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2013年10月

2013年10月31日 (木曜日)

304.CF DP-08)資産の定義~不確実性の議論の方針

2013/10/31

このシリーズを始めてそろそろ1カ月、今回が8本目の記事になる。「こんな退屈なシリーズは早く終わらせろ」と思われる方もいらっしゃると思うが、面白くなるのはこれからだ。もう少し、ご辛抱願いたい。

 

さて、僕は資産の定義から手を付けたが、「概念フレームワークから不確実性を外す」というIASBの意図を測りかねて一端頓挫し(10/21の記事)、とりあえず、アジェンダと概要をみなさんに報告することへ方針を変更した。それが前回(10/29の記事)で終了したので、今回からまた、資産の定義に戻ることになる。

 

IASBも行っているように、問題解決のためには、より根本的な原則に立ち戻って、そこからその問題を眺めて見るのが良い。IFRSの根本である概念フレームワークよりさらに根本とは何か。それは、会計の目的、即ち、会計は何故行われるのか、何を表現しようとしているのかということだろう。ということで、今回以降はIFRSを外れた話になるが、それは何も珍しいことではない。このブログを読まれているみなさんは驚かないと思うが、一応それを始めにはっきりさせてから中身に入る。

 

 

ということで、この間、僕なりに色々考えたが、キーになるのは次の2点ではないかと思う。

 

. 会計における不確実性と経営の不確実性の違い

 

. なぜ(自己創設)のれんを資産計上しないか

 

「これらが会計の目的と関係あるのか?」と思われた方も多いと思うが、僕は関係があると思っている。それは追々説明するので、まずこれからの議論の概略をご理解願いたい。

 

Aは、「(このディスカッション・ペーパーでは)どうやら会計における不確実性は、一般的に言われる(経営の)不確実性とは異なる。全然範囲が狭そうだ。」ということを説明したい。こんなに限定された不確実性なら、IASBが「概念フレームワーク」から外そうと考えるのも頷ける、という方向の話になる。

 

一方Bは、Aに対する反対意見だ。「本当に2つの不確実性はそれほど違うのだろうか」という問いが起点になる。自己創設のれんを資産計上しないのは、それ以外のすべてを表現することで、逆にそれを表現しようとしているからだ、即ち、「自己創設のれんを表現することこそ、会計の目的である」という主張を行い、そこから、自己創設のれんと不確実性の関係は、経営における不確実性と同様に重要なので、やはり会計における不確実性も概念フレームワークで扱うに足る大きな問題だ、と続いていく予定だ。

 

もちろん、これは現段階の構想であり、書いていくうちに変わってしまうかもしれない。その点は、もしそうなったら申し訳ないと、予め、お詫びを申し上げる。

 

だが、「のれんシリーズ」を既にお読みいただいた方は、Bが単なる思い付きでなく「以前も同じようなことが書いてあったなあ」と思い出していただけると思う。もし、ご確認いただけるなら、次の記事辺りが良いと思う。

 

2012/12/27 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(16)“再”のれんの本質

1/7 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(17)統合報告書の内容要素

1/10 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(18)ついに「のれん=人の評価」!

1/16 のれん  毎期規則的に減損するのはどう?(19)企業は生き物

 

たくさんリストアップしてしまったが、これでも一応絞ったつもりなのでご容赦願いたい。このポイントは僕にとっては説明が難しく、苦労を重ねた部分だった。統合報告を引っ張り出し、それにインテルの長友選手や、ぬいぐるみの話を加えてみたのだが、うまく説明できた気がしない。それにしても、たくさん挙げたので、まるでこのブログの宣伝のようになってしまい、ちょっと気が引ける。また、実際にお読みいただける方には、予想外の時間が犠牲になるので申し訳ない。その代りと言ってはなんだが、今回は短く、もう終わらせることにする。(ん~、逆にますます宣伝ぽい?)

 

2013年10月29日 (火曜日)

303.【CF DP】IASBの提案の概要(3/3)

2013/10/29

日曜日に静岡ダービーがあって、清水エスパルスがジュビロ磐田に勝利した。エスパルスがお気に入りの僕にとっては喜ばしいことなのだが、実は素直に喜べない。いよいよ、ジュビロのJ1残留が厳しくなってきたからだ。かつては“王者”の称号付きで呼ばれたジュビロがもし落ちれば、昨年のガンバ大阪のJ2行きより遙かに衝撃が大きい。(僕にとっては。)

 

ジュビロというチームは、僕にとって「企業会計原則」のようなものだ。「企業会計原則」が会計への入り口だったように、ジュビロは僕がサッカーへ興味を持つきっかけとなったチームだった。

 

Jリーグが始まった20年前、僕は多摩川べりに住んでいた。そこは、ベルディ川崎がホーム・グラウンドにしていた等々力競技場の歓声が、微かに聴こえた。しかし、ベルディのファンではなかった。そもそも、サッカーに興味がなかったのだ。

 

それが、ジュビロの華麗なパスサッカーを見て変わった。ジュビロがサッカーの面白さを教えてくれた。今でもヤマハ・スタジアムやエコパで行われるジュビロ主催の試合へ足を運ぶことがある。今年も2~3回行った。それが来期はJ2に落ちるなんて・・・

 

入り口といえば、僕がIFRSに興味を持つきっかけの一つは、「概念フレームワーク」だ。内容を読んだのはずっと最近のことだが、その存在を知った時は、会計規準の基本概念を統一して会計規準全体に横串を通すというのは、凄い発想だと思った。日本基準は、「この取引にはこの規準」という感じで、取引ごとにたくさん規準がある。このような規準の体系だと、「規準がないから会計処理できない」とか、「規準間で矛盾がある」こともありえるが、IFRSでは「概念フレームワーク」が整理し、悪影響を緩和してくれる。

 

日本にも「企業会計原則」があるが、長い間、まったく改善の手が加えられておらず、錆びついている。だから、「規準の隙間を企業会計原則が埋める」というほどの権威がない。もう、ほとんど実務で参照されることがなくなってしまった形ばかりの「名誉規準」になっている。嘆かわしいことだが、今更再生させるのは、手間がかかりすぎて無理という話を聞いたことがある。もう、かつての輝きを取り戻すことはないだろう。

 

ジュビロがこの「企業会計原則」とは違い、かつての“王者”の輝きを取り戻すことを願いつつ、「概念フレームワーク」改善のためのディスカッション・ペーパーに戻ることにしよう。

 

 

セクション7――表示及び開示

 

現行の概念フレームワークは、元々“未完成”とされており、大きなテーマがいくつか抜けている。その一つがこの「表示及び開示」だ。IASBは、“注記”や“科目表示(分類及び集約)”についての原則を考えるうえで、基本財務諸表の目的から説き起こしている。

 

(IASBの予備的見解)

 

表示及び開示に関するIASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 基本財務諸表の目的は、認識している資産、負債、持分、収益、費用、持分変動及びキャッシュ・フローに関する要約された情報(財務諸表利用者が企業への資源の提供に関して意思決定する際に有用な方法で分類し集約したもの)を提供することである。

 

(b) 財務諸表注記の目的は、次の事項に関する追加的な有用な情報を提供することにより、基本財務諸表を補完することである。

 

(i) 企業の資産、負債、持分、収益、費用、持分変動及びキャッシュ・フロー

(ii) 企業の経営者及び統治機関が企業の資源を使用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたのか

 

(c) 開示の目的を果たすため、IASB は通常、次の事項に関する開示を要求することを考慮することになる。

 

(i) 報告企業全体

 

(ii) 企業の基本財務諸表で認識した金額。これには当該金額の変動を含む(例えば、表示科目の分解、増減内訳表、調整表など)

 

(iii) 企業の未認識の資産及び負債の性質及び程度

 

(iv) 企業の資産及び負債(認識済みであれ未認識であれ)から生じるリスクの性質及び程度

 

(v) 手法、仮定及び判断、並びに当該手法、仮定及び判断の変更で、表示している金額又は他の方法で開示している金額に影響を与えるもの

 

(d) 重要性の概念は、現行の「概念フレームワーク」で明確に記述されている。したがって、IASB は、重要性に関する「概念フレームワーク」のガイダンスへの修正又は追加を提案していない。しかし、IASB は、「概念フレームワーク」プロジェクトの外で、重要性に関する追加的なガイダンス又は教育マテリアルの開発を検討している。

 

(e) 将来予測的な情報は、既存の資産及び負債、又は報告期間中に存在していた資産及び負債に関する目的適合性のある情報を提供する場合には、財務諸表注記に含める。

 

セクション7 の本文の内容を見ると、この予備的見解は、現行の概念フレームワークの「一般目的財務報告の目的」、「基本的な質的特性(目的適合性、忠実な表現)」を基礎にしている。即ち、どうしたら、財務諸表の読者が企業の正味将来キャッシュ・フローの見通しを評価するのに有益な情報になるか(、かつ、それに相応しい重要性を確保できるか)、どうしたら経済実態を忠実に表現できるか、という観点で、上記に関する検討がなされている。

 

ひとつ、その象徴的な部分を抜き出してご紹介する(7.36)。

 

IFRS における開示のガイダンスを設定する際に、その目的は、基本財務諸表に認識された金額を財務諸表利用者が再計算できるようにする情報を企業に提供させることではない。むしろ、開示のガイダンスは、企業の財政状態及び業績の主要な決定要因を財務諸表利用者が識別でき、資産及び負債から生じる主要なリスク、並びに財務諸表に用いている測定に関する不確実性の原因となる主要な事実を理解できるようにする十分な情報を、企業が提供する結果となることが必要である。

