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2013年11月12日 (火曜日)

308.CF DP-11)会計上の不確実性~IASBの考え「セクション6-測定」

2012/11/12

10/25の記事では、このディスカッション・ペーパー冒頭の「要約とコメント募集」に要約された「セクション6-測定」の予備的見解、即ち、結論のみを記載した。今回は実際にセクション6の本文を見ながら、もう少し詳細な議論のプロセスを記載する。そして、最後に、IASBが“不確実性”をどのように扱っているかを確認したい。

 

さて、IASBの扱っている論点と議論の流れは、次のようになっている。

 

 ① 全般的なテーマ(6.16.35、約8ページ)

 

A.複数の、但し、なるべく少数の測定方法があることを正当化すること。

 

少数の測定方法とは、次の3種類。

 

・原価ベース

・現在市場価格(公正価値(の見積り)を含む)

・他のキャッシュ・フロー・ベースの測定(使用価値などの減損会計に使用される方法、繰延税金や退職給付債務の算定方法など、個々の規準に定められた方法)

 

単一の測定方法に統一されてないと、各財務諸表の小計や合計が意味をなさず、「例えば、現行の要求事項では、純資産の合計額として表示される金額にはあまり意味がない。」(6.12)とまで言っている(これは2011/11/2の記事の中の「資産・負債アプローチ」という見出しに書いた話と同じ議論)。その一方で、すべて原価、或いは、すべて現在市場価格で測定しても目的適合性のある財務情報にならないとしている。即ち、測定方法を統一しても財務諸表の利用者には役立たない。したがって、個々の項目に合った複数の、但し、なるべく少数の測定方法が必要になる。

 

B.どんな時にどの方法を適用するかの場合分けの考え方を示すこと。

 

そうなると、どんな時にどの方法を適用するのかが重要になる。その適用を決める考え方について下記を提案している。

 

個々の資産が、将来キャッシュ・フローにどのように寄与するか(負債の場合は、企業がどのように決済又は履行するのか)によって、適切な測定方法を識別する。

 

例えば、将来に現金と交換されるような金融資産であれば、現在市場価格ベースの測定方法が適切であり、使用されることで将来キャッシュ・フローの獲得に貢献する減価償却資産は、当初は取得価額ベース、事後測定は減損テスト(他のキャッシュ・フロー・ベースの測定)という具合。(棚卸資産については後述。)

 

 ② 個々の測定方法、項目ごとの測定についての個別論点(6.366.130、約20ページ)

 

ここからは、①、特にBの詳細が記載されている。まず初めに、Aの3つの測定方法が個別に説明されている(~6.54)。次に「当初測定」と「事後測定」の観点や、将来キャッシュ・フローとの関係が重要であることが示され、これが以下の議論の頭出し的な記載となっている(~6.57)。

 

「当初測定」(=取得時の測定)の場合は、等価交換、非等価交換、非交換の3つの取引パターンが検討されている。例外はあるが、基本的には認識日(=取得日)における公正価値で測定されるとしている(~6.72)。

 

「事後測定」(≒決算時の評価)の場合は、上記Bの考え方によって、資産が最終的に将来キャッシュ・フローに寄与する方法によって決めるべきとしている。そしてその寄与の方法は、資産の用途というか、事業モデルというか、そういう企業の選択可能な要素に依存しており、選択(変更)の不確実性と、それによる将来キャッシュ・フローの不確実性があることを指摘し、これらについてIASBは、個々の基準ごとに対処していく方針であることが示されている(~6.77)。

 

そして次に、個々の項目ごとに、どのような測定方法の適用が、企業の選択的要素と目的適合性の観点から適切かが論じられる。キャッシュ・フローを間接的に生み出す資産(有形固定資産のようなもの)、棚卸資産のように販売されるが現在市場価格では目的適合性がないもの、売却予定の資産(投資金融資産や貴金属などのいわゆるコモディティ、投資不動産など)、貸付金や債券などの契約上のキャッシュ・フローを回収する金融商品・賃貸資産・知的財産、さらに負債といった具合だ(~6.109)。

 

例えば、棚卸資産については、販売される資産であるが、他の資産と独立にキャッシュ・フローを生み出せないので1、「使用される資産」に類似しているとしている。購入者を探し出す相当の販売活動が必要であり、その他の販売条件も複雑であることを考慮すると、現在市場価格ベースを適用することに対する異論が多く、測定の不確実性も高いという。したがって、基本的には原価ベースの測定となる(6.806.81)。

 

最後が、将来キャッシュ・フロー及びその割引額の見積りの計算技法についての検討となっている(~6.130、即ち、最後まで)。ここでの議論の形式的な特徴は、“確率”が所与として与えられていて、“確率”自体、即ち、“不確実性”自体は、問題にされていないことだ。(まあ、計算技法に関しての記述だから、当たり前といえば当たり前だが・・・)

 

