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2013年11月 5日 (火曜日)

305.CF DP-09)会計上の不確実性~IASBの考え「セクション2-財務諸表の構成要素」

2013/11/5

プロ野球日本シリーズは、美馬投手や田中投手の活躍もあり、楽天が初優勝した。被災地に本拠地のある球団が日本シリーズを制するのは、被災地の方々だけでなく、我々にとっても心強く励まされる気がする。サッカーでも、ベガルタ仙台の気合がさらに充実することは間違いない。

 

但し、なぜか最近、ベガルタはエスパルスに異常に弱い。天皇杯では“厳正なる抽選の結果”、4回戦で両者が対戦することが決まった。これに対してベガルタ・サポーターからは、絶望的な反応が寄せられている。次のリンク先はエスパルス・サポーターのブログだが、抽選結果に対するベガルタ・サポーターの2chでの反応を集約したものらしい。お暇な方で、自虐ネタが嫌いでない方は、ご覧いただくと結構楽しめると思う。

 

http://www.spulse.info/archives/34128436.html

 

 

さて、前回(10/31の記事)示した方針に従い、これから、“会計における不確実性”をIASBがどのように捉えているかを、このディスカッション・ペーパーからご紹介したい。なぜかというと、10/21の記事に書いたように、一般的に“不確実性”といえば、ゴルフでいうところの自然環境、運動する場合の重力のように、隠れた主役といえるほどの重要な存在感がある。しかし、どうやらIASBは、もっと違う、もっと限定的な“不確実性”を考えているようなのだ。即ち、IASBは「一般的な“不確実性”と会計でいう“不確実性”は異なるもの」という主張を行っている。

 

以下について、みなさんが「なるほど、それはそうだ。」と感じるか、それとも「ん~、そうかな?」と思われるか、とにかく暫く僕は、IASBの側に立って、ディスカッション・ペーパーによる主張を紹介させていただくことにする。

 

まず今回は、「セクション2-財務諸表の構成要素」に出てくる不確実性について紹介する。ここでIASBは、すでに10/21の記事に記載したように、不確実性に関連しそうな文言を資産(や負債)の定義、及び、認識規準から外し、必要があれば個別基準で規定すればよいのではないかという提案(=予備的見解)を行っている。

 

 

IASBの懸念と議論の概要

 

IASBが、なぜそのように考えるかというと、IASBが次のような懸念を持っているからだ。

 

 ① 現行の規準・実務では(将来への不確実性を理由に)資産・負債の計上漏れが生じている。

 

 ② 定義は“現在”(=決算日時点)の資産・負債に限定している。(=本来、“将来”は関係ない)

 

 ③ 現行の定義と認識規準が矛盾している可能性がある。
(=定義の“予想される”と認識規準の“可能性が高い”の蓋然性のレベルが不一致の可能性がある。)

 

上記について概略を記載する。しかし、以下を読むにあたって、「いくらで資産計上するか」については考えてはいけない。あくまで「資産か、資産でないか」という第一歩目で思考を止めていただきたい。そうしないと全く理解できない議論になってしまう。

 

まず①については、資産側の例として、オプションの保有や先渡し契約の購入権、研究開発などが挙げられている。現行の実務や会計規準は、これらを資産計上するにあたって、将来の経済的便益の流入の可能性を確認せよとしている。例えば、研究費は原則費用処理で、一定の要件を満たす開発費が資産計上とされるのは、その一定要件が将来の事業による収益実現の可能性を表しているからだ。しかし、IASBはそれは違うと考えていて、例えば、研究開発は、将来獲得できる経済的便益が資産になるのではなく、(個々の試みが失敗しようが成功しようが)生み出されるノウハウに経済的便益を生み出す能力があり、ノウハウこそが経済的資源(=資産)なので、もっと幅広く資産計上すべきと考えているようだ。

 

しかも②にあるように、資産・負債の有無は過去に起因した事象の現在の状況で決まるものなので、不確実性(=将来の事象)を要件として考慮するのはおかしい。おかしいのに現行の定義や認識規準がそこまで言及してしまっていることで、③のような矛盾が生じている。

 

 

議論の深化=「存在の不確実性」と「結果の不確実性」の区分

 

以上の議論を深めるために(特に③の蓋然性のレベルを検討するために)、不確実性を「存在の不確実性」と「結果の不確実性」に区分して議論をしている。前者は、期末日現在の状況が不確実だが、後者は将来起こる結果が不確実という整理のようだ。

 

もう少し詳しく書くと、前者は「(期末日)現在において、資産・負債が存在するか否かが不確実な状態」であり、典型例は訴訟とされている。即ち、過去の事象に基づいていることは間違いないが、期末日において訴訟に勝つか負けるか判明しない状態では、賠償金等を受取る権利があるのか(或いは支払う義務があるのか)が、分からない。そのような状況を「存在の不確実性」があるとしている。

 

後者は「将来起こる結果(=経済的便益が流入・流出するか否か)が不確実な状態」であり、訴訟のケースでいえば、勝つか負けるかはほぼ分かっているが、どれぐらい勝つか(或いは負けるか)が分からない状態、即ち、勝っても賠償金はほぼゼロという予想から、多額の賠償金を受取れる可能性まで、色々考えうる状況だ。

 

このように不確実性を区分したうえで、どの確度(=蓋然性)の時点で資産・負債を認識すべきか。

 

 ・“ほぼ確実”の段階で資産・負債とすべき

 ・“半分以上の確率”で認識すべき

 ・ 資産は“ほぼ確実”だが、負債は“半分以上の確率”で認識すべき

 

