月の3か月を夏であるとすることが一般的である。」とされている。なるほど、季節は暦で決まるのだ。これは便利だが、実態を表しているとは言い難い。なぜなら、残暑の厳しさが毎年違うのに、暦は一定だ。だが、“夏”か“秋”かは、形式的に8月か、9月かで決まる。

 

この公開草案のタイプAとタイプBも、こんなふうに分かりやすく境界が定まっても良いのだが、会計は経済実態の表現であるから、形式的な基準では相応しくない。2つのタイプの本質に根差すような境界の見極めがなされているに違いない。そこで、なるべくシンプルで、両者の本質が分かりやすいように、前回(9/10の記事)は分類方法を表形式・比較形式で提示した。一応、そのメインである29項、30項をおさらいをしておこう。

 

まず、原資産が不動産以外か、不動産かに着目し、不動産以外なら原則タイプA(=資金調達手段としての性格が強いリース)、不動産ならタイプB(=大雑把に言って、一時的なレンタル)に分類する。

 

しかし、従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分するときの着眼点である、リース期間と経済耐用年数、リース料総額の現在価値と原資産の公正価値という2つの関係を利用して、次の例外規定がある。原資産が不動産以外であれば(原則タイプAだが)、いずれかが“重大ではない”関係であればタイプBと分類され、原資産が不動産の場合は(原則タイプBだが)、いずれかが“大部分”とか“ほぼ全額”の関係であればタイプAと分類される。

 

“大部分”とか“ほぼ全額”というのはイメージしやすいが、原資産が不動産以外の場合の例外を判定する“重大(或いは、重大ではない)”は、分かり難い。なんだろう。

 

しかし、これが、分からなかった。リース期間を決定する際の「重大な経済的インセンティブを有する」は、かなり確実性の高い、日本基準でいえば「合理的な根拠がある」のレベルだ。無理やり数値で表現すれば7割・8割・9割といったところか。それと同じように“重大”を理解すると、例えば“重大”なリース期間は、経済的耐用年数の、少なくとも7割以上のイメージだが、IASBは4割でも“重大”(正確には「重大ではないとはいえない」と記述されている)とする例を示している(BC125)。

 

両者(タイプA・タイプB)を区別する重要な規準である“重大”(或いは“重大ではない”)の意味が理解できなかったということは、まだ両者の本質の理解が足りないということだ。ということで、今回は、追加の検討を行うことになる。きっと、それを考える鍵は、結論の根拠にあるに違いない。

 

 

そこで、その目次を眺めていると・・・。なんと「リースを分類すべきかどうか及びその方法の決定」(BC40~)などという、ドンピシャの見出しがある。「先に読めよ」と言われそうだが、もちろん、ここも目は通していた。しかし、良く理解できていなかったことを認めざるを得ない。その原因となった点について、これから読もうという人のために、少しアドバイスさせてもらいたい。「単一のリース費用を表示すること」という表現は、タイプB(=原則不動産)の会計処理を指している。一方、「使用権資産の償却とリース負債に係る利息とを別個に表示する」は、タイプAの会計処理だ。また、「消費の原則」は、減価償却方法の公開草案(6/4の記事)に記載されていた「消費パターンを反映するように償却方法を決定する」という表現と、リース費用について同じように使われている。即ち、原資産の経済便益の消費パターン(正確には「消費する水準」)を考慮してリース費用の計上方法を決めよう、即ち、分類方法を決めようとしている。さて、これで大分、読みやすくなったはずだ。

 

ということで、読んでみると、早速、BC42に核心を突く記述を見つけた。これは、まさに原資産の消費パターン(下記では「消費する水準」)を考慮してタイプA、タイプBの分類を決めようという「消費の原則」について記述している。

 

両審議会の結論としては、単一のリース費用の方が適切な情報を提供することになるリースは、借手が原資産の使用についてだけ支払を行い、原資産自体に組み込まれた経済的便益のうち重大ではない量だけを消費すると見込まれるリースである。したがって、両審議会は、異なるリースを区別するために使用される要因は、原資産に組み込まれた経済的便益を借手が消費する水準であると決定した。

 

さらに読み進めると、タイプBに関して、次のような記載もある(BC44)。これは“重大”の意味を理解するうえで、興味深い。

 

資産の価値又は用役潜在能力の減少が予想されていない場合(すなわち、借手が原資産に組み込まれた経済的便益のうち重大ではない部分しか消費しないと見込まれる場合)・・・このリターン又は料金は、リース期間にわたり均等又は比較的均等となると見込まれる。