 

簡単にいえば、財務数値の変動要因や因果関係を理解できるように注記する、ということだが、次の点については注意が必要だ。

 

・基本財務諸表に開示されている財務数値は、過去の事実の結果に加え、測定における将来事象に対する企業の予測や判断を含んでいる。

 

・注記によって、基本財務諸表の変動要因や因果関係を理解できるようにするには、過去実績の測定に使用した企業の将来予測的な情報の開示も必要(例えば将来キャッシュフローの見積りの基礎やその判断に関する主要な事実)。

 

(以上が 7.36 を読む際の注意点だが、その他に、後発事象や偶発資産・偶発債務のような未認識資産・負債の情報も、開示すべき将来予測的な情報に含まれる。これらは、必要な場合に、個別のIFRSによって開示が要求される。)

 

注記から、財務数値の変動要因や因果関係が理解できて初めて、「財務諸表の読者が企業の正味将来キャッシュ・フローの見通しを評価するのに有益な情報になり(、かつ、それに相応しい重要性があり)、経済実態を忠実に表現する」ということになるわけだ。

 

なお、誤解のないように補足すると、原則として、財務諸表には将来予測的な情報を含めない。例えば、決算日の翌日に購入する予定の資産を、当期のB/Sに記帳することはない。しかし、決算日時点に存在する資産や負債の評価金額を決定(=測定)するためには、いわゆる会計上の見積りが必要となる。その見積りには特定の計画や割引率などの見積りの基礎、即ち、将来予測的な情報が必要となる。だが、基本的には、事業計画から将来事象~特に経営施策による改善的なもの~を排除するので、期末時点の見通しや状況を引延ばしたようなイメージになる(例えば、割引率は期末時点の水準が将来も継続すると仮定される)。即ち、見積りからは将来事象が極力排除される。そうしないと実績情報の開示にならない。

 

財務諸表(注記を含む)は、資産や負債の定義で“現在の”が強調されていることからわかる通り、基本的に過去実績の情報であり、「企業の正味将来キャッシュ・フローの見通しを評価する」のは財務諸表の読者が行うことだ。将来何が起こるかは、偶発債務のように財務諸表の注記として開示されたり、リスク情報のように財務諸表以外のところで企業によって提示されたりする。そしてそれらを参考にして読者が将来を予想し、分析するとき、企業の財政状態や経営成績に、どのような影響があるかを理解できる十分な情報を財務諸表で提供する。これが上記の趣旨だ。

 

この考え方は、IASBが個別のIFRSを開発する際に考慮されるべきものとして提案されているものだが、企業が注記内容を具体的に考える際にも、もちろん参考になる。

 

ちなみに、以下のように、注記に関する企業の判断領域、裁量の幅、そして企業が果たす責任への期待は大きい。したがって、この考え方を企業がしっかり理解することの重要性も大きい。

 

情報に重要性がない場合には、企業は、基準で要求されている具体的な開示を要求されない。IAS1.31

 

IFRS の特定の要求事項に準拠するだけでは、特定の取引及び他の事象や状況が企業の財政状態や財務業績に与える影響を財務諸表利用者が理解するのに不十分である場合には、企業は追加的な開示を提供すべきである。IAS1.17(C)

 

即ち、規準で注記を要求されていても、不要なら企業の判断で開示を省略すべきだし、逆に要求されていないことも必要なら開示する(これらはIAS1号の確定した規程であり、このディスカッション・ペーパーの検討事項ではない)。これには、IFRSの“適正表示”の思想の一端が現われている。

 

このディスカッション・ペーパーでは、この判断の際、「他社が開示しているから開示する」とか、「他社が開示しないから開示しない」、或いは、「他社と同様の形式で開示する」は、良い判断にではないことを、はっきり明確にさせようとしているようだ。あくまで、その企業固有の状況が開示の対象であり、重要性のない情報(=目的適合性のない情報)は、たとえ比較可能性のためであっても有用でない。

 

まあ、難しく書いてあるが、この本質は、企業の様々な担当者が、経営に資料を提示する際、気を利かして分かりやすい脚注を付けるのと、基本的には変わらないかもしれない。ただ、その目的がなんであるかに意識を向けるよう明示したことに、大きな意味があると思う。

 

 

セクション8――包括利益計算書における表示

 

このテーマは、みなさんの関心が高いと思う。P/Lでの純利益とOCI(その他の包括利益)の区分の話、そして、リサイクリングの話だ。ここにはまた戻ってきて、詳しく見てみるつもりなので、今回はIASBの予備的見解のみを記載する。

 

(IASBの予備的見解)

 

IASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 「概念フレームワーク」は、純損益の合計額又は小計を要求すべきであり、これも収益及び費用の項目の一部をリサイクルする結果となるか又はそうなる可能性がある。

 

(b) OCI の使用は、資産及び負債の現在測定値の変動(再測定)から生じた収益及び費用の項目に限定すべきである。しかし、こうした再測定のすべてがOCI での認識に適格となるわけではない。セクション8 では、どの再測定がOCI に含まれる可能性があるのかを明確にするために使用できる2 つのアプローチを論じている。

 

 

セクション9――その他の論点

 

僕は、以下の4つの論点のうち、ac には関心がある。特に c (=継続企業)については、汚染水問題などで東京電力の状況が大きく変わったので、その際に、再び問題になるかもしれない。このディスカッション・ペーパーで、なにか考え方が変わったり、深掘りされたりすれば面白いと期待していた。しかし、どうやら期待外れのようで、今は、関心を失っている(要するに、あまり深く検討されていないようだ)。残る a b については、他の問題に絡められる場合があれば、合わせて取上げていきたい。

 

(IASBの議論の内容)

 

セクション9 では、次のことを議論している。

 

(a) 現行の「概念フレームワーク」の第1 章「一般目的財務報告の目的」及び第3 章「有用な財務情報の質的特性」に対するIASB のアプローチ。IASB は、これらの章の内容を根本的に再検討するつもりはない。しかし、IASB は、「概念フレームワーク」の残りの部分に関する作業で明確化又は修正の必要性が明らかになった場合には、これらの章に変更を加えるであろう。セクション9 では、これらの章が受託責任、信頼性及び慎重性の論点を扱っている方法に関して一部の人々が提起した懸念についても議論している。

 

(b) 財務報告における事業モデル概念の使用――本ディスカッション・ペーパーでは事業モデルの概念を定義していない。しかし、IASB の予備的見解は、IASB が新基準又は改訂基準を開発する際に、企業がどのように事業活動を行うのかをIASB が考慮するならば、財務諸表の目的適合性を高めることができるというものである。

 

(c) 会計単位――IASB の予備的見解としては、会計単位は通常、IASB が特定の基準を開発又は改訂する際に決定されるものであり、IASB は有用な情報の質的特性を考慮すべきである。

 

(d) 継続企業――IASBは、継続企業の前提が目的適合性を有する3つの状況を識別した(資産及び負債を測定する際、負債を識別する際、及び企業に関する開示を行う際)。

 

(e) 資本維持――IASB は、高インフレに関するプロジェクトに取り組む場合には、資本維持概念を再検討する可能性がある。IASB は、こうしたプロジェクトに取り組むまでは、改訂「概念フレームワーク」において、資本維持概念の現行の記述及び議論をほとんど変えないでおく予定である。

 

 

以上で、このディスカッション・ペーパーの概要紹介は終わる。次回からは、改めて、10/7の記事に挙げたいくつかのポイントや、この3回の紹介記事で頭出しをしたポイントを深掘りして行きたい。

2013年10月25日 (金曜日)

302.【CF DP】IASBの提案の概要(2/3)

2013/10/25

以前も書いたが、今年は温湿度計を購入し、居住環境の見える化をしてみた。すると、この数週間に気温が10度も下がっていることが分かった。半袖でも汗をかく気候から、長袖の上にカーディガンや薄手のセーターを羽織りたくなるところまで、あっという間に変化した。温暖化の影響だろうか。しかし、自然のダイナミックさを感じる。

 

あまり関係ないが、この概念フレームワークのディスカッション・ペーパーを読んでいると、IFRSもまだまだ変化しそうな気がする。会計理論の根本が整理されていくので、基本的には良いことだと思う。

 

 

セクション5――持分の定義及び負債要素と持分要素の区別

 

(予備的見解)

 

IASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 「概念フレームワーク」は、現在の持分の定義(すべての負債を控除した後の企業の資産に対する残余持分)を維持すべきである。

 

(b) 「概念フレームワーク」は、IASB は負債及び持分の定義を使用して負債と資本性金融商品とを区別すべきであると記述すべきである。これの2 つの帰結は以下のことである。

 

(ii) 資本性金融商品を発行する義務は、負債ではない。

 

(iii) 報告企業の清算時にだけ生じる義務は、負債ではない。

 

(c) 企業は次のことを行うべきである。

 

(i) 持分請求権の各クラスの測定値を、各報告期間の末日現在で見直す。IASB は、個々の基準を開発又は改訂する際に、当該測定値を直接的な測定値とするのか、それとも持分の合計額の配分額とするのかを決定することになる。

 

(ii) それらの測定の見直しを、持分変動計算書において、持分請求権のクラス間での富の移転として認識する。

 

(d) 企業が資本性金融商品を発行していない場合には、最も劣後したクラスの金融商品を持分請求権であるかのようにして扱い、適切な開示を付するのが適切かもしれない。

 

このようなアプローチを使用すべきかどうか、またはその場合にいつ使用すべきかの識別は、IASB が個々の基準を開発又は改訂する際に行うことが必要となる決定である。

 

