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2013年12月 3日 (火曜日)

316.DP-CF17)会計上の不確実性~目的適合性の深掘り

2013/12/3

かぐや姫の物語の主題歌によれば、過去のすべてが現在に繋がっており(11/23の記事)、1977年の名曲「迷い道」では、過去と現在の状況から将来を透かして見ていた(11/29の記事)。これらは、科学的に何の証明もないが、「人はそう感じるもの」とはいえそうだ。会計も、過去と現在を記述して、利用者に将来の見通しを示唆するものだが、但し、将来の何を見通したいのかによって、過去や現在の何をどのように記述するかが変わってくる。それを考えるのが、目的適合性だった。何を見通したいかについては、前回(11/29の記事)でも記載したように下記の2点(一般目的財務諸表の目的)と考えて良いと思う。

 

企業への将来の正味キャッシュ・インフローの見通しを評価するのに役立つ情報OB3

 

企業の経営者や統治機関が企業の資源を利用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたかに関する情報OB4

 

読んでわかるように、前者は「将来」だが、後者は「過去」のことを述べている。後者は、前者の見通しを評価するために必要な実績情報ということになる。即ち、後者は過去の経営者等の実績から経営者等への信頼性を評価したいのであり、それによって、前者の経営者等の述べる将来の見通しに対する信頼性も評価できるようになる、というロジックだ。

 

そうすると、次に以下の2つが問題になる。

 

1.経営者等が述べる将来の見通しは、どこに書いてあるのか。

 

2.経営者等の信頼性は、何をどう見れば評価できるのか。

 

目的適合性を考えるうえでは、この2つの問題は非常に重要だと思うが、不思議なことに現行の概念フレームワークにはこれらを掘り下げた記載がない。そのため、このあとは僕の想像になる。

 

 

<1は非財務情報として企業に開示が期待されている。しかし・・・>

 

繰返し記載してきたように、将来情報は、後発事象などの例外を除き非財務情報だ。したがって、1は財務諸表の中には組込めないはず。現在の日本の制度でいえば、決算短信で開示される業績予想やホームページなどに任意に公表される事業計画や企業の将来像のようなもの(経営理念など)が、これに当たるように思う。

 

しかし、この一番大事なことが、会計の世界で全く検討されていない。単に「将来の正味のキャッシュ・インフローの見通し」というだけだ。もし、これを決算短信で公表される業績予想というなら、投資家も経営者も短期志向の投資、経営活動に誘導されてしまう。しかし、もっと長期の会社の将来像と繋がっているなら、長期的観点の行動が行いやすくなる。こういう発想は、まさに統合報告(6/11の記事など)の目指すところだが、とても重要なことだと思う。本当に長くて1年先程度の業績予想がこの「経営者等の将来の見通し」で良いのか。

 

<2は主に財務情報を見ることになるが、でも、どう見ればよい?>

 

財務情報の利用者が企業の経済実態を理解するには、何かと比較しながら分析することになる。財務情報では、その比較対象としてその企業の過去実績や、他の企業の財務情報が想定されている。

 

しかし、ビジネスの世界であるならば、通常、有言実行の状況こそが相手の信頼性を測る最も重要な、直接的な尺度だ。銀行なら、債務者が契約通りに借入を返済することだし、仕入先を評価するなら、発注通りの品質と納期だ。ところが、2の経営者等の信頼性は、経営者等が掲げた目標に対する進捗状況や達成状況、即ち、有言実行の状況ではなく、過去実績の推移や他企業との比較しか想定されていない。これが現状の開示制度(IFRSでも、日本の開示制度でも)における財務情報だ。このままで良いのか?

 

もう一つ、「正味のキャッシュ・インフロー」の実績をどこで見ればよいかという問題もある。当期純利益か包括利益か、それとも持分か。しかし、当期純利益か包括利益かという問題は、このディスカッション・ペーパーでも結論は先送りされているし、持分に至っては、このディスカッション・ペーパーに例えば、現行の要求事項では、純資産の合計額として表示される金額にはあまり意味がない。」(6.12)とまで書かれている。何てことだ!