 

興味深いのは、タイプBでは、「資産の価値又は用役潜在能力の減少が予想されない=重大な消費がない」とされていることだ。また、次のようにも書いている。

 

借手が原資産を「借用」し、それをリース期間中に使用して、貸手に当該使用の対価として均等(又は比較的均等)なリース料を支払い・・・、原資産を貸手に開始日時点とほぼ同じ価値又は用役潜在能力で返還する・・・。

 

ここでは、タイプBは「借手は、原資産を、借りたときとほぼ同じ価値で(=ほとんど消費せずに)返還する」といっている。

 

これらから判断すると、“重大ではない”=“僅か”じゃないか? 「“重大”は、7割・8割・9割を意味する」、そして“重大ではない”は、「重大よりは小さい影響度・比率」というイメージとあまりにかけ離れた説明となっている。むしろ、“重大ではない”とは「1-“重大”=“僅か”」の“僅か”と理解すべきなのだ!

 

ここで英語の原文に戻って、“重大ではない(insignificant)”の意味を確認してみよう。Webilo(研究社 新英和中辞典)では、次のように記載されている。

 

【形容詞】

1 取るに足らない,つまらない,ささいな.

用例               

an insignificant person (身分の低い)つまらない人.

2 〈語句・身ぶりなど〉(ほとんど)意味のない.

 

やはりそうか。例えば、insignificantを“ささいな”と訳すと、即ち、“重大ではない”を“ささいな”に置き換えると、原資産が不動産以外のケースをタイプB(一時的なレンタル)に分類する29項の例外条件は次のようになる。

 

(a) リース期間が、原資産の経済的耐用年数全体のうちささいな部分である。

(b) リース料総額の現在価値が、開始日現在の原資産の公正価値に比べてささいである。

 

う~ん、だいぶイメージが変わった。リース期間が1年を超えるリースでは、不動産以外の原資産がタイプBに分類される可能性は、思っていたよりささいである。あまりないと考えた方が良さそうだ。そうなる理由は、「消費の原則」こそが、タイプAとタイプBを分類する境界・本質であり、かなり厳密に適用されているためだ。

2013年9月10日 (火曜日)

287.【リースED】リースの分類方法⇒訂正あり!

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容の一部は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/9/18 タイプBの費用計上方法および割引の巻戻しに関係する説明を訂正した。赤文字の部分。

2013/9/12 細かい字句の訂正等を行った。例えば、「Aタイプ」を「タイプA」へ訂正したなど。

 

2013/9/10

このシリーズの前回(9/6の記事)では、リース取引の経済実態は幅が広く、特にP/Lの表現として、単一の方法では無理がある。そこで、2つに分類するということだった。その2つとは、期間が経過するにつれて逓減的に費用計上される方法と、毎期安定的に計上される方法だった(これらの詳細は後日)。今回は、この2つに分類するために、個々のリース取引のどのような状況や性質に注目するかがポイントになる。

 

実は、IASBやFASBが着目したポイントは、目新しいものではない。というのは、この2つの費用計上方法は、従来のファイナンス・リースやオペレーティング・リースの会計処理の延長と考えられるからだ。ただ、従来のファイナンス・リース的な費用計上方法を採用するリース取引の対象範囲が拡大されて、タイプAとなり、従来のオペレーティング・リースのような概ね定額の費用額が計上される方法の対象が縮小され、タイプBとなった。(ちなみに、使用権資産・リース負債の計上は、いずれのタイプでも要求される。)

 

即ち、リースが資産購入のための資金調達方法に見えるか、一時的なレンタルに見えるかによって、費用計上方法を分けたといえると思う。前者の場合は従来のファイナンス・リース的な費用計上方法(使用権資産の償却+割引の巻戻し1による利息計上)(42(a))、後者の場合は従来のオペレーティング・リースと同じような費用額が計上される方法(毎期首再計算が必要だが、基本的には定額の費用化か、割引の巻戻し1の大きい方)が適用される(42(b)B15)。

 

なお、以上は借手から見たものとしての説明だが、貸手から見た場合も、概ね裏表同じになる(詳しくは会計処理を検討するときに)。

 

―――――――――――――――――――――

1 割引の巻戻し(unwinding of discount

これは、聞き慣れない言葉だ。そこで調べてみると、weblio(の英和生命保険用語辞典)には、次のように説明されている。

 

【会計】時間の経過によって解き放たれた割引分((Embedded valueの保有契約価値等の計算では,将来収支の割引合計(Discount sum)が用いられる.1年後これらの値は仮に前提条件が予想通りに推移した場合でも,割引率分が時間の経過によって開放され,価値が増加することをいう))

 

例えば、3年間100円ずつ支払う債務の現在割引価値は、割引率が10%の場合次のように計算される。

 

1年目の支払予定額の現在割引価値 100 100%+10%)=91

2年目               91 100%+10%)=83

3年目               83 100%+10%)=75

―――――――――――――――――――――――――――――――

合計                           249(額面300

 

翌年、この債務は上記の1年目の支払いが終わるので、次のように計算される。

 

1年目の支払予定額の現在割引価値 100 100%+10%)=91

2年目               90 100%+10%)=83

―――――――――――――――――――――――――――――――

合計                           174(額面200

 

この249174の差額は75、即ち、1年後に債務は75減少する。しかし、実際の支払は100だし、現在割引価値でも91だ。この9175の差26が割引の巻戻しとして金利コストになる(10091の差9は前年度の金利コストに含まれる)。割引期間が3年から2年に短縮されたことで、債務額は26増額される。奇妙に感じるが、これが、上記weblioの説明にある「時間の経過で解放された価値」、即ち、割引の巻戻しということになる。

支払いが進むごと、即ち、負債の減少に応じて、逓減していくという意味では、利息法による金利コスト計算と似たイメージ。(但し、利息法は債務額に金利を乗ずるが、割引の巻戻しは割引計算なので上記のように除算となる。)

―――――――――――――――――――――

 

 

さて、以上を踏まえたうえで、どのように分類することになっているかを見てみよう。どのようなものが、資産購入資金調達手段としてのリースで、また、どのようなものが、一時的なレンタルとされているだろうか。規定を要約すると次のようになる。

 

                                                           
 

 

 
 

着眼点

 
 

タイプA

 
 

タイプB

 
 

 
 

原則

 
 

原資産

 
 

不動産以外はタイプA

 
 

不動産はタイプB

 
 

2930

 
 

例外1

 
 

リース期間

 
 

経済的耐用年数のうち、重大ではない部分の場合は

 

タイプB

 
 

残りの経済的耐用年数の大部分である場合は

 

タイプA

 
 

同上

 
 

例外2

 
 

リース料総額の現在価値

 
 

原資産の公正価値に比べて重大ではない場合は

 

タイプB

 
 

原資産の公正価値のほぼ全額である場合は

 

タイプA

 
 

同上

 
 

例外に優先する特則

 
 

原資産の購入オプション

 
 

オプション行使の重大な経済的インセンティブを借手が持つ場合は

 

タイプA

 
 

同左

 
 

31

 
 

公正価値モデルを選択する場合の特則

 
 

会計方針の選択

 
 

公正価値モデルを選択した場合は分類しないが、表示および開示に際しては

 

タイプAとして扱う

 
 

同左

 
 

35

 

 

上記の他、32項では、リース構成部分に複数の原資産の使用権を含む場合、“主要な資産”の性質(=上表の“着眼点”)で判断するとされている。また、33項では、そのようなケースで原資産に土地と建物の両方を含む場合、経済的耐用年数についての判断は建物で行うとされている。

 

なるほど、タイプAは耐用年数や支出予定額から見て従来のファイナンス・リースに近いものであり、そうでないタイプBを、一時的なレンタル取引と考えているようだ(この着眼点は、現行のリース会計と同じ)。ただ、耐用年数やリース料総額のどれぐらいの割合を“重大”(或いは“重大でない”)と判断するのかについては明確でない。これが原則主義たるIFRSの特徴であり、数値基準がない。

 

ところで、リース期間を決める際の「オプション行使の重大な経済的インセンティブ」については、8/21の記事に、文脈から「“重大”=50%以上見込まれる」と推測したが、間違いであることが分かった。もっとハードルが高い(=もっと可能性が高い。「合理的に保証された」及び「合理的に確実」と類似のもの)とされている(BC171BC140)。8/21の記事に、お詫びして、訂正をさせていただいた。

 

ということで、リース期間を決める際の「オプション行使の重大な経済的インセンティブ」は、かなり高いハードルになっている。ということは、上表の黄色の背景色を付けた“重大”も、単に半分以上ということではなく、もっと大きな割合を意味するのだろうか? 例えば経済耐用年数の8割、9割をリース期間が占める場合とか、リース料総額の現在価値が公正価値に比べて8割、9割になっているとか。しかし、もし、そうだとすると、従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分と大差ないではないか!?

 

 

答えは「否」だ。これは推測ではなく、ちゃんと以下の根拠があるので、ご安心戴きたい。

 

結論の根拠のBC125(b)には“重大”となる例示、「経済的耐用年数が10 年のトラックの4 年間のリース」がある。半分以下でも“重大”とされている(正確には「重大ではないとはいえない」と記述されている)

 

では、いったいどのように考えればよいのだろうか?

 

どうやら、“重大”を測るさらに根源的なものがあるようだ。もっと、タイプAとタイプBを分類する意味、即ち、何をもって、資金調達手段としてのリースと一時的なレンタルとしてのリースを区分しているかを掘り下げて考える必要がある。が、これは次回。

2013年9月 8日 (日曜日)

286.【番外編】成長戦略の議論はどこへ?

2013/9/8

東京の2020年オリンピック招致決定、おめでとうございます。素晴らしいプレゼンテーションでした。だが7年後も、日本がオリンピック開催に相応しい国でいられるかどうかは、日本経済の成長(と原発政策の成否)にかかっている。

 

参議院選挙が終わって早くも50日が経過するが、その間、アベノミクスの成長戦略の話は、あまりマスコミに取り上げられていない。例えば、Googleで「アベノミクス+成長戦略」で検索しても、最近の記事はほとんど出てこない。しかし、みなさんが本当に気になっているのは、このことではないだろうか。僕は、このまま成長戦略がしぼんでしまいそうで心配だ。

 

マスコミの多くは、何か事件が起こったり、政府が何か発表したりしなければ取上げない。受動的だ。なにが大事かを決める意思・能力に欠け、社会的議論のテーマの決定を他人任せにしている。事件が起こらなくても、政府が何も言わなくても、今重要なことがあるはずだ。むしろ、政府が言わないことにこそ、重要なことがあるに違いない。

 

昨年11月以来の円安・株高については、海外投資家の都合と期待でそうなっただけで、実績として日本経済が成長力を高めたわけでもないし、日本企業が競争力を高めたわけでもない(7/14の記事)。まだ何も安心できない。

 

この50日間に取上げられた消費増税についても、以前(8/68/129/2の記事)も書いた通り、マスコミは的の外れた後ろ向きの問題設定をして、議論をおかしくしているように思う。我々消費者・納税者にとっては、消費税率アップはコスト・アップ型のインフレと同じだ。支出だけが増えていく。インフレが起これば経済が活性化する、即ち、収入が増えるという主張もあるが、僕はそれを素直に信じていない。やはり、それとは別に収入を増やす手、即ち、成長を目指すことを考えることが必要と思う。

 

日本の国家財政を救うのも、主役は増税ではなく経済成長だ。年収の2倍以上の借金を返済するのに、収入を増やす手を考えず、ひたすら節約を続けて耐えられるだろうか。しかも、節約できない固定的な支出がたくさんあって、それが毎年増加する状況で。年金制度を維持できるかどうかも、年金資産の運用収益が重要だ。成長のない経済で収益性の高い運用は困難だ。年金資産は減少局面(=保険料収入より年金支出の方が大きい)に入っているから、なるべく運用資産の大きいうちに、早く、良い運用が行える環境を整備する必要がある。即ち、早く経済の成長力を高めなければならない。

 

6月に閣議決定された成長戦略に満足している人はあまりいないと思う。もっと大胆な規制緩和が必要だ。少子高齢化社会を生き抜くハードルは高い。今のまま既得権者と官僚をおぶって、それを飛び越える余裕は、我々にはないと思う。

 

2013年9月 6日 (金曜日)

285.【リースED】リースを分類する理由はP/Lにあり

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容は提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/9/6

前回までは、取引の中からリースを識別するプロセスを見てきた。今回は、次のステップ「リースの分類」へ進み、まずは全体像をイメージできるようにしたい。それには、何故分類が必要となるのか、分類を行う理由を理解することが重要と思う。

 

この公開草案では、リースを識別すると、それをAタイプとBタイプに分類しなければならない。しかし、基準案の「リースの分類」のセクション(28項~35項)には、何の目的で分類するのかについて、それらしき記述がない。ただどうやら、不動産タイプと、そうでないものへ分類したいということは分かる(29項では、原資産が不動産ではない場合は原則としてAタイプに分類し、30項では、原資産が不動産の場合は原則としてBタイプに分類するとされている)。では、なぜ不動産タイプとその他に分類したいのか?

