326.DP-CF25)会計上の不確実性~のれんやノウハウ
2014/1/15
日本の昔話には、人と動物との関わりがテーマになっているものが多い。例えば、鶴の恩返しや桃太郎、金太郎・・・。しかし、今でもあるらしい。Twitterに、現代のおとぎ話とでもいうべきものがあったので、夫婦喧嘩や株価暴落に動揺して心が波立っている方など、ほっこり、ほんわかしたい方にはご覧いただきたい。これは言わば鶴の恩返しならぬ「ねずみのチョコレート返し」。(すでにご覧になった方はごめんなさい。)
どうだろう、心が安らいだだろうか。「ホントか? 信じられるか!」と猜疑心がこみ上げて楽しめなかった方は、左脳が強過ぎるかもしれない。でも、恐らくACミランのエース、本田選手のような Little boy の気持ちが少し蘇って、クスっと口元がほころんだ方が多かったと思う。
さて、遠回りしてきたが、どうやら無形資産の資産性の議論を整理したいというのがIASBのゴールらしい。血の巡りの悪い僕の頭にも、ようやくイメージが浮かび始めた。不確実性を(資産の)定義と認識規準から削除したいというIASBの提案を言い換えれば、次のようになるのではないだろうか。(少なくとも狙いの一部、しかも大きな部分はこれに違いないと思う。)
① 無形資産をもっと資産計上したいが、評価(=測定)が難しいことがネックになっている(=多くの反論がある)。しかし、資産かどうかと、評価が難しいことは別問題で、区別して考えるべきだ。
② もっと多くの無形資産が新しい資産の定義を満たす。この提案によって、IASBは評価方法に絞って議論を進めることができるので、規準化をスピードアップできる。(IASBは具体的な評価方法を企業任せ、或いは外部評価頼みにするので、評価方法を議論する時間などあまり必要ないかもしれない。)
ちなみに、ここでいう無形資産には、自己創設のれんや研究開発費、ノウハウなどが含まれるが、このうち自己創設のれんについては、会計上の資産として扱うべきではないという立場を目的適合性の観点から採用すると、IASBはこのディスカッション・ペーパーで明らかにしている。(しかし、その他が資産かどうかについては、IASBの判断に任せて欲しいと主張している。)
僕は、売掛金が発生主義の産物であることから最も会計的な資産であるとして、細かく検討してきた。その結果、法的な権利やCashの入金金額のはっきりしている売掛金では、定義や認識規準に不確実性がなくても、いやむしろ、ない方がスッキリして規準の運用もスムーズになると思われた。では、その権利や金額のはっきりしない(自己創設のれんや)研究開発費やノウハウはどうだろうか。果たして、上記のIASBの目論み通り、資産かどうかと、評価の問題を別々に考えた方がスッキリするのだろうか。
僕はスッキリしないと思う。IASBは目的適合性がないことを根拠に、自己創設のれんを会計上の資産から除外したが、そもそも研究開発費やノウハウは自己創設のれんの一部だったものだ。区別はどうするのか? 自己創設のれんが会計上の資産から除外されるのなら、同様に研究開発費やノウハウも除外されてよいではないか? しかし、IASBは、この点をIASBに委ねよと言っている。恐らく新しい規準ができたり、現行規準が改定されると、外部評価や内部統制が新たに必要となるだろう。これらは、財務情報や経営に有用だろうか。ん~、スッキリしない。ゴール・ポストに阻まれた、本田選手のミラン・デビュー戦のシュートのように。
シツコイとか、理屈っぽいとか、お前こそポンコツなくせに左脳が強すぎるとか、言われそうだが、こればっかりは、左脳を働かせねば。そうそう、脳といえば、以前「スウェーデンの女子大生が開発した見えないヘルメット」の記事を紹介させていただいたのを、みなさんは覚えていらっしゃるだろうか(2013/8/9の記事)。リースの公開草案を理解するにあたって発想の転換が必要だったので、その例として紹介した。WSJ(The Wall Street Journal)にその続報が載ったので、最後に紹介させていただく(無料記事)。いよいよ日本でも発売されるそうだ。
スウェーデン社が開発した首に巻く自転車用エアバッグ、日本でも発売へ(1/14)
ポンコツでも守るべきものは守らなければ。
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