色々記載されているが、ざっと、簡潔に、大雑把に書くと、次の2点がメインテーマとなっている。

 

・親会社がある場合の親会社の持分や非支配持分、(持分に分類された)優先株や後配株、新株予約権といった持分請求権の種類(=クラス)ごとの開示の強化

 

持分額は、資産から負債を差引いて求められるが、それを上記のような各クラスに割当てるとか配分するようなイメージの開示を考えているらしい。すると、例えば株式の内容・種類に応じた一株当たり純資産が計算できるようになると予想される(が、詳しい計算は概念フレームワークでは扱われないので、分からない)。

 

・負債と持分(=資本)を区分する規準の整理

 

現行の負債と持分を区別する規準は非常に複雑で分かり難いので、これにメスを入れて整理する準備にしようという趣旨だと思う(特にIAS32号)。僕は前職時代に、クライアント向けに研修の講師をやったことがあるが、このテーマについては難儀した思い出がある。

 

ちょっと余談になるが、みなさんは、金融機関のバブル清算、不良債権処理を行うために投入された“公的資金”のことを覚えてらっしゃるだろう。

 

これは、金融機関が配当優先株式を発行し、政府が購入(=出資)するという形で行われた。不良債権処理を行って自己資本が減少すると、BIS規制など自己資本規制に抵触して国際業務ができなくなったり、最悪の場合には金融庁から業務停止処分を受ける(即ち、経営破綻する)。それを避けるために優先株式発行によって、資本の部に厚みを持たせた。したがって、公的資金は単なる資金供給ではなく、資本の部に計上されるものでなければ意味がない。しかし、資本の部に計上されるものであるならば、基本的に返済不要のはずであり、投資者である政府がリスクを負わなければならないはずだ。

 

ところが、その後、金融機関は必死にその“公的資金”を返済した。一般的には、税金を私企業に投入するなど以ての外、当然早期に返済すべきとされているので、その“必死さ”を見ても、あまり疑問を感じる人はいなかったと思う。しかし中には、返済が義務であればこれは負債ではないのか、本当に資本の部に計上すべきものか?と疑問を感じた方もいらしたのではないか。

 

ちなみにIFRSでは、現行でも一部の優先株式は負債へ分類される(IAS32号)。日本は優先株式でも“株式”という法的形式を優先させるが、IFRSはより経済実態を優先させる。もし、当時の公的資金と同じやり方が、現在のIFRS採用企業へ行われると、資本の部ではなく負債として計上されるかもしれない。

 

そういえば例のオリンパス事件では、英国子会社(ジャイラス)が発行した配当優先株式が問題の一つだった。英国子会社はIFRSによりこれを額面の165億円で、資本の部でなく負債へ計上していた。これはFA(=ファイナンシャル・アドバイザー)に対する報酬として発行させられたものだったので(発行時は新株予約権)、ジャイラスは発行の対価を受け取っていない。その後オリンパスは、これをFAから579億円で買取り、ジャイラス株式取得の付随費用としてジャイラス株式(=資本性金融商品)に上乗せした。(実際には、この買取り資金は裏ファンドに流れて、こっそり損失の穴埋めに利用された。)

 

しかし、もし、取得した優先株式が、IFRSのように実態はジャイラスに対する貸付金(=負債性金融商品)であると考えていれば、この法外なFA手数料の少なくとも額面を超える部分は、ジャイラス株式に上乗せできなかったかもしれない。

 

というのは、この優先株式の評価が165億円から579億円に跳ね上がったのは、額面の10%を永久に毎年配当するという条件が追加されたためだが、M&Aの終了後にジャイラスの資本の再構成(=100%子会社化。優先株式を資本とする日本基準ベースでのオリンパス側の解釈)のために追加された条件なので、もはやFA報酬とはいえないからだ。(だが、優先株式を資本とするなら、FA報酬といえなくても579億円全額がジャイラス株式の取得価額に追加される。)

 

しかも、ひどい話だが、この直後にジャイラスによって配当しないという決議がなされている。もし、IFRSのように貸付金や社債として処理されていれば、この配当によって増価された部分は減損されるので、オリンパスは、一時に、多額の損失計上を余儀なくされる。しかし、それでは当時のオリンパスの目的である「損失を先送りしながら裏ファンドを解消すること」ができない。すると、そもそも、この不正取引は企画倒れになっていたかもしれない。したがって、この不正取引は、会計規準の相違が可能にしたといえるかもしれない。

 

(以上については、第三者委員会報告とマイケル・ウッドフォード氏の著作「解任」に記載されていた事実関係を参考にしながら、僕の考えを記載した。このほか、もし、日本基準のように優先株式や当初の新株予約権を資本と考えると、このFAも買収者の一人になるので、被買収会社は買収者に財政的支援をしてはならないという当時の英国国内法で違法とされた可能性があるようだ。したがって、英国がもし日本基準と同様の扱いだったら、やはり、この取引は行われなかった可能性がある。)

 

 

セクション6――測定

 

(予備的見解)

 

測定に関するIASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 測定の目的は、次のことに関する目的適合性のある情報の忠実な表現に寄与することである。

 

(i) 企業の資源、企業に対する請求権、及び資源と請求権の変動

 

(ii) 企業の経営者及び統治機関が企業の資源を使用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたのか

 

(b) 資産及び負債についての単一の測定基礎は、財務諸表利用者にとって最も目的適合性の高い情報を提供しない場合がある。

 

(c) 特定の項目についてどの測定を使用するのかを選択する際に、IASB は、当該測定が財政状態計算書及び純損益とOCI を表示する計算書の両方においてどのような情報を生み出すのかを考慮すべきである。

 

(d) 特定の測定の目的適合性は、投資者、債権者及び他の融資者が、その種類の資産又は負債がどのように将来キャッシュ・フローに寄与するのかをどのように評価する可能性が高いのかに応じて決まる。したがって、測定の選択は、

 

(i) 個々の資産について、当該資産がどのように将来キャッシュ・フローに寄与するのかに応じて決めるべきである。

 

(ii) 個々の負債について、企業が当該負債をどのように決済又は履行するのかに応じて決めるべきである。

 

(e) 使用する異なる測定の数は、目的適合性のある情報を提供するために必要な最小限の数とすべきである。不必要な測定変更は避けるべきであり、必要な測定変更は説明すべきである。

 

(f) 財務諸表利用者にとっての特定の測定の便益は、コストを正当化するのに十分なものであることが必要である。

 

僕が最も重要と思ったのは、原価、市場価格(公正価値を含む)、使用価値など将来キャッシュ・フローを基礎とした方法など、複数の測定方法が“必要”とされ、その使い分けが論じられている点だ。従来の“IFRSは公正価値会計”とか、さらに“IFRSは解散価値会計”などという批判を意識してのことかもしれない。しかし、これで「いずれ有形固定資産もすべて公正価値評価になってしまう」などという心配(例えば2011/11/2の記事)は杞憂に過ぎないことが、確認できたように思う。

 

但し、どの測定方法によるとしても、将来キャッシュ・フローは必ず基礎にある。たとえ原価ベースが採用されている項目でも、減損テストで将来キャッシュ・フローによる回収が可能かどうかが試される。これは、財務報告の目的が、「現在の及び潜在的な投資者、融資者及び他の債権者が企業への資産の提供に関する意思決定を行う際に有用な、報告企業についての財務報告を提供すること」であり、その提供される情報が「将来の正味キャッシュ・インフローに対するその企業の見通しを評価する」ために有用であることが必要とされる(概念フレームワークの第1章、2012/1/20の記事)からだと思う。

 

しかし、それだけではない。将来キャッシュ・フローの流入が著しく不足すれば、継続企業の前提を脅かす問題になるし、企業価値を上げるためには、事業からの正味将来キャッシュ・フローを増やす戦略を構築し、絶えず状況の変化に応じて見直す必要がある。即ち、将来キャッシュ・フローは、経営の基礎情報として非常に重要なはずだ。

 

ところが、将来キャッシュ・フローを適切に見積ることは、簡単ではない。したがって、その精度を向上させることは、経営上も極めて重要な課題のはずなので、そういう観点でこのセクションは読みたいと思う。ということで、多分、またここには戻ってくると思う。

 

ちなみに、僕の個人的見解としては、見積りの精度の良否は、将来を当てるかどうかではなく、経営に客観性を持たせられるかどうかで決まるのではないかと思う。それには外部環境や顧客ニーズの分析・把握や明確な前提・仮定がポイントになる。(これでお分かりの通り、見積りは事業計画が前提であるため、経理部だけの問題ではない。)

 

 

まだ、以下のセクションが残っているが、長くなるので、次回に繰り越したい。

 

セクション7――表示及び開示

セクション8――包括利益計算書における表示

セクション9――その他の論点

 

 

 

2013年10月24日 (木曜日)

301.【CF DP】IASBの提案の概要(1/3)

2013/10/24

 

前回(10/21の記事)記載した僕の混乱は収まらないが、「そんなことよりこのディスカッション・ペーパーに何が書いてあるのか、簡単に知りたい」という方々のために、とりあえず、そうすることにした。「ファー」なんて叫ぶような(僕の)ヘボな話より、まずは普通にコースの様子を知りたい、というのは尤も話だ。

 

ということで、まずは全体像として、このディスカッション・ペーパーの冒頭にある「要約とコメント募集」に記載されている、目次の大見出しと、IASBによる「重大な変更の提案(=予備的見解)」をご紹介したい。但し、これらは“主な”提案であって、IASBのすべての提案を含むものではない。例えば、「現状を変更しない」という提案は、ピックアップされていない。

 

 

