324.DP-CF23)会計上の不確実性~ある件の①のケース
2014/1/7
正月に入って、僕のところでは過ごしやすい陽気が続いている。みなさんのところはいかがだろうか。
一方、株式市場は大荒れだ。なんと昨日、大発会から日経平均が382円(2.3%)も下げた。(本来上昇することが多い)大発会に下落するのは2008年以来6年ぶりだそうで、この年にはリーマン・ショックが起こった。さらに下げた年を遡ると、2001年(ITバブル崩壊)、1998年(日本債券信用銀行や日本長期信用銀行の破綻)も下げていて、それぞれ経済的な大事件が起こった年と重なる(以上、「株をはじめる前に読むブログ」や、その他のネット情報を参考にさせていただいた)。さらにはバブルが崩壊した1990年も下げているとのこと。大発会での下げは大事件の予兆か? なにやら、きな臭い。
但し、1999年も下げたが、そこまでの大事件はないようだ(人によっては、「ジャイアント馬場さんが亡くなったじゃないか!」と言われるかもしれない。確かに色々偉大な人だった)。また、1997年(アジア通貨危機、山一證券や北海道拓殖銀行の破綻)は大事件が起こり始めた年だが上げているし、上記の2001年のITバブル崩壊は主に米国のことであり、日本への影響は軽微だったと思う。やはり、偶然か。ん~、これでは、きな臭いというより、うさん臭いと言われてしまう。
まあそもそも、たった一日の株式相場の上げ下げだけで、不確実な将来が分かるはずがない。しかし、会計はその不確実性を処理しなければならない。企業は不確実な将来にチャレンジし、収益獲得の確実性を高めていく。そこには、たった一日の株式相場の上げ下げ以上の豊富な判断材料がある。(それでも予測が難しいことは多いが。)
ということで、本題に戻りたいと思う。IASBは、不確実性への言及を、概念フレームワークの資産や負債の定義、認識規準から削除し、個別規準に記載される測定方法の中に閉じ込めたいと提案している。僕はそれに疑問を感じ、“ある件”を例にして、IASBの提案を批判的に検討している。今回は、そのうち、①のケースがテーマとなる。①の不確実性とは、次のようなものだった(12/17の記事)。
① 回収が不確実
この相手先は、このノウハウの活用に成功した段階で、支払いの原資が確保できる。或いは、その成功が具体的に見込めなければ、この支払いのための金融機関の融資が受けられない企業規模、経営状況だ。即ち、この売掛金が回収できるかどうかは、その相手先のビジネスの成功如何にかかっているところが不確実だ。
この場合、会計処理としては売上及び売掛金をいったん満額計上するとともに、回収不能額を見積って貸倒引当金も計上することになる(会社は貸倒引当金の見積りを行っていないので、それが修正となる)。これは、資産に将来便益が流入するか否かに関するもの、即ち、全額貸倒引当金を計上する可能性も排除できないので、IASBのいうところの“結果の不確実性”に当たると思う。
ここでは、売上計上と売掛金の回収を分けて考え、売掛金の回収のみに不確実性があるとしている。一方、現行の概念フレームワークの資産の定義は「キャッシュを生む能力+キャッシュを回収できる可能性」の2つの要素を含むので、売掛金を回収できる可能性が低ければ、売掛金という資産自体が成立しないことになる。したがって、現行の資産の定義に従えば、売掛金を計上できないので、上記のような考え方は採用できない。
一方、IASBの提案している資産の定義は「キャッシュを生む能力」のみのため、「キャッシュを回収できる可能性」を考慮せずに売掛金は資産計上される。即ち、売掛金の回収可能性が低くても計上が可能だ。ということは、上記の考え方は、むしろIASBの提案と合っている。
ん~、これは驚きだ。というのは、これを考えているうちに、次のことに気が付いたからだ。
・現行の定義は、売掛金を帳簿から落とす会計実務と合わない。
「回収可能性の低い売掛金は資産ではない」とすれば、一端計上した売掛金でも、債務者の財政状況が悪化して回収可能性が低くなった時点で、資産ではなくなる。即ち、回収可能性の低い売掛金は帳簿から消去しなければならない。しかし、実際には100%貸倒引当金を計上することもある。即ち、回収できない売掛金も、法的に債権が消滅するまでB/Sに残っていたりする。もう、(現行の)資産の定義に合わなくなっているのに。
この会計実務を正当化するのは、現行の資産の定義ではなく、IASBが提案している新しい資産の定義だ。
・僕はIASBの提案を否と思っているのに、当時は①を主張した。
僕に「論理的思考が欠けていた」、或いは、「知識不足だった」というだけのことだが、本人にしてみれば驚きだ。現行の資産の定義がちゃんと頭に入っていれば、①を主張をするようなことはなかったはずだ。この“ある件”では、売掛金の回収可能性が低いことだけは確実だったのだから。
ということで、大発会も大荒れだが、このブログも(僕にとっては)大荒れで始まった。
« 323.DP-CF22)会計上の不確実性~ある件の②-1のケース | トップページ | 325.DP-CF24)会計上の不確実性~ある件のまとめ »
「IFRS全般(適正開示の枠組み、フレームワーク・・・)」カテゴリの記事
- 576【投資の減損 03】持分法〜ドラマの共有(2016.08.16)
- 573【CF4-29】債務超過の優良企業〜ソフトバンクのARM社買収で考える(2016.07.21)
- 572【CF4-28】(ちょっと横道)ヘリコプター・マネー(2016.07.14)
- 571【CF4-27】“債務超過の優良企業”と概念フレームワーク(2016.07.12)
- 570【CF4-26】債務超過の優良企業(2016.07.08)
「IFRS個別基準」カテゴリの記事
- 579【投資の減損 06】両者の主張〜コロンビア炭鉱事業(ドラモントJV)(2016.09.13)
- 578【投資の減損 05】持分法〜“重要な影響力”の意図(2016.09.06)
- 577【投資の減損 04】持分法〜関連 会社、その存在の危うさ(2016.08.23)
- 576【投資の減損 03】持分法〜ドラマの共有(2016.08.16)
- 575【投資の減損 02】検討方針(2016.08.02)
この記事へのコメントは終了しました。
« 323.DP-CF22)会計上の不確実性~ある件の②-1のケース | トップページ | 325.DP-CF24)会計上の不確実性~ある件のまとめ »
コメント