 

僕はもしかしたら、1がはっきりしないから、2も整理がつかないのではないかと思っている。

 

 

従来会計がこういうことを蔑にしてきたのは、「経済実態を表現する方法は、すべての企業で共通である」という前提があったからだと思う。即ち、あまり財務諸表利用者の視点(=目的適合性)を持たずに、適切な資産・負債は何か、収益・費用はどう計上すべきか(=忠実な表現)ばかり考えてきたことが問題だと思う。

 

しかし、実は利用者が「正味のキャッシュ・インフローの見通しを評価したい」と考えているとか、「経営者等の信頼性を評価したい」と考えているというところから出発すれば、財務情報を改善するための、もう少しいろいろ違ったアイディアが出てくる可能性があると思う。例えば・・・

 

・企業の見通しの開示

会計上の要請として、企業に長期的な「将来の正味キャッシュ・インフローの見通し」を示すよう促す。それは、何らかの形で財務諸表によって、有言実行の状況、即ち、目標に対する進捗状況が確認できる形のものにしなければならない。統合報告とうまく融合できると良いと思う。

 

・当期純利益と包括利益

企業が既にリスク管理の対象としているもの、即ち、経営で対応しているものと、一時的な外部環境の変化によるもので企業が対応しなくても問題がないと判断しているもの、或いは、まだ経営で対応できていないものを、企業の判断で区分してもらい、それを当期純利益と、その他の包括利益にする。この判断は企業間でばらついてもよいし、期間ごとに変化してもよい。そのばらつきや変化自体が経営者等の信頼性を判断する材料として有用なので、そこを分かりやすく開示する、という考え方を採用する。

 

・持分の開示方法

「正味のキャッシュ・インフロー」は、キャッシュ・インフローとアウトフローをネットしたものだが、インフローを生むものが資産、アウトフローを起こすものが負債と考えれば、正味のインフローは持分ということになる。しかし持分は、配当支払いや自社株買い、払込資本からの振替などの資本取引で増減するので、過去に事業活動から生み出した正味インフローを累積したものではない点が問題だ。そこで、過去の資本取引による累積的な増加減少項目も合わせて開示することで、事業による「正味のキャッシュ・インフロー」の実績を示すことが考えられる。

 

・公正価値、市場価格要素に関する注意喚起

公正価値を使ったり、市場価格要素を会計上の見積りに利用した項目については、それがある一時点の状況に過ぎず、主に企業の外部要因の変動に大きな影響を受けるものであることに注意が向けられるような開示が必要。

これらによる評価損益の一部は上述のように、企業によって当期純利益に含められず、その他の包括利益とされるケースが出てくる。決済損益は、決済によって経営上の対応がなされたことになるので、当期純利益に含められる(その他の包括梨利益に区分されていたものは、リサイクルされる)。

 

・使用価値に関する注意喚起

一方で、使用価値が会計上の見積りに利用されている項目については、見積り時点の状況を将来に引延ばしたものではあるものの、見込み違いなど主に企業の内部要因で実現できない可能性がある旨の注意喚起が必要。

これらによる損益は、当期純利益に含まれることが多いだろうと思う。しかし、一時的な市況の改善などによる減損戻入が発生し、近い将来また減損を繰返すことが予想されるものは、企業の判断によってその他の包括利益に区分されるかもしれない。

 

・自己創設のれん

自己創設のれんは、「将来の正味のキャッシュ・インフローの見通し」を財務諸表の利用者が評価して算定するものであり、企業自身が財務情報として作成すべき情報ではない。要するに、自己評価は信頼性のある実績数値にはならない。非財務情報を記載する場所で、企業の将来像として開示するなら、ありえるが、現在若しくは過去の情報として企業が開示することはありえない。

これはこのディスカッション・ペーパーに記載されたIASBの自己創設のれんをB/Sに計上しない理由(11/7の記事の後半に記載)とかなり似ているように見えるが、IASBより直球勝負の感じだと思う。

ここで重要な点は、自己創設のれんの範囲だ。例えば研究開発費を自己創設のれんと考えれば、研究開発費の資産計上は否定される。その他の無形資産も同様だ。では、どういうものが自己創設のれん、即ち、自己評価の対象になるのか。単に第三者の鑑定書があれば自己評価にならないのか。