セクション1――はじめに

 

(予備的見解)

 

(a) 改訂「概念フレームワーク」の主たる目的は、IASB IFRS の開発及び改訂を行う際に一貫して使用することとなる概念を識別することにより、IASB を支援することである。

 

(b) 「概念フレームワーク」は、IASB 以外の関係者が次のことを行うのにも役立つ可能性がある。

 

(i) 現行のIFRS の理解と解釈

 

(ii) 特定の取引又は事象に具体的に当てはまる基準又は解釈指針がない場合の会計方針の策定

 

(c) 「概念フレームワーク」」は基準でも解釈指針でもなく、具体的な基準又は解釈指針に優先するものではない。

 

(d) 稀な場合において、財務報告の全体的な目的を果たすために、IASB は「概念フレームワーク」のいくつかの側面と矛盾する新基準又は改訂基準の公表を決定する可能性がある。こうした場合には、IASB は「概念フレームワーク」の当該側面からの離脱及びその理由を、当該基準に関する結論の根拠において記述することになる。

 

上記については、既に10/7の記事に記載した。

 

セクション2――財務諸表の構成要素

 

このセクションからは、2つの予備的見解が紹介されている。

 

(資産と負債の定義に関する予備的見解)

 

・・・IASB の予備的見解では、次のことをもっと明示的に確認するように定義を修正すべきだとしている。

 

(a) 資産又は負債は、基礎となる資源又は義務であり、経済的便益の最終的な流入又は流出ではない。

 

(b) 資産(又は負債)は、経済的便益の流入(又は流出)を生み出す能力がなければならない。当該流入(又は流出)は確実である必要はない。

 

IASB は次のような定義を提案している。

 

(a) 資産とは、企業が過去の事象の結果として支配している現在の経済的資源である。

 

(b) 負債とは、企業が過去の事象の結果として経済的資源を移転する現在の義務である。

 

(c) 経済的資源とは、経済的便益を生み出すことのできる権利又は他の価値の源泉である。

 

(不確実性の扱いに関する予備的見解)

 

IASB の予備的見解は次のとおりである。

 

(a) 資産及び負債の定義は、流入又は流出が「予想される」という考え方を維持すべきではない。資産は、経済的便益を生み出す能力がなければならない。負債は、経済的資源の移転を生じる能力がなければならない。

 

(b) 「概念フレームワーク」は、資産又は負債が存在するかどうかが不確実である稀な場合について蓋然性の閾値を設定すべきではない。特定の種類の資産又は負債が存在するのかどうかに関して重大な不確実性がある可能性がある場合にはIASB はその種類の資産又は負債に関する基準を開発又は改訂する際に、当該不確実性の処理方法を決定することになる。

 

(c) 認識規準は、現行の蓋然性への言及を維持すべきではない。

 

このセクションの予備的見解は既に記載したように(10/10の記事)、いずれも定義から「経済的便益(或いは、経済的便益を有する資源)が企業に流入(或いは、流出)すると期待される」という部分を除くことに関しての提案だ。

 

前者は、定義が「資産は資源」、「負債は義務」を表すことをシンプルに表現し、経済的便益(≒将来キャッシュ・フロー)の発生への予想や期待ではないことを明確にしたいという意図がある。後者は、さらに進めて、経済的便益の発生可能性(≒蓋然性、不確実性)への言及を概念フレームワークから除去し、必要な場合は個別のIFRSで規定することを提案している。

 

このようにして、IASBは「(蓋然性に関係なく)すべての資産と負債を会計上認識すべき」と整理したいようだ。この点でIASBが意識している具体的項目は、このセクション2 の中味を見ると次のようなものらしい。

 

 ・オプション取引(権利は資産、義務は負債という観点で見直したいらしい)

 ・先渡購入契約(同上)

 ・研究開発費(「将来の収益ではなく、ノウハウが資源だ」としている。資産計上したいらしい)

 ・抽選券(発行者と、券の保有者にとっての蓋然性の違いを問題提起している)

 ・訴訟(過去に起因するのに、まだ結果が確定しない権利・義務)

 

これらは例示であるし、かなり広範囲にわたっていると思うが、なぜ、概念フレームワークから不確実性、蓋然性を削除し、個別基準へ閉じ込めるのだろうか?

 

また、研究開発費の資産観については、どうも合点がいかないし、これは他の事象にも応用され、一部は悪用され、実務が混乱しそうな気がする。例えば、仕損品にだって、それを再発させないためのノウハウは残る(研究開発プロセスでは9割以上が仕損品だ)。仕損品も(ノウハウとして)資産計上するのか? みなさんも、僕が「ファー」と叫びたくなるのをお分かりいただけるのではないか。

 

セクション3――資産及び負債の定義を補助するための追加的なガイダンス

 

セクション3 では、次のことを提案している。

 

(a) 資産の定義を補助するため、以下についてのガイダンスを示すべきである。

 

(i) 「経済的資源」の意味

 

(ii) 「支配」の意味

 

(b) 負債の定義を補助するため、以下についてのガイダンスを示すべきである。

 

(i) 「経済的資源の移転」の意味

 

(ii) 推定的義務

 

(iii) 「現在の」義務の意味

 

(c) 両方の定義を補助するため、以下についてのガイダンスを示すべきである。

 

(i) 契約上の権利及び契約上の義務の実質の報告

 

(ii) 未履行契約

 

従来明確な解説がなかったり、個別基準で定義されていた基本的用語の解説を、概念フレームワークに加えることを提案している。

 

セクション4――認識及び認識の中止

 

セクション4 では、次のことを論じている。

 

(a) 認識:どのような場合に、企業の財政状態計算書は、経済的資源を資産として、又は義務を負債として報告すべきなのか

 

(b) 認識の中止:どのような場合に、企業は資産又は負債を財政状態計算書から除去すべきなのか

認識に関するIASB の予備的見解は、企業はすべての資産及び負債を認識すべきだというものである。ただし、IASB が、特定の基準を開発又は改訂する際に、次の理由により、企業は資産又は負債を認識する必要がない、又は認識すべきではないと決定する場合は除く。

 

次の理由」とは、簡単にいえば次の場合だ。

 

(a) 重要でない場合

 

(b) 測定可能でない場合

 

現在、“重要性”は概念フレームワークに規定されており、IASBはそれを修正するつもりはないようだ。しかし、上記の記載の仕方は、それを実質的に無効にし、“重要性”についても個別のIFRSにIASBが指定したときのみ考慮できると解される可能性があるように思う。

 

測定可能性については、測定できないときは測定できないのだから、IASBが個別のIFRSで指定したとき、という形で、項目を限定するのは良くないのではないかと思う。

 

これらは実質的に“重要性”や“測定可能性”に関する現場の判断が許容されなくなるような怖さがある。しかし、IASBは、これらが乱用気味であることを懸念しているのだろう。それも分かる気はするが、一方で、これらに実務を成り立たせる重要な役割があることも否定できないと思う。やはり「ファー」と叫ぶべきポイントではないかと思う。

 

 

普通のコースのことを書くと言いながら、ついつい、ファー・ポイントまでも記載してしまった。しかし、ファー・ポイントについては後日もう少し詳しく検討するつもりなので、その頭出しということでご了解願いたい。

 

ちなみに、ディスカッション・ペーパーは、公開草案の前にIASBが色々可能性を探るために公表する討議資料であるため、プロ・ゴルファーの練習ラウンドのようなもの。一般のゴルファーなら、練習場のショットのようなものだ。うまくなければ(=もらったコメントの反応が良くなければ)直してから、公開草案を出す。さらにそれに修正を加えて、規準の確定へと作業が進んでいく。したがって、ディスカッション・ペーパーの内容に一喜一憂するのは、我ながら、ちょっと可笑しいのだが、まあ、練習場でも真剣さは必要であろうかと思う。みなさんはご不審に思われるかもしれないが、ご勘弁願いたい。

 

以下、次のような目次が続くが、これらについては次回以降にご紹介させていただきたい。ラフやバンカーが危ない場所もあるかもしれないが、いまののところ、これ以上喉を嗄らす内容は認識していない。

 

セクション5――持分の定義及び負債要素と持分要素の区別

セクション6――測定

セクション7――表示及び開示

セクション8――包括利益計算書における表示

セクション9――その他の論点

2013年10月21日 (月曜日)

300.【CF DP】資産の定義~IASBが変えたいもの=不確実性を個別基準へ追放?

2013/10/21

このシリーズの更新が滞っている。原因は、提案されている資産の定義の変更が「“不確実性”を概念フレームワークから追出し、個別基準へ押し込めようとしている」と僕が感じ、その影響をどうとらえて良いか分からず、混乱しているからだ。

 

“不確実性”は、常に経営につきまとうものであり、そこにチャンスもあればリスクもある。ゴルフにおける“自然環境”と同様に、企業経営における“不確実性”は、ゲームの隠れた主役だ。或いは、人間がなにか運動するときの“重力”のようなものと例えてもよいかもしれない。例えば、人はゴミ箱にゴミを投げ入れるとき、視線はゴミ箱の穴に集中するが、実は無意識に“重力”の影響を計算している。経営における“不確実性”は、それと同様に一般的だし重要なものだ。それを会計だからといって、個別基準に追いやってよいのだろうか。

 

このシリーズの前回(10/10)、僕は、IASBが資産の定義から、不確実性等の問題を分離し、資産の定義から認識規準や測定規準とすべき要素を切離したいと考えている旨の記載をした。しかしIASBは、それだけでなく、不確実性を、概念フレームワークにおける認識規準や測定規準からも切り離し、必要な場合に個別基準で記述すればよい、とまでを提案していることが分かった。即ち、多くの会計分野で、基準上、不確実性が意識されないことになる。企業経営上の隠れた主役で極めて存在感の大きい“不確実性”を、会計はこのような端役に押しやって大丈夫か? これが直感的に感じる僕の不安だ。

 

実は、僕は以前このブログで、「保守主義(=慎重性)は、経営の問題(=リスク管理の問題)であり会計の問題ではないから、IFRSの概念フレームワークに保守主義に関する記述がないのはおかしくない。会計よりも、その前提となる経営の段階で当然に考慮されるべきで、会計上特別に必要ならば個別の規準の中に織り込めばよい」と主張した(2012/9/4「脱線4~保守主義の本質はリスク管理?」2012/9/18「【製造業】マーフィーの法則と保守主義」)。

 

IASBは、これと同じ理屈を“不確実性”についても適用しようとしているのか? 保守主義と“不確実性”は、確かに似ている気もするが、果たして、会計との関わりにおいて、同じ範疇で扱えるものなのだろうか?

