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2014年2月20日 (木曜日)

339.DP-CF30)会計上の不確実性~進行基準売掛金のケース

2014/3/4 1」及び脚注を追加(収益認識規準の公表スケジュールが遅延したことを追加)。

 

2014/2/20

また“南岸低気圧”が来たそうだ。14日から15日の大雪では、静岡県でも小山町で3000人が孤立するとか、富士宮の牛舎の屋根が落ちて牛が250頭も死んでしまったというが、僕の住んでいるところでは、ついに雪は降らなかった。常に外を眺めていたわけではないが、少なくとも積もってはいない。行きつけの喫茶店のお姉さんは、こういう天気を「寒いだけだね」という。これには「雪が見られるなら寒さも我慢するが、結局雪は降らなかった」という期待外れの気持ちが込められている。しかし、被害を受けられた方々にしてみれば、大変なことだ。今回の“南岸低気圧”は、進路が南に逸れたらしい。大雪でなくて、何よりだ。

 

さて、前回(2/18の記事)では「混迷を脱した」と宣言させていただいたが、やはり道程は平坦ではない。しかし、だからこそ新しい発見を期待できる。と気持ちを奮い立たせて、今回は「進行基準売掛金」に焦点を当てていきたい。

 

 

前回も書いたように、確定した請求権というイメージの一般の売掛金と違い、進行基準による売掛金は不確実性が高いように感じられる。まだ財・サービスの提供中であり、それが完成・完了したら支払われるという見込みを根拠に、現時点で発生・実現したと思われる収益の見積額を資産計上するからだ。日本基準に慣れ親しんでいる我々には当然の感覚と思う。したがって、「何らかの事情により、もし、完成・完了に至らなかったら?」というリスクがあるため、一般の売掛金より不確実性が高いことになる。

 

 

まず、この「進行基準売掛金の不確実性の高さ」について、IASBとASBJのそれぞれの主張がどのように影響するかを予想してみよう。

 

IASBの主張では、不確実性が高い・低いは、認識の問題ではなく測定の問題なので、取敢えず資産計上(=認識)する。そして、その計上額を決める測定の段階で、リスクを考慮することになる。なお、不確実性が非常に高くて、回収がゼロとなることもありえるような状況(=存在の不確実性のある状況)は、IASBが予め個別規準で規定する場合以外はないと見做される。さらに、重要性(目的適合性に含まれる)で企業が判断して計上しないことは許容されていない。したがって、進行基準売掛金はプロジェクトのスタートと同時に、必ずすべてが資産計上されることになる。

 

一方、ASBJは、存在の不確実性があるケースを、あらかじめ想定・特定・網羅し、IASBが規準に明記するのは困難と考えている。その代りに蓋然性の基準を設けて、一定レベル以上の確実性があるかどうかを企業に判断してもらう。したがって、企業の判断で資産計上を見送ることがありえることになる。

 

 

では、2011年公開草案「顧客との契約から生じる収益」(以下「2011ED」と記載)において、進行基準がどのように規定されているかを概観しよう。これによって、どちらの考えが進行基準売掛金にフィットするか、より具体的に理解できるはずだ。なお、この公開草案が基になる新規準も今年の第1四半期に公表される予定(1)で、多分、現行のIAS18号「収益」は2016年一杯でお役御免になる予定。

 

IFRSの収益認識規準は、日本でいうところの“検収基準”のイメージに近い。しかし、我々がイメージするような“検収基準”であるならば、そこに進行基準が含まれることはありