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2013年9月21日 (土曜日)

291.【東電決算】海江田経産相(当時)の責任

2013/9/21

恐ろしいニュースを目にしてしまった。ご覧になった方が多いと思うが、読売新聞が次のように報道している。

 

民主党の海江田代表は18日、東京電力福島第一原発事故の汚染水流出を防ぐ遮水壁を巡り、東電が事故直後の2011年6月、設置を検討しながら経営破綻の恐れがあるなどとして先送りを求めていたと語った。(YOMIURI ONLINE 9/18

 

当時、遮水壁に1000億円かかるとの試算も出ていたが、東電が「これを計上すれば破綻の不安を持たれる」ことを理由に先送りを要請し、海江田氏がそれを容認したのだという。続いて日経新聞が同日、当時首相補佐官だった馬淵澄夫氏が同様の証言を行ったと報じた。Googleで検索してみたところ、このニュースの封を切ったのは、朝日新聞のようだ。17日に、民主党政権幹部(当時)の話として報じている。

 

さて、何が“恐ろしい”のか。

 

上の記事に、海江田氏の言い訳(東電の主張)が書いてあるが、粉飾しようとする経営者、或いは、不正を隠蔽しようとする者と同じことを言っているのだ。僕も何度か聞いたことがある。「・・・だから、見逃してくれ」と。

 

・中長期的課題とすることを条件にした。

・東電が破綻すれば、被災者の賠償はどうなるかと考えた。

・国費を投入することは、「東電に責任を持たせるべきだ」という当時の世論では難しかった。

 

「何が同じか?」と思われるかもしれない。要するにこういうことだ。下の文章を、最初に()を外して読んでいただいて、次に()の中も合わせてご覧いただきたい。

 

1000億円の引当金追加計上という)情報開示を行えば、会社(東電)が大変なことになる。従業員が路頭に迷い、連鎖倒産する取引先も出るかもしれない(被災者の賠償ができないかもしれない)。倒産しないまでも、株主や投資家から経営者の責任を厳しく問われる(世論が怖い)。悪いことは直す(中長期的課題にする)から、今回だけは、情報開示を勘弁してくれ。

 

切羽詰まった経営者が、“ダメ元”で、監査人にこんなふうに懇願することがある。もちろん、これを容認してはダメだ。しかし、海江田氏はこれを聞き入れてしまった。監査人が粉飾決算を認めたのと同じことだ。粉飾を知りながら、適正意見の監査報告書を提出したカネボウの監査人がどうなったか。監査人個人だけの問題ではなく、その監査人が所属していた監査法人(当時の四大監査法人の一つ)が解体され、消滅した。

 

さて、現在は民主党の代表となっている海江田氏はどのように責任を取るつもりだろうか。民主党のホームページに、こんな記事が載っている。なんと、まったく反省がない。

 

「政府がしっかり前に出て財源も含めて責任を負うべき」汚染水問題で海江田代表(8/26)

 

監査人は、粉飾決算で損害を受けた株主・投資家に対して損害賠償責任を負う。それと同じで、海江田氏(或いは、民主党)も、追加支出する国費を一部率先して肩代わりしたらどうか。我々が納税者として、汚染水対策費用を負担するのはやむを得ないと思う。ただ、海江田氏も納税者として同じ割合の負担しかしないというは、違うのではないか。まあ、現実的な提案ではないが、海江田氏や民主党に、そういう緊張感が欲しい。

 

要するに、一時は国の指導者になろうかと目された人(野田氏が首相になった時の民主党代表選では、海江田氏が本命候補だった)でさえも、情報開示の重要性が分かっていないという事実が、僕には恐ろしい。汚染水問題の責任は、第一義的には東電にあるとしても、海江田氏も“連帯”責任者の一人だと思う。

 

 

情報開示を怠れば、悲惨な結末へつながる。知っている経営者は多いと思うが、国の指導者は?

 

東電は、2011/3期の決算で「継続企業の前提に重大な疑義がある」とは開示したが、何が重大な疑義であるか、非常に不明瞭な開示だった(2012/6/23の記事など)。ただ、福島第一原発の廃炉に関して見積もりきれない費用があるという趣旨のことは記載していた(災害損失引当金)。

 

しかし、1000億円と具体的に試算されている遮水壁は、見積りきれないわけではないから、最初から引当計上するか、最低でも2011/3期には注記として、その後は第1四半期から引当計上すべきであった。だが、その後僕がフォローしていた2012/3期の期末決算まで、追加引当てされた形跡がない。少なくとも、有価証券報告書等に明示されていない。そしてその翌期(2013/3期)からは、「継続企業」の注記もなくなった。恐らく、災害損失引当金の金額を見る限り、当年度の第1四半期報告書にも引当されてないのではないか。

 

結局、東電は汚染水問題を隠し通してきた。臭いものに蓋をする隠蔽体質、見たくない現実を避けて通る重大な欠陥のあるリスク管理体制は、相変わらず、と思わざるえない。そして、その体質・体制を温存させたのは、海江田経産相(当時)だ。

 

その結果、今月末に期末日を迎える第2四半期決算では、汚染水対策として1000億円では済まない金額の引当が必要になるかもしれない。国家予算の予備費が投入されるというが、すでに問題は拡大している。東電の廣瀬社長は「さらに1兆円を確保していく」と回答したとのこと(NHK NEWS WEB 9/19)。もしかしたら再開されるかもしれない「継続企業の前提」の注記の内容を含め、今度こそ、しっかり、明瞭な情報開示と決算をしてほしい。それでこそ、「リスクがコントロールされた状態」になる。

 

さらに東電は、9/19、福島第一原発5・6号機の廃止を決定するよう安倍首相から要請を受けた(上記 NHK NEWS WEBの同じ記事か、下記ロイターの記事)。廣瀬社長は年内に判断すると回答したそうだが、まさか“再稼働の可能性が全くない(ロイター 9/19)”5・6号機廃止の結論を、第3四半期決算まで先延ばしにする気ではあるまい。第2四半期決算で、この廃止費用も含めて開示するのが当然だ(ロイターの記事にある廃炉会計云々は損失を取戻す方法のことであり、可能なら未収計上、そうでなければ注記すればよい。総額で計上される損失引当額の見積りとは関係ないから、言い訳にならない)。まだ東電に当事者能力が残っているなら、しっかり決断してほしい。

 

もし、これが第2四半期で開示(引当、または、注記)されないのであれば、上記の1000億円と同じだ。そして今度は、茂木経産相、そして、安倍首相の指導力と情報開示姿勢が問われることになる。

 

 

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