 

会計における保守主義は「早めの費用計上、遅めの収益計上」とか、「費用は多めに、収益は少なめに」などと表現されるが、これは概念フレームワークの「有用な財務情報の質的特性」である経済実態の“忠実な表現”とか、“中立性”とは相容れない可能性がある。しかし、不確実な経済実態、或いは、不確実性の異なる状況をどう表現するか、というのは会計の問題ではないか? したがって、保守主義と“不確実性”を同じ理屈で括ることはできないのではないか。

 

と、色々疑問が湧いていて、まるでゴルフでミス・ショットしたときのように、即ち、「ファー」と叫んで隣のコースからショットを打ち戻す時のように、方向感や距離感を失ってしまった。ゴルフなら、キャディーさんや仲間の助けもあるし、最悪適当に打つこともできるが、これはそうもいくまい。

 

ということで、少々時間がかかっている。スロー・プレーで心苦しいが、ご勘弁願いたい。(だが、とりあえずIASBの提案をそのままご紹介させていただこうか・・・)

2013年10月16日 (水曜日)

299.【番外編】ジム・ロジャーズ氏のアドバイス

2013/10/16

みなさんは、ジム・ロジャーズという投資家をご存じだろうか。1973年にジョージ・ソロス氏と共にクォンタム・ファンドを共同設立した。このファンドはヘッジ・ファンドの先駆けで、1980年までの10年間で3,365%という驚異的なリターンをあげるが(前身のダブル・イーグル・ファンド時代を含めてか?)、ファンド運営に対する意見の相違から同年にジョージ・ソロス氏と袂を分かち、このファンドを去っている(以上、Wikipediaなどから。なお、別の資料では、ファンドの規模は1973年に12百万ドル、1980年は4億ドルとなっており、それだけで33%。どうも、Wikiの数字はあやふやだが、もの凄い投資収益を上げたことは確かだ)。

 

その後も、ITバブルの破裂やリーマンショックまでの商品相場の上昇、リーマンショックによる株価暴落など、大きな経済事象を予測しているらしい。日本でも、しばしばメディアに取上げられる。例えば、日経電子版の人気コラム「豊島逸夫の金のつぶやき」にも「超長期投資家」として、頻繁に登場している。経済のファンダメンタルズを幅広く捉え、的確な見通しが行える伝説の投資家らしい。

 

そのジム・ロジャーズ氏のインタビュー記事が、昨日15日のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)電子版に掲載されていた。次のタイトルだ。

 

通貨不安に要注意―伝説的な投資家であるジム・ロジャーズ氏に聞く

 

これは、有料記事なので、WSJWebで有料会員登録をしていない方は、残念ながら読むことができない。但し、今回は、通貨不安を取上げるわけではないので、読む必要はない。(僕は、最近日経新聞に情報を頼りきりになるのは良くないと思い立ち、WSJを読み始めた。嬉しいことに、現在、新規購読者に1週間100円で12週間読めるキャンペーンが行われている。) 

 

この記事の最後の質問は「米国の若者に伝えたいこと」で、これに対する同氏の回答は「外国語を学びなさい」だった。僕はここにグッと来た。同氏は、その理由について「世界における米国の相対的な立場は低下し続けるだろう。米国人は他国のことを知り、その気を引く必要がある。」といっている。

 

そういえば、米国人は外国語が苦手といわれる。実際、前職監査法人の世界中の新人パートナーが集合する研修では、ほとんどのパートナーが自国語と英語(や他の外国語)の会話ができるのに対し(欧州やアフリカ系はもちろん、中国や台湾のパートナーも流暢に英語を話していた)、米国と日本のパートナーは自国語しか話せない人が多かった。僕もその一人で、グループ・ワークの時間が多くて、本当に辛かった。

 

当時は韓国人パートナーにも英語が話せない人がいて、彼は、休憩時間の都度、どこからともなく喫煙所に現われた。お互いの片言の英語では会話も続かず、ただ二人で静かに煙草を吸うだけだが、それでお互いの苦労を慰め合っていた。しかし、韓国はだいぶ前から英語教育が盛んで、英語ができる人が多いらしい。

 

その研修が終わって帰国し、ひとしきり苦労話をした後、「アメリカ人はいいなあ、自国語しかできないのに国際舞台で不自由しなくて」と嘆くと、「『英語ができれば国際人』ではない」と僕を慰めて、ついでに諌めてくれる先輩パートナーがいた。

 

アメリカ人は国際人ではない。大リーグでは、アメリカン・リーグとナショナル・リーグの覇者による優勝決定戦を「ワールド・シリーズ」、その勝者を「ワールド・チャンピオン」と呼ぶ。単なる国内リーグの決勝戦なのに、なぜ、そう呼ぶのか。米国人は「米国が世界のすべてと思っている」からだ。

 

田舎町へ行くと、そこから一度も出たことないアメリカ人が一杯いる。そういう人は日本がどこにあるかも知らない。英語をしゃべっていても、アメリカ人が国際人とは限らない。

 

そういう人に日本の状況を知らせるためには、単に英語ができるだけでなく、知らせる中味を持つことが必要だ。

 

まったく身も蓋もなかった。僕は米国人を羨みながら、実は、自分の能力と努力の欠如を嘆いていたのだが、さらに中身もないと言われたような気がした・・・。まっ、外れてはいないが。

 

それはさておき、ジム・ロジャーズ氏は「米国人は他国のことを知らない」と懸念している。それなら、日本人は大丈夫だろうか。長らく、米国人は他国を知らなくても、米国が常に革新的なアイディアを世界に提供してくれるので、或いは、時々他国の家に土足で上がってくるので、他国の人々は米国に関心を持ってきた。しかし、同氏は、今後は米国が他国に関心を寄せて、他国の歓心を買わなければならないという。米国がそうなら、日本は、なおさらそうではないか。

 

しかし、日本人は韓国人と違い、相変わらず英語が苦手だ。多くの人が、他国の情報を日本語でしか受け取れない。それは、日本人が日本人の感覚で取捨選択し、国内向けに流している情報だ。それで十分だろうか。米国人は、その気になれば、各国放送局が制作する国際ニュースを英語で視聴できる。インターネットにも英語情報が溢れてる。

 

しかも、先輩パートナーが言うように、情報を受取るだけでなく中身のある情報発信が必要だが、それも他国のことが分かって初めて日本との違いを認識でき、外国人に分かりやすい、或いは、説得力のある言葉や理屈が見つかることが多い。

 

どうやら、外国に関心を持つこと、外国語を学ぶことの重要性は、米国以上に日本に必要なのではないかという気がしてきた。ジム・ロジャーズ氏は、続けて「もし私に何か1つできるとしたら、米国の教育システムを大改革し、米国人に世界のことをもっと学ばせることだろう。」と言われているが、それは、日本にこそ必要ではないか。

 

僕も相変わらず英語が苦手なので、WSJは日本語で読んでいる。IFRSも。いまさら、コンクリートのような僕の脳みその言語野に、英語など外国語の領域を刻み込む気にはなれない。しかし、だからといって、教育システムをこのままにして、僕と同じように不自由な人がたくさん増えてしまってよいのか疑問に思ったので、今回は、みなさんに報告させていただいた。そして、もし、この記事を若い人が読んでいたら、(勝手なようだが)外国語を真剣に学ぶことをお奨めする。そして外国に強い関心をお持ちいただきたい。隣国も。

2013年10月10日 (木曜日)

298.【CF DP】資産の定義~IASBが変えたいもの=定義から、認識規準・測定規準の要素を分離

2013/10/10

米国共和党は、オバマケア(医療保険制度改革)をどうしても潰したいらしい。そのために米国連邦政府の一部がシャットダウンされ、さらに、17日以降には支払資金が足りなくなり、米国政府は債務不履行に陥るという。しかし、この法案は2010年3月に成立しているので、オバマ政権にしてみればそれを実行しているだけだ。共和党には共和党の立場があるのだろうが、いったん成立した法律を変えるなら、それなりの手続があるのではないだろうか。今のところ、世界経済は米国のデフォルトが回避される前提で、大きな混乱は起こっていないようだが、この前提が崩れれば、大変なことになる。

 

一方、この変える手続を着々と進行させているのが、この概念フレームワークのDPだ。IASBは、IFRS財団の定款に定められたデュー・プロセス(具体的には「デュー・プロセス・ハンドブック」)に従って、改正手続きを踏んでいる。しかし、改正手続きを踏めば混乱は起こらないかというとそうでもない。その改正内容次第だ。

 

