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2014年2月 4日 (火曜日)

332.DP-CF27)会計上の不確実性~残り物には不確実性が一杯

2014/2/4

今年に入って、株価や円相場などの冴えない経済ニュースが多い中で、生命科学分野では拍手喝さいの大ニュースが駆け巡っている。理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子氏の「STAP(スタップ)細胞」だ。なんでも、『受精卵から、いったん筋肉や血液などの細胞に分化すれば、外部からの刺激では元に戻らないという「生物学の定説」を覆した』のだそうで、『STAP細胞は、皮膚などの細胞に人工的に遺伝子を入れて作るiPS細胞と違い、外からの刺激だけで細胞を受精卵のような初期状態に戻せる』という。また別の研究者は、「ダイレクト・リプログラミング」という方法で、『人の皮膚細胞に遺伝子を入れ、万能細胞を経ずに直接、軟骨細胞に変えることに成功した』という。(以上 ITmediaニュース2/3 人によってはID登録が必要かもしれない。)

 

この他、「癌細胞を正常な細胞に戻す方法を発見」と鳥取大学が発表した。これも画期的だ。(マイナビニュース1/28 広告が出たら右上のスキップ・ボタンをクリック。)

 

もしかしたら本当に、人間は病気や怪我では死ななくなるかもしれない。「どうせ死ぬことはない」と思えば、もっと色々リスクを取れるようになって、“不確実性”に対するイメージも変わってくるかもしれない。しかし、それでも空腹で死ぬことはありえる。やはり経済は重要であり続けるに違いない。

 

ということで、このブログは今回も会計上の不確実性、特に、期間帰属(Cut off)の観点から、のれんという資産の特徴を考えていきたい。

 

 

過去か、将来か。この区別は、会計にとって重要だ。315.CF DP-16)会計上の不確実性~現在、過去、未来(2013/11/29の記事)」では、会計に「過去に拘ってばかりいる後ろ向きな」イメージがあるが、その目指すところは「将来への意思決定に役立つ」ものであることを記載した。では、どうやったらそういう会計になれるのだろうか。

 

僕は、少なくとも、次の2点が必要だと思う(必要条件)。

 

①.基準時点がはっきりしていること

②.その時点の状況がすべて織り込まれていること(もちろん、重要性がない事象は除く)

 

なお、十分条件とするには、「意思決定事項に関係する将来の見込み情報」が必要だが、これは、非財務情報であり、後発事象の注記などの例外を除き、財務会計の対象にならない。後発事象などの決算日以降の情報も、報告日より前に確定した事実に過ぎず、利用者の「意思決定事項に関係する見込み情報」ではない。そこで上記の記事では、このような非財務情報と財務情報の関係を深掘りすれば、もっと意思決定に役立つ開示資料のアイディアが出てくるのではないかと主張した。しかし、今回は、その続きではない。これについてはもう少し時間を頂きたい。

 

これらのうち、①は決算日を見ればよいので明らかだが、みなさんもご認識の通り、②には難しいケースがある。この②のうち、簡単なケースの例は、大量生産品を顧客に販売しているメーカーの売上だ。「顧客への受渡し(或いは、発送)が決算日までに行われたかどうか」で判断できる。では、過去と将来の区別が難しいケースとは・・・

 

 A.収益認識の進行基準や減価償却のような収益・費用金額の期間配分 

 B.見積りが必要となる公正価値の算定

 C.減損会計の使用価値、貸倒引当金のような見積り

 D.のれんの評価(取得時の評価)

 

これらを見て、「難しいのは分かるが、なぜこれが過去と将来の区分に関係するのか?」と思われた方がいらっしゃるかもしれない。一方、「これらは将来要素を見込まなければならないので難しい」と直感された方もいらっしゃるだろう。

 

しかし、後者の方でもDを見て、「支出額(と時価ベースの純資産の差額)を計上すればよいのに、なぜ取得時の評価が難しいのか?」と感じられた方は少くないと思う。確かに、制度上は(日本基準でもIFRSでも)そうなのだが、ちょっと考えると、のれんの評価は、実際には(難しくて)避けられていることが分かる。

 

概要を書くと、のれんの取得価額を決めるときは、M&Aに支出した金額から時価ベースの純資産を控除するが、時価ベースの純資産は、取得する資産・負債を個別に時価評価し積上げる。この過程で、該当すれば、A~Cの手続はすべて行われるものの、Dの、のれんの価値を直接評価することはしない。一番難しいので差引計算で、のれんを評価している。つまり、残り物をのれんの取得価額と見做している。

 

何故難しいのか。それは前回(1/30の記事)も書いたように、将来要素を他の項目に比べて大量に含んでいるからであり、将来要素は不確実性の素だ。したがって、この計算プロセスから「のれんは不確実性が最も高い資産」と、一応、言えそうだ。

 

しかし、だからといって、「不確実性が高いから資産計上しない(=費用処理)」が適切とは限らない。もしそう決めていたら、大型のM&Aは、非常に採用が困難な経営手法になってしまう。だが、実際には、大型のM&Aが成功している例も多い。会計は適切な意思決定を行いやすくするための技術なので、そういう事実を受け止める必要がある。

 

そういえば、生命科学分野では、こんな記事もある。

 

DNA鑑定してもらうべき!? 幸せな結婚と遺伝子の関連性が明らかに(マイナビニュース1/31

 

しかし、恐らく現実に好き同士になってしまえば、遺伝子に関係なく結婚してしまうカップルも多いのではないか。それが資産になるのか、負債を背負込む破目になるのかは二人の努力次第だし、それも人生だし後日測定すればよい・・・と考えて。それとも、遺伝子を理由に止めるだろうか。

 

企業買収のときの経営者は、例えば直前に聞いていたより相当高額でも購入するなど、必ずしも後者とは限らず前者のように見えることがある。しかも、それで失敗するとは限らない。(もちろん、失敗もする。)

 

不確実性が最も高いけど、のれんは(とりあえず)資産計上する。

 

ん~、こうなると益々、現状の実務は「資産の定義や認識規準から、不確実性への言及を削除する」というIASBの主張が、既に反映されているような気がする。「のれんを償却するか、非償却にするか」という問題は、測定の問題だから、測定規準として扱えばよいことだし・・・。う~む・・・

 

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