325.DP-CF24)会計上の不確実性~ある件のまとめ
2014/1/10
監査法人を退職した頃のこと、僕は自分が老眼になったことに気が付いて、愕然とした。いま、そのときのことを思い出している。
最初のきっかけは、月食があると聴いて夜空を見上げてみたら、三日月が4~5個も重なって見えたことだった。いつの間に月の数が増えたのだろう。こんな大ニュースを知らなかったなんて。。。一応、そう思ってみたが、頭を傾げてみると三日月の重なり具合も一緒に変化する。ん~、これは月じゃなくて、僕の問題だ。
世間的には些細な出来事だが、僕には大事件だった。目だけは良かったのに。しかし、このときは単に乱視だと思った。そう思うことにした。
その暫く後のこと。国民年金へ加入するために年金事務所で書類を書き込んでいると、どうもペン先が見えにくい。ちょうど良い具合に、「見えにくい方はお使いください」と張り紙があって、脇にメガネが置いてある。「ふ~ん」と思って架けてみると、凄くスッキリ見える。感動して窓口の女性に「このメガネ、凄いですね」というと、笑いながら「老眼用です」という。絶句である。これでトドメを刺された。もう、現実を受入れるしかない。
会計上の不確実性を(資産の)定義や認識規準から削除するというIASBの提案は、僕には無謀なことに思えた。しかし、この“ある件”で検討してみると、どうやらそうではないようだ。少なくとも売掛金という資産に関しては合理性がありそうだ。老眼並みにショックだが、今や、それを受入れざるえない。ということだが、一応、まとめをしておこう。
②-2のケース
不正防止の観点からは、シンプルな規定、売掛金の発生と消滅の両時点での考え方に矛盾のない会計基準が、より好ましい。この点で、IASBの提案は評価できる。
②-1のケース
規準の適用面からは、やはり、シンプルな規準は適用が容易で間違いにくい。現行のように収益認識時に債権の回収可能性まで考慮すると複雑になる。この点で、IASBの提案は評価できる。
①のケース
会計理論面からは、発生と消滅の両時点の考え方が相違しているのはおかしい。この点でも、IASBの提案は評価できる。現行の定義や認識規準では、発生時に回収の確実性の程度によって資産計上の是非を判断させるのに、消滅時の実務では100%回収不能になるまで資産から除去しない。もし、不確実性を定義や認識規準に残したままにするなら、もっと早く資産を除去すべきだ。しかし、それでは現実に存在する資産を帳簿から除去する(しかし、管理は続ける)という実務を増やすことになる。
さて、さらに往生際悪く抵抗を続けるか、それとも、ここで降参するか。
しかし、同じ資産でも研究開発やノウハウを想定した場合、同じ結論に至るかどうか。将来のキャッシュ・フローをもたらす可能性の低いものまですべて資産として認識するのか。それらの価値を測定することが可能かどうか。そうだった、これが問題なのだ。この点を素通りするわけにはいかないだろう。
乱視であることは認めよう。だが、老眼と決め付けるのはまだ早い。
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