 

規準案に書いてないことは、結論の根拠(BC***)に当たるしかない。見てみよう。すると、結論の根拠の「リースの分類」セクションの冒頭、BC119に次のような記載がある。

 

BC50 項からBC63 項で述べたとおり、両審議会は、企業は、原資産に組み込まれた経済的便益についての借手の予想される消費に関する分類の原則を、原資産の性質(すなわち、不動産なのか不動産以外の資産なのか)基づいて適用すべきだと決定した。

 

どうやら、詳しいことはBC50BC63にあるらしいが、借手の経済的便益の消費に関係するらしい。経済的便益の消費といえば、6/4の記事で紹介した公開草案「減価償却及び償却の許容される方法の明確化」が思い起こされる。減価償却方法の選択は、経済的便益の予想消費パターンによって行われるべきという内容だった。

 

すると、リースの分類は、B/SではなくP/Lのために行うものか。購入した固定資産なら、減価償却を行うことで、取得原価を耐用年数に配分する。リースの場合は、同様に使用権資産の取得原価を減価償却し、さらに、利息費用を各期へ配分する。この減価償却費と利息費用の合計額を適切に各期へ配分するために、リースを分類するということかもしれない。

 

この観点から、結論の根拠を眺めて見ると、BC39に次のような記述を見つけることができた。

 

しかし、寄せられたフィードバックのすべてを考慮し、また、リースが非常に多様である(原資産を借手に原資産の経済的耐用年数のほぼ全期間にわたり提供するものから、原資産を借手に原資産の経済的耐用年数のうちごくわずかについて提供するものまで広範囲にわたる)ことから、両審議会は、使用権資産を他の非金融資産と整合的に償却することは、すべてのリースの性質を最も適切に反映するわけではないと結論を下した。同時に、両審議会は、すべてのリースに組み込まれたさまざまな経済的実態を捕捉しようとする単一のアプローチは、実務上不可能であることにも気付いた(BC36 項(b)で説明している)。

 

要するに、「分類しないで、すべてのリースへ同じ会計処理(=他の非金融資産と整合的に償却する方法)を適用することを検討したが、それではすべてのリースの性質を適切に表現できないし、また、同じ会計処理は返って実務的な困難を伴う」ということだ。なるほど、これで、分類の目的がP/Lの要請によるものであることがはっきりした。

 

P/Lの要請とは、次の2つのパターンの費用計上方法を用意せよ、ということだ。

 

A. 逓減的な費用配分(=他の非金融資産と整合的に減価償却+利息法的な利息費用の認識)

B. 均等額の費用配分(=固定的なリース料の支払いが、消費パターンに合っている)

 

Aは、従来のファイナンス・リースのように、使用権資産を購入するためにリースという資金調達手段を利用したと、経済実態を捉えるケース。リース期間が長めの取引がイメージされる。

 

それに対してBは、不動産賃貸や機器のレンタルのように、原資産の耐用年数に対して短いリース期間が設定されていて、経年による技術的・経済的陳腐化、貨幣の時間的価値の影響をあまり受けないようなケースがイメージされる。典型は土地のリースで、土地は使用によって価値が減価しないので消費パターンは一定だ。したがって費用も一定額が計上される方法が適切になる。

 

確かに、リースは取引実態の幅が広い。経済実態をP/Lへ反映するために、このような2つぐらいのパターンへ分類することは必要なのだ。

 

2013年9月 4日 (水曜日)

284.【リースED】リース取引の識別のまとめ~庸車取引、外注加工取引

2013/9/4

8/9の記事で、お盆休みに詳細を記載するとしていた「庸車取引や外注加工取引にリースが含まれるかどうか」について、未だ記載していない。「リース期間」にたくさん時間を割き過ぎたのだが、しかし、「リース期間はリース契約書に書いてあるもの」というイメージを持っている我々が、「リース期間は経済実態によって決まるもので、契約書そのままではない」というこの公開草案の趣旨を理解するには、大変な頭の切り替えが必要だ。ということで、ご容赦願いたい。

 