この問題は、企業が評価すべきものと利用者が評価すべきものの境界を決めることなので、とても重要だ。企業が評価すべきとなれば資産計上される。一方、利用者が評価すべきとなれば費用処理され、どう開示すれば利用者の便宜に適うかを考えていくことになる。

 

 

上記と同様に、会計上の不確実性を利用者の観点から考えるとどうなるだろうか。

 

「経営者等による正味の将来キャッシュ・インフローに関する見通しを評価するために、実績を財務情報で確かめたい。」

 

これが利用者のニーズだとすれば、財務情報を「実績」と言えるかどうかが重要になる。不確実性が低ければ実績(=ほぼ確実なら実績)と言って差し支えないと思う。不確実性が高いものを実績と言ってはならないというのが一般的な理解だろう。したがって、実績を評価するという目的がある限り、会計上の不確実性は軽視できないはずだ。そして、その会計上の不確実性は、経営上の不確実性と密接な関係を持っている。経営上確実と思える時点で、実績になるのだから。

 

もし、他の項目と不確実性の程度が異なるもの、相対的に不確実性の高いものを「実績」に含めたのなら、どういう点が不確実なのか、そしてなぜそれを実績にしたのか、そしてその後も継続的に経過説明を要することになる。このような「正味のキャッシュ・インフロー」の実績に不確実性を与えるものとは、以下のものだ。

 

・キャッシュ・インフローを生むかが通常より不確実なのに資産計上したもの

 

・キャッシュ・アウトフローを避けられるか通常より不確実なのに負債計上しなかったもの

 

これは、資産側と負債側で逆の見方をしている。資産側では、キャッシュ・インフローを生む確からしさ(=蓋然性)に注目しているのに、負債側ではキャッシュ・アウトフローを避けられる確からしさに注目している。

 

IASBは、資産と負債をパラレルに考えすぎて、目的を見誤っている面がある。即ち、中立性を盾に、資産と負債の蓋然性の基準が共通でなければならないように考えているが、それは違う。目的は正味のキャッシュ・インフローにあるのだから、上記のように資産と負債は見方が逆にならなければならない。IASBは、現在のIAS37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の規定について、資産側と債務側で蓋然性の基準が違うから矛盾している(資産より負債が、蓋然性が低くても計上される例が示されている)と自己批判しているが(11/5の記事)、上記のとおり、そんなことはない、その規定は矛盾していないと僕は思う。

 

このような点から考えると、「他の項目と不確実性の程度が異なるもの」には、IASBが主に想定している訴訟絡みで発生する資産や負債や、推定的債務、他社の推定的義務から生じる権利の他に、シナジー効果に対する期待までも評価して資産計上する買入のれんや無形資産、もし資産計上するなら研究開発費なども含まれるのではないかと思う。こういうものには、経営者も、そして投資家や債権者も関心が高いはずだ。不確実性は、会計にとっても個別項目に限られない、実に重大な影響がある。

 

こういう利用者のニーズは、企業の決算発表などで対応されている。しかし、なぜ会計自体がもっとニーズに貢献できるように改善されないのだろう。この場合の目標とは、現在は決算発表で公表される事業計画や予算のことになるが、確かにこれらは将来情報なので財務情報にはならない。しかし、そういうことを超えて利用者の満足を目指していかなければ、無駄な作業(=多くの資料の作成など)を企業に強いるように思う。

 

 

ちょっと角度を変えてみると、即ち、冒頭の2つの一般目的財務諸表の目的を深掘りしたところから見てみると、色々改善のアイディアが湧いてくるし、今回のディスカッション・ペーパーの矛盾も見えてくる。といっても、これらのアイディアが使い物になるかどうかは、細部を詰めていかなければ分からない。また、企業にしても、制度外で自由にやっていることを規制され、責任が重くなるようで、いやがるかもしれない。したがって、これらのアイディアは、今の段階では、道端に転がっている石ころほどの価値しかない。これからより多くの検討が必要だ。

 

こんな大風呂敷を広げたところで申し訳ないが、実は今月の中旬ぐらいまで、集中してやらなければならない用事ができてしまった。このブログをしばらく中断させていただくことを、お許し願いたい。

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