IASBは、IAS37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の規定例や過去に寄せられた意見を挙げ、それぞれの長所・短所を検討しているが、これが一番という結論はない。むしろ、混在(混乱?)している現状が示されている。

 

結局、不確実性を2つに区分して、上記のような厳密で具体的な検討をしても、どれも一長一短で簡単に決められるものではないというニュアンスが言外にあるように感じられる。但し、「存在の不確実性」は滅多にないが、「結果の不確実性」はそれより多くのケースが考えられるとし、上記のオプションや先渡し契約、研究開発などもこちらに属するとしている。その他、売上債権や棚卸資産の評価までもが「結果の不確実性」として例示されている。

 

議論の流れからいえば、前者は滅多にないし、後者はより将来事象的な要素であり、資産がなんであるか、或いは、(期末日)現在存在しているか、という問題からは遠い。したがって、両方について、資産・負債の定義や認識規準に関係させるべきでないと主張しているようだ。

 

 

IASBの予備的見解

 

そしてその次に、上記の不確実性を概念フレームワークの定義や認識規準から外すべしという予備的見解が、その理由と共に述べられている。その理由を改めて記載すると、以下のとおり(2.35(a)(c))。

 

・定義における“予想される”は維持すべきでない。これがあるために、一部が漏れ、すべての資産・負債が計上されていない。

 

・資産は経済的便益を生み出す可能性が高い必要はなく、その能力があれば良い。このように考えれば、上記のような蓋然性の閾値(不確実性の程度)を定義で定める必要はなくなる。(負債の場合も同様。)

 

・稀に、「存在の不確実性」が問題になるケースがあるが、稀なので個別に定めればよい(=概念フレームワークで扱う必要はない)。

 

・認識規準においても“可能性が高い”は削除されるべき。上記と同様、これがあるために、現状はオプション等の一部の資産・負債が漏れている。IASBとしては「結果の不確実性」のみで資産・負債の存在を決めるべきではないと考えている。

 

 

以上が、このセクション2における不確実性の議論の要約だが、これ以外にセクション4「認識及び認識の中止」やセクション6「測定」でも、角度を変えてまた取上げられている。これについては次回以降にしたい。

 

 

補足

 

ところで、「存在の不確実性」と「結果の不確実性」については、ご理解いただけただろうか。例えば、10/10の記事で僕が例に挙げた会議室の絵画の話は、「いくらするか分からない」となっているので、「結果の確実性」か、もしくは「測定可能性」の問題になる。一方、「台帳には絵画があることになっているが、現物が見当たらない」などという、上場準備会社ではありがちなケースであれば、「存在の不確実性」ということになるだろう。

 

もっと身近な例でいえば、棚卸差異がある。しかし、差異原因を追究した結果としての「存在の不確実性」については、重要性なしとして損失計上されるのが普通だ。しかし、時には多額となる場合もあって、そういうときは仕損じ品が絡むことが多い。その仕損じ品についてはちょっと問題がある。仕損じからは失敗を繰り返さないノウハウを獲得すると思うが、それも資産と考えるのだろうか。ノウハウが経済的便益の流入につながるかは否かは「結果の不確実性」の問題、それを具体的にいくらで評価するかは「測定」の問題で、この辺りは、またセクション46で出てくると思うので、引続き検討課題としたい。

 

 

ちなみにエスパルスは、冒頭のベガルタ・サポーターの嘆きでも分かる通り、ベガルタとの相性が良い。したがって、天皇杯第4回戦の勝利はほぼ固いと予想できる。ということは、その次の5回戦、即ち、準々決勝まで進むことができる。現時点で既に準々決勝のチケット販売収入があるだろうと見込めるわけだ。このように、エスパルスのベガルタに対する相性の良さは、経済的便益を生み出す能力といえる。ただ、今後、今回のような天皇杯でベガルタと直接対決できるラッキーがどれぐらい巡ってくるかを予測することは困難で、その能力によって、いくらチケット販売収入を増やせるのかを具体的に予想するのは難しい。

 

現行の会計規準では、このようなベガルタとの相性の良さを資産計上することはない。しかし、経済的便益を生み出す能力があり、かつ、存在の不確実性ではなく、結果の不確実性のみがある状況だ。もしこの予備的見解によった場合、ベガルタに対する相性の良さは、エスパルスの会計上の資産になるのではないか?

 

もちろん、これは冗談で書いている。ベガルタに大変失礼な話で、ベガルタ・サポーターの方々にも申し訳ない(実際の対戦成績はエスパルスの832敗、即ち、2敗している。ただ、この10年間一度も負けていないのも事実だ)。しかし、不確実性や蓋然性を考慮しないで、能力が資産だとすると、あれもこれも資産になるのではないかと、つい思ってしまう。

 

もっとまともな例を挙げれば、Jリーグのチームはシードされているので必ず天皇杯のトーナメントに参加できる。その分、チケット販売収入は増えるので、これも経済的便益を生み出す能力だ。さらに、J1に所属するチームは、有料試合を年間34試合行うことができる。すると、これも、例えば「Jリーグ参戦権」などとして、資産計上することになるのではないか。いくらで計上するかは分からないが。

 

一つの考え方として分からなくはないが、「Jリーグ参戦権」は、チームの存在意義を賭けて戦って勝ち取るものだし、売買できるものではない。それを資産計上するのは、目的と手段を穿違えたような、いや~な感覚が僕にはある。

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