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2013年10月29日 (火曜日)

303.【CF DP】IASBの提案の概要(3/3)

2013/10/29

日曜日に静岡ダービーがあって、清水エスパルスがジュビロ磐田に勝利した。エスパルスがお気に入りの僕にとっては喜ばしいことなのだが、実は素直に喜べない。いよいよ、ジュビロのJ1残留が厳しくなってきたからだ。かつては“王者”の称号付きで呼ばれたジュビロがもし落ちれば、昨年のガンバ大阪のJ2行きより遙かに衝撃が大きい。(僕にとっては。)

 

ジュビロというチームは、僕にとって「企業会計原則」のようなものだ。「企業会計原則」が会計への入り口だったように、ジュビロは僕がサッカーへ興味を持つきっかけとなったチームだった。

 

Jリーグが始まった20年前、僕は多摩川べりに住んでいた。そこは、ベルディ川崎がホーム・グラウンドにしていた等々力競技場の歓声が、微かに聴こえた。しかし、ベルディのファンではなかった。そもそも、サッカーに興味がなかったのだ。

 

それが、ジュビロの華麗なパスサッカーを見て変わった。ジュビロがサッカーの面白さを教えてくれた。今でもヤマハ・スタジアムやエコパで行われるジュビロ主催の試合へ足を運ぶことがある。今年も2~3回行った。それが来期はJ2に落ちるなんて・・・

 

入り口といえば、僕がIFRSに興味を持つきっかけの一つは、「概念フレームワーク」だ。内容を読んだのはずっと最近のことだが、その存在を知った時は、会計規準の基本概念を統一して会計規準全体に横串を通すというのは、凄い発想だと思った。日本基準は、「この取引にはこの規準」という感じで、取引ごとにたくさん規準がある。このような規準の体系だと、「規準がないから会計処理できない」とか、「規準間で矛盾がある」こともありえるが、IFRSでは「概念フレームワーク」が整理し、悪影響を緩和してくれる。

 

日本にも「企業会計原則」があるが、長い間、まったく改善の手が加えられておらず、錆びついている。だから、「規準の隙間を企業会計原則が埋める」というほどの権威がない。もう、ほとんど実務で参照されることがなくなってしまった形ばかりの「名誉規準」になっている。嘆かわしいことだが、今更再生させるのは、手間がかかりすぎて無理という話を聞いたことがある。もう、かつての輝きを取り戻すことはないだろう。

 

ジュビロがこの「企業会計原則」とは違い、かつての“王者”の輝きを取り戻すことを願いつつ、「概念フレームワーク」改善のためのディスカッション・ペーパーに戻ることにしよう。

 

 

セクション7――表示及び開示

 

現行の概念フレームワークは、元々“未完成”とされており、大きなテーマがいくつか抜けている。その一つがこの「表示及び開示」だ。IASBは、“注記”や“科目表示(分類及び集約)”についての原則を考えるうえで、基本財務諸表の目的から説き起こしている。

 

(IASBの予備的見解)

 

表示及び開示に関するIASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 基本財務諸表の目的は、認識している資産、負債、持分、収益、費用、持分変動及びキャッシュ・フローに関する要約された情報(財務諸表利用者が企業への資源の提供に関して意思決定する際に有用な方法で分類し集約したもの)を提供することである。

 

(b) 財務諸表注記の目的は、次の事項に関する追加的な有用な情報を提供することにより、基本財務諸表を補完することである。

 

(i) 企業の資産、負債、持分、収益、費用、持分変動及びキャッシュ・フロー

(ii) 企業の経営者及び統治機関が企業の資源を使用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたのか

 

(c) 開示の目的を果たすため、IASB は通常、次の事項に関する開示を要求することを考慮することになる。

 

(i) 報告企業全体

 

(ii) 企業の基本財務諸表で認識した金額。これには当該金額の変動を含む(例えば、表示科目の分解、増減内訳表、調整表など)

 

(iii) 企業の未認識の資産及び負債の性質及び程度

 

(iv) 企業の資産及び負債(認識済みであれ未認識であれ)から生じるリスクの性質及び程度

 

(v) 手法、仮定及び判断、並びに当該手法、仮定及び判断の変更で、表示している金額又は他の方法で開示している金額に影響を与えるもの

 

(d) 重要性の概念は、現行の「概念フレームワーク」で明確に記述されている。したがって、IASB は、重要性に関する「概念フレームワーク」のガイダンスへの修正又は追加を提案していない。しかし、IASB は、「概念フレームワーク」プロジェクトの外で、重要性に関する追加的なガイダンス又は教育マテリアルの開発を検討している。

