« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2013年11月

2013年11月29日 (金曜日)

315.CF DP-16)会計上の不確実性~現在、過去、未来

2013/11/29

「現在、過去、未来」とくれば、我々の年代は、シンガー・ソング・ライター渡辺真知子さんの「迷い道」(1977年発売)を思い出す。この歌い出しが非常に印象的な名曲だ。当時は、ちょうど中学生になって英語を学び始めたころだったので、「現在完了と過去完了はなくていいのか?」などと突っ込みを入れていたのを思い出す。だが、いま改めて聴いてみると、過去の意地っ張りな自分を悔いて、思考が空回りする失恋の辛さがテーマであり、その彼との思い出から抜け出せない過去に捉われた女性の姿がイメージされる。即ち、過去ばかりで未来がない。(もちろん、現在完了や過去完了など問題外だ。)

 

この点は、会計を嫌いな人が会計に抱くイメージとかなりダブるのではないだろうか。会計は過去のことばかり問題にして、未来がない。しかし、大事なのは未来なのだと。これからどうするかが重要だと。こうしてみると、まるで会計は、失恋から立直れない後ろ向きの可哀想な人みたいだ。

 

こんなふうに書くと、「なんだ、それじゃ、かぐや姫の物語の主題歌から会計上の資産の定義を連想するような会計バカのおまえは、失恋バカなのか?(11/23の記事)」 そんな声が聞こえてきそうだ。まあ、確かに僕にも覚えはある。そして恐らくIASBにも自覚はあって、そのイメージの払拭に力を入れていると思う。現行の概念フレームワークの第1章では、一般目的財務報告書が提供すべき情報として次の2点を挙げている。

 

企業への将来の正味キャッシュ・インフローの見通しを評価するのに役立つ情報OB3

 

企業の経営者や統治機関が企業の資源を利用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたかに関する情報OB4

 

前向きだ。目線は将来へ向いている。1点目は、前向きであることに誰も文句が付けられまい。2点目は過去を見ているようだが、1点目の予測のために必要不可欠な情報だ。財務報告の利用者が、企業の将来を見るために、最低限これらの情報が必要なのだ。

 

しかし、実際はどうか。現状の会計、或いは、IFRSは、本当にこれらを表現できているだろうか。会計嫌いの人からは、「相変わらず過去をいじくり回しているだけで、見たいものが見えないなあ」と思われてないだろうか。僕は、このような情報の内容や情報の持つ方向性が利用者のニーズに合っているかどうかを扱う基本的な質的特性が、「目的適合性」だと思う。

 

IASBは、現行の概念フレームワークの第3章で、この「目的適合性」を次のように表現している。

 

目的適合性のある財務情報は、利用者が行う意思決定に相違を生じさせることができる。QC6

 

財務情報は、予測価値、確認価値又はそれらの両方を有する場合には、意思決定に相違を生じさせることができる。QC7

 

大雑把に言って、予測価値は上記1点目に貢献できることであり、確認価値は上記2点目に貢献できることなので(QC8QC10)、僕の「目的適合性」のイメージは、IASBとそう違ってはいないと思う。

 

また、IASBは次のようにも言ってる。

 

しかし、一般目的財務報告書は、・・・情報のすべてを提供しているわけではなく、すべてを提供することはできない。それらの利用者は、他の情報源からの関連する情報を考慮する必要がある。例えば、・・・会社の見通しなどである。OB6

 

即ち、一般目的財務報告書は上記2点に関する情報を提供するのだが、それだけでは十分でなく、利用者は他からの情報(=非財務情報)とセットで財務情報を利用することが想定されている。しかし、IASBは、この他の情報と財務情報の関係をこれ以上詳しく説明していない。僕はここに問題があると感じている。

 

利用者はセットで利用するのだから、セットにした時の財務情報の位置づけをどうすべきかについて、深く考える必要があると思う。セットにした時に、より上記2点を分かりやすく表現するには、財務情報はどうあるべきかを追求すること、さらに、非財務情報の在り方にまで言及することもありかもしれない。それによって、「目的適合性」が改善される。

 

以前も記載した通り(1/8の記事)、IASBは、「経営者による説明(Management Commentary)についての実務ステートメント」を2010/12に公表し、非財務情報についても言及している(IFRSを構成しない任意の扱い)。しかし、セットで上記2点を目指すというより、財務情報を中心に据え、付随するものとして「経営者による説明」を位置づけいる。「経営者による説明」は補足情報ということのようだ。だが、それで利用者のニーズを満たせるのだろうか。両者をセットにして「目的適合性」を改善させることを、もっと積極的に考えるべきではないか?

 

 

ところで、問題は、以上の議論と会計上の不確実性がどう関わるかということだ。これも以前記載したように(1/10の記事など)、

 

将来情報 ≒ 非財務情報 ・・・主に「経営者による説明」はこちらに属する。

実績情報 ≒ 財務情報

 

というのが僕のイメージだが、将来情報は不確実性が高く、実績情報は不確実性が低い。そして、両者の境界を蓋然性の基準で分けるとすれば、会計上の不確実性とは、財務情報や会計の範囲を決める基礎となる重要な概念ということになる。一方、IASBは今回のディスカッション・ペーパーでこれを否定する提案をしている。そこで、将来情報と実績情報、非財務情報と財務情報を分けるものがなんであるかについて、改めて検討していきたい、という問題提起をすることが、今回の目的だ。会計上の不確実性をもっと深く理解することで、財務情報がもっと読みやすくなる、目的適合性を改善できる、即ち、「大事なのは未来だよ。これからどうするかが重要だ。」という人の満足度をもっと上げられることを期待している。

 

 

さて、冒頭の「迷い道」についての記載は、「現在、過去、未来」で歌い出すのに、結局過去のことしか歌ってないじゃないかと、僕が批判しているように誤解されそうなので、弁解して終わりたい。

 

この歌詞は、過去(=失恋)に溺れた女性の現在の姿を描写することで、この女性の未練、即ち、未来へ寄せる微かな復縁の望みが、いかに切ないか、そして儚いかを表現していると思う。この歌い出しは、聴き手にそう思わせる呼び水のような役割があって、見事に計算された配置だと思う。過去・現在の姿を記述しながら未来も想像させる。それはまるで、蓋然性の基準が財務情報の目的適合性を改善させるかのようだ。

 

なお、「迷い道」に関心を持たれた方は、下記をご覧になると3番までフルコーラスを聴くことができる(3分ほど、歌詞も表示される)。自動的に演奏が始まるので、周囲の迷惑にならないようご注意いただきたい。(最初の数秒間PRビデオが入るが、僕の収入になるわけではないので、ご容赦願いたい。)

 

http://www.youtube.com/watch?v=p7K-2NYYj6c

 

2013年11月27日 (水曜日)

314.CF DP-15)会計上の不確実性~次回から目的適合性へ

2013/11/27

どうもIASBは、IFRSの品質や自らの役割を方向転換をしようとしている気がする。それがこの不確実性の扱いに表出してきたのではないだろうか。例えば・・・

 

1.「IFRSは高品質」は大丈夫か?

 

現行の概念フレームワークは「将来の経済的便益の蓋然性」というタイトルを付けた文章(4.40)で、次のように言っている。

 

蓋然性の概念は、ある項目に関連する将来の経済的便益が企業に流入すること又は企業から流出することについての不確実性の程度に言及するために、認識規準において用いられている。この概念は、企業が活動する環境を特徴づける不確実性と一致する。

 

IASBは“経営上の不確実性”と“会計上の不確実性”の強い結びつきを絶とうとしている。経営の難しい部分を会計から切り離してしまえば、会計規準はその分シンプルになるし、開発も容易になるに違いない。原則主義を貫くために、それが必要と考えたのだろうか。

 

だが、これによって経営における会計の役割が、そしてその会計を司るIASBの役割が縮小されることになる気がする。それは「経営実態を映す鏡である会計」の品質に悪影響を与えるのではないか?

 

また、現行の概念フレームワークには、「資産の定義に該当し、認識規準をクリア(=信頼性をもって測定できる+一定の蓋然性がある)」すれば資産計上することとしているが、このディスカッション・ペーパーでは、これから蓋然性の基準を除去して、個別基準ごとに定めることが提案されている。個別規準を開発する際の自由度は高まるが、同時に個別規準間のばらつきを防いだり是正することが行いにくくなる。すると、IFRSの統一感が薄れていく気がする。すると経営だけでなく、一般の財務情報利用者にも良い影響はなさそうだ。

 

IASBが何をもってIFRSを“高品質”と言っていたのか、僕は良く知らない。しかし、僕が「IFRSは高品質」という言葉にイメージしていたのは、この個別規準を貫く横串がしっかりしている点が大きかったように思う。IASBにとっては仕事がやりやすくなるかもしれないが、この提案が実行されたら、“高品質”の格付けは下がるのではないか?

