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2013年12月26日 (木曜日)

321.DP-CF21)会計上の不確実性~ある件の②-2のケース

2012/12/26

昨日はクリスマス。日本では宗教行事というより、そろそろ年末の挨拶を交わしだすころ、といった感じだろうか。季節の移り変わりを知らせる風物詩だ。しかし、このブログはマイ・ペース。みなさんは「もういいから、次のテーマへ移ってくれ」と思われているかもしれないが、いましばらくは、このままいきたい。新年明けてもこのままかもしれない。

 

さて、今回は、“ある件”に関する②-2の不確実性(12/17の記事)、「売掛金は架空取引によるもので、実在しないかもしれない」という疑念と会計規準の関係について考えたい。

 

12/17 の記事にも記載したが、このような不正会計を防ぐことは会計規準の守備範囲ではないのではないか、という疑問について考えたい。僕は、確かに会計規準のみで解決できるものではないが、会計規準の役割も見過ごせないと思っている。恐らく、みなさんも同じだと思う。ただ問題は、このことが“不確実性を(資産の)定義や認識規準から取り除く”という今回のIASBの提案に関係するかどうかだ。

 

 

1.不正会計と会計規準の関わり

 

みなさんもご存じのとおり、エンロンやワールドコムの不正事件は、米国会計基準のルールの裏をついたものであり、当時はUS-GAAPの細則主義が批判の対象の一つとなった。実態は売上でなくても、ルール通りに形式を整えれば売上として会計処理できる、当時のUS-GAAPでは、そういうことが可能だったとされている。それに対して、IFRSは経済実態重視の原則主義。IFRSならそうはならなかったということで、米国がIFRSへ目を向けるきっかけとなった。したがって、不正をやりやすい会計基準、やりにくい会計規準、そういう考え方はありそうだ。

 

2.IASBの提案と不正会計の関わり

 

では、今回のIASBの提案が、IFRSをより不正が行いにくい会計規準へ導くだろうか。現行の定義や認識規準は、不確実性の逆の“確実性”を数値的に表現した“蓋然性”の要件を含んでおり、IASBの提案はそれを除去しようとしている。厳密には数値基準ではないが、一定レベルの、即ち、数値基準的ともいえる蓋然性への要求は、上記で批判の対象となったような細則主義的な要素と言えるだろう。したがって、不確実性を定義や認識規準から除き、よりシンプルな定義や認識規準にすることは、より不正が行いにくい会計規準へ向かっていると考えることが可能だ。

 

3.“ある件”で考えてみると・・・

 

しかし、以上のような議論は、ある意味ちょっと高級な議論であり、あからさまな作り話、架空取引のような低俗なケースには当てはまらないことが多いと思う。“ある件”が不正かどうかは分からないが、仮に不正、即ち、架空取引だったとすれば、会計規準で防止するのは困難だろう。架空取引をする人は、経済実態がないのを承知で、実態があるかの如く偽装して売上計上するのだから。グレーを狙うのではなく、会計規準を犯そうとして犯すのだから。

 

“ある件”では、契約書や物品受領書があった。契約書の回収条件はおかしかったが、一応それを説明するストーリーもあった。しかし、その時点の会社の状況や、それ以前の我々の経験が、売掛金の回収可能性だけでなく、売掛金の存在自体までを疑わせた。だが、こんなことまで売掛金の要件として会計規準に書けるわけがない。会計規準だけで不正防止はできない。

 

さらに言えば、もし、この“ある件”が架空取引だったとして、定義や認識規準から不確実性を外せば防止しやすいかというと、そうでもない。むしろ、逆だ。「回収できない可能性が高いなら売掛金じゃない」と考えられる方が、即ち、蓋然性の基準がある方が、売掛金を否定しやすい。

 

ということで、シンプルな会計規準を開発することは不正の防止に役立つが、実務はそればかりではない。今回のIASBの提案は、この点で良い面もあるが、そうではない面もある。どちらの面がより重要かについては、難しいところだ。もちろん、このケースだけでは判断ができないので、他のケース(12/17の①や②-1)についても検討が必要だ。

 

 

ちなみに、入金分を売上計上することになった“ある件”は、その後、少額の売上が計上された。少額でも入金があったということは、まったくの架空取引ではなかったかもしれない。会社の公式見解は、「取引相手の新規ビジネスが目論み通りにはいかず、契約通りに支払ってくれない」だった(12/17の①の不確実性のケース)。しかし、「売上が取消されてしまったのでその後のサポートに力が入らず、結局、この取引相手のビジネスも萎んでしまった」と、非公式ながら説明してくれる人もいた(12/17の②-1の不確実性のケース)。蛇足ながら付け加えると、この件で、会社は債権取立ての法的手続を執ることはなかった。

 

これらのケースについては、また次回以降に検討する。

 

 

しかし、実は、我々監査人側のこの考え方には、いくつか問題がある。もしかしたらみなさんもお気付きかもしれないが、売掛金を取消すことで、この取引が不正かどうかが徹底的に追及されなかった。

 

・今なら、内部統制報告書制度や内部統制監査制度があって、不正があれば内部統制の評価に重要な影響がある。したがって、不正かどうかは徹底的な追及が必要だ。それらがないこの時点であっても、不正かどうかがウヤムヤにされたままというのは、内部統制の改善の機会を活かせなかったという意味で、会社にとっても好ましい状態とは言えないだろう。

 

・「回収できる可能性が高くないから、売掛金ではない」というなら、例えば貸倒引当金を90%も計上するような不良債権は、もはや売掛金ではないからB/Sから取り除く必要がある。しかし、実際にはいったん計上した売掛金は、法的に存在する限り、B/Sから除かれることはない。このように、同じ状況のものについて異なる判断が容認される規定は、不正に利用される可能性がある。この件の場合でいえば、「不正が行われたのに隠された」という新たな不正を容認したことになるのかもしれない。

 

売掛金をB/Sから除去するときの規定に合わせるなら、売掛金を計上するときに蓋然性の基準は不要だ。ここまで考えると、この②-2の不確実性において、IASBの提案に、より妥当性があると言うべきかもしれない。

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