313.CF DP-14)会計上の不確実性~方針再検討を終了~
2013/11/25
どうもIASBは、IFRSの品質や自らの役割を変えようとしている気がする。それがこの不確実性の扱いに表出してきたのではないだろうか。例えば・・・と続けたいが、今回は、僕が再検討した結論(もちろん、現時点のものであり、またまた変わるかもしれない)だけを記載し、詳細は、次回以降とさせていただきたい。
まず、会計上の不確実性をより小さな問題として扱い、概念フレームワークから除去するという提案には賛成できない。また、これに付随して言及されている目的適合性(重要性の判断を含む)の有無をIASBのみが決定できる(但し、注記については企業も判断できる)という提案にも賛成できない。したがって、方針を再検討してみたものの、やはり、当初の方針で行くことにした。
これらの提案が実際に実行されたのちに開発されるIFRSは、従来、不確実性が高いとか、計算が困難といった理由で計上されていなかった資産や負債をより多く認識するようになっていくと思う。その結果、資産や負債、そして利益の変動が、もっと激しく表現されると予想される。
それが実態であるならば、それで良い。しかし、そうだろうか?
その変動の多くは、会計上の見積りに使用される市場価格要素の変動によりもたらされるものになると思うので、その意味を財務諸表の利用者に理解してもらう必要がある。或いは、それが理解しやすい開示方法が一緒に開発される必要があると思う。しかし、現在はまだ未整理の問題がある。その解決が優先だと思う。例えば・・・
・「目的適合性」、即ち、「利用者のニーズ」の深掘り
利用者は市場価格によって大きく変動する財政状態や経営成績を見たいのか? それとも、企業が自ら掲げる長期目標への進捗状況を見たいのか。僕は統合報告を高く評価しているので、後者も重要と思うが、IASBの整理はどうか。現行の概念フレームワークやこのディスカッション・ペーパーの記載では、まだ整理が足りないのではないかと思う。
・「包括利益」と「純利益」
このディスカッション・ペーパーでも議論されているが、IASBは結論を出していない。恐らく、目標に対する進捗状況が「純利益」に現われ、それに目標とは関連の薄い外的要素(特に市場要素)の変動が加わり「包括利益」になるのではないか、というイメージが僕にはある(目標はもちろん、非財務情報)。その外的要素には、企業、或いは、経営者が積極的に克服しようとするものと、様子見を決め込んでも問題ないと判断するものがあると思う。客観性や比較可能性も重要だが、なんでも一律の基準で揃えようという発想より、そういう判断の差を開示することにも目的適合性があるのではないだろうか。
もしかしたら、目的適合性を深掘りしていくと、B/SとP/Lの意味も変わってくるかもしれない。まだもやもやしていて言葉にならないが、そんな気もする。
いずれも大変大きな問題で、僕には荷が重いが、なんとか話を進めていきたい。
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