 

 

2.個別規準において燻る異論を鎮め、議論を決着をさせたいという意図は良いが・・・

 

例えば、のれんの資産性や償却・非償却問題、研究開発費の資産性、デリバティブの資産・負債認識に関する議論など、まだまだ異論が燻る色々な問題がある。このディスカッション・ペーパーには、これらの議論に決着を図ろうとするIASBの積極的な意図を感じる。それは良いと思う。しかし、その方法が、「目的適合性のあるなしは、IASBに判断させてくれ」、即ち、「IASBにもっと権威をくれ」ということでは、本当の解決にならない。

 

特に、下記の状況では、IASBに権威付けする以前に、もっと一般の議論を盛り上げることの方が重要と思う。

 

・IASBが「信頼性をもって測定ができるかできないか」については既に企業から取上げている状況(=個別規準の中で決めている)で、さらに「重要性」の判断も企業から取上げる提案をしている。これは、作成者にとって限界的なところ(=コストをかけてもあまり価値のないところ)の手間を増やすことになるように思う。

 

・市場価格要素の変動による測定値の不安定性(これは利益額の変動を増幅させる)を財務諸表の利用者が良く理解していないと作成者である企業が不安を感じているのに、IASBがそれを改善できていない(これは前回11/25の記事の純利益と包括利益の問題のこと)。これは、IASBが思っているより重要な問題ではないかと思う。

 

上記の1と2を合わせると、IFRSの品質は下がるのに、IASBにはより大きな権威を与えることにならないか? IASBにそのつもりはなくても、結果はそうなる気がする。

 

 

同じことを何度も繰り返し書いているように思われる方が多いと思う。特に前回との重複箇所は多い。僕もそう思っているのだが、それは、僕の頭の出来が良くないので、まだ考えがまとまらずにいるからだ。でも、突破口は「目的適合性」をもっと深掘りすることにあるような気がする(これもすでに書いたかも)。ということで、次回は、そこへ向かいたい。

2013年11月25日 (月曜日)

313.CF DP-14)会計上の不確実性~方針再検討を終了~

2013/11/25

どうもIASBは、IFRSの品質や自らの役割を変えようとしている気がする。それがこの不確実性の扱いに表出してきたのではないだろうか。例えば・・・と続けたいが、今回は、僕が再検討した結論(もちろん、現時点のものであり、またまた変わるかもしれない)だけを記載し、詳細は、次回以降とさせていただきたい。

 

まず、会計上の不確実性をより小さな問題として扱い、概念フレームワークから除去するという提案には賛成できない。また、これに付随して言及されている目的適合性(重要性の判断を含む)の有無をIASBのみが決定できる(但し、注記については企業も判断できる)という提案にも賛成できない。したがって、方針を再検討してみたものの、やはり、当初の方針で行くことにした。

 

これらの提案が実際に実行されたのちに開発されるIFRSは、従来、不確実性が高いとか、計算が困難といった理由で計上されていなかった資産や負債をより多く認識するようになっていくと思う。その結果、資産や負債、そして利益の変動が、もっと激しく表現されると予想される。

 

それが実態であるならば、それで良い。しかし、そうだろうか?

 

その変動の多くは、会計上の見積りに使用される市場価格要素の変動によりもたらされるものになると思うので、その意味を財務諸表の利用者に理解してもらう必要がある。或いは、それが理解しやすい開示方法が一緒に開発される必要があると思う。しかし、現在はまだ未整理の問題がある。その解決が優先だと思う。例えば・・・

 

・「目的適合性」、即ち、「利用者のニーズ」の深掘り

 

利用者は市場価格によって大きく変動する財政状態や経営成績を見たいのか? それとも、企業が自ら掲げる長期目標への進捗状況を見たいのか。僕は統合報告を高く評価しているので、後者も重要と思うが、IASBの整理はどうか。現行の概念フレームワークやこのディスカッション・ペーパーの記載では、まだ整理が足りないのではないかと思う。

 

・「包括利益」と「純利益」

 

このディスカッション・ペーパーでも議論されているが、IASBは結論を出していない。恐らく、目標に対する進捗状況が「純利益」に現われ、それに目標とは関連の薄い外的要素(特に市場要素)の変動が加わり「包括利益」になるのではないか、というイメージが僕にはある(目標はもちろん、非財務情報)。その外的要素には、企業、或いは、経営者が積極的に克服しようとするものと、様子見を決め込んでも問題ないと判断するものがあると思う。客観性や比較可能性も重要だが、なんでも一律の基準で揃えようという発想より、そういう判断の差を開示することにも目的適合性があるのではないだろうか。

 

もしかしたら、目的適合性を深掘りしていくと、B/SとP/Lの意味も変わってくるかもしれない。まだもやもやしていて言葉にならないが、そんな気もする。

 

いずれも大変大きな問題で、僕には荷が重いが、なんとか話を進めていきたい。

2013年11月23日 (土曜日)

312.【番外編】資産の定義

2012/11/23

昨日のこと。

BGM代わりのテレビから聴こえてきた歌に、耳が釘付けになった。

素朴だが朗々と響く歌声に不思議な魅力がある。

しかも、その歌詞が・・・ん~、なんか、IFRSの資産の定義みたいなのだ。

むしろ、IASBの表現より直感的で分かりやすい。

ラブソングなのに・・・

 

いまのすべては~過去のすべて~ 

(「いまの資産は過去がすべて」という意味ではないか!?)

 

さらに・・・おぉぉぉ、将来回収が期待できるってところまで歌ってる!

 

必ずまた会える・・・未来の希望・・・で~

(「必ず回収できる、未来の期待で」と思えなくもない!!)

 

 

この歌は、本日公開の「かぐや姫の物語」の主題歌(ジブリ最新作)。

歌っているのは、二階堂和美さん。僧侶なのにシンガーソングライターだという。

 

おとぎ話に、仏教に、IFRS。

男女関係に、人生に、IFRS。

底流に同じものが流れてるなんて、なんか凄い。

(誰も共感してくれないとは思うが・・・)

 

 

ちなみに、現行のIFRSの資産の定義は次の通り。

 

資産とは,過去の事象の結果として企業が支配し,かつ,将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源をいう。

 

いかにも、無粋だ。

2013年11月22日 (金曜日)

311.CF DP-13)会計上の不確実性~方針を再検討中~

2013/11/22

すでにみなさんもご存じのとおり、SAMURAI BLUEこと、サッカー日本代表は、今回のヨーロッパ遠征でオランダやベルギーという強豪国と親善試合を行い、引分け、勝利という素晴らしい結果を残してくれた。残念ながら僕はリアル・タイムで見ることはできず、特にオランダ戦はビデオ録画に失敗し、ニュース番組のダイジェストとネット動画しか見られなかった。サッカーを見るのにPCの画面ではスピード感がない、臨場感が足りない。逃した魚は大きい。

 

SAMURAI BLUEは、オランダ戦での勝利こそ逃したものの、攻撃面で大きな収穫を得られたようだ。連係プレーから生み出されるゴールは、まさに“美しい”という形容がぴったり。オランダもベルギーも、まるでSAMURAI BLUEの引立て役だった。

 

サッカー・ファンにとっては夢のような一週間だったが、僕の取組む“会計上の不確実性”の方は、夜見る夢のように取り留めのない混乱した状況になってきた。というのは、僕はIASBの、“不確実性”を定義や認識規準から外して、即ち、概念フレームワークから外して、個別規準へ追いやる理由・意図が、ようやく理解でき始めたようで、全面的にではないが、「それもいいなあ」と思い始めてしまったからだ。

 

その内容については、もう少し整理してから説明したいと思う。SAMURAI BLUEのように美しくはないが、泥臭く、IASBのゴールに迫っていきたい。

2013年11月16日 (土曜日)

310.【番外編】不確実性への対応

2013/11/16

今週も、多くのビック・ニュースがあった。例えばフィリピンの台風30号の被害は、日本の東日本大震災にも匹敵する酷いものになりそうだ。国内に目を移せば、選挙違反で注目を集めている徳洲会は、元々、過疎地医療も積極的に手掛ける住民の見方の良い団体だったらしい(11/14放送のNHKクローズアップ現代による)など。しかし、僕がここで取上げたいのは、先週末から今週末にかけての日経平均株価(以下「N225」と記載する)の上昇だ。

 

先週の終値が14,086円、そして今週の終値が15,162円。1000円以上も上昇した。ドル円も久しぶりに100円を超えて円安となった。もし、N225のインデックス・ファンドを100万円持っていたら、僅か一週間で8万円の儲けになっていた。これは大金である。昨年は11月から5月までに9千円ぐらいのものが6000円以上上昇したから、同じことが起これば、43万円にもなる。JR九州のななつ星にも手が届きそうだ。

