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2013年10月25日 (金曜日)

302.【CF DP】IASBの提案の概要(2/3)

2013/10/25

以前も書いたが、今年は温湿度計を購入し、居住環境の見える化をしてみた。すると、この数週間に気温が10度も下がっていることが分かった。半袖でも汗をかく気候から、長袖の上にカーディガンや薄手のセーターを羽織りたくなるところまで、あっという間に変化した。温暖化の影響だろうか。しかし、自然のダイナミックさを感じる。

 

あまり関係ないが、この概念フレームワークのディスカッション・ペーパーを読んでいると、IFRSもまだまだ変化しそうな気がする。会計理論の根本が整理されていくので、基本的には良いことだと思う。

 

 

セクション5――持分の定義及び負債要素と持分要素の区別

 

(予備的見解)

 

IASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 「概念フレームワーク」は、現在の持分の定義(すべての負債を控除した後の企業の資産に対する残余持分)を維持すべきである。

 

(b) 「概念フレームワーク」は、IASB は負債及び持分の定義を使用して負債と資本性金融商品とを区別すべきであると記述すべきである。これの2 つの帰結は以下のことである。

 

(ii) 資本性金融商品を発行する義務は、負債ではない。

 

(iii) 報告企業の清算時にだけ生じる義務は、負債ではない。

 

(c) 企業は次のことを行うべきである。

 

(i) 持分請求権の各クラスの測定値を、各報告期間の末日現在で見直す。IASB は、個々の基準を開発又は改訂する際に、当該測定値を直接的な測定値とするのか、それとも持分の合計額の配分額とするのかを決定することになる。

 

(ii) それらの測定の見直しを、持分変動計算書において、持分請求権のクラス間での富の移転として認識する。

 

(d) 企業が資本性金融商品を発行していない場合には、最も劣後したクラスの金融商品を持分請求権であるかのようにして扱い、適切な開示を付するのが適切かもしれない。

 

このようなアプローチを使用すべきかどうか、またはその場合にいつ使用すべきかの識別は、IASB が個々の基準を開発又は改訂する際に行うことが必要となる決定である。

 

色々記載されているが、ざっと、簡潔に、大雑把に書くと、次の2点がメインテーマとなっている。

 

・親会社がある場合の親会社の持分や非支配持分、(持分に分類された)優先株や後配株、新株予約権といった持分請求権の種類(=クラス)ごとの開示の強化

 

持分額は、資産から負債を差引いて求められるが、それを上記のような各クラスに割当てるとか配分するようなイメージの開示を考えているらしい。すると、例えば株式の内容・種類に応じた一株当たり純資産が計算できるようになると予想される(が、詳しい計算は概念フレームワークでは扱われないので、分からない)。

 

・負債と持分(=資本)を区分する規準の整理

 

現行の負債と持分を区別する規準は非常に複雑で分かり難いので、これにメスを入れて整理する準備にしようという趣旨だと思う(特にIAS32号)。僕は前職時代に、クライアント向けに研修の講師をやったことがあるが、このテーマについては難儀した思い出がある。

 

ちょっと余談になるが、みなさんは、金融機関のバブル清算、不良債権処理を行うために投入された“公的資金”のことを覚えてらっしゃるだろう。

 

これは、金融機関が配当優先株式を発行し、政府が購入(=出資)するという形で行われた。不良債権処理を行って自己資本が減少すると、BIS規制など自己資本規制に抵触して国際業務ができなくなったり、最悪の場合には金融庁から業務停止処分を受ける(即ち、経営破綻する)。それを避けるために優先株式発行によって、資本の部に厚みを持たせた。したがって、公的資金は単なる資金供給ではなく、資本の部に計上されるものでなければ意味がない。しかし、資本の部に計上されるものであるならば、基本的に返済不要のはずであり、投資者である政府がリスクを負わなければならないはずだ。

 

ところが、その後、金融機関は必死にその“公的資金”を返済した。一般的には、税金を私企業に投入するなど以ての外、当然早期に返済すべきとされているので、その“必死さ”を見ても、あまり疑問を感じる人はいなかったと思う。しかし中には、返済が義務であればこれは負債ではないのか、本当に資本の部に計上すべきものか?と疑問を感じた方もいらしたのではないか。

 

ちなみにIFRSでは、現行でも一部の優先株式は負債へ分類される(IAS32号)。日本は優先株式でも“株式”という法的形式を優先させるが、IFRSはより経済実態を優先させる。もし、当時の公的資金と同じやり方が、現在のIFRS採用企業へ行われると、資本の部ではなく負債として計上されるかもしれない。

 

そういえば例のオリンパス事件では、英国子会社(ジャイラス)が発行した配当優先株式が問題の一つだった。英国子会社はIFRSによりこれを額面の165億円で、資本の部でなく負債へ計上していた。これはFA(=ファイナンシャル・アドバイザー)に対する報酬として発行させられたものだったので(発行時は新株予約権)、ジャイラスは発行の対価を受け取っていない。その後オリンパスは、これをFAから579億円で買取り、ジャイラス株式取得の付随費用としてジャイラス株式(=資本性金融商品)に上乗せした。(実際には、この買取り資金は裏ファンドに流れて、こっそり損失の穴埋めに利用された。)

 

しかし、もし、取得した優先株式が、IFRSのように実態はジャイラスに対する貸付金(=負債性金融商品)であると考えていれば、この法外なFA手数料の少なくとも額面を超える部分は、ジャイラス株式に上乗せできなかったかもしれない。

