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2013年12月24日 (火曜日)

320.DP-CF20)会計上の不確実性~ある件の会社とのミーティング

2013/12/24

最も会計上の資産らしい資産“売掛金”。これで会計上の不確実性について考えてみようということで始まった“ある件”の話だが、いよいよ今回は、監査人と会社との事実上の最終ミーティングの場となる。この売掛金と会計上の不確実性の関係については、前々回(12/17の記事)に記載した。また、繰返しになるが、これは事実そのままではない、即ち、脚色している。

 

 

さて、このような問題(前々回の記事に記載)が発生すると、監査人は会社へ色々な角度から質問したり、資料を依頼したりするので、その過程で監査人の抱いた懸念の内容が会社へ伝わることになる。また、社長にミーティングの出席を依頼するには、要件を明確にしておく必要があるので、そこでも懸念の内容を予め説明している。そのせいか、ミーティングが始まると、まず口火を切ったのは社長だった。

 

通常は、監査人側から改めて懸念の内容や経緯を説明してから議論が始まる。それを遮るように社長が話し始めるのは、まあ、社長のキャラクターにもよるが、社長の切迫感の現われだ。かなり前のめりになっている。我々にも緊張が走る。

 

社長の主張は以下のとおり。

 

・売上には実態があり、新しいビジネスを生み出す革新的なものである。

・会社の業績を左右する取引であり、適切に会計処理したい。

・売上が適切なものと認められるには何が必要か。できる限り監査人に協力する。

 

正直言って、我々の一番の泣き所は、革新的なビジネス最前線の話を拠り所にされることだ。さらに、大所高所に立った、その会社の所属する業界を見下ろすような視点で長期展望や経営者の夢へ話がジャンプしてしまうと、気持ちよく話しているだけに遮りずらくなる。この時も、そうなる兆候があったので、取引先名などの具体的な固有名詞を、合いの手代わりに挿んで、話を現実に引戻した。

 

そして、この流れの中で、我々が時々口を挿んで社長に意識してもらえるよう仕向けたのは、次の点だ。

 

・売掛金回収にリスクがあり、そのリスクの大きさは取引先の新規事業の成否のリスクに等しい
 (前々回の記事の①の不確実性)

 

新規事業を成功に導くことの難しさは、社長自身が一番よく分かっている。それと同じリスクが、この売掛金の回収にもあることに意識を向けてもらう。しかも、その新規事業は取引先のもので、会社がコントロールできるものではない。

 

・出荷基準で売上計上できない取引の可能性
 (前々回の記事の②
-1の不確実性)

 

売掛金が回収できるという見込みは、取引先経営陣への信頼と、取引の対象となったノウハウ等への自信によるものだった。しかし、いくらノウハウ等が良いものでも、そして取引先が信頼できても、相手が利用方法を理解でき、かつ、利用できる形になっていなければ、機能しない。しかし、社内にあるノウハウ等は、普通はそういう形になっていない。すると相手の新規事業は成功しない。それでは困るから、サポートが必要となる可能性がある。即ち、売掛金回収を考えると、単に、契約書、物品受領書があれば良いといった物品取引では済まずに、その後のサポート・サービスまでを含む売上取引である可能性がある。

 

・業績に与えるインパクトの大きさ

 

仮に、あとから多額の貸倒引当金を計上せざるえなくなったらどうなるか。

 

結局上述のように、社長は「売上の正当性を検証して確かめてくれ」と締めくくったので、この流れの中では、我々の懸念が受け入れられるには至らなかった。

 

そこで、僕は、売上の正当性を証明するために、そのノウハウ等を出荷するまでのすべてのプロセスが明らかになるような社内記録を提出してほしいと言った。相手との、或いは社内での電子メール等のやり取りや訪問記録などを含めて。そこに、取引先が期待していること、具体的な要求事項、それに会社がどう対応したか、すべて対応できたかなどの片鱗が現われているはずだった。

 

僕は、実はこの段階でも、売上の実在性と売掛金の回収可能性は分けて考えていたので、もしこの取引が架空取引でなく、これらの資料から売上取引の実在性と会社がやるべきことをやったとの確認できるならば、売上を全額計上したうえで、売掛金の回収可能性、即ち、貸倒引当金をいくら計上するかに集中できる可能性があると思っていた。これは前々回の記事の①の不確実性に焦点を当てたアプローチだ。しかし、直前の監査人側のミーティング(12/19の記事)では、①の不確実性の問題ではないと、このアプローチは否定されていた。

 

そこで、パートナーAや主任は、続けて、この取引はまだ確実に実現したといえないのではないか、という疑念を改めて会社に伝えた。これは前回の記事の②-1の不確実性だ。さらに、この前にIT企業の循環取引による不正が話題になっていたので、そのことに話題を移して、この取引についても慎重に考えるよう強く勧めた。これは前回の記事の②-2の不確実性だ。

 

ここで、「どうやらこの売上を認める気はないらしい」と察知したIR担当の取締役から、「もし、そうであれば、どういう会計処理になりますか」という質問があった。パートナーAは、売掛金を回収できるまでは売上が実現したといえるかどうか分からないので、回収できた分について売上計上することになると回答した。そして、この取引をこのまま売上計上するか、それともいったん売上を取消して、今後入金した分を売上計上するかを社内で再検討するよう依頼した。それは、事実上、売上を取消して、その後入金した分だけ売上計上してください、という申入れだった。

 

 

さて以上を題材にして、このディスカッション・ペーパーの(資産の)定義や認識規準から不確実性の要素を外すというIASBの提案を考えたい。IASBの提案を前提としても、監査人のこの判断は同じだろうか? それとも変わるだろうか。

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