 

「おいおい、先週末にアベノミクスに注文付けたばかりじゃないか(11/9の記事)」と思われた方も多いに違いない。「舌の根も乾かないうちに、能天気な」と・・・。そっ、その通りだ。

 

そこで、何故こんなに上がったのか、僕も不思議に思って新聞などを色々調べてみた。すでにご存じの方も多いと思うので、簡単に箇条書きをすると以下のようなことらしい。

 

 ・11/8(日本時間の深夜)公表の米国雇用統計がビック・サプライズ

 

農業以外の新規雇用者数が市場の予想を大幅に上回る改善。過去分の公表値も合わせて上方修正。米国連邦政府機関閉鎖の影響を受けず、米国景気回復の底堅さを示した。

 

最近は、良い景気指標が公表されると、米国の金融緩和が縮小される時期が早まると連想され、米国金利上昇、米国株下落となり、新興国から投資資金が流出して日本株(特にアセアンなどに対する輸出が多い企業)にも良い影響はなかったのだが・・・。しかし、ドル円は99円台に下落し、翌月曜日は日本株が上昇した。

 

 ・11/13(日本時間の深夜か翌日未明)にイエレン氏が突然の声明公表

 

ジャネット・イエレン氏は、既にオバマ大統領から来年2月からの次期FRB議長に指名されているが、この人事は、米国上院に承認権があるので、11/14に上院公聴会での証言が予定されていた。イエレン氏は、その証言の要旨を、突然、事前公表した。内容は、上記の雇用統計の改善を踏まえても、雇用改善はもっと必要で、金融緩和も必要な限り続けるというものだったので、金融緩和縮小の時期はまだ先になると受け止められた。

 

最近は、金融緩和縮小の時期が遠のくと、米国株高にはなるが、米国金利が低下して円高にもなるので、日本株に良い影響があるとは限らなかったのだが・・・。しかし、ドル円は100円台に下落し、日本株も高騰した。

 

 ・最近公表のEU諸国のインフレ率の異常な低下

 

半月か1ヶ月ほど前までは、ギリシャ国債が凄い値上りで、その保有者が世界で一番儲けた、みたいな記事が出ており、そろそろEU株が買い時という見方も出ていた。しかし、その後公表されたインフレ率が1%前後とかそれ未満といった非常に低い率でデフレ懸念が台頭し、加えて回復を始めたとされていた失業率も、過去に遡って訂正され、回復が確認できない状況に戻ってしまった。そこから「EUの日本化」などと言われるようになり、一気にEU経済及びその経済政策の評判が下った。(「日本化」の「日本」というのはアベノミクス以前の日本を指すらしい。)

 

この低インフレ率をきっかけに、EUと日本は少子高齢化の進行という共通性が強調され始めた(米国は積極的な移民政策もあり、それほどでもない)。一方で経済政策の面では、アベノミクス及び日本経済が、信用危機は脱したと言っても景気の底の見えないEUより、スピードは遅くとも回復を続ける米国に近い、と評価されたようだ。少なくとも日本は何かをやろうとしているように見えると。しかし、EUはいつまでも古臭いと。

 

最初の2つは、「景気が回復しているのに金融緩和は続く」という良い面だけが、将来シナリオに織り込まれる、いわゆる「リスク・オン」の状態になり、投資家がリスク資産を買いやすくなったという解釈が成立つ。3つ目は、EUとの比較で日本の評価が上がり、「リスク・オン」の投資資金が日本へ入りやすくなったということらしい。(即ち、日本の要因で日本の評価が上がったわけではない。)

 

以上を整理すると、次のようになる。

 

・米国の経済回復が続くと日本株にプラス。

 

・米国の金融緩和が続くと日本株にプラス。

 

・EU経済が回復しないと間接的に日本株にプラス。
(EU経済指標で日本株が直ちに動くということではない。)

 

加えて、次のような情報も見つけた。

 

・米国の景気は、毎年年末から春にかけて拡大し、夏場に鈍る傾向がある。

 

・イエレン新議長が金融緩和縮小を決めるのは3月以降という見方が多い。

 

・日銀が4月の消費税率アップの悪影響を緩和するために、新たな金融緩和へ踏込むという見方が多い。

(即ち、投資家が日銀にそう期待している限り、投資資金は日本株市場から出て行かない。)

 

う~む、すると、少なくとも2月までは株や投資信託を持っていてもよいのではないか? イエレン氏の方針によっては、桜の頃までいけるも。まあ、ななつ星は無理かもしれないが、偽装なしの本物の高級料理は何度かいただけるかもしれない。

 

 

さて、以上は、大変長くて申し訳ないが、前置きに過ぎない。これからが今回の本題となる。

 

最近、“不確実性”について書いているので、「将来の不確実さ」を良く考えるようになった。そんな時に、「将来は不確実なので、事業計画や予算を作っても仕方ない。だから作るのをやめる企業が増えている。」というようなことが書いてある記事を読んだ。恐らく、IRのためだけに作っている、という企業も含めてのことだろう。

 

企業、或いは経営者は、事業によってどのような社会を実現するかを経営目標に据える。そしてそこまでの道筋のイメージを従業員に伝達し共有する。それらの一部は事業計画や予算として具体化され、PlanDoCheckActionされていく。一般にはそんなイメージで語られる企業経営だが、「将来の不確実さ」を考えると机上の空論ということになるのだろうか?

 

確かに、事業計画や予算は、「将来の不確実さ」以外の面でも弊害を起こすことがある。事業計画や予算として数字になると、数字が独り歩きする面は否めない。前提条件の変化を考慮せずに、ひたすら決められた数値目標のみが絶対的なものとして扱われてしまう。するとそのうち、中身が問われず、数値目標を達成したか否かだけしか注目されなくなる。それが不正の元になるし、気付くと、元の経営目標とかけ離れた方向を持つ、社会の害になるような組織になっているかもしれない。もしかしたら、徳洲会にもそういう面があったのかもしれない。

 

しかし、必達の数値目標というハードルを置くことで、創意工夫やイノベーションを引出したいという気持ちも分かる気がする。追い詰められて初めて生まれる発想や、プレッシャーがあったのでそこまでやれた、ということもあるだろう。

 

さらに、組織間のコミュニケーションのツールになる。事業計画や予算は、使い方次第で、組織同士がより大きな目標のために協力したり競争したりするきっかけにできる。組織の統廃合、新設のシュミレーションにも使える。

 

だが、何といっても重要なのは、前提条件と現実の相違を発見し、将来予測を修正し、その精度を上げていくツールとしての面ではないだろうか。将来が不確実であればあるほど、なにか比較するものが欲しくなる。比較するものがあれば、より精緻な分析が可能になる。新たな方向性が出しやすくなる。その評価もできる。

 

不確実といえば、株価の変動はその最たるものといえるだろう。みなさんのなかには、「買うと下がるし、売れば上がる」などという体験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれない。実は、僕にもそういう嫌な思い出がある。株価ボードの裏側で誰か意地悪してるんじゃないか?と思うほどだ。

 

そんな株価なので、もし、みなさんの前にいきなり「3ヶ月後の株価が上がるか下がるか」と問う人が現われたら、「そんなことは分かるわけない」と答える方が多いのではないだろうか。まるで、半か丁かのサイコロ賭博だ。

 

しかし、上記のような(いい加減ではあっても)将来の見通しを示され、それについて問われたらどうだろう。「ん~、中国のシャドウ・バンキング問題が考慮されてないね」とか、「フィリピンの復興需要が立ち上がるかもしれない」とか、「通貨下落が落ち着いて、アセアンの景気も回復するよ」とか、中国経済の見通しなど、それぞれの見方を加味して、「上がると思う」とか「下がると思う」などと答えられる方が増えるのではないだろうか。

 

僕のテキトーな見通しと、事業計画や予算を比較するのはおかしいが、しかし、そういうものがないと増々将来は混沌としてしまい、不確実性なものに思えてしまう。そうなれば、打つ手が遅れて変化に対応できにくくなる、というのはお分かりいただけただろうか。

 

ということで、不確実な将来を少しでも見えやすくするため、経営者が目標への道筋を示し、それに事業計画や予算で肉付けしていくことは、不確実性に対処するための重要な手段と僕は思う。それを止めてしまう企業が増えているというのは、それが本当なら由々しき事態だ。経営のサイコロ賭博化であり、経営者の怠慢にしか思えない。やはり、買わない方が良いか?