 

(e) 将来予測的な情報は、既存の資産及び負債、又は報告期間中に存在していた資産及び負債に関する目的適合性のある情報を提供する場合には、財務諸表注記に含める。

 

セクション7 の本文の内容を見ると、この予備的見解は、現行の概念フレームワークの「一般目的財務報告の目的」、「基本的な質的特性(目的適合性、忠実な表現)」を基礎にしている。即ち、どうしたら、財務諸表の読者が企業の正味将来キャッシュ・フローの見通しを評価するのに有益な情報になるか(、かつ、それに相応しい重要性を確保できるか)、どうしたら経済実態を忠実に表現できるか、という観点で、上記に関する検討がなされている。

 

ひとつ、その象徴的な部分を抜き出してご紹介する(7.36)。

 

IFRS における開示のガイダンスを設定する際に、その目的は、基本財務諸表に認識された金額を財務諸表利用者が再計算できるようにする情報を企業に提供させることではない。むしろ、開示のガイダンスは、企業の財政状態及び業績の主要な決定要因を財務諸表利用者が識別でき、資産及び負債から生じる主要なリスク、並びに財務諸表に用いている測定に関する不確実性の原因となる主要な事実を理解できるようにする十分な情報を、企業が提供する結果となることが必要である。

 

簡単にいえば、財務数値の変動要因や因果関係を理解できるように注記する、ということだが、次の点については注意が必要だ。

 

・基本財務諸表に開示されている財務数値は、過去の事実の結果に加え、測定における将来事象に対する企業の予測や判断を含んでいる。

 

・注記によって、基本財務諸表の変動要因や因果関係を理解できるようにするには、過去実績の測定に使用した企業の将来予測的な情報の開示も必要(例えば将来キャッシュフローの見積りの基礎やその判断に関する主要な事実)。

 

(以上が 7.36 を読む際の注意点だが、その他に、後発事象や偶発資産・偶発債務のような未認識資産・負債の情報も、開示すべき将来予測的な情報に含まれる。これらは、必要な場合に、個別のIFRSによって開示が要求される。)

 

注記から、財務数値の変動要因や因果関係が理解できて初めて、「財務諸表の読者が企業の正味将来キャッシュ・フローの見通しを評価するのに有益な情報になり(、かつ、それに相応しい重要性があり)、経済実態を忠実に表現する」ということになるわけだ。

 

なお、誤解のないように補足すると、原則として、財務諸表には将来予測的な情報を含めない。例えば、決算日の翌日に購入する予定の資産を、当期のB/Sに記帳することはない。しかし、決算日時点に存在する資産や負債の評価金額を決定(=測定)するためには、いわゆる会計上の見積りが必要となる。その見積りには特定の計画や割引率などの見積りの基礎、即ち、将来予測的な情報が必要となる。だが、基本的には、事業計画から将来事象~特に経営施策による改善的なもの~を排除するので、期末時点の見通しや状況を引延ばしたようなイメージになる(例えば、割引率は期末時点の水準が将来も継続すると仮定される)。即ち、見積りからは将来事象が極力排除される。そうしないと実績情報の開示にならない。

 

財務諸表(注記を含む)は、資産や負債の定義で“現在の”が強調されていることからわかる通り、基本的に過去実績の情報であり、「企業の正味将来キャッシュ・フローの見通しを評価する」のは財務諸表の読者が行うことだ。将来何が起こるかは、偶発債務のように財務諸表の注記として開示されたり、リスク情報のように財務諸表以外のところで企業によって提示されたりする。そしてそれらを参考にして読者が将来を予想し、分析するとき、企業の財政状態や経営成績に、どのような影響があるかを理解できる十分な情報を財務諸表で提供する。これが上記の趣旨だ。

 

この考え方は、IASBが個別のIFRSを開発する際に考慮されるべきものとして提案されているものだが、企業が注記内容を具体的に考える際にも、もちろん参考になる。

 

ちなみに、以下のように、注記に関する企業の判断領域、裁量の幅、そして企業が果たす責任への期待は大きい。したがって、この考え方を企業がしっかり理解することの重要性も大きい。

 

情報に重要性がない場合には、企業は、基準で要求されている具体的な開示を要求されない。IAS1.31

 

IFRS の特定の要求事項に準拠するだけでは、特定の取引及び他の事象や状況が企業の財政状態や財務業績に与える影響を財務諸表利用者が理解するのに不十分である場合には、企業は追加的な開示を提供すべきである。IAS1.17(C)

