327.【番外編】不易流行
2014/1/19
録画してあったNHKスペシャル「ニッポンの若者はどこへ?」(1/11放送)を見て、若い人たちの前向きな感性とその柔軟さに感心した。殺処分される犬に新しい飼い主を探す仕事、季節ごとに色々な仕事をこなす若者、世界の料理を研究する出張シェフ・・・、さらには、コスプレ趣味が高じて事業になるとは。ほんの一部の成功例といえども、我々の社会が“能動的に”変わっていける可能性を感じることができた。
そんな時に、WSJ(The Wall Street Journal)で、1/16付の肥田美佐子さんという方の下記のタイトルの記事を読んだ(無料記事)。
激変する米労働市場―全職種の約半数が20年以内にIT化で淘汰
10日に公表されて、株式市場に衝撃を与えた米国雇用統計。その後の株価の推移をみると、もしかしたら、みなさんは一過性のものと軽くみられるかもしれない。しかし、この方は、その底流に流れる米国労働市場の変化の方向性を、米労働省や、英オックスフォード大学の研究者によるレポートから紹介している。このブログに来られるみなさんは、会計系の方が殆どだと思うが、簿記・会計・監査事務という職種についてもさらりと触れている。なんと恐ろしいことに、今後10年から20年の間に、コンピュータ化・自動化される確率が 98% とされ、淘汰されるリスクの高さは米国の702職種のうち32位という。もちろん、わが国の労働市場の将来にも無関係ではないだろう。関心を持たれた方にはご一読をお薦めする。準備がないと、変化の波を“受動的に”受けることになる。
「大企業なら今でも安定していると思うか?」
この質問を、実際に大企業の中にいる人と、世間一般の人にぶつけたら、その回答には、恐らく相当大きな開きがあるに違いない。大企業でも辞めていく人はたくさんいる。僕は、社会の変化が激しい以上、安定的な仕事など、ほんの一部に過ぎないと考えた方が後悔がないように思う。幸いなことに、上記の番組を見る限り、ニッポンの若者も同様に考えている人が多いようだ。金商法や会社法で法定されている監査という仕事でさえ、過去20年の IT の影響は大きかったし、今後はさらに変化が加速するに違いない。もちろん、IT 以外にも変化の種はたくさんある。
いや別に、将来への不安感を煽ろうというのではない。変化するのは当然で、むしろ、変化しなければ窮屈だ。それに、何もかもが変わってしまうということでもない。
ここで、もう一つテレビ番組を紹介しよう。それは、『BS歴史館 江戸のスーパー変革者(1)「松尾芭蕉~17文字で日本を変えた男」』(BSプレミアム1/17)だ。この中では、芭蕉の「不易流行」という言葉が紹介されている。芭蕉は、俳諧によって当時の文学の価値観に大変革をもたらしたというが、実は、俳諧の本質は既に1000年の伝統のある和歌と同様に「心を詠むもの」としているとのこと。「変化して見える人の世も、その実、季節が巡りくるように何も変わらない」という。芭蕉は、伝統のルールでがんじがらめに縛られた和歌の本質を、時代に合わせてシンプルに解き放ったということだと思う。
会計の世界でいえば、
・財務情報の読み手が何を求めているか(目的適合性)
・どう表現したら経済実態に近づくか(忠実な表現)
を、常に念頭に置いて、どうすべきかを考えている人にとっては、これから起こる変化についても不易流行と思えるに違いない。細かなルールやテクニックばかりを追いかければ、逆に時代の変化に追い付けなくなるのではないか。
今のニッポンの若者は、社会貢献への意識が高いという。僕が同年代のときより高い目的意識を持っているようだ。社会との関わり方、働き方の形式は僕らの頃とは違ってくるかもしれないが、しかし、より社会の不易な部分に近いところにいて、新しい流行を起こしてくれそうに感じる。
おもしろや今年の春も旅の空(芭蕉)
この回のBS歴史館はこの句で終わる。オヤジとしても、変化を楽しむこんな気持ちで、日々を過ごしたい。
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