 

 

2013年11月14日 (木曜日)

309.CF DP-12)会計上の不確実性~IASBの小さな捉え方

2013/11/15 赤文字部分(最後の方にある)を追加しました。

 

2013/11/14

IASBは、このディスカッション・ペーパーの色々な箇所で、財務報告の目的(正確には「一般目的財務報告の目的」だが端折る)に遡って問題を整理している。より上位の概念に立ち戻って問題を捉え直すのは、正しいアプローチだ。ただ、そうすればすべての人が同じ結論に到達するかというと、そうは限らない。残念ながら、今回は“不確実性”に関して、そういう例をお見せすることになると思う。

 

ではまず、現行の概念フレームワーク(第1章)が、財務報告の目的をどのように記載しているかを見てみよう。これについては、このディスカッション・ペーパーの中で簡素に要約されている(1.35)が、それを更に大雑把だが平易に要約して下記に記載する。

 

(財務報告の目的)

 

財務報告の利用者(=株主や投資家、一般取引先を含む債権者)が、出資や融資、その他の取引を行う際に有用な、報告企業についての財務情報を提供することである。

 

(財務情報)

 

企業の資源(=資産)、企業に対する請求権(=負債)、

これらの変動(=損益やキャッシュ・フロー及び持分変動)

 

(利用者の利用目的)

 

・将来の正味キャッシュ・インフローに関する企業の見通しを評価する

 

・企業の経営者及び統治機関が企業の資源を使用する責任をどのように効率的かつ効果的に果たしたのかを評価する

 

即ち、利用者の利用目的に有用な財務情報を提供することが、財務報告の目的と考えればよい。そして、僕はここまでは異論がない。

 

次に、IASBが“不確実性”に関連するセクション2(資産等の定義)、セクション4(認識規準)、セクション6(測定)のそれぞれに、財務報告の目的をどのように問題の整理に使用していたかを振返ってみよう。

 

 

セクション2の資産及び負債の定義から“不確実性”を削除する提案に関して

 

冒頭から申し訳ないが、実は、この点に関してIASBは財務報告の目的を利用していない。一応、資産等の定義がどのように会計基準に役立つかの説明としては引用しているが、現行の定義から“不確実性”に関連する文言を削除することに関しては、既に11/5 の記事に記載したとおり、現状の問題点を指摘し、どう改善するかという議論を行っているだけだ。

 

その議論のプロセスでは、“不確実性”を「存在の不確実性」と「結果の不確実性」に区分し、前者は滅多にないし、後者も前者よりは頻繁に出てくるが、個々の項目によって状況は異なるため、それに合わせて個別規準で扱う姿勢を示している。

 

確かに、常により上位の原則に立ち返って議論することは必要ないかもしれない。しかし、本来であれば、定義という基本事項を変更したことで、財務報告の目的に悪影響を与えないかを確認する議論は必要だろう。(僕はこの点に懸念を抱いている。)

 

セクション4の認識規準から“不確実性”を削除する提案に関して

 

IASBは、11/7の記事に記載したとおり、“不確実性”を概念フレームワークの認識規準の文言から削除し、必要な場合に個別規準に記載すれば足りると主張している。そのために、会計的には大テーマである「自己創設のれんを資産計上しない理由」を、“不確実性”ではなく、財務報告の目的を利用して説明している。(従来は、蓋然性、即ち、“不確実性”で説明していた。)

 

セクション6の測定規準においても“不確実性”を個別規準レベルで扱う提案に関して

 

ここでは、11/12の記事に記載したとおり、IASBは資産(及び負債)の測定について、単一ではなく複数の方法を適用することを正当化し、どの資産にどの測定方法を適用するかは、(財務報告の目的を考慮した)目的適合性によって決定するという考え方を示した。恐らく、この部分は概念フレームワークの中に取り込まれるのだろう。

 

そして、将来キャッシュ・フローの見積りやその割引に関して生じる“不確実性”を資産等の種類ごと(例えば金融資産、有形固定資産、棚卸資産・・・)に個別規準で扱う姿勢を明示し、具体的な事例では、発生確率、即ち“不確実性”を所与のものとして扱った。

 

 

最後に、上記のような“不確実性”の扱い方から、IASBが“不確実性”をどのように捉えているかを“想像”してみる。

 

“不確実性”は扱いにくい。

 

セクション2では蓋然性の基準について、すべての項目に共通で“ほぼ確実”、“可能性がある(=半分より高い”)とした場合、項目によってこれらを使い分けた場合などを検討し、いずれの案にも反対意見があって、取り纏めが困難な状況を提示していた。暗に、概念フレームワークに書き込めるような一般的な“不確実性”の基準は、開発困難と言っているようだった。

 

“不確実性”は計算技術上の問題として片隅に閉じ込めたい。

 

定義では、より上位の財務報告の目的との整合性という観点で検討せず、認識では「結果の不確実性」というほぼ計算技術上の問題の中に閉じ込め、測定でも個別項目ごとの将来キャッシュ・フローや割引率といった計算技法の中にまとめて見せた。さらには、発生確率を所与のものとして扱うことで、そもそも“不確実性”は会計規準の外で決まるものであると考えているかのような姿勢を見せた。(IASBのこの姿勢は金融減損の公開草案の中でも顕著だった。但し、金融減損の場合はバーゼル規制があるので、それとの重複を避けるためにそうしていると捉えていたのだが・・・。)

 

そしてその結果、何が起こるだろうか?

 

“不確実性”と格闘する企業経営と会計の乖離。

 

企業は経営目的に向かって邁進していく。その目的までの道筋は、一応イメージはあっても未確定で状況次第で常に変更されるし、廃棄されることもあるし、新たに開発されることもある。そして、その未確定なものが確定すると実績になっていく。このうち、企業の資源や義務に影響を与えるプロセスと将来の見通しを評価しようというのが、上述の財務報告の目的にある「利用者の利用目的」だろう。会計はその確定したものを、企業の資源、企業に対する請求権及びこれらの変動として記録し報告する。

 

しかし、具体的にどんな状況になったら「確定」というのか。「実績」というのか。未確定なものを確定させる企業のプロセスは“不確実性”との戦いだ。それなのに“不確実性”が、資産の定義や、認識規準として表現されなくてよいのだろうか。

 

即ち、経営者が負う経営責任は、一面から見れば“不確実性”との戦いであり、それを効率的かつ効果的に行ったかを利用者が評価できるようにするために、会計は“不確実性”を根本的な要素として扱うべきではないかと思う。単なる計算技術上の要素ではなく。

 

“不確実性”と重要性の判断はIASBが個別規準の中で行う。企業は行えない。

 

従来、資産計上するか否かについて企業が行っていた“不確実性”と重要性の判断は、IASBの提案が通ると行えなくなると思う。IASBの提案によれば、“不確実性”は定義からも認識規準からも削除され、資産は経済的便益を生み出す能力のみで定義される。その結果、IASBが個別規準で重要性の観点(=目的適合性)から「資産計上しない」と決めない限り、すべて資産計上される。恐らく、企業の会計実務、財務諸表の監査基準(及び監査実務)、内部統制の評価基準(及び評価実務、内部統制監査実務)にも、大きな影響があるに違いない。(なお、注記に関しては、企業の裁量を尊重している。10/29の記事をご覧いただきたい。)

 

例えば、無形資産の評価も、特に研究開発費も(もしかしたら仕損じ品も)、一端IASBが「ノウハウは資産だ」と決めれば、企業に選択の余地なくすべてその測定方法による金額評価を行い、資産計上しなければならない。重要性の判断を企業は行えない。棚卸差異の原因追究は、どこまで行えばよいだろうか。収益認識において「企業が財・サービスを移転し履行義務を充足したとき」とは、あの公開草案の規程で個々の取引をすべて解決できるだろうか。規準に書かれていない様々なケースを企業が“不確実性”や重要性の観点から、目的適合性のある財務情報となるよう判断するのではないか。IASBはこれら様々なところに「存在の不確実性」、「結果の不確実性」があるとは認識していない。認識しようにも、認識しきれないだろう。

 

財務諸表監査上も、量的な重要性と質的な重要性のうち、少なくとも質的な重要性はIASBの判断に拘束されるはずだ。しかし、監査人が個々の状況において重要性の判断を行えなくなったら、試査の範囲は限界的なところ(=労力の割に効果の上がらないところ)でも拡大せざるえない。

 

内部統制評価についても、試査の範囲に関して企業は重要性の判断を行えるのだろうか? 行えるとすれば、会計上の重要性と内部統制評価上の重要性が異なることになる。しかし、いずれの重要性も、投資家の判断に影響を与えるかどうかという考え方の根本は共通だ。一方はIASBが決め、もう一方は企業が決めるという考え方、制度はありえるのか。もし、IASBの決定に企業が従うとか、IASBの決定に企業の判断が強い影響を受けるのであれば、財務諸表監査以上に限界的なところの労力に影響を与えるだろう。

 