 

即ち、規準で注記を要求されていても、不要なら企業の判断で開示を省略すべきだし、逆に要求されていないことも必要なら開示する(これらはIAS1号の確定した規程であり、このディスカッション・ペーパーの検討事項ではない)。これには、IFRSの“適正表示”の思想の一端が現われている。

 

このディスカッション・ペーパーでは、この判断の際、「他社が開示しているから開示する」とか、「他社が開示しないから開示しない」、或いは、「他社と同様の形式で開示する」は、良い判断にではないことを、はっきり明確にさせようとしているようだ。あくまで、その企業固有の状況が開示の対象であり、重要性のない情報(=目的適合性のない情報)は、たとえ比較可能性のためであっても有用でない。

 

まあ、難しく書いてあるが、この本質は、企業の様々な担当者が、経営に資料を提示する際、気を利かして分かりやすい脚注を付けるのと、基本的には変わらないかもしれない。ただ、その目的がなんであるかに意識を向けるよう明示したことに、大きな意味があると思う。

 

 

セクション8――包括利益計算書における表示

 

このテーマは、みなさんの関心が高いと思う。P/Lでの純利益とOCI(その他の包括利益)の区分の話、そして、リサイクリングの話だ。ここにはまた戻ってきて、詳しく見てみるつもりなので、今回はIASBの予備的見解のみを記載する。

 

(IASBの予備的見解)

 

IASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 「概念フレームワーク」は、純損益の合計額又は小計を要求すべきであり、これも収益及び費用の項目の一部をリサイクルする結果となるか又はそうなる可能性がある。

 

(b) OCI の使用は、資産及び負債の現在測定値の変動(再測定)から生じた収益及び費用の項目に限定すべきである。しかし、こうした再測定のすべてがOCI での認識に適格となるわけではない。セクション8 では、どの再測定がOCI に含まれる可能性があるのかを明確にするために使用できる2 つのアプローチを論じている。

 

 

セクション9――その他の論点

 

僕は、以下の4つの論点のうち、ac には関心がある。特に c (=継続企業)については、汚染水問題などで東京電力の状況が大きく変わったので、その際に、再び問題になるかもしれない。このディスカッション・ペーパーで、なにか考え方が変わったり、深掘りされたりすれば面白いと期待していた。しかし、どうやら期待外れのようで、今は、関心を失っている(要するに、あまり深く検討されていないようだ)。残る a b については、他の問題に絡められる場合があれば、合わせて取上げていきたい。

 

(IASBの議論の内容)

 

セクション9 では、次のことを議論している。

 

(a) 現行の「概念フレームワーク」の第1 章「一般目的財務報告の目的」及び第3 章「有用な財務情報の質的特性」に対するIASB のアプローチ。IASB は、これらの章の内容を根本的に再検討するつもりはない。しかし、IASB は、「概念フレームワーク」の残りの部分に関する作業で明確化又は修正の必要性が明らかになった場合には、これらの章に変更を加えるであろう。セクション9 では、これらの章が受託責任、信頼性及び慎重性の論点を扱っている方法に関して一部の人々が提起した懸念についても議論している。

 

(b) 財務報告における事業モデル概念の使用――本ディスカッション・ペーパーでは事業モデルの概念を定義していない。しかし、IASB の予備的見解は、IASB が新基準又は改訂基準を開発する際に、企業がどのように事業活動を行うのかをIASB が考慮するならば、財務諸表の目的適合性を高めることができるというものである。

 

(c) 会計単位――IASB の予備的見解としては、会計単位は通常、IASB が特定の基準を開発又は改訂する際に決定されるものであり、IASB は有用な情報の質的特性を考慮すべきである。

 

(d) 継続企業――IASBは、継続企業の前提が目的適合性を有する3つの状況を識別した(資産及び負債を測定する際、負債を識別する際、及び企業に関する開示を行う際)。

 

(e) 資本維持――IASB は、高インフレに関するプロジェクトに取り組む場合には、資本維持概念を再検討する可能性がある。IASB は、こうしたプロジェクトに取り組むまでは、改訂「概念フレームワーク」において、資本維持概念の現行の記述及び議論をほとんど変えないでおく予定である。

 

 

以上で、このディスカッション・ペーパーの概要紹介は終わる。次回からは、改めて、10/7の記事に挙げたいくつかのポイントや、この3回の紹介記事で頭出しをしたポイントを深掘りして行きたい。

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