ということで、今回は資産の定義についてIASBが変更しようとしている内容を紹介したい。DP2.11には、以下の表により、現行と提案の比較がされている。

 

                       
 

 

 
 

現行の定義

 
 

提案している定義

 
 

資産(企業の)

 
 

過去の事象の結果として企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源

 
 

過去の事象の結果として企業が支配している現在の経済的資源

 
 

負債(企業の)

 
 

過去の事象から発生した企業の現在の義務で、その決済により、経済的便益を有する資源が当該企業から流出することが予想されるもの

 
 

過去の事象の結果として企業が経済的資源を移転する現在の義務

 
 

経済的資源

 
 

[現行の定義はない]

 
 

権利又は他の価値の源泉で、経済的便益を生み出す能力があるもの

 

 

ぱっと見は、提案は現行より(空白が多いので)シンプルだな、という印象だ。その代り、“経済的資源”の定義が追加されている。“経済的資源”は俗な言葉でいえば“金目のもの”ということで、別にむずかしいことはないと思うが、重要なのは省略された部分だ。資産も負債も次のフレーズがなくなっている。

 

 「経済的便益(或いは、経済的便益を有する資源)が企業に流入(或いは、流出)すると期待される」

 

IASBはこれについて次のように説明している(2.13)。

 

現行の定義は経済的便益の予想されるフローに言及しているため、一部の読者は、資源(資産)又は義務(負債)を、それにより生じる経済的便益の流入又は流出と混同する場合があった。

 

どういうことかというと、資源があっても、将来キャッシュフローの流入が見込めないもの(或いは、将来キャッシュフローの流入が少なそうなもの)を、資産とは考えない人達がいるが、それは誤りだと言っている。

 

「えっ、重要性や不確実性を考えないってこと?」と思われるだろう。どうやら、それが一つ。そして、それに加えてもう一つ、「資産がいくらか測れないものは資産と考えない」という考えを間違いと言いたいらしい。

 

そういえば、会議室などに絵画が飾ってあると、「これは資産計上されてるんだろうか?」などと気になることがある。尋ねて、「いえいえ、その辺で買った安物、コピーですよ」なんて返答してもらえるとホッとするが、「バブルのころに買いましてね。当時は数百万したと思いますよ」なんて言われると、「資産でなく、費用処理されていればいいなあ」と思ってしまう。今いくらするか分からないからだ。

 

重要性や不確実性も、そして価値を測れないもの(或いは、測るのにコストのかかるもの)の扱いも、実務の知恵がある。これを読むと、それを否定されているように感じて、ちょっとムッと来る。もしかして、IASBは実務家を敵に回そうとしてるんじゃないか?

 

いや、まだここで決めつけるのは早すぎる。というのは、あとの方でこれらの問題を議論しているからだ。単に頭の整理として、資産かどうか、という問題と、不確実性や重要性、測定可能性の問題を区別してくれ、ということかもしれない。

 

資産の定義、資産の認識、資産の測定。この3つをちゃんと厳密に区分けして整理したい。或いは、資産の定義から「経済的便益の予想フロー」の記載を削除する提案をしたのは、定義から、認識規準や測定規準を分離したかったため。

 

今回のところは、IASBの意図をそう解釈して、後日、これらの詳しい議論を見ていこう。しかし、分離するとどんないいことがあるのだろうか? それも後日。

 

 

ところで、ちょっと付け加えだが、前回(10/9の記事)の僕の“基本構造”に関しては、良い感触が得られる記述が見つかった。即ち、資産が分かれば利益まで分かるというIFRSのシンプルな理論構造が維持されそうな感じがした。それは、この資産・負債の定義の提案のメリットとして、次のように記載されているからだ(2.13(b))。

 

・・・追加的な利点として、この変更案により、定義がより簡潔で焦点の合ったものとなり、資産の定義と負債の定義の対比をより明確に示すことになる。

 

そう、確かに提案された定義は、現行のものより資産と負債のパラレル度が増している。それを“メリット”にカウントしているということは、IASBも、このシンプルな基本構造を意識しているのかもしれない。だとすれば、意外と、“僕が勝手に言っている”ものではないのかもしれない。

2013年10月 9日 (水曜日)

297.【CF DP】資産の定義に着目する理由

2013/10/9

ディスカッション・ペーパー(以下、DP)を読み始めたが、結構面白い。いや、面白いというの語弊がある。なぜなら、難しくて意味の分からないところがかなり多いからだ。しかし、サッカー観戦でも、サッカー経験のない僕には分からない駆引きや意図が隠されたパス回しや連係プレー、テクニックが色々あるはずだが、そのすべてが分からなくても、面白いものは面白い。

 

さて、資産の定義については、約2年前にこのブログに記載しているが(2011/11/1の記事~)、そのなかで特に2011/12/15の記事「IFRSの資産(まとめ)~シンプルな定義と直感力の向上」に、IFRSの特徴が表れている。どういうことかというと・・・

 

 ・資産と負債はパラレルに定義されている。・・・資産が分かれば負債も分かる!

 

 ・資産と負債の差額が持分(純資産)で、
  その期首からの増減額が(包括)利益。・・・資産が分かれば利益までも分かる!

 

 (なお、収益や費用も、資産や負債の定義を利用して定義されている。)

 

何とシンプルな!! 資産が分かると一挙に利益まで分かってしまうとは。

 

というのが、現在の資産の定義、及び、その他の財務諸表の構成要素の定義が構造的に持つ意味だ(と僕が勝手にそう考えている)。これはIFRSの理論的な基本構造を表しているといってもよいかもしれない。しかし、このDPでは、資産の定義の変更が提案されている。するとこの基本構造はどうなるのだろうか。複雑になってしまうのか?

 

このシンプルさを維持できるかどうかは、資産と負債の定義がパラレルな関係を維持しているかどうかと、持分の増減額による損益計算という考え方が維持されているかどうかにかかっている。それを確認しようというのが、資産の定義に焦点の一つを当てた理由だ。

 

もちろん、このシンプルな基本構造が意味するところは、資産の定義が変わると会計規準全体が大きく変わる可能性があるということでもある。したがって、資産の意味が変わってしまうのかどうかについても、じっくり見ていきたい。

 

だが、IASBは、今回の概念フレームワークのプロジェクトは、現行の概念フレームワークの根本的な再検討ではなく、更新、改善、空白の補充を行うとしているので、会計規準全体が変わってしまうような概念フレームワークの改正は意図していないようだ。

 

しかし、意図しない大改正に繋がってしまう可能性はゼロではないだろうと思う。DPは、公開草案開発の準備なので、実際に概念フレームワークが改定されるのは、今後公開草案が公表されたあとになる(目標は2015年とされている)。しかし、準備段階であるがゆえに、基本的なところから議論を積上げようとするし、そしてより幅広に意見(=選択肢)を並べて検討する。記載されているIASBの見解も「予備的見解」と表現され、今後寄せられるコメントの内容や方向性によっては、十分変わる可能性がある。したがって、IASBの予期しない方向へ動く可能性はゼロとはいえないわけだ。

 

ということで、僕の言う基本構造が変わるかどうかも、資産の定義の変更内容も、確定するわけではないが、IASBの考えている方向性はDPによって示されている。それによって、ある程度、今後を占える。これは重要なことだ。

 

 

ところで、安倍首相が「岩盤規制を打ち破る」と、アジア太平洋協力会議(APEC)でぶち上げたそうだ(WSJ 10/8)。僕は心強く感じたし、そうなることを願いたい。しかし、果たしてこの発言がDP以上に信頼し、期待できるものかどうか、よく分からない。それにどうやら、特区構想など、6月の閣議決定の範囲内の規制改革を念頭にしているような気もしないではない。あれはマーケットの評価も悪かったし、僕も日本の成長力を高められるようなものか心配だ。とはいえ、こちらの方にも改めて関心を持ち続ける必要がありそうだ。

 

2013年10月 7日 (月曜日)

296.【CF DP'13】「概念フレームワークのディスカッション・ペーパー」シリーズ開始

2013/10/7

3月決算会社では先週から下期に入った。それ以外の決算期の会社の方も、朝晩の過ごしやすさから季節の移り変わりを感じているだろう。「あまちゃん」や「半沢直樹」が終了したことも大きいかもしれない。一部の方は、「あまちゃん」が終わってしまった喪失感に苛まされているという。喪失感といえば、僕の周囲でも「ああ、今年ももう終わってしまった。しかも、いつものような春は来ない。」などという声が聴かれる(これは残留が難しくなってるジュビロ磐田のサポーターの声)。

 

とにかく世の中は動いていく。ジュビロ・サポーターにはご同情を申し上げるが、慰める言葉は見つからない。しかし、僕は新しいシリーズに入っていきたい。そして、そのテーマは殆ど迷わずに決めた。「概念フレームワークのディスカッション・ペーパー」だ。「概念フレームワーク」は、英語で「Conceptual Framework」なので、タイトルでは、“CF”と略すことにした。“DP”は、もちろん「Discussion Paper」のこと。8月にASBJより日本語訳も公表されている(8/12 ASBJのプレスリリース)。

 

「概念フレームワーク」について、僕は以前、「日本でいえば企業会計原則のような位置づけ」に例えたことがあるし、会計の専門家以外の人、例えば経営者にとっては、「概念フレームワーク」を読むだけで、IFRSがなんであるかを、だいたい分かるようなものであってほしいと思っていることも書いた。

 

要するに「とっても大事なもの」だ。

 

IASB自体は、今回のディスカッション・ペーパーでも、概念フレームワークの位置づけを引上げようとはしていない。相変わらず次のように言っている。

 