IASBは、“不確実性”の扱いを検討するのに、上位概念である財務報告の目的を、定義では考慮せず、認識や測定では都合よく利用した。その結果、“不確実性”は不当に小さく見せられているように思う。そして、その巻き添えで重要性の判断は企業から奪われそうだ。では、本当の姿とは? ということで、次回以降、会計で扱うべき“不確実性”の本当の姿を求めてさらに掘り下げていく。

 

2013年11月12日 (火曜日)

308.CF DP-11)会計上の不確実性~IASBの考え「セクション6-測定」

2012/11/12

10/25の記事では、このディスカッション・ペーパー冒頭の「要約とコメント募集」に要約された「セクション6-測定」の予備的見解、即ち、結論のみを記載した。今回は実際にセクション6の本文を見ながら、もう少し詳細な議論のプロセスを記載する。そして、最後に、IASBが“不確実性”をどのように扱っているかを確認したい。

 

さて、IASBの扱っている論点と議論の流れは、次のようになっている。

 

 ① 全般的なテーマ(6.16.35、約8ページ)

 

A.複数の、但し、なるべく少数の測定方法があることを正当化すること。

 

少数の測定方法とは、次の3種類。

 

・原価ベース

・現在市場価格(公正価値(の見積り)を含む)

・他のキャッシュ・フロー・ベースの測定(使用価値などの減損会計に使用される方法、繰延税金や退職給付債務の算定方法など、個々の規準に定められた方法)

 

単一の測定方法に統一されてないと、各財務諸表の小計や合計が意味をなさず、「例えば、現行の要求事項では、純資産の合計額として表示される金額にはあまり意味がない。」(6.12)とまで言っている(これは2011/11/2の記事の中の「資産・負債アプローチ」という見出しに書いた話と同じ議論)。その一方で、すべて原価、或いは、すべて現在市場価格で測定しても目的適合性のある財務情報にならないとしている。即ち、測定方法を統一しても財務諸表の利用者には役立たない。したがって、個々の項目に合った複数の、但し、なるべく少数の測定方法が必要になる。

 

B.どんな時にどの方法を適用するかの場合分けの考え方を示すこと。

 

そうなると、どんな時にどの方法を適用するのかが重要になる。その適用を決める考え方について下記を提案している。

 

個々の資産が、将来キャッシュ・フローにどのように寄与するか(負債の場合は、企業がどのように決済又は履行するのか)によって、適切な測定方法を識別する。

 

例えば、将来に現金と交換されるような金融資産であれば、現在市場価格ベースの測定方法が適切であり、使用されることで将来キャッシュ・フローの獲得に貢献する減価償却資産は、当初は取得価額ベース、事後測定は減損テスト(他のキャッシュ・フロー・ベースの測定)という具合。(棚卸資産については後述。)

 

 ② 個々の測定方法、項目ごとの測定についての個別論点(6.366.130、約20ページ)

 

ここからは、①、特にBの詳細が記載されている。まず初めに、Aの3つの測定方法が個別に説明されている(~6.54)。次に「当初測定」と「事後測定」の観点や、将来キャッシュ・フローとの関係が重要であることが示され、これが以下の議論の頭出し的な記載となっている(~6.57)。

 

「当初測定」(=取得時の測定)の場合は、等価交換、非等価交換、非交換の3つの取引パターンが検討されている。例外はあるが、基本的には認識日(=取得日)における公正価値で測定されるとしている(~6.72)。

 

「事後測定」(≒決算時の評価)の場合は、上記Bの考え方によって、資産が最終的に将来キャッシュ・フローに寄与する方法によって決めるべきとしている。そしてその寄与の方法は、資産の用途というか、事業モデルというか、そういう企業の選択可能な要素に依存しており、選択(変更)の不確実性と、それによる将来キャッシュ・フローの不確実性があることを指摘し、これらについてIASBは、個々の基準ごとに対処していく方針であることが示されている(~6.77)。

 

そして次に、個々の項目ごとに、どのような測定方法の適用が、企業の選択的要素と目的適合性の観点から適切かが論じられる。キャッシュ・フローを間接的に生み出す資産(有形固定資産のようなもの)、棚卸資産のように販売されるが現在市場価格では目的適合性がないもの、売却予定の資産(投資金融資産や貴金属などのいわゆるコモディティ、投資不動産など)、貸付金や債券などの契約上のキャッシュ・フローを回収する金融商品・賃貸資産・知的財産、さらに負債といった具合だ(~6.109)。

 

例えば、棚卸資産については、販売される資産であるが、他の資産と独立にキャッシュ・フローを生み出せないので1、「使用される資産」に類似しているとしている。購入者を探し出す相当の販売活動が必要であり、その他の販売条件も複雑であることを考慮すると、現在市場価格ベースを適用することに対する異論が多く、測定の不確実性も高いという。したがって、基本的には原価ベースの測定となる(6.806.81)。

 

最後が、将来キャッシュ・フロー及びその割引額の見積りの計算技法についての検討となっている(~6.130、即ち、最後まで)。ここでの議論の形式的な特徴は、“確率”が所与として与えられていて、“確率”自体、即ち、“不確実性”自体は、問題にされていないことだ。(まあ、計算技法に関しての記述だから、当たり前といえば当たり前だが・・・)

 

そして議論の実質的な内容としては、次のようなものがある。

 

計算要素のインプットを市場データから採るか、それとも企業独自の見方を反映するか、そして、それを事後測定する際に毎期見直すかを、個々の項目の測定の目的に照らして整理している。

 

現在市場価格を測定するなら、すべての要素が市場参加者の見方を反映するように計算される。しかし、原価ベースの測定をするなら、一部の項目は企業独自の見方が反映されたり、見直されなかったりする。原価ベースの測定をするにあたり、現在、これらは個々の項目の性質に合わせてそれぞれ異なる規定がされている(棚卸資産の正味実現可能価額、減損会計の減損テスト、一部の金融資産・負債の再測定、退職給付債務、繰延税金資産、保険契約、公正価値ヘッジのヘッジ対象など)。 そして、このような場合は取得原価以上の評価増し(=評価益)は計上しない。

 

負債の計算要素に企業自身の信用リスクを含めるかどうかについては、両論併記して、含める可能性も含めない可能性もあるとしている。企業自身の信用リスクとは、負債を期日に決済できないという不確実性のこと。即ち、継続企業の前提を脅かす不確実性のこと、例えば倒産リスクだ。

 

1 ちょっと分かり難い表現だが、他の製品・サービスや他社から調達した商品・サービスと抱き合わせで販売することを想定すると良いと思う。また、単独で売るにしても、販売ノウハウ(≒販売サービス)という資産(会計上資産計上されない)を使用しているので、結局独立したキャッシュ・フローになっていない。IASBは2011年の収益認識の公開草案32項で、サービスも一端資産になる(すぐに消費されて費用計上されるにしても)という考え方を示している。

 

 

さて、それでは、以上について“不確実性”の扱いがどうなっているかを考えてみる。

 

全体としては、最初の8ページで総論を展開し、その総論を検証、或いは、立証するように各論を20ページにわたって展開するという構成になっているのが、お分かりいただけると思う。

 

そして、“不確実性”という単語は、総論部分では一切出てこないが、各論では20回も使用されている。即ち、“不確実性”を概念フレームワーク(=総論)から排除し、個別IFRS(=各論)で対応することにしたいというIASBの提案が、このセクションの構成にも反映されている。

 

さらに、各論のどこで“不確実性”という単語が使われているか記すと、次の通り。

 

6.47 現在市場価格の説明として、IFRS13号「公正価値測定」を引用しているが、その中に3つ出てくる。計算要素をリストアップしただけのもので、“不確実性”が取上げられたわけではない。

 

6.756.76 上記の「資産がキャッシュ・フローに寄与する方法が不確実(企業の選択的要素)」というところに4つ出てくる。ここでは暗に、「選択的要素の内容は、資産(や負債)の種類によって色々異なるので、この不確実性も個々の項目ごとに考えるべきもの」と、IASBは主張していると思う。しかし、この“不確実性”は、企業の意思のことであり、企業が直面している企業にとっての“不確実性”ではない。

 

残りの13個は、最後のキャッシュ・フローの計算の説明に出てくる。上述したように、“不確実性”は、所与の確率として与えられており、ここでも企業が直面している“不確実性”を直接問題にしていない。

 

ちなみに、“不確実性”ではなく“不確実”という単語は、総論部分の最後に4つ出てくる(6.316.34)。ここでは、「現在市場価格の見積りがどんなに不確実であっても、その不確実な状況を注記で説明して開示すればよい」という(極端な?)意見が一部にあることを紹介し、それに対して、あまりに不確実な場合は目的適合性がなく、資産・負債項目を認識しないというセクション4のIASBの考えを簡単に繰り返している。

 

