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2013年10月 1日 (火曜日)

294.【リースED】ゴルフの反省とこのシリーズのまとめ

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容の一部は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/10/1

今日から、米国の政府機関の機能が一部停止するらしい。米国政府の会計年度は9/30末日で、10/1開始なのだが、その予算が議会で審議できない。一か月半の暫定予算でつなごうとしたが、それも上院と下院のねじれで膠着状態だ。その結果、一部の政府機関が一時的に閉鎖されるらしい。このように国の予算審議の遅れは大変なことだが、このブログの「リースED」シリーズのまとめが、1日遅れの今日になっても大した影響はない。そう思って、日曜は久しぶりのゴルフに出かけた。天気にもメンバーにも恵まれ、とても良いゴルフになった。但し、スコアを除いてだが。

 

そこで、スコアに恵まれなかった理由を分析しよう。

 

(目的意識の徹底不足)

 

物事がうまくいかないとき、しばしば、目的がちゃんと理解されていない、或いは、その理解が徹底されていないことがある。僕は、本当は良いスコアを出したいのに、スウィングするときは思い切り振りまわすことに頭が支配される。目的意識が希薄なのだろうか。傍から見ると、力が入り過ぎの状態だ。これではうまくいくはずがない。

 

しかし、このシリーズでは、ゴルフと同じ間違いは犯していない。最初に誤解がないよう「リースのイメージを変える」ことに力を尽くしたつもりだ(7/47/27の記事)。この公開草案は、オペレーティング・リースの、特に借手の会計処理を改善するために出されたもので、そのためには「リース=ファイナンス・リース」という従来のイメージを払しょくさせようと、オペレーティング・リースや、従来オペレーティング・リースとさえ考えられていなかったサービス取引についても、リースが含まれる可能性があることを強調した。リースと判定されれば、会計方針として費用処理を選択した場合の短期リースを除き、借手はすべてのリース取引について、リース資産とリース負債を計上することになる。

 

 

(ドライバー:リースの識別)

 

次に、ドライバーが安定しないことが上げられる。まあ、力が入っているので当然の報いだが。各ホール、スタートで躓いていては、良いスコアになるはずがない。このリースEDでいえば、目的を誤解してリースの識別がうまくいかないようなものだ。そして、識別に失敗すれば、会計処理がうまくいくはずがない。

 

この公開草案におけるリースは、賃貸契約やリース契約といった契約の形式・種類で決まるのではなく、契約にリースとなる条件が含まれるかどうかで決まる。リースの条件は2つあり、一つは、リースの対象資産が具体的に特定されていることであり、これをサポートするポイントは、期間中に渡り、リース対象資産を入替える権利が貸手にないこと(=供給者に資産入替権がない、貨車の例、7/31の記事)、及び、リース対象資産が物理的に区別できることだった(光ファイバーの例、8/1の記事)。もう一つは、資産の使用を支配する権利が借手に移転していることで、これをサポートするポイントは、資産に使用を指図する能力と、それにより便益を得る能力が、借手にあることだった(8/9の記事)。

 

 

(リカバリー・ショット:戦略的なリース期間)

 

ドライバーでトラぶれば、次はボールをフェア・ウェイに戻す冷静なリカバリー・ショットが必要になる。こういうときほど基本に立ち返る必要がある。単にピンへ向かって打てばよいというものではない。さて、僕のボールは、木々の間から遠くにピンを見下ろせる斜面にあった。僕はピンが見えたことを不幸中の幸いとばかりに喜びを感じ、早速構えて一直線にピンを狙った。ただ、そこは左足下がりの難しい足場だった。シマッタ、と思った時には、アイアンを振り下ろしていた。ボールは、無情にも、すぐそこの木に当たって直角に跳ねた。本来は、冷静に打ちやすい方向へ回り道をすべきだったのだ。

 

契約にリースを識別したら、最終見積書から建物の取得原価を集計・按分するように、リースとそれ以外の要素を区分し、リースの取得原価を求める。また、固定資産の経済的耐用年数を決めるのと同様に、(事業戦略や製品戦略に裏付けられた)リース期間を決定する。

 

リースを識別したら、ちょっと落ち着いてその事業を引いて眺める必要がありそうだ。単純・拙速に契約書に記載のあるリース期間を、そのまま経営管理上(=会計上)のリース期間にしてはいけない。リースを行った目的が、単に延払いにしたいというだけであれば、それでも良いだろう。しかし、事業戦略や製品戦略上、もっと具体的な期間の使用を想定してリースを選択したのであれば、中途解約オプションや期間延長オプションを使用する可能性が高いかもしれない。したがって、リース期間を変更するオプション行使に重大な経済的インセンティブがあるかどうか、或いは、どのような場合に経済的インセンティブが高まるかを確認・理解する必要がある。

 

今後リースは、従来より戦略的な目的をもって使用される傾向が高まると思う。(その前提には、日本企業が、より戦略的な事業計画を持つことへの期待がある。) そのような場合、単純に契約書通りに会計処理してしまうと、逆に事業の姿が見えにくくなり、事業部門の足を引っ張りかねない。短慮やワンパターンな思考で、リース契約書のリース期間に飛びついてはいけない。リースは単に資金繰りに余裕を持たせるだけの道具ではなく、事業戦略を有利に進めるために利用されることが本来の姿と思うので、稟議書やその添付資料等で、必要に応じてこのような情報が共有できる仕組みを考えておくと良いのではないかと思う。

 