 ・個別基準との間に矛盾があるときは、個別基準が優先する。

 ・概念フレームワークは、IASBが基準開発をすることの助けとなるためにある。

 

但し、面白いのは、「・・・IASB は、財務報告の全体的な目的を満たすために、「概念フレームワーク」の当該局面と矛盾する新基準又は改訂基準を公表する必要があると判断する可能性がある。これが生じた場合に、本ディスカッション・ペーパーでは、こうした場合に、IASB は、「概念フレームワーク」からの離脱とその理由を、当該基準に関する結論の根拠の中で記述すべきであると提案している。」としていることだ。

 

これは従来から、財務報告を行う企業がIFRSから離脱する場合に要求されていたことだが、それを今後はIASB自らにも要求するという提案がなされている。

 

僕は、「適正な開示」という言葉に、「ルール通りに開示することは最低限実施すべきことで、“適正な開示”を行うための十分条件ではない」とか、「“適正な開示”は企業が最終的な責任をもって行われるもので、単に会計基準や法令に準拠しているだけでは達成できない」という意味があると思っている。

 

今回のIASBのこの提案は、IASB自体が、会計基準開発者としての最終的な責任を負おうとする積極的な提案であると、前向きに評価したい。そして、今後、そのような開示が結論の根拠の中で積極的に行われることを期待したい。恐らく、そのような機会に遭遇した企業にも、どのように記載すればよいか参考になるはずだ。

 

ところで、これは248ページにも及ぶ長大なペーパーなので、頭から順にというわけにはいかない。全体をどのように見ていくか、まずは戦略を練る必要がある。とりあえず、このブログでは、次の角度については見ていきたいと思っている。

 

 ・その他の包括利益(OCI)と純利益の区分の考え方

 ・原価、公正価値や使用価値の位置づけや適用ルールの整理方法

 ・資産の定義の修正のされ方

 

いずれも、会計の基本に関わる重要問題だ。概念フレームワークを動かすことは、上に積上げられた個別基準の土台を揺るがすことにもなりかねないが、根本の改革に尻込みしていては世の中に取り残され、会計基準の機能が低下しかねない。絶えず改革が必要なのだ。

 

ジュビロ磐田もここ数年は“原点開起”というスローガンを掲げてチーム改革を進めてきたはずだが、まだまだ足りないようだ。しかし、ジュビロだけじゃない。アベノミクスは大丈夫だろうか。

 

2013年10月 3日 (木曜日)

295.「結論の根拠」にガッテン

2013/10/3

昨夜のNHK「ためしてガッテン」のテーマは、レビー小体型認知症だった。認知症といえば、アルツハイマー型が有名だが、レビー小体型認知症は、最近知られるようになったもので、認知症の5人に一人は、実は、こちらではないかといわれているそうだ。アルツハイマー型は、記憶をつかさどる海馬が委縮していくのに対し、レビー小体型は、脳内にレビー小体(一部のパーキンソン病の原因物質と同じ)というゴミのようなタンパク質が溜まり、これが幻視を見させるのだという。

 

例えば、番組で紹介されていた患者の方の一人は、暗闇で部屋中に人影が見えたり、食卓に箸を持った子供が現われたりするそうで、ご家族は、深夜に大声で起こされたり、「(怖いから)トイレに一緒に行ってくれ」と頼まれたり、誰もいないところへ向かって話しかけたりする姿を目撃することになる。

 

患者のご家族、医師などから見ると、アルツハイマー型の妄想などと同じような症状に見えるらしいが、患者にすれば実際にはっきり見えている点が異なる。まさに、認知に問題がある。

 

 ん~、認知か。会計でいえば“認識”だなあ。

 

などと思いながらこの番組を見たのは、きっと日本で僕だけだろう。いや、そうでもないか。あと10人ぐらいはいるかもしれない。

 

認知・認識は、その後の人の行動を決めるきっかけとなる。暗闇の部屋に一杯人影があれば、大声を上げるし、トイレのドアを開けたら、中に知らない人がいてこちらを見ていれば、そのまま入る気にはなれない。周囲はおかしいと思っても、患者の方にすれば当然の反応なのだ。

 

同様に、ある件の売上が上がれば、「おお、あの問題は解決して、お客様にもご納得いただけたのだな」と安心するし、仕入が計上されれば、それを使おうと当てにするだろう。会計でも、取引が認識されると、その後の(他)人の行動に大きな影響を与える。だが、その売上や仕入が、もし間違っていたら?

 

幻視の場合は、患者ご本人が大変怖い思いをして、周囲が異常と思うような行動をとる。その結果、家族の信頼関係に重大な傷をつけかねず、ご本人も、ご家族も、辛い思いをされる。会計の場合は、それを見た人が実態を誤解して誤った対応をすることで、問題を複雑にする。例えば、売掛金が滞留してお客様に催促したら、「あの問題が解決するまでは払わない」と態度を硬化させてしまったとか、原材料の欠品で製造ラインが止まり、多額の仕掛品の品質劣化を生じたなど。

 

改めて、認知・認識は大事だな、と思った。しかし、認知症は病気だし、望まなくてもなるときにはなってしまう。会計上の間違いも、人のやることだから“絶対間違わない”ということはない。(なかには、わざとやる人もいるが。)

 

 どうすれば認識を間違えないだろうか。まあ、今まで何度も繰り返してきた問いだな。答えはない。

 

そんなことを考えながら、見ていた。

 

番組は、早く正しい病名が与えられれば、まず家族が安心する(病気だと思えば信頼関係に傷を付けずに済む)、症状を緩和させる治療もでき、本人も落ち着く。だから、この新しいタイプの認知症の特徴を頭に入れておき、正しいところで診察を受けましょう、と進み、最後に、幻視が起こってしまった時の、ご家族やご本人の対処方法の紹介に入った。そこで、上記の暗闇で人影を見る方は、次のようなことを言われていた。

 

 「人が見えたら、触りに行く。触れないと分かると人影が大人数でもパッと消える。」

 

なるほど。「見えているのに触れない」という矛盾を突き付けると、ようやく脳が理解して、幻視を消すのか。勇気がいるが、これは面白い。「人が見えるなら、手で触れるはず」というのは当然のことだが、いざ、そういう場面に出くわしたら、なかなか実行できない。しかし、病気が原因と分かっているからできるのだろう。

 

さて、会計ならどうなるか。本質を理解して、その本質を利用した思考実験をしてみる、ということだろうか。例えば、売上なら、顧客が満足してない売上はNGだ。果たして顧客は満足しているだろうか、と頭に浮かべれば、まだやるべきことが残っていると気付くかもしれない。仕入も、仕入れたものは当然使われると思えば、検収があがっているか、現場の報告を確認するかもしれない。

 

 そうか、大事なのは本質を理解することだ。本質を理解していれば、矛盾を感じとることができる。

 やはり、会計基準は、本質を大事にする原則主義だな。細則主義で形式ばかりを追っていたらダメだ。

 

そんなことを思ったが、実際にはIFRSでも基準本体は、手続き面の記述が多く、本質云々は書いてなかったりする。例えば、リースの公開草案では、タイプAやタイプBがなんであるかの記述はなかった。むしろ、本質を知りたいのであれば、「結論の根拠」を読んだ方が良い。そこには、何故そういう規定にしたのかが書いてある。日本基準でいえば、「結論の背景」がそれに当たる。基準本体より分量が多いこともあるので、読むのは大変だが、結局、“理解の効率”でいえば、基準本体を上回る。

 

ということで、ためしてガッテンの「気づいて!新型認知症 見分け方&対策大公開」を見て、僕は「結論の根拠が大事」にガッテンした。さすがに、このポイントでガッテンしたのは、日本で僕一人だろう。いや、あと2~3人はいるだろうか。単に“変わり者”というに過ぎないが。

 

2013年10月 1日 (火曜日)

294.【リースED】ゴルフの反省とこのシリーズのまとめ

2014/5/7

2014年3月のIASBとFASBの合同会議で明らかにされた“暫定決定”では、下記の内容の一部は変更若しくは提案取下げの対象となっています。詳細は 5/6の記事をご覧ください。

 

2013/10/1

今日から、米国の政府機関の機能が一部停止するらしい。米国政府の会計年度は9/30末日で、10/1開始なのだが、その予算が議会で審議できない。一か月半の暫定予算でつなごうとしたが、それも上院と下院のねじれで膠着状態だ。その結果、一部の政府機関が一時的に閉鎖されるらしい。このように国の予算審議の遅れは大変なことだが、このブログの「リースED」シリーズのまとめが、1日遅れの今日になっても大した影響はない。そう思って、日曜は久しぶりのゴルフに出かけた。天気にもメンバーにも恵まれ、とても良いゴルフになった。但し、スコアを除いてだが。

 

そこで、スコアに恵まれなかった理由を分析しよう。

 

(目的意識の徹底不足)

 

物事がうまくいかないとき、しばしば、目的がちゃんと理解されていない、或いは、その理解が徹底されていないことがある。僕は、本当は良いスコアを出したいのに、スウィングするときは思い切り振りまわすことに頭が支配される。目的意識が希薄なのだろうか。傍から見ると、力が入り過ぎの状態だ。これではうまくいくはずがない。

 

しかし、このシリーズでは、ゴルフと同じ間違いは犯していない。最初に誤解がないよう「リースのイメージを変える」ことに力を尽くしたつもりだ(7/47/27の記事)。この公開草案は、オペレーティング・リースの、特に借手の会計処理を改善するために出されたもので、そのためには「リース=ファイナンス・リース」という従来のイメージを払しょくさせようと、オペレーティング・リースや、従来オペレーティング・リースとさえ考えられていなかったサービス取引についても、リースが含まれる可能性があることを強調した。リースと判定されれば、会計方針として費用処理を選択した場合の短期リースを除き、借手はすべてのリース取引について、リース資産とリース負債を計上することになる。