ここでざっとお浚いをしよう。リースの公開草案は、

 

 1.リース取引の識別

 2.タイプA、タイプBの区別

 3.それぞれのタイプごとの会計処理

 

と進んでいくが、このブログは 7/25から「1.リース取引の識別」をずっとやっている。進捗が遅いと思われるかもしれないが、「リース」のイメージが従来とは異なるので、そのイメージをしっかり持ちたい。ここが肝心と思っている。そこで今回は、もう一度復習をしながら、庸車取引や外注加工取引の問題も合わせて考えていく。以下、記事を日付順に要約し、庸車取引や外注加工取引についての僕の考察をこの色(黄色の背景色)で追記する。

 

7/25271.【リースED】リースの識別の取っ手」「」「

従来は「ファイナンス・リース」か否かが問題であったため、我々はリースと言えば「ファイナンス・リース」をイメージする。しかし、この公開草案のリースは、もっと幅が広い。

 

7/27「272.【リースED】リース契約のイメージを変える」

7項に示された(a)(b)の2つのリース識別の条件は、(b)については違和感はないし、(b)だけで足りるような気がした。それなのに(a)があるのはなぜか。そこに「リース」のイメージをどのように変えたらよいかのヒントがあるに違いない。そこで、(a)についての詳細を記載している811項を見ると、そこには「資産の入替権を供給者が持っていないこと」や「リース対象資産を物理的に区別可能なこと」が記載されていた。

 

7/31「273.【リースED】供給者の入替権」

ここでは公開草案に付属している「貨車」の設例を見ながら「供給者の入替権」を具体的に理解することに努めた。その結果、「供給者が入替権を持っていないこと=対象資産が具体的に特定されていること」だが、単に契約上「対象資産が具体的に特定されていること」に留まらず、(契約に記載がなくても)実質的にそういう状況になっていれば該当することになる。したがって、リース契約・賃貸契約以外の通常のサービス契約でも、使用される資産が一年を超えて具体的に特定され、特定顧客(借主)に紐付いている状況にあれば、リースに該当する可能性がある。

 

従来なら「サービス契約」と考えられている庸車取引や外注加工取引も、リースが含まれるかどうかを識別する対象となりうる。特に、契約書に明示されているかどうかに関わらず、庸車取引で車両が特定されているとか、外注加工取引で製造設備が物理的に特定される場合(例えば、特定顧客専用となっている車両や製造設備)は要注意だ。

 

8/1「274.【リースED】対象資産の物理的な区別」

ここでも「光ファイバー」設例を見ながら「対象資産の物理的な区別」を具体的に理解することに努めた。設例は「光ファイバー容量の一部」が契約対象となっている場合は、物理的な区別ができないと判断することになっていた。「物理的な区別ができない=対象資産が具体的に特定されない」であるために、この設例はリースを含まないと説明されていた。そういう意味では供給者の入替権と似ている。一方、同じ光ファイバーでも物理的にカウントできる一本・二本という単位で丸ごと顧客が自由に使用できる状況は、「物理的な区別ができる=対象資産が具体的に特定される」であるため、リースが含まれることになる。

 

庸車取引や外注加工取引の場合でも、その運搬能力の一部、製造能力の一部のみを借手に提供している状況ならリースではない。通常は、庸車費用や外注加工費用の固定費負担を借主側が軽減したいため、このケースになる(=リースに該当しない)ことが多いと思う。

 

ということで、リース識別条件の(a)は、その取引において使用される資産が特定・固定されるかどうかに焦点を当てていた。特定されれば、他の条件次第でリースになり得るし、特定されないのであればリースではない。契約書名称が「リース」や「賃貸借」に関連しているかどうかは関係ない。

 

 

8/9「276.【リースED】資産の使用を支配する権利」

8/1の記事までは、7項のリース識別の2条件のうち、(a)に関する検討だったが、この記事でようやく(b)の検討となる。(b)についても1319項に詳細があるが、要約すれば、「特定された資産の使用を指図する能力」と「それにより便益を得る能力」が借手の側にあることだった。即ち、その資産を「一定の期間、借手が支配している」状況にあれば、リースの条件の一つを満たすということだ。

 

貸主が、その車両や製造設備を他の顧客のために使用できず、ほとんど借主の意図に従って動かされている状況、そして、その車両や製造設備から得られる経済的便益を借主が享受している状況は、それら資産の使用を借主が支配している状況といえる。例えば、資産がその借主(顧客)専用仕様で、他社用に転用できないとか、借主(顧客)が、事業戦略上の理由で、「その資産を使用する他社からの受注を禁止している場合」などが該当すると思う。