しかし、セクション4では、“不確実性”を概念フレームワークの認識規準には記載せず、何を認識しないかは、IASBが個別基準の中で決めるとされており、不確実性や重要性に関する企業の判断は許容されなかった(10/24の記事)。そして、このシリーズの前回(11/7の記事)でも、「自己創設のれんは本来資産だが、資産計上しないことをIASBが決めた」というIASBの新しいロジックを詳しく記載した。

 

ということで、このセクション6は、全体として非常に興味深い内容だが、“不確実性”に関していえば、概念フレームワークではなく、個別規準で扱えばよいというIASBの姿勢が、他のセクション(セクション24)と一貫している。その一方で、IASBの意図に反して、“不確実性”が非常に多くの項目の測定に関係しており、一般的な存在であることも垣間見えているような気がする。(例えば、上に“不確実性”と関連して出てきた「事業モデル」について、IASBはセクション9で検討し、その定義やガイダンスを概念フレームワークに追加することに前向きな意見を述べている。)

 

やはり、概念フレームワークで扱うべきではないだろうか。

 

僕がそう思うのは、IASBは個々の項目ごとの“不確実性”の違いを強調しているが、僕は違う観点で、それらが共通しているのではないかと思っているからだ。それについては、次回以降に繰越したい。

 

2013年11月 9日 (土曜日)

307.【番外編】空気を乱すことを恐れるな

2013/11/9

みなさんは、田原総一朗氏がメール・マガジンを発行しているのをご存じだろうか。毎週金曜の夕方に、時事問題を解説し、鋭い分析を披露してくれる。もしご興味のある方は、下記のHPでメール・アドレスを登録することができる(無料)。また、過去分については、同じHPにブログとして掲載されている。

 

http://taharasoichiro.com/

 

さて、昨夕のメール・マガジンのタイトルは『みずほ銀行の不正融資やホテルの食材偽装表示にある「日本の病」』であり、今日の記事のタイトル「空気を乱す・・・」は、その結論部分から採らせていただいた。但し、田原氏は、この問題を単に個人の心構えの問題で済まそうとしているわけではない。経団連が社外取締役の義務化を葬ったことなどを引合いにし、日本の組織に足りない点を指摘している。同質化した内輪の議論、アイディアで満足せず、外部の視点・意見を取り入れよと。

 

これは良く聞く話であるが、奥が深い。組織にとっても、個人にとっても、発想が凝り固まってしまえば窮屈なだけで面白くない。田原氏が様々な例を挙げながら論理展開してくれるので、読み手の頭にも、色々浮かんでくる。例えば・・・

 

 ・業務改善プロジェクトなどで行われるブレーンストーミング

「外部の意見」というわけではないが、常識の枠を外して自由な発想でアイディアを出そうというのは、あたかも、内部の人が外部の人になるようなものだ。

 

 ・外国人と働く

みなさんの方が経験豊富かもしれないが、僕も日系ブラジル人(日本語ができる)と同じプロジェクトで1年間ほぼ毎日顔を合わせて働いたことがある。確かに、時々思わぬこと言う。もちろん、当たりばかりではないが。

 

 ・外国人と生活する

結婚するとか、同棲するという意味ではなく、同じ地域社会で生活するという意味だ。アベノミクスは少子高齢化問題に対応していないから成長戦略として欠陥があると、外国人から指摘される。即ち、移民受入れ問題だが、我々日本人には抵抗感が強い。

 

しかし、僕の近所でも先週は子供たちが仮装して商店街を回っていたが、かなり遠慮がちだった。本場のハロウィーンを知る人たちが混じれば、もっと楽しいものになっていたかもしれない。スーパーの品揃えもバラエティー豊かに変わるかもしれない。

 

そういえば、WSJやロイターでは、アベノミクスに対する外国人投資家の期待が剥離しつつあるという記事が、最近また目立つようになってきた。円高是正が始まって1年近く経つが、日本企業の業績の回復が為替差益分しか見込めない(=数量増加がない)とか、第二の矢の財政政策のちぐはぐな対応(公共事業で需要を作って、増税で消費を抑制する)や、第三の矢に対する評価が低いレベルで固まりつつあるからだろう。「結局旧来の手法だ」という批判に繋がっている。唯一上手く進捗している第一の矢(金融緩和による円高是正、デフレ是正)も、このままでは危ういかもしれない。

 

企業がイノベーションを起こして付加価値の高い製品を開発するとか、政府が新しい発想で成長戦略を構想・実行するとか、大きな新しい変化を起こすには、アウトサイダー的な新しい人を上手に取込み、その集団の常識に風穴を開けることが必要なのだろう。例えば、小泉政権では竹中平蔵氏がそういう存在だった。第一の矢では安倍首相自身がそうだったし、日銀総裁に就任した黒田東彦氏がそうだった。そういう意味で、楽天の三木谷浩史氏が産業競争力会議の民間議員を辞任したのは、アベノミクスの将来を占ううえで象徴的だ。

 

しかし、「三木谷氏は辞任することで空気を乱し、それが改革に勢いを与えた。」 あとから、そう評価されるようになることを祈りたい。だが、事はそう簡単ではない。もう一度、人事をやり直した方が良いのではないだろうか。先日閣議決定された上級官僚の人事を首相や官房長官が主導するという人事局は、長期的に期待は大きいが、来春設置が目標なので、それを待っていては遅過ぎる気がする。

 

2013年11月 7日 (木曜日)

306.CF DP-10)会計上の不確実性~IASBの考え「セクション4-認識及び認識の中止」

2013/11/7

野球の日本シリーズに沸いている間に、ブンデスリーガ(ドイツのサッカー・一部リーグ)でも凄いゴールがあった。一つは、日本の酒井宏樹選手が2シーズン目にしてあげた初ゴールだ。これはペナルティ・エリアの外からゴール・キーパーの頭上を突き刺した豪快なシュートで、あまりの強烈さに場内アナウンスが福島原発に喩えたほどだった(そのアナウンサーはあとで不適切な表現として謝罪した)。ブンデスリーガ公式ホームページで、ベスト・ゴール候補に挙げられているという。

 

もう一つは、ゴールのサイド・ネットに小さな穴が開いていて、そこから入り込んだボールを主審がゴールと認めてしまったゴールだ。試合終了後にビデオを確認した主審が誤審を認めて謝罪したが、まさかネットに穴があってシュートが当たり、しかも突き抜けるとは。主審はいろんなことに注意を払うので、ボールばかりを見ていられない。ゴールの中にボールがあれば、ゴールと思うだろう。(しかし、より同情したいのはゴール・キーパーだ。このシュートは防ぎようがない。)

 

両方とも凄いゴールではあるが、サッカーを楽しむという意味では、やはり酒井選手のゴールが凄い。それどころか、もう一つの方は楽しむどころではない。その誤審が試合の勝敗を決めてしまった。このゴールをあげたチームが1点差で勝ってしまったのだ。負けたチームやそのサポーターは悔やみきれないし、主審も苦しんだに違いない。

 

凄いといえば、IASBが不確実性、或いは、蓋然性を概念フレームワークから外そうとするのも大胆だ。IASBはこれをディスカッション・ペーパーに書き込むことで、強烈なシュートを放ってきた。果たしてこのシュートは止められるのだろうか。

 

 

前回(11/5の記事)同様、IASBの立場から、セクション4「認識及び認識の中止」に記載されている不確実性(或いは蓋然性)の取扱いについて紹介したい。IASBがセクション2において、資産や負債の「定義」から不確実性や蓋然性に言及した部分を削除することを提案し、認識規準からも同様に外し、不確実性や蓋然性は個別基準のみで必要に応じて扱いたいと提案していることは、すでに紹介した。

 

実はこのセクション4には、「蓋然性」という見出しはあるが、この不確実性の問題について改めて論じられてはいない。「既にセクション2で説明した」とされているだけだ(4.8)。しかし、「目的適合性及びコストの制約」という見出しのところで、関連する議論が行われている(4.94.11)。

 

その議論は、現行のIFRSが買入のれんを資産計上する一方で、自己創設のれんの資産計上を禁じているのは、自己創設のれんの見積りに不確実性が高いためではなく、自己創設のれんを資産計上しても、目的適合性のある情報にならないとIASBが判断したためである、という主張になっている。即ち、不確実性や蓋然性を持ち出さなくても、IASBが目的適合性という基本的な質的特性を考慮して個別規準を開発すれば、概念フレームワークの認識規準にこれらへの言及を含める必要はないとの考えだ。今回は、これを少々詳しく紹介したい。

 

この辺でちょっと、テクニカル・タームの整理をしよう。もしかしたら、「何を言ってるのか分からん」と、この記事を閉じようとしている方もいらっしゃるかもしれない。ちょっと我慢して次をお読みいただきたい。

 

                   
 