そして議論の実質的な内容としては、次のようなものがある。

 

計算要素のインプットを市場データから採るか、それとも企業独自の見方を反映するか、そして、それを事後測定する際に毎期見直すかを、個々の項目の測定の目的に照らして整理している。

 

現在市場価格を測定するなら、すべての要素が市場参加者の見方を反映するように計算される。しかし、原価ベースの測定をするなら、一部の項目は企業独自の見方が反映されたり、見直されなかったりする。原価ベースの測定をするにあたり、現在、これらは個々の項目の性質に合わせてそれぞれ異なる規定がされている(棚卸資産の正味実現可能価額、減損会計の減損テスト、一部の金融資産・負債の再測定、退職給付債務、繰延税金資産、保険契約、公正価値ヘッジのヘッジ対象など)。 そして、このような場合は取得原価以上の評価増し(=評価益)は計上しない。

 

負債の計算要素に企業自身の信用リスクを含めるかどうかについては、両論併記して、含める可能性も含めない可能性もあるとしている。企業自身の信用リスクとは、負債を期日に決済できないという不確実性のこと。即ち、継続企業の前提を脅かす不確実性のこと、例えば倒産リスクだ。

 

1 ちょっと分かり難い表現だが、他の製品・サービスや他社から調達した商品・サービスと抱き合わせで販売することを想定すると良いと思う。また、単独で売るにしても、販売ノウハウ(≒販売サービス)という資産(会計上資産計上されない)を使用しているので、結局独立したキャッシュ・フローになっていない。IASBは2011年の収益認識の公開草案32項で、サービスも一端資産になる(すぐに消費されて費用計上されるにしても)という考え方を示している。

 

 

さて、それでは、以上について“不確実性”の扱いがどうなっているかを考えてみる。

 

全体としては、最初の8ページで総論を展開し、その総論を検証、或いは、立証するように各論を20ページにわたって展開するという構成になっているのが、お分かりいただけると思う。

 

そして、“不確実性”という単語は、総論部分では一切出てこないが、各論では20回も使用されている。即ち、“不確実性”を概念フレームワーク(=総論)から排除し、個別IFRS(=各論)で対応することにしたいというIASBの提案が、このセクションの構成にも反映されている。

 

さらに、各論のどこで“不確実性”という単語が使われているか記すと、次の通り。

 

6.47 現在市場価格の説明として、IFRS13号「公正価値測定」を引用しているが、その中に3つ出てくる。計算要素をリストアップしただけのもので、“不確実性”が取上げられたわけではない。

 

6.756.76 上記の「資産がキャッシュ・フローに寄与する方法が不確実(企業の選択的要素)」というところに4つ出てくる。ここでは暗に、「選択的要素の内容は、資産(や負債)の種類によって色々異なるので、この不確実性も個々の項目ごとに考えるべきもの」と、IASBは主張していると思う。しかし、この“不確実性”は、企業の意思のことであり、企業が直面している企業にとっての“不確実性”ではない。

 

残りの13個は、最後のキャッシュ・フローの計算の説明に出てくる。上述したように、“不確実性”は、所与の確率として与えられており、ここでも企業が直面している“不確実性”を直接問題にしていない。

 

ちなみに、“不確実性”ではなく“不確実”という単語は、総論部分の最後に4つ出てくる(6.316.34)。ここでは、「現在市場価格の見積りがどんなに不確実であっても、その不確実な状況を注記で説明して開示すればよい」という(極端な?)意見が一部にあることを紹介し、それに対して、あまりに不確実な場合は目的適合性がなく、資産・負債項目を認識しないというセクション4のIASBの考えを簡単に繰り返している。

 

しかし、セクション4では、“不確実性”を概念フレームワークの認識規準には記載せず、何を認識しないかは、IASBが個別基準の中で決めるとされており、不確実性や重要性に関する企業の判断は許容されなかった(10/24の記事)。そして、このシリーズの前回(11/7の記事)でも、「自己創設のれんは本来資産だが、資産計上しないことをIASBが決めた」というIASBの新しいロジックを詳しく記載した。

 

ということで、このセクション6は、全体として非常に興味深い内容だが、“不確実性”に関していえば、概念フレームワークではなく、個別規準で扱えばよいというIASBの姿勢が、他のセクション(セクション24)と一貫している。その一方で、IASBの意図に反して、“不確実性”が非常に多くの項目の測定に関係しており、一般的な存在であることも垣間見えているような気がする。(例えば、上に“不確実性”と関連して出てきた「事業モデル」について、IASBはセクション9で検討し、その定義やガイダンスを概念フレームワークに追加することに前向きな意見を述べている。)

 

やはり、概念フレームワークで扱うべきではないだろうか。

 

僕がそう思うのは、IASBは個々の項目ごとの“不確実性”の違いを強調しているが、僕は違う観点で、それらが共通しているのではないかと思っているからだ。それについては、次回以降に繰越したい。

 

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