« 297.【CF DP】資産の定義に着目する理由 | トップページ | 299.【番外編】ジム・ロジャーズ氏のアドバイス »

2013年10月10日 (木曜日)

298.【CF DP】資産の定義~IASBが変えたいもの=定義から、認識規準・測定規準の要素を分離

2013/10/10

米国共和党は、オバマケア(医療保険制度改革)をどうしても潰したいらしい。そのために米国連邦政府の一部がシャットダウンされ、さらに、17日以降には支払資金が足りなくなり、米国政府は債務不履行に陥るという。しかし、この法案は2010年3月に成立しているので、オバマ政権にしてみればそれを実行しているだけだ。共和党には共和党の立場があるのだろうが、いったん成立した法律を変えるなら、それなりの手続があるのではないだろうか。今のところ、世界経済は米国のデフォルトが回避される前提で、大きな混乱は起こっていないようだが、この前提が崩れれば、大変なことになる。

 

一方、この変える手続を着々と進行させているのが、この概念フレームワークのDPだ。IASBは、IFRS財団の定款に定められたデュー・プロセス(具体的には「デュー・プロセス・ハンドブック」)に従って、改正手続きを踏んでいる。しかし、改正手続きを踏めば混乱は起こらないかというとそうでもない。その改正内容次第だ。

 

ということで、今回は資産の定義についてIASBが変更しようとしている内容を紹介したい。DP2.11には、以下の表により、現行と提案の比較がされている。

 

                       
 

 

 
 

現行の定義

 
 

提案している定義

 
 

資産(企業の)

 
 

過去の事象の結果として企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源

 
 

過去の事象の結果として企業が支配している現在の経済的資源

 
 

負債(企業の)

 
 

過去の事象から発生した企業の現在の義務で、その決済により、経済的便益を有する資源が当該企業から流出することが予想されるもの

 
 

過去の事象の結果として企業が経済的資源を移転する現在の義務

 
 

経済的資源

 
 

[現行の定義はない]

 
 

権利又は他の価値の源泉で、経済的便益を生み出す能力があるもの

 

 

ぱっと見は、提案は現行より(空白が多いので)シンプルだな、という印象だ。その代り、“経済的資源”の定義が追加されている。“経済的資源”は俗な言葉でいえば“金目のもの”ということで、別にむずかしいことはないと思うが、重要なのは省略された部分だ。資産も負債も次のフレーズがなくなっている。

 

 「経済的便益(或いは、経済的便益を有する資源)が企業に流入(或いは、流出)すると期待される」

 

IASBはこれについて次のように説明している(2.13)。

 

現行の定義は経済的便益の予想されるフローに言及しているため、一部の読者は、資源(資産)又は義務(負債)を、それにより生じる経済的便益の流入又は流出と混同する場合があった。

 

どういうことかというと、資源があっても、将来キャッシュフローの流入が見込めないもの(或いは、将来キャッシュフローの流入が少なそうなもの)を、資産とは考えない人達がいるが、それは誤りだと言っている。

 

「えっ、重要性や不確実性を考えないってこと?」と思われるだろう。どうやら、それが一つ。そして、それに加えてもう一つ、「資産がいくらか測れないものは資産と考えない」という考えを間違いと言いたいらしい。

 

そういえば、会議室などに絵画が飾ってあると、「これは資産計上されてるんだろうか?」などと気になることがある。尋ねて、「いえいえ、その辺で買った安物、コピーですよ」なんて返答してもらえるとホッとするが、「バブルのころに買いましてね。当時は数百万したと思いますよ」なんて言われると、「資産でなく、費用処理されていればいいなあ」と思ってしまう。今いくらするか分からないからだ。

 

重要性や不確実性も、そして価値を測れないもの(或いは、測るのにコストのかかるもの)の扱いも、実務の知恵がある。これを読むと、それを否定されているように感じて、ちょっとムッと来る。もしかして、IASBは実務家を敵に回そうとしてるんじゃないか?

 

いや、まだここで決めつけるのは早すぎる。というのは、あとの方でこれらの問題を議論しているからだ。単に頭の整理として、資産かどうか、という問題と、不確実性や重要性、測定可能性の問題を区別してくれ、ということかもしれない。

 

資産の定義、資産の認識、資産の測定。この3つをちゃんと厳密に区分けして整理したい。或いは、資産の定義から「経済的便益の予想フロー」の記載を削除する提案をしたのは、定義から、認識規準や測定規準を分離したかったため。

 

今回のところは、IASBの意図をそう解釈して、後日、これらの詳しい議論を見ていこう。しかし、分離するとどんないいことがあるのだろうか? それも後日。

 

 

ところで、ちょっと付け加えだが、前回(10/9の記事)の僕の“基本構造”に関しては、良い感触が得られる記述が見つかった。即ち、資産が分かれば利益まで分かるというIFRSのシンプルな理論構造が維持されそうな感じがした。それは、この資産・負債の定義の提案のメリットとして、次のように記載されているからだ(2.13(b))。

 

・・・追加的な利点として、この変更案により、定義がより簡潔で焦点の合ったものとなり、資産の定義と負債の定義の対比をより明確に示すことになる。

 

そう、確かに提案された定義は、現行のものより資産と負債のパラレル度が増している。それを“メリット”にカウントしているということは、IASBも、このシンプルな基本構造を意識しているのかもしれない。だとすれば、意外と、“僕が勝手に言っている”ものではないのかもしれない。

« 297.【CF DP】資産の定義に着目する理由 | トップページ | 299.【番外編】ジム・ロジャーズ氏のアドバイス »

IFRS全般(適正開示の枠組み、フレームワーク・・・)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/577176/58352996

この記事へのトラックバック一覧です: 298.【CF DP】資産の定義~IASBが変えたいもの=定義から、認識規準・測定規準の要素を分離:

« 297.【CF DP】資産の定義に着目する理由 | トップページ | 299.【番外編】ジム・ロジャーズ氏のアドバイス »

2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