認識

 
 

(会計事象を識別し、内容を正しく理解し、)会計帳簿に記帳すること。

 
 

蓋然性

 
 

不確実性(の度合い)を逆から表現したもの。確実性の度合い。蓋然性を数値で表せば、確率になる。ASBJは、英語の「probability」をこのように訳している。

 
 

買入のれん

 
 

企業買収で発生したのれんのこと。対価を支払って購入したのれんなので、のれんの頭に“買入”をつけて表現する。

 

企業買収額-買収された企業の純資産額=買入のれん

 
 

自己創設のれん

 
 

のれんは英語で「goodwill」と表現されるが、要するに財務諸表に現われないその企業に対する(良い)評価。企業の信用。のれんのうち、上記の買入のれんを除いたものが、自己創設のれん。内部のれんなど他の呼び方もある。

 

企業の時価総額-会計上の純資産=自己創設のれん

 
 

目的適合性

 
 

IFRSには、日本の企業会計原則の一般原則(真実性の原則、正規の簿記の原則…)のような基本的な概念として、財務情報の“質的特性”というものがある。“質的特性”には、“基本的”と“補強的”の2種類があるが、このうち基本的な質的特性はたった2つしかなく、非常に重要(目的適合性と忠実な表現)。

 

目的適合性は、読者が情報を利用する目的との関連性、目的に対する有用性を指す。財務諸表の読者が意思決定を違えるような情報が、目的適合性があるとされる。

 

提供しても意思決定に影響を与えない情報や、提供するためのコストがメリットを上回るほどにメリットが少ない情報、即ち、重要性のない情報には目的適合性がない。このため、目的適合性には重要性の概念が含まれるとされている。

 

なお、コストをかけて提供しても信頼できる情報にならず、むしろディメリット(=誤解)を生むような情報(≒不確実性が高い情報)は、もう一方の基本的な質的特性である忠実な表現の問題になる。

 

 

さて、それではIASBの主張の紹介に戻ろう。

 

IASBはのれんの会計処理(=買入のれんと自己創設のれんの扱いの相違)を例にして、概念フレームワークの認識規準に蓋然性の要素を含めなくても問題ないと主張している。だが、そのためには、現行のIFRSにおいて自己創設のれんの資産計上が禁止されたのは、蓋然性の規準によってではなく、もっと別の理由(=目的適合性がないため)であることを示さなければならない。この主張のポイントは次の3点だ。

 

A.のれんは、買入のれんも自己創設のれんもIFRSの資産の定義に該当する。但し、自己創設のれんは企業価値評価(=株価算定)を目的とする情報である。

 

B.財務報告は、将来への期待や予測を含む企業価値評価ではない。企業価値評価は財務報告の目的には含まれない。即ち、企業評価のための情報は、財務報告としての目的適合性がない。

 

C.IASBは、資産の定義に該当する場合でも目的適合性がないものは、個別に資産計上しないと判断することができる。よって、自己創設のれんを資産計上しないと決定した。

 

ん~、完璧だ。これを覆すのは何人たりとも容易ではない。なぜなら・・・

 

自己創設のれんの算定は、企業価値評価として行われるが、財務報告では行われない。

 

過去に欧米企業は自己創設のれんを資産計上していた時期があるらしい。しかし、現在は禁止されている。信頼性のある見積りが不可能で、ほとんど粉飾決算のようになるからだ。しかし、企業買収の実務では、買収金額の目安として、買収相手企業の自己創設のれんを含む価値を計算する。これは理論というより現実だ。よって誰も否定できない。

 

企業価値評価のための情報は財務報告ではないことに、誰も反対できない。

 

財務報告は企業の過去の一時点の実績情報であり、その企業の将来への期待や予測も含む企業価値評価情報ではない。財務諸表だけでなく、決算短信などのIR情報、有価証券報告書でも、企業が将来情報に言及することは、非常に慎重でなければならないとされている。したがって、誰もこれに反対できない。

 

このように、誰も否定できない論拠を積上げて、自己創設のれんが資産計上されない理由を説明した。しかも、蓋然性に一切触れないで。(但し、「資産の定義に該当するものでも、IASBの判断で資産計上させない」という部分については、現在、それが可能であると権威付けされていないので、概念フレームワークに明記させてほしいと、IASBは提案している。)

 

一般的には、自己創設のれんの資産計上を否定する理由は、上記のような目的適合性ではなく、蓋然性の問題として論じられているのではないかと思う。実際、IASBも以前はそう説明していた(IAS38.49)。 このことは、このブログでも2012/12/6「のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(9)自己創設のれんの裏口入学」で取上げた。しかし、その記事にも書いたが、「自己創設のれんの見積りは不確実性が高く、信頼性がないから、(本来は資産でも)資産計上しない」という蓋然性による理由づけは、このケースに関してはどうも納得しにくい。それに比べれば、今回の目的適合性による主張は明快だ。

 

 

但し、それでも僕は納得できていない。

 

「資産の定義に該当するものでも、IASBは否定できる」のは、規準設定主体としてのあるべき能力だと思う。しかも、IASBはその都度ちゃんと理由まで説明してくれるに違いない。したがって、この提案を受入れるのには抵抗はない。

 

しかし、このような経緯で権威を与えられた場合、今後IASBは、不確実性、或いは、蓋然性によって資産計上を否定することはできにくくなるのではないだろうか。いや、そんな小さなことより、もっと重要な本質的な問題が隠れている。財務報告の利用者が本当に求めているのは、IASBが目的に非ずと否定した企業価値情報の方なのではないのか。

 

確かに企業は将来情報を含む企業価値情報を安易に提供することはできない。それが実績情報であるべき財務報告ならなおさらだ。しかし、財務報告の利用者は、財務諸表で不足している部分を各々(の頭の中で)補って企業価値をイメージし、意思決定しているはずだ。財務報告が目的適合性を持つためには、財務報告と、補う情報の境界をはっきりさせる必要がある。企業価値情報に対する財務報告の位置づけが明確になっている必要がある。その境界や位置づけが、概念フレームワークに明示されず、個別IFRSのなかに規程が埋没していたら、しかも、IASBの判断によってケースバイケースのように書き込まれていたら、分かり難いではないか。しかし、もしそれを明確にしようとするなら、概念フレームワークの中で、不確実性に触れないわけにはいくまい。

 

不確実性という一般的な問題で資産性が否定される、しかも、それが個別規準の中にIASBの判断として書き込まれるというのは、財務諸表の読者にとって、サイド・ネットの穴を突き抜けたゴールのようなものだろう。意思決定のあとに、個別規準を詳しく読み返したら(=ビデオを詳しく見返したら)、間違っていたなんてことになりかねない。

 

2013年11月 5日 (火曜日)

305.CF DP-09)会計上の不確実性~IASBの考え「セクション2-財務諸表の構成要素」

2013/11/5

プロ野球日本シリーズは、美馬投手や田中投手の活躍もあり、楽天が初優勝した。被災地に本拠地のある球団が日本シリーズを制するのは、被災地の方々だけでなく、我々にとっても心強く励まされる気がする。サッカーでも、ベガルタ仙台の気合がさらに充実することは間違いない。

 

但し、なぜか最近、ベガルタはエスパルスに異常に弱い。天皇杯では“厳正なる抽選の結果”、4回戦で両者が対戦することが決まった。これに対してベガルタ・サポーターからは、絶望的な反応が寄せられている。次のリンク先はエスパルス・サポーターのブログだが、抽選結果に対するベガルタ・サポーターの2chでの反応を集約したものらしい。お暇な方で、自虐ネタが嫌いでない方は、ご覧いただくと結構楽しめると思う。

 

http://www.spulse.info/archives/34128436.html

 

 

さて、前回(10/31の記事)示した方針に従い、これから、“会計における不確実性”をIASBがどのように捉えているかを、このディスカッション・ペーパーからご紹介したい。なぜかというと、10/21の記事に書いたように、一般的に“不確実性”といえば、ゴルフでいうところの自然環境、運動する場合の重力のように、隠れた主役といえるほどの重要な存在感がある。しかし、どうやらIASBは、もっと違う、もっと限定的な“不確実性”を考えているようなのだ。即ち、IASBは「一般的な“不確実性”と会計でいう“不確実性”は異なるもの」という主張を行っている。

 

以下について、みなさんが「なるほど、それはそうだ。」と感じるか、それとも「ん~、そうかな?」と思われるか、とにかく暫く僕は、IASBの側に立って、ディスカッション・ペーパーによる主張を紹介させていただくことにする。

 

まず今回は、「セクション2-財務諸表の構成要素」に出てくる不確実性について紹介する。ここでIASBは、すでに10/21の記事に記載したように、不確実性に関連しそうな文言を資産(や負債)の定義、及び、認識規準から外し、必要があれば個別基準で規定すればよいのではないかという提案(=予備的見解)を行っている。