 

ここまでで、「資産が具体的に特定され」、かつ、「その資産が借手(顧客)に支配されている」状況が一定期間継続する見込みであれば、その取引はリースの識別条件に合致する、即ち、リースを含むと判断されることが分かった。この判断は実質ベースで行われる。

 

8/14「278.【リースED】契約の構成部分の区別」

サービス契約も含めた幅広い取引からリースを識別するので、従来は1つの取引としてまとめて会計処理していたものを分解して、その一部をリース(=使用権資産として資産計上)とする必要が出てくる。これはちょうど、建物等の最終見積書から資本的支出と収益的支出を分類する作業に当たる。

 

仮に、庸車取引や外注加工取引にリースが含まれるとすれば、車両や製造設備に関連する部分を庸車契約や外注加工契約から抜き出して、使用権資産として識別し、資産計上することになる。リース以外の部分は、従来通りサービス契約として発生時に費用処理する。

 

8/19「279.【リースED】リース期間~a period of time」

公開草案の6項や付録Aの用語の定義「リース」では、リース期間のことを「一定期間」、英語の原文では「a period of time」と表現している。英語では「a cup of tee」が紅茶を表すので、「a period of time」は時間を表す。即ち、「一定期間(=a period of time)」とは「時間で表現された期間」ということになる。これに対して、時間による期間は明示されないものの、発注量や生産量などの数量が取引条件として明示され、生産能力などから期間が推定できるケースも考えられる(これを便宜的に「野球タイプ」と呼ぶ)。しかし、野球タイプは時間の明示がないので、リース期間とは認められず、リースには当てはまらないのか?

 

もし当てはまらないとなれば、庸車取引や外注加工取引は、通常野球タイプなので、仮に生産能力等を考慮して一年を超えると推定できるような大量な発注が予定されていても、その取引はリースを識別する対象とならないことになる。

 

8/21「280.【リースED】リース期間を決定する」

25項では、会社はリース期間を、「リース期間=解約不能期間±オプション期間」として決定しなければならないとしている。これは、リース期間はリース契約書等から拾い出すものではなく(固定資産の(自主)耐用年数と同様に)、会社が経済環境、事業環境から見積もって決定するという意味と考えられる。

 

8/27「281.【リースED】野球タイプの合理性」

8/19の記事で野球タイプのリース期間はありえないのか?と疑問を呈したが、具体的に野球タイプのリース期間を想像してみると、あまり合理性のある取引、ケースが思い浮かばなかった。契約当事者にとって期間が重要なら、素直に時間によって期間を表現した方が、取引条件として都合が良さそうだ。だが、もし、この公開草案が「野球タイプはリースに含めない」とすると、敢えて野球タイプで期間を表現することで、使用権資産を資産計上する会計処理を避けることができてしまう(潜脱行為を可能にしてしまう)。

 

8/29「282.【リースED】リース期間とサッカーの試合時間」

結局、リース期間は「a period of time」なので、「時間」で表現されなければならない。しかし、その「時間」は関係するあらゆる状況から判断するものなので、もし、発注量や生産量がリース期間に関係するならば、それも考慮される。そういう意味で、野球タイプの契約、取引条件であっても(=時間による期間が明示されてなくても)リースとなり得る。

 

庸車契約や外注加工契約についても、時間によって期間が明示されていないとしても、予め発注量等で解約不能期間が長期になることが予測されるケースは、リース識別の対象となる。即ち、見積られた期間にわたり、上記の、「資産が具体的に特定され」、かつ、「その資産が借手に支配されている」という条件に合致するかチェックし、リースが含まれていないかを検討する。

 

「リースを含む」と識別した契約・取引から、リースを区分したり、リース期間を決定する作業は、一見、リース会計特有の作業のように見えるが、実際には固定資産を計上する際に、資本的支出と収益的支出を分類したり、(自主)耐用年数を決定する作業と同じ意味だ。特にリース期間を決定する作業は、(自主)耐用年数の設定と同様に、事業計画が前提になるので日本企業には苦手な分野だと思う。注意が必要だ。

 

ただ、多くの庸車取引・外注加工取引ではリースは識別されないと思う。庸車取引や外注加工取引にリースが含まれる可能性はあるが、8/9の記事の末尾にも書いたように、特に外注加工取引においては、通常はほとんど見られないのではないだろうか。

