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2013年10月21日 (月曜日)

300.【CF DP】資産の定義~IASBが変えたいもの=不確実性を個別基準へ追放?

2013/10/21

このシリーズの更新が滞っている。原因は、提案されている資産の定義の変更が「“不確実性”を概念フレームワークから追出し、個別基準へ押し込めようとしている」と僕が感じ、その影響をどうとらえて良いか分からず、混乱しているからだ。

 

“不確実性”は、常に経営につきまとうものであり、そこにチャンスもあればリスクもある。ゴルフにおける“自然環境”と同様に、企業経営における“不確実性”は、ゲームの隠れた主役だ。或いは、人間がなにか運動するときの“重力”のようなものと例えてもよいかもしれない。例えば、人はゴミ箱にゴミを投げ入れるとき、視線はゴミ箱の穴に集中するが、実は無意識に“重力”の影響を計算している。経営における“不確実性”は、それと同様に一般的だし重要なものだ。それを会計だからといって、個別基準に追いやってよいのだろうか。

 

このシリーズの前回(10/10)、僕は、IASBが資産の定義から、不確実性等の問題を分離し、資産の定義から認識規準や測定規準とすべき要素を切離したいと考えている旨の記載をした。しかしIASBは、それだけでなく、不確実性を、概念フレームワークにおける認識規準や測定規準からも切り離し、必要な場合に個別基準で記述すればよい、とまでを提案していることが分かった。即ち、多くの会計分野で、基準上、不確実性が意識されないことになる。企業経営上の隠れた主役で極めて存在感の大きい“不確実性”を、会計はこのような端役に押しやって大丈夫か? これが直感的に感じる僕の不安だ。

 

実は、僕は以前このブログで、「保守主義(=慎重性)は、経営の問題(=リスク管理の問題)であり会計の問題ではないから、IFRSの概念フレームワークに保守主義に関する記述がないのはおかしくない。会計よりも、その前提となる経営の段階で当然に考慮されるべきで、会計上特別に必要ならば個別の規準の中に織り込めばよい」と主張した(2012/9/4「脱線4~保守主義の本質はリスク管理?」2012/9/18「【製造業】マーフィーの法則と保守主義」)。

 

IASBは、これと同じ理屈を“不確実性”についても適用しようとしているのか? 保守主義と“不確実性”は、確かに似ている気もするが、果たして、会計との関わりにおいて、同じ範疇で扱えるものなのだろうか?

 

会計における保守主義は「早めの費用計上、遅めの収益計上」とか、「費用は多めに、収益は少なめに」などと表現されるが、これは概念フレームワークの「有用な財務情報の質的特性」である経済実態の“忠実な表現”とか、“中立性”とは相容れない可能性がある。しかし、不確実な経済実態、或いは、不確実性の異なる状況をどう表現するか、というのは会計の問題ではないか? したがって、保守主義と“不確実性”を同じ理屈で括ることはできないのではないか。

 

と、色々疑問が湧いていて、まるでゴルフでミス・ショットしたときのように、即ち、「ファー」と叫んで隣のコースからショットを打ち戻す時のように、方向感や距離感を失ってしまった。ゴルフなら、キャディーさんや仲間の助けもあるし、最悪適当に打つこともできるが、これはそうもいくまい。

 

ということで、少々時間がかかっている。スロー・プレーで心苦しいが、ご勘弁願いたい。(だが、とりあえずIASBの提案をそのままご紹介させていただこうか・・・)

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