 

 

IASBの懸念と議論の概要

 

IASBが、なぜそのように考えるかというと、IASBが次のような懸念を持っているからだ。

 

 ① 現行の規準・実務では(将来への不確実性を理由に)資産・負債の計上漏れが生じている。

 

 ② 定義は“現在”(=決算日時点)の資産・負債に限定している。(=本来、“将来”は関係ない)

 

 ③ 現行の定義と認識規準が矛盾している可能性がある。
(=定義の“予想される”と認識規準の“可能性が高い”の蓋然性のレベルが不一致の可能性がある。)

 

上記について概略を記載する。しかし、以下を読むにあたって、「いくらで資産計上するか」については考えてはいけない。あくまで「資産か、資産でないか」という第一歩目で思考を止めていただきたい。そうしないと全く理解できない議論になってしまう。

 

まず①については、資産側の例として、オプションの保有や先渡し契約の購入権、研究開発などが挙げられている。現行の実務や会計規準は、これらを資産計上するにあたって、将来の経済的便益の流入の可能性を確認せよとしている。例えば、研究費は原則費用処理で、一定の要件を満たす開発費が資産計上とされるのは、その一定要件が将来の事業による収益実現の可能性を表しているからだ。しかし、IASBはそれは違うと考えていて、例えば、研究開発は、将来獲得できる経済的便益が資産になるのではなく、(個々の試みが失敗しようが成功しようが)生み出されるノウハウに経済的便益を生み出す能力があり、ノウハウこそが経済的資源(=資産)なので、もっと幅広く資産計上すべきと考えているようだ。

 

しかも②にあるように、資産・負債の有無は過去に起因した事象の現在の状況で決まるものなので、不確実性(=将来の事象)を要件として考慮するのはおかしい。おかしいのに現行の定義や認識規準がそこまで言及してしまっていることで、③のような矛盾が生じている。

 

 

議論の深化=「存在の不確実性」と「結果の不確実性」の区分

 

以上の議論を深めるために(特に③の蓋然性のレベルを検討するために)、不確実性を「存在の不確実性」と「結果の不確実性」に区分して議論をしている。前者は、期末日現在の状況が不確実だが、後者は将来起こる結果が不確実という整理のようだ。

 

もう少し詳しく書くと、前者は「(期末日)現在において、資産・負債が存在するか否かが不確実な状態」であり、典型例は訴訟とされている。即ち、過去の事象に基づいていることは間違いないが、期末日において訴訟に勝つか負けるか判明しない状態では、賠償金等を受取る権利があるのか(或いは支払う義務があるのか)が、分からない。そのような状況を「存在の不確実性」があるとしている。

 

後者は「将来起こる結果(=経済的便益が流入・流出するか否か)が不確実な状態」であり、訴訟のケースでいえば、勝つか負けるかはほぼ分かっているが、どれぐらい勝つか(或いは負けるか)が分からない状態、即ち、勝っても賠償金はほぼゼロという予想から、多額の賠償金を受取れる可能性まで、色々考えうる状況だ。

 

このように不確実性を区分したうえで、どの確度(=蓋然性)の時点で資産・負債を認識すべきか。

 

 ・“ほぼ確実”の段階で資産・負債とすべき

 ・“半分以上の確率”で認識すべき

 ・ 資産は“ほぼ確実”だが、負債は“半分以上の確率”で認識すべき

 

IASBは、IAS37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の規定例や過去に寄せられた意見を挙げ、それぞれの長所・短所を検討しているが、これが一番という結論はない。むしろ、混在(混乱?)している現状が示されている。

 

結局、不確実性を2つに区分して、上記のような厳密で具体的な検討をしても、どれも一長一短で簡単に決められるものではないというニュアンスが言外にあるように感じられる。但し、「存在の不確実性」は滅多にないが、「結果の不確実性」はそれより多くのケースが考えられるとし、上記のオプションや先渡し契約、研究開発などもこちらに属するとしている。その他、売上債権や棚卸資産の評価までもが「結果の不確実性」として例示されている。

 

議論の流れからいえば、前者は滅多にないし、後者はより将来事象的な要素であり、資産がなんであるか、或いは、(期末日)現在存在しているか、という問題からは遠い。したがって、両方について、資産・負債の定義や認識規準に関係させるべきでないと主張しているようだ。

 

 

IASBの予備的見解

 

そしてその次に、上記の不確実性を概念フレームワークの定義や認識規準から外すべしという予備的見解が、その理由と共に述べられている。その理由を改めて記載すると、以下のとおり(2.35(a)(c))。

 

・定義における“予想される”は維持すべきでない。これがあるために、一部が漏れ、すべての資産・負債が計上されていない。

 

・資産は経済的便益を生み出す可能性が高い必要はなく、その能力があれば良い。このように考えれば、上記のような蓋然性の閾値(不確実性の程度)を定義で定める必要はなくなる。(負債の場合も同様。)

 

・稀に、「存在の不確実性」が問題になるケースがあるが、稀なので個別に定めればよい(=概念フレームワークで扱う必要はない)。

 

・認識規準においても“可能性が高い”は削除されるべき。上記と同様、これがあるために、現状はオプション等の一部の資産・負債が漏れている。IASBとしては「結果の不確実性」のみで資産・負債の存在を決めるべきではないと考えている。

 

 

以上が、このセクション2における不確実性の議論の要約だが、これ以外にセクション4「認識及び認識の中止」やセクション6「測定」でも、角度を変えてまた取上げられている。これについては次回以降にしたい。

 

 

補足

 

ところで、「存在の不確実性」と「結果の不確実性」については、ご理解いただけただろうか。例えば、10/10の記事で僕が例に挙げた会議室の絵画の話は、「いくらするか分からない」となっているので、「結果の確実性」か、もしくは「測定可能性」の問題になる。一方、「台帳には絵画があることになっているが、現物が見当たらない」などという、上場準備会社ではありがちなケースであれば、「存在の不確実性」ということになるだろう。

 

もっと身近な例でいえば、棚卸差異がある。しかし、差異原因を追究した結果としての「存在の不確実性」については、重要性なしとして損失計上されるのが普通だ。しかし、時には多額となる場合もあって、そういうときは仕損じ品が絡むことが多い。その仕損じ品についてはちょっと問題がある。仕損じからは失敗を繰り返さないノウハウを獲得すると思うが、それも資産と考えるのだろうか。ノウハウが経済的便益の流入につながるかは否かは「結果の不確実性」の問題、それを具体的にいくらで評価するかは「測定」の問題で、この辺りは、またセクション46で出てくると思うので、引続き検討課題としたい。

 

 

ちなみにエスパルスは、冒頭のベガルタ・サポーターの嘆きでも分かる通り、ベガルタとの相性が良い。したがって、天皇杯第4回戦の勝利はほぼ固いと予想できる。ということは、その次の5回戦、即ち、準々決勝まで進むことができる。現時点で既に準々決勝のチケット販売収入があるだろうと見込めるわけだ。このように、エスパルスのベガルタに対する相性の良さは、経済的便益を生み出す能力といえる。ただ、今後、今回のような天皇杯でベガルタと直接対決できるラッキーがどれぐらい巡ってくるかを予測することは困難で、その能力によって、いくらチケット販売収入を増やせるのかを具体的に予想するのは難しい。

 

現行の会計規準では、このようなベガルタとの相性の良さを資産計上することはない。しかし、経済的便益を生み出す能力があり、かつ、存在の不確実性ではなく、結果の不確実性のみがある状況だ。もしこの予備的見解によった場合、ベガルタに対する相性の良さは、エスパルスの会計上の資産になるのではないか?

 

もちろん、これは冗談で書いている。ベガルタに大変失礼な話で、ベガルタ・サポーターの方々にも申し訳ない(実際の対戦成績はエスパルスの832敗、即ち、2敗している。ただ、この10年間一度も負けていないのも事実だ)。しかし、不確実性や蓋然性を考慮しないで、能力が資産だとすると、あれもこれも資産になるのではないかと、つい思ってしまう。

 

もっとまともな例を挙げれば、Jリーグのチームはシードされているので必ず天皇杯のトーナメントに参加できる。その分、チケット販売収入は増えるので、これも経済的便益を生み出す能力だ。さらに、J1に所属するチームは、有料試合を年間34試合行うことができる。すると、これも、例えば「Jリーグ参戦権」などとして、資産計上することになるのではないか。いくらで計上するかは分からないが。

 

一つの考え方として分からなくはないが、「Jリーグ参戦権」は、チームの存在意義を賭けて戦って勝ち取るものだし、売買できるものではない。それを資産計上するのは、目的と手段を穿違えたような、いや~な感覚が僕にはある。

« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