296.【CF DP'13】「概念フレームワークのディスカッション・ペーパー」シリーズ開始
2013/10/7
3月決算会社では先週から下期に入った。それ以外の決算期の会社の方も、朝晩の過ごしやすさから季節の移り変わりを感じているだろう。「あまちゃん」や「半沢直樹」が終了したことも大きいかもしれない。一部の方は、「あまちゃん」が終わってしまった喪失感に苛まされているという。喪失感といえば、僕の周囲でも「ああ、今年ももう終わってしまった。しかも、いつものような春は来ない。」などという声が聴かれる(これは残留が難しくなってるジュビロ磐田のサポーターの声)。
とにかく世の中は動いていく。ジュビロ・サポーターにはご同情を申し上げるが、慰める言葉は見つからない。しかし、僕は新しいシリーズに入っていきたい。そして、そのテーマは殆ど迷わずに決めた。「概念フレームワークのディスカッション・ペーパー」だ。「概念フレームワーク」は、英語で「Conceptual Framework」なので、タイトルでは、“CF”と略すことにした。“DP”は、もちろん「Discussion Paper」のこと。8月にASBJより日本語訳も公表されている(8/12 ASBJのプレスリリース)。
「概念フレームワーク」について、僕は以前、「日本でいえば企業会計原則のような位置づけ」に例えたことがあるし、会計の専門家以外の人、例えば経営者にとっては、「概念フレームワーク」を読むだけで、IFRSがなんであるかを、だいたい分かるようなものであってほしいと思っていることも書いた。
要するに「とっても大事なもの」だ。
IASB自体は、今回のディスカッション・ペーパーでも、概念フレームワークの位置づけを引上げようとはしていない。相変わらず次のように言っている。
・個別基準との間に矛盾があるときは、個別基準が優先する。
・概念フレームワークは、IASBが基準開発をすることの助けとなるためにある。
但し、面白いのは、「・・・IASB は、財務報告の全体的な目的を満たすために、「概念フレームワーク」の当該局面と矛盾する新基準又は改訂基準を公表する必要があると判断する可能性がある。これが生じた場合に、本ディスカッション・ペーパーでは、こうした場合に、IASB は、「概念フレームワーク」からの離脱とその理由を、当該基準に関する結論の根拠の中で記述すべきであると提案している。」としていることだ。
これは従来から、財務報告を行う企業がIFRSから離脱する場合に要求されていたことだが、それを今後はIASB自らにも要求するという提案がなされている。
僕は、「適正な開示」という言葉に、「ルール通りに開示することは最低限実施すべきことで、“適正な開示”を行うための十分条件ではない」とか、「“適正な開示”は企業が最終的な責任をもって行われるもので、単に会計基準や法令に準拠しているだけでは達成できない」という意味があると思っている。
今回のIASBのこの提案は、IASB自体が、会計基準開発者としての最終的な責任を負おうとする積極的な提案であると、前向きに評価したい。そして、今後、そのような開示が結論の根拠の中で積極的に行われることを期待したい。恐らく、そのような機会に遭遇した企業にも、どのように記載すればよいか参考になるはずだ。
ところで、これは248ページにも及ぶ長大なペーパーなので、頭から順にというわけにはいかない。全体をどのように見ていくか、まずは戦略を練る必要がある。とりあえず、このブログでは、次の角度については見ていきたいと思っている。
・その他の包括利益(OCI)と純利益の区分の考え方
・原価、公正価値や使用価値の位置づけや適用ルールの整理方法
・資産の定義の修正のされ方
いずれも、会計の基本に関わる重要問題だ。概念フレームワークを動かすことは、上に積上げられた個別基準の土台を揺るがすことにもなりかねないが、根本の改革に尻込みしていては世の中に取り残され、会計基準の機能が低下しかねない。絶えず改革が必要なのだ。
ジュビロ磐田もここ数年は“原点開起”というスローガンを掲げてチーム改革を進めてきたはずだが、まだまだ足りないようだ。しかし、ジュビロだけじゃない。アベノミクスは大丈夫だろうか。
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