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2013年12月17日 (火曜日)

318.DP-CF18)会計上の不確実性~“ある件”の不確実性

2013/12/17

2週間ぶりにこのテーマに戻ってきた。ということは2週間この問題から頭が離れていたということだが、久しぶりに戻ってみて、ふっと頭に浮かんだのは、“売掛金”だった。売掛金こそが、最も会計上の資産らしい資産といえるのではないか。ならば、売掛金を例にこのテーマを考えてみよう。

 

資産の定義と認識規準から不確実性の要素を取除くべきだとIASBは主張していて、僕はそれは違うんじゃないかと思っている。では、これを売掛金で具体的に考えてみるとどうなるだろうか。即ち、なにが売掛金か、どういうものが売掛金かを考えるにあたり、不確実性が関わっているかどうか。関わっていないのか、或いは、その関わり方によって、IASBの主張を検証できる。

 

こう思った時に、ある件がふっと頭に浮かんだ。もうかなり前の話、まだ内部統制報告書制度が始まる前だが、循環取引による不正は既に大きな話題になっていた。そんな頃のことだ。僕が監査人としてサインをしていたある会社で、主任がおかしな売上取引を発見し、それが監査チーム内で、そして会社との間で議論になり、結局、会社が売上に関係する会計処理を修正したことがあった。今考えてみると、この件は“売掛金の不確実性”がテーマだったのかもしれない。

 

この“ある件”を、少々、ぼかして紹介する。また、簡潔にするために脚色もさせていただく。しかし、みなさんには、これから書くようなことが、実際に起こったとお考えいただけるとありがたい。

 

 

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主任がおかしいと気付いたのは、金額の大きな売上取引の契約書の回収条件が、通常と著しく異なるからだった(回収期間が長い)。そこで取引内容を見てみると、通常は顧客ごとの仕様に仕上げた製品を納品するのに対し、その取引に限っては、開発中でまだ製品の形になっていない状態のものが売上の対象となっていた。仕掛品というよりは、生産するためのノウハウとか、生産を効率化するツールといった方がイメージに合うかもしれない。非常に特殊な売上だ。

 

会社が言うには、この取引の相手先は、得意分野こそ違うが広くいえば同業であるため、このノウハウ状態のものをその相手先の得意分野へも活用できるという。そして、相手先はこれを活用することで、大きなビジネスができると見込んでいる。回収条件が特殊なのは、この相手先が小規模なので財務的な負担が大きく、ビジネスが具体的になるまで支払いを待ってあげるからだという。

 

なお、このノウハウ等は、この会社の過去における研究開発活動や他の顧客に対する業務から派生したものであり、原価は研究開発費として、或いは、他の顧客に対する製品の製造原価の一部として費用処理済み。したがって、売上額は、そのまま利益となる。業績へのインパクトがデカい。逆にいえば、この取引のための追加支出は殆どない(販売費用は除く)。即ち、宝くじに当たったような儲けものということになる。

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一応以上だが、ここで、不確実性との関係を整理しながら追加の説明も加えよう。さて、何が不確実か。

 

 回収が不確実

 

この相手先は、このノウハウの活用に成功した段階で、支払いの原資が確保できる。或いは、その成功が具体的に見込めなければ、この支払いのための金融機関の融資が受けられない企業規模、経営状況だ。即ち、この売掛金が回収できるかどうかは、その相手先のビジネスの成功如何にかかっているところが不確実だ。

 

この場合、会計処理としては売上及び売掛金をいったん満額計上するとともに、回収不能額を見積って貸倒引当金も計上することになる(会社は貸倒引当金の見積りを行っていないので、それが修正となる)。これは、資産に将来便益が流入するか否かに関するもの、即ち、全額貸倒引当金を計上する可能性も排除できないので、IASBのいうところの“結果の不確実性”に当たると思う。

 

 売掛金の存在が不確実

 

これには2つのケースが考えられる。しかし、いずれも会計処理としては、会社の計上した売上を取消すことになる。これらは、そもそも売掛金が存在しているかどうかに関することなので、IASBのいうところの“存在の不確実性”に当たるのではないか、と思う。(但し、IASBにとって、このようなケースは想定外、或いは、対象外かもしれない。)

 

-1) 相手先がこのノウハウをビジネスにつなげるには、この会社のさらなるサポートが必要であり、その義務を果たすことが、この取引の前提になっているのではないかという疑念がある(契約書にはそのような記述はないが、取引の内容・経緯等に関する担当部署へのヒアリングで得た感触から、このような疑念を持った)。即ち、この取引は、ノウハウを記述したものを受渡せば終わりという単なる物品取引ではない。まだ会社の仕事は終わっていない。したがって、まだ売掛金は発生していない(=売上計上は早過ぎる)のではないか、という疑念があった。

 

-2) そもそも、この取引は作り話ではないかという疑念もあった。早い話が、架空取引ではないかという疑いだ。ちょっと話が飛躍しているように感じられるかもしれないが、実は、次のような状況もあった。

 

・会社は、ちょうど投資家や債権者から、業績を改善するよう特別に強いプレッシャーを受けている時期だったし、この取引によって営業損失が営業利益になった。事業部門にもこういうプレッシャーは伝播する。即ち、不正を行いたくなるような典型的な外部環境があったし、この取引は正に業績を作っていた。

 

・我々は、次のような経験をしていた。会社は、ある期の期末に大きな売上取引を行った相手先から、翌期早々に大きな金額の設備を購入した。しかも、その設備があまり必要性の高くないもので、かつ、価格が高過ぎるのではないか、即ち、業績を良く見せるために、無理なバーター取引を行ったのではないかという疑念を持っていた(もちろん、会社は正当性を主張し証拠も提示したが、五月晴れのようにすっきりとはせず、むしろ梅雨時のジメッとしたいや~な印象が残っていた)。

 

これに対し、主任と僕の意見は割れた。

 

主任は取引の実態はなく架空売上の可能性が高いから、直ちに売上は否定されるべきと考えた。即ち、②-2か、良くても②-1のケースに当たると判断できると考えた。一方、僕はその可能性は考えられるが、結論を出す前に、取引の実態があるかないかをもっとよく確認すべきと主張した。即ち、まだ①の可能性を捨てきれないと考えた。いずれにしても修正は必要になるだろうが、この後の監査の進め方や、修正内容について意見が合わない。

 

とはいえ、時間は限られている。早速、次の4人で相談することにした・・・主任と、僕の名前の上にサインをしていたパートナーAと、既にサインはしていないがその会社と最初からずっと付き合ってきたもっと上位のパートナーBと、そして僕。同時に、その結果を受けた会社とのミーティングのアポ取りも行った。業績が大きく変わるので、社長にも出席してもらわなければならない。

 

 

さて、これらの議論はどのような結論へ向かっていっただろうか。貸倒引当金の追加計上か、それとも売上の取消か。もしみなさんが、内部監査人やIR責任者、或いは、監査人としてこのようなケースに当たったとしたら、どう判断されるだろうか。もしよかったら、考えてみていただきたい。

 

そして、もし余裕のある方がいらっしゃれば、会計規準はこのようなケースをどう扱うべきかについても考えていただきたい。例えば②-2のケースは、会計規準というより監査基準の範疇だから、対象外・守備範囲外だとか。では、①や②-1のケースはどうだろう? 

 

あとは次回に。

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