戦略といえば、自社工場を持たない、いわゆるファブレス企業(或いは事業)という形態は、その戦略性の表れかもしれない。このブログでは、外注加工契約や庸車契約にリースが含まれるケースがあるかどうかについて、敢えて検討を試みた。僕の考えでは、「ありえるが、あまり可能性は高くない」が結論だった(9/4の記事)。通常はあまり該当しないと思うが、「ありえる」とすれば、その特定の条件に対する注意は必要と思う。

 

 

(バンカー・ショット:リースの分類と会計方針)

 

なんといっても、僕のスコアを増やすことに最大の貢献をしたのはバンカー・ショットだ。1ショットで出せないことが2度あった。出せても、イメージと違うところに飛んで行ったことも2~3度あった。おまけにその後のプレーに心理的な悪影響を及ぼした。むしろ、これだけバンカーに祟られて、あのスコアなら満足すべきかもしれない。そこは、キャディの◯本さんの笑顔と同組のみなさんの励ましに感謝だ。

 

あのコースはバンカーの砂が固い。難しいから本来は入れないのが最上の戦略だが、僕の腕では期待できない。ということは、入れた場合のリスク管理に問題があった。リスク管理といっても難しいことはない。ボールの状態と、どこに出すべきかを強くイメージして、あとは足を広めに開いて短めに持ったクラブを振るだけだ。僕のバンカーショットは本来原則主義で、細かい場合分けをしない、シンプルなリスク管理に依っている。しかし、砂の固さが気になって、反って、色々考えすぎてしまった。普段は考えないのに・・・。

 

さて、この公開草案では、リースをタイプAとBに分類し、それぞれに借手・貸手の会計処理を定めている。一見、場合分けが細かくて複雑な印象を持ちやすいが、実はそんなことはない。というのは、リースに借手と貸手がいて、それぞれが別の会計処理をするのは当然だし、リースは借手・貸手の事業実態は幅が広い。それを消費の原則でシンプルに、主に不動産リースか否かでA・Bの2つに分類し、あとは会計処理を規定された手続き通りに進めていくと、日本基準なら3つに場合分けされている会計方針を選択することなしに、自動的にそれぞれの状況にあった会計表現が実現されていくからだ(9/27の記事)。

 

重要なのは、「“重大ではない”=“ささいな(=些細な)”」ということ、即ち、不動産リース以外がタイプBに分類される可能性は“ささい”という点だった(9/13の記事)。不動産リース以外でも、リース期間中にその資産の価値が殆ど消費されないケースがあるかもしれないが、不動産は土地という価値が消費されない資産と、建物という通常は耐用年数が非常に長く、リース期間中の消費割合の少ないものの組合わせなので、これと同等程度に消費が少ないリースはなかなか多くは考えづらい。この消費の原則のお陰で、例外規定はあるものの、分類の原則は非常にシンプルなイメージになっている。これは、バンカー・ショットをどこに出せばよいかを容易にイメージできるのと同じで、余分なことを考えず、力まない良いスウィングに貢献する。即ち、手間のかからない正確に分類に貢献する。あとは、砂が固かろうが、柔らかかろうが、決まった手続を進めるだけで良い。

 

ついでに、2つほどつけえ加えると、この公開草案で要求される会計方針の選択は、短期リースについて使用権資産とリース負債を計上するか、それとも従来のオペレーティング・リースの処理(発生主義による費用処理)を継続するかのみだった。9/26の記事では、大家さんには会計方針の選択があると書いたが、これはIAS40号「投資不動産」によるもので、当公開草案によるものではない。

 

それからもう一つ、9/17の記事の末尾にある問題が気になる。不動産リースのリース期間を決める際に、わが国の借地借家法の借主保護制度(強制規定)がどのように影響するかだ。借主にのみリース解約オプションがあり、貸主にはないということは、リース期間を決定する際、リース期間が経済耐用年数の大部分を占めるとせざるえないのではないだろうか。もしそうだとすると、借地借家法による賃貸契約は不動産リースだが、例外規定によりタイプAに分類される(9/10の記事)。それだけでなく、リース期間が必然的に長期となるので、借手のリース資産やリース負債が大きな金額となる。果たしてそれが経済実態に合っているのかどうか、借地借家法の法的解釈と共に、事前に研究・整理が必要だ。

 

 

以上で、このブログでのリースED'13の検討は無事?終了となった。一部の方は、1日遅れた理由がゴルフであると知って、また他の方は、僕のゴルフの腕前の程度を知って、ブログの内容にも不安や疑念を持たれたかもしれない。僕としては、すっかりゴルフの機会が減ったのでとても貴重な機会だったし、それ故、力が入ってしまうと言い訳するしかない。いやいや、そんなことでなく、リースのことだけで良かったのに、内容に無駄が多いと憤慨されている方には、申し訳ないとお詫びするしかない。

 

ところで、オバマケアを巡る米国民主党・共和党の争い、予算審議の遅れは、言い訳やお詫び程度で済むものではない。いつ決着するのか、まったく見通せないのは困ったものだ。このまま対立が続くと、連邦政府の債務上限引上げ協議もできず、17日以降は国債の増発ができなくなるという。にも拘らず、米国の金利は、10月下旬に償還期限を迎える一部の国債を除き、むしろ低下しているらしい。一部に、債務不履行に陥る可能性があるなどという報道もあるが、実際には手元資金と今後の税収で、まだなんとかなるらしい。(以上は9/27付のWSJの記事を参考にした。一応リンクを貼ったが有料かもしれない。)

 

といっても、自宅待機を余儀なくされる政府職員は、この先の生活に不安を感じているだろうし、連邦政府による一部の公共サービスがストップし、迷惑を被る米国民もいるだろう。そしてなにより、既に、円高・株安の影響が出始めている。アベノミクスへの“期待”が剥がれつつある日本の景気に悪影響が出ないうちに、何とか解決してほしい。

 

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