 

というのは、この優先株式の評価が165億円から579億円に跳ね上がったのは、額面の10%を永久に毎年配当するという条件が追加されたためだが、M&Aの終了後にジャイラスの資本の再構成(=100%子会社化。優先株式を資本とする日本基準ベースでのオリンパス側の解釈)のために追加された条件なので、もはやFA報酬とはいえないからだ。(だが、優先株式を資本とするなら、FA報酬といえなくても579億円全額がジャイラス株式の取得価額に追加される。)

 

しかも、ひどい話だが、この直後にジャイラスによって配当しないという決議がなされている。もし、IFRSのように貸付金や社債として処理されていれば、この配当によって増価された部分は減損されるので、オリンパスは、一時に、多額の損失計上を余儀なくされる。しかし、それでは当時のオリンパスの目的である「損失を先送りしながら裏ファンドを解消すること」ができない。すると、そもそも、この不正取引は企画倒れになっていたかもしれない。したがって、この不正取引は、会計規準の相違が可能にしたといえるかもしれない。

 

(以上については、第三者委員会報告とマイケル・ウッドフォード氏の著作「解任」に記載されていた事実関係を参考にしながら、僕の考えを記載した。このほか、もし、日本基準のように優先株式や当初の新株予約権を資本と考えると、このFAも買収者の一人になるので、被買収会社は買収者に財政的支援をしてはならないという当時の英国国内法で違法とされた可能性があるようだ。したがって、英国がもし日本基準と同様の扱いだったら、やはり、この取引は行われなかった可能性がある。)

 

 

セクション6――測定

 

(予備的見解)

 

測定に関するIASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 測定の目的は、次のことに関する目的適合性のある情報の忠実な表現に寄与することである。

 

(i) 企業の資源、企業に対する請求権、及び資源と請求権の変動

 

(ii) 企業の経営者及び統治機関が企業の資源を使用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたのか

 

(b) 資産及び負債についての単一の測定基礎は、財務諸表利用者にとって最も目的適合性の高い情報を提供しない場合がある。

 

(c) 特定の項目についてどの測定を使用するのかを選択する際に、IASB は、当該測定が財政状態計算書及び純損益とOCI を表示する計算書の両方においてどのような情報を生み出すのかを考慮すべきである。

 

(d) 特定の測定の目的適合性は、投資者、債権者及び他の融資者が、その種類の資産又は負債がどのように将来キャッシュ・フローに寄与するのかをどのように評価する可能性が高いのかに応じて決まる。したがって、測定の選択は、

 

(i) 個々の資産について、当該資産がどのように将来キャッシュ・フローに寄与するのかに応じて決めるべきである。

 

(ii) 個々の負債について、企業が当該負債をどのように決済又は履行するのかに応じて決めるべきである。

 

(e) 使用する異なる測定の数は、目的適合性のある情報を提供するために必要な最小限の数とすべきである。不必要な測定変更は避けるべきであり、必要な測定変更は説明すべきである。

 

(f) 財務諸表利用者にとっての特定の測定の便益は、コストを正当化するのに十分なものであることが必要である。

 

僕が最も重要と思ったのは、原価、市場価格(公正価値を含む)、使用価値など将来キャッシュ・フローを基礎とした方法など、複数の測定方法が“必要”とされ、その使い分けが論じられている点だ。従来の“IFRSは公正価値会計”とか、さらに“IFRSは解散価値会計”などという批判を意識してのことかもしれない。しかし、これで「いずれ有形固定資産もすべて公正価値評価になってしまう」などという心配(例えば2011/11/2の記事)は杞憂に過ぎないことが、確認できたように思う。

 

但し、どの測定方法によるとしても、将来キャッシュ・フローは必ず基礎にある。たとえ原価ベースが採用されている項目でも、減損テストで将来キャッシュ・フローによる回収が可能かどうかが試される。これは、財務報告の目的が、「現在の及び潜在的な投資者、融資者及び他の債権者が企業への資産の提供に関する意思決定を行う際に有用な、報告企業についての財務報告を提供すること」であり、その提供される情報が「将来の正味キャッシュ・インフローに対するその企業の見通しを評価する」ために有用であることが必要とされる(概念フレームワークの第1章、2012/1/20の記事)からだと思う。

 

しかし、それだけではない。将来キャッシュ・フローの流入が著しく不足すれば、継続企業の前提を脅かす問題になるし、企業価値を上げるためには、事業からの正味将来キャッシュ・フローを増やす戦略を構築し、絶えず状況の変化に応じて見直す必要がある。即ち、将来キャッシュ・フローは、経営の基礎情報として非常に重要なはずだ。

 

ところが、将来キャッシュ・フローを適切に見積ることは、簡単ではない。したがって、その精度を向上させることは、経営上も極めて重要な課題のはずなので、そういう観点でこのセクションは読みたいと思う。ということで、多分、またここには戻ってくると思う。

 

ちなみに、僕の個人的見解としては、見積りの精度の良否は、将来を当てるかどうかではなく、経営に客観性を持たせられるかどうかで決まるのではないかと思う。それには外部環境や顧客ニーズの分析・把握や明確な前提・仮定がポイントになる。(これでお分かりの通り、見積りは事業計画が前提であるため、経理部だけの問題ではない。)

 

 

まだ、以下のセクションが残っているが、長くなるので、次回に繰り越したい。

 

セクション7――表示及び開示

セクション8――包括利益計算書における表示

セクション9――その他の論点

 

 

 

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