 

 

(ドライバー:リースの識別)

 

次に、ドライバーが安定しないことが上げられる。まあ、力が入っているので当然の報いだが。各ホール、スタートで躓いていては、良いスコアになるはずがない。このリースEDでいえば、目的を誤解してリースの識別がうまくいかないようなものだ。そして、識別に失敗すれば、会計処理がうまくいくはずがない。

 

この公開草案におけるリースは、賃貸契約やリース契約といった契約の形式・種類で決まるのではなく、契約にリースとなる条件が含まれるかどうかで決まる。リースの条件は2つあり、一つは、リースの対象資産が具体的に特定されていることであり、これをサポートするポイントは、期間中に渡り、リース対象資産を入替える権利が貸手にないこと(=供給者に資産入替権がない、貨車の例、7/31の記事)、及び、リース対象資産が物理的に区別できることだった(光ファイバーの例、8/1の記事)。もう一つは、資産の使用を支配する権利が借手に移転していることで、これをサポートするポイントは、資産に使用を指図する能力と、それにより便益を得る能力が、借手にあることだった(8/9の記事)。

 

 

(リカバリー・ショット:戦略的なリース期間)

 

ドライバーでトラぶれば、次はボールをフェア・ウェイに戻す冷静なリカバリー・ショットが必要になる。こういうときほど基本に立ち返る必要がある。単にピンへ向かって打てばよいというものではない。さて、僕のボールは、木々の間から遠くにピンを見下ろせる斜面にあった。僕はピンが見えたことを不幸中の幸いとばかりに喜びを感じ、早速構えて一直線にピンを狙った。ただ、そこは左足下がりの難しい足場だった。シマッタ、と思った時には、アイアンを振り下ろしていた。ボールは、無情にも、すぐそこの木に当たって直角に跳ねた。本来は、冷静に打ちやすい方向へ回り道をすべきだったのだ。

 

契約にリースを識別したら、最終見積書から建物の取得原価を集計・按分するように、リースとそれ以外の要素を区分し、リースの取得原価を求める。また、固定資産の経済的耐用年数を決めるのと同様に、(事業戦略や製品戦略に裏付けられた)リース期間を決定する。

 

リースを識別したら、ちょっと落ち着いてその事業を引いて眺める必要がありそうだ。単純・拙速に契約書に記載のあるリース期間を、そのまま経営管理上(=会計上)のリース期間にしてはいけない。リースを行った目的が、単に延払いにしたいというだけであれば、それでも良いだろう。しかし、事業戦略や製品戦略上、もっと具体的な期間の使用を想定してリースを選択したのであれば、中途解約オプションや期間延長オプションを使用する可能性が高いかもしれない。したがって、リース期間を変更するオプション行使に重大な経済的インセンティブがあるかどうか、或いは、どのような場合に経済的インセンティブが高まるかを確認・理解する必要がある。

 

今後リースは、従来より戦略的な目的をもって使用される傾向が高まると思う。(その前提には、日本企業が、より戦略的な事業計画を持つことへの期待がある。) そのような場合、単純に契約書通りに会計処理してしまうと、逆に事業の姿が見えにくくなり、事業部門の足を引っ張りかねない。短慮やワンパターンな思考で、リース契約書のリース期間に飛びついてはいけない。リースは単に資金繰りに余裕を持たせるだけの道具ではなく、事業戦略を有利に進めるために利用されることが本来の姿と思うので、稟議書やその添付資料等で、必要に応じてこのような情報が共有できる仕組みを考えておくと良いのではないかと思う。

 

戦略といえば、自社工場を持たない、いわゆるファブレス企業(或いは事業)という形態は、その戦略性の表れかもしれない。このブログでは、外注加工契約や庸車契約にリースが含まれるケースがあるかどうかについて、敢えて検討を試みた。僕の考えでは、「ありえるが、あまり可能性は高くない」が結論だった(9/4の記事)。通常はあまり該当しないと思うが、「ありえる」とすれば、その特定の条件に対する注意は必要と思う。

 

 

(バンカー・ショット:リースの分類と会計方針)

 

なんといっても、僕のスコアを増やすことに最大の貢献をしたのはバンカー・ショットだ。1ショットで出せないことが2度あった。出せても、イメージと違うところに飛んで行ったことも2~3度あった。おまけにその後のプレーに心理的な悪影響を及ぼした。むしろ、これだけバンカーに祟られて、あのスコアなら満足すべきかもしれない。そこは、キャディの◯本さんの笑顔と同組のみなさんの励ましに感謝だ。

 

あのコースはバンカーの砂が固い。難しいから本来は入れないのが最上の戦略だが、僕の腕では期待できない。ということは、入れた場合のリスク管理に問題があった。リスク管理といっても難しいことはない。ボールの状態と、どこに出すべきかを強くイメージして、あとは足を広めに開いて短めに持ったクラブを振るだけだ。僕のバンカーショットは本来原則主義で、細かい場合分けをしない、シンプルなリスク管理に依っている。しかし、砂の固さが気になって、反って、色々考えすぎてしまった。普段は考えないのに・・・。

 

さて、この公開草案では、リースをタイプAとBに分類し、それぞれに借手・貸手の会計処理を定めている。一見、場合分けが細かくて複雑な印象を持ちやすいが、実はそんなことはない。というのは、リースに借手と貸手がいて、それぞれが別の会計処理をするのは当然だし、リースは借手・貸手の事業実態は幅が広い。それを消費の原則でシンプルに、主に不動産リースか否かでA・Bの2つに分類し、あとは会計処理を規定された手続き通りに進めていくと、日本基準なら3つに場合分けされている会計方針を選択することなしに、自動的にそれぞれの状況にあった会計表現が実現されていくからだ(9/27の記事)。

 

重要なのは、「“重大ではない”=“ささいな(=些細な)”」ということ、即ち、不動産リース以外がタイプBに分類される可能性は“ささい”という点だった(9/13の記事)。不動産リース以外でも、リース期間中にその資産の価値が殆ど消費されないケースがあるかもしれないが、不動産は土地という価値が消費されない資産と、建物という通常は耐用年数が非常に長く、リース期間中の消費割合の少ないものの組合わせなので、これと同等程度に消費が少ないリースはなかなか多くは考えづらい。この消費の原則のお陰で、例外規定はあるものの、分類の原則は非常にシンプルなイメージになっている。これは、バンカー・ショットをどこに出せばよいかを容易にイメージできるのと同じで、余分なことを考えず、力まない良いスウィングに貢献する。即ち、手間のかからない正確に分類に貢献する。あとは、砂が固かろうが、柔らかかろうが、決まった手続を進めるだけで良い。

 

ついでに、2つほどつけえ加えると、この公開草案で要求される会計方針の選択は、短期リースについて使用権資産とリース負債を計上するか、それとも従来のオペレーティング・リースの処理(発生主義による費用処理)を継続するかのみだった。9/26の記事では、大家さんには会計方針の選択があると書いたが、これはIAS40号「投資不動産」によるもので、当公開草案によるものではない。

 

それからもう一つ、9/17の記事の末尾にある問題が気になる。不動産リースのリース期間を決める際に、わが国の借地借家法の借主保護制度(強制規定)がどのように影響するかだ。借主にのみリース解約オプションがあり、貸主にはないということは、リース期間を決定する際、リース期間が経済耐用年数の大部分を占めるとせざるえないのではないだろうか。もしそうだとすると、借地借家法による賃貸契約は不動産リースだが、例外規定によりタイプAに分類される(9/10の記事)。それだけでなく、リース期間が必然的に長期となるので、借手のリース資産やリース負債が大きな金額となる。果たしてそれが経済実態に合っているのかどうか、借地借家法の法的解釈と共に、事前に研究・整理が必要だ。

 

 

以上で、このブログでのリースED'13の検討は無事?終了となった。一部の方は、1日遅れた理由がゴルフであると知って、また他の方は、僕のゴルフの腕前の程度を知って、ブログの内容にも不安や疑念を持たれたかもしれない。僕としては、すっかりゴルフの機会が減ったのでとても貴重な機会だったし、それ故、力が入ってしまうと言い訳するしかない。いやいや、そんなことでなく、リースのことだけで良かったのに、内容に無駄が多いと憤慨されている方には、申し訳ないとお詫びするしかない。

 

ところで、オバマケアを巡る米国民主党・共和党の争い、予算審議の遅れは、言い訳やお詫び程度で済むものではない。いつ決着するのか、まったく見通せないのは困ったものだ。このまま対立が続くと、連邦政府の債務上限引上げ協議もできず、17日以降は国債の増発ができなくなるという。にも拘らず、米国の金利は、10月下旬に償還期限を迎える一部の国債を除き、むしろ低下しているらしい。一部に、債務不履行に陥る可能性があるなどという報道もあるが、実際には手元資金と今後の税収で、まだなんとかなるらしい。(以上は9/27付のWSJの記事を参考にした。一応リンクを貼ったが有料かもしれない。)

 

といっても、自宅待機を余儀なくされる政府職員は、この先の生活に不安を感じているだろうし、連邦政府による一部の公共サービスがストップし、迷惑を被る米国民もいるだろう。そしてなにより、既に、円高・株安の影響が出始めている。アベノミクスへの“期待”が剥がれつつある日本の景気に悪影響が出ないうちに、何とか解決してほしい。

 

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