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2013年12月31日 (火曜日)

323.DP-CF22)会計上の不確実性~ある件の②-1のケース

2013/12/31

今日は大みそか。したがって、新年にご覧になるみなさんには申し訳ないが、僕はまだ年末の気分で書いていることになる。ただ、僕はどちらかというと、いつも正月気分なので(少なくとも本人はそのつもりなので)、それほど文章に違いはないと思う。ということで、ご容赦願いたい。

 

さて、会計上の不確実性を(資産の)定義や認識規準から除外するというIASBの提案が妥当かどうかを検討するために、“ある件”を材料として提示した(12/17の記事)。ということで、それではさっさと②-1のケースの不確実性をおさらいしよう(ちょっと急いでる感じが年末気分か?)。 会社がある会計期間末に計上した多額のノウハウ等の売上には次の問題があった。

 

相手先がこのノウハウをビジネスにつなげるには、この会社のさらなるサポートが必要であり、その義務を果たすことが、この取引の前提になっているのではないかという疑念がある(契約書にはそのような記述はないが、取引の内容・経緯等に関する担当部署へのヒアリングで得た感触から、このような疑念を持った)。即ち、この取引は、ノウハウを記述したものを受渡せば終わりという単なる物品取引ではない。まだ会社の仕事は終わっていない。したがって、まだ売掛金は発生していない(=売上計上は早過ぎる)のではないか、という疑念があった。(以上、12/17の記事の①-1より)

 

このような状況が起こる理由には、次の2つが考えらえると思う。

 

1.会社の売上に関する会計規準の解釈が誤っている。

 

2.この取引の会計規準への当てはめを誤った。

 

この会社は、(通常の)製品を顧客ごとにカスタマイズする場合は、カスタマイズという作業が終了してから売上計上していた。その作業が不要な場合は通常の検収基準で売上計上していた。我々監査人は、そういう会社の売上基準に対する解釈を適切なものと評価していた。したがって、会社が会計規準の解釈を誤っている可能性はない。しかし、この“ある件”の取引については、会社は後者に該当すると判断して会計処理を行ったのに対し、監査人は前者に該当する可能性が高いと判断した。そして、このシリーズの前回(12/26の記事)の最後の方に記載したように、「その後のサポート不足が原因で売掛金が入金しなかった」旨の証言をした人が社内にもいた。ということは、やはり、この“ある件”は2の方へ該当するのだろう。

 

確かに2については良く経験するし、判断に迷うケースも多い。特にIFRSは原則主義とされているので(最近は結構細かいが)、IFRSを適用すると規準の行間を読むようなことも増えると言われている。すると、今回の記事は、「規準の意味は分かるんだけど、実際に当てはめるのは難しいねぇ~」という問題へ、どう対応していくか、IASBの提案がそういう問題を改善できるかどうかがポイントになる。

 

そこで、IASBの提案にあるシンプルな資産の定義に、“ある件”を当てはめてみよう。

 

現行の資産の定義を簡単に書くと「キャッシュを生む能力+キャッシュを回収できる可能性」の2つの要素からできているが、IASBの提案を受入れれば、「キャッシュを回収できる可能性」の部分が不確実性への言及になるので削除されて、「キャッシュを生む能力」だけになる。とてもシンプルだ。だが、恐ろしいことに、当てはめると、次の通り会計処理の解釈が変わる。

 

契約書や物品受領証がある状況は「キャッシュを生む能力」があると判断できる状況だと思う。即ち、売掛金が計上できる。会社の処理が正しい(貸倒引当金は不足しているが)。

 

なぜなら、契約書があって、異常でも回収条件が記載されており、物品受領証もあるから、キャッシュを生む能力について法的な裏付けとなる権利がある。そして、取引先が小規模で多額のキャッシュを支払える財政状況でなく、キャッシュが回収できるかどうかは取引先の新規ビジネスの成否によるなどという、その先の不確実性まで考えなくてもよい。(なお、契約書等に実態がないケースについては、このシリーズの前回(12/26の記事)、架空取引のケースで検討している。)

 

変わるだけでなく、実に解釈が易しい。「回収できる可能性」などという面倒なことを考慮外にできるのだから、当たり前と言えば当たり前だ(といっても、実際には貸倒引当金を設定する際に考慮するのだが)。だとすれば、IASBの提案は、当てはめの難しさを改善することになる。しかし、これで経済実態を忠実に表現したと言えるのか?

 

というのは、契約書に記載はなくても、この件の取引先は、その後のサポートがあることを契約の前提にしている可能性があったからだ。例えば、IFRSの収益認識に関する新しい公開草案では、収益実現の要件である充足すべき“履行義務”には、口頭による約束も含まれる(2011年公開草案の14(b))。これは、日本でも同様だ。

 

定型的な取引では、契約書に記載がない事項でも慣行から判断できるし、社内ルールも整備されている。しかし、この件のように非定型的な取引については、口頭の約束まですべて把握することがなかなか難しい。また、把握できても、このような事後的なサポートのなかには、その後の販売活動との区分が難しいケースもある。例えば、それほど手間のかからないサポートで足りると予想されるときは、「何かのついでにできますよ」なんて気軽な約束をして、しかし、実はそれが質的に重要だったりすることもありえないとはいえない。

 

ん~、といっても、頻発するものでもない。この件ではたまたま見逃され、しかも、結果としてもキャッシュの回収ができなかったが、通常なら“非定型的な取引用の内部統制手続”が発動されることになる。この件のようなことが起きてしまう可能性は、ゼロではないが、低くなるようコントロールされるはずだ。ん~。

 

ということは、どういうこと?

IASBの提案のようにシンプルな方が運用しやすいということか?

 

何やら嫌な感じがしてきた。僕はIASBのこの提案に疑問を呈しようとしているのだが、前回に引き続き、またしてもIASBの提案でいいじゃないか、という結論になりそうだ。いや、誤解のないよう念のために記載すると、この件に関しては売上の要件を満たしていなかった可能性が高いと思うので、我々監査人の判断が間違ったとは言えない。しかし、一般的に考えると、このようなケースが、会計規準で考慮しなければならないほどたくさんあるわけではなさそうな気がしてきたのだ。但し、定型取引ばかりでなく非定型取引においても、口頭の約束まで把握できる内部統制がしっかり整備・運用されるという前提が必要ではあるが。(これは事後的な顧客とのトラブルを防ぐという意味でも有用な内部統制だ。)

 

いやいや、まさか、こんな形で今年を終えようとは。何か悪い夢でも見ているようだが、早く忘れて、初夢は楽しいものにしたい。今年よ、さようなら。早く去ってくれ。そして、みなさん、明けましておめでとうございます。強引だが、もう正月気分だ。

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