 

例えば、「事業計画上、関連する製品を長期間生産するので、外注取引も長期間にわたる予定になっている」だけでは、リースにはならない。その期間にわたって、車両や製造設備が具体的に特定され、かつ、(借手が)その使用を支配する状況が続くのでなければ、リースとはならないからだ。仮に製造ライン等の資産が具体的に特定できる状況であっても、貸手(=下請け先)が、発注量が予想を下回るリスクを負って設備投資をしている場合は、一定期間、資産の使用を支配しているとはいえず、リースとならないだろう。逆に、大量の発注を(暗に)確約するなど、その投資リスクを、一定期間、借手に(実質的に)転嫁している状況が見られる場合は、その期間、借手(顧客)が、資産の使用を支配している可能性があるので、リースが含まれていると識別される可能性がある。

 

このように考えると、庸車取引・外注加工取引などサービス取引については、リース会計のためにリースを識別する特別なプロセスを追加するというより、下請け先(貸手)の投資リスクを借手が負担するような契約がないか、もしあれば、その契約に合理性があるか、というリスク管理プロセスが適正に働いているかどうかに注意を向けた方が良い。これを機会に、このようなプロセスで把握されたリスクや経済実態を適切に会計に反映させる体制を整える、という観点からの内部統制の整備・補強・運用を考えることが重要だ。そのリスク転嫁の方法によっては、リース会計より、何らかの引当金を計上する方が適切なこともあるかもしれない。

 

また、以前は、系列内で上位の会社が下位の会社の投資リスクを実質的に負担するようなケースもあったと思うが、80年代からの度重なる円高や、新興国の躍進で、上位の会社にそのような余裕はなくなっている。それが系列依存からの脱却を促し、系列が解体される流れに繋がっている(しばしば言われるように、株式の時価評価だけで系列が解体されたわけではない)。しかし、もし、今でもそのような保証を何らかの形で与えているとすれば、実質支配力を考慮して、下位の会社を連結の範囲に含めるか否かを検討することが適切な場合もあるだろう。

 

ということで、経済実態を如何に把握し表現するかが、経営にとって重要で、この公開草案によって、リース会計はその手段の一つとしてより適切なもの、役立つものになってきたと考えることができそうだ。

2013年9月 2日 (月曜日)

283.【番外編】増税論議のピンボケ

2013/9/2

この週末は、色々なテレビ番組で消費税率アップの話題が扱われていた。多くの専門家・政治家が出演して持論を披露されていたが、財政再建のための増税なのに、税収が増えるかどうかを明確に述べる人は殆どいなかった。国際公約だとか、政治コストがどうのとか、法律で決めたからとか。増税反対意見の人でも、低所得者対策がどうのとか。それに比べて一般視聴者のコメントには泣かされる。国の財政を助けるために増税もやむを得ないとか、世代間格差を緩和するために使うなら、などと言われている。

 

専門家・政治家の話と、一般視聴者のコメントには大きな隔たりがある。そこにある壁は、消費税率を予定通り上げた方が税収増につながるかどうかが明確でないことだ。一般視聴者の泣かせるコメントは、税収増につながることが大前提だが、専門家や政治家は、税率を予定通り上げる主張をする人たちでも、それを明確に保証しない。これでは“空手形”ではないか。

 

税収が増加するかどうかを正確に予測するのは難しいとしても、それを議論しないことには気持ち良く納税できない。予測のために前提や仮定を置くとしても、その前提や仮定が重要な将来要素であることが意識されるし、恐らく、改めて成長戦略や規制緩和の重要性が見えてくると思う。将来を予測しようという努力、そういう前向きの議論こそが必要だと思う。

 

予測と言えば、「地震の予知は不可能」と地震学会が白旗を上げたのは記憶に新しい。しかし、この土日のNHKスペシャルでは、その不可能な予知に取組む地震学者たちの努力が描かれていた。東北地方に巨大地震が起こる可能性すら警告できなかったと3.11を反省し、次の関東大震災や南海トラフ地震で損害を少しでも軽減しようと、地震学者たちは頑張っている。1000兆もの借金を積上げたり、15年間もデフレを長引かせたことを反省し、ひたむきな努力をしてくれる政治家や専門家の頑張りと、的を得た議論、説明責任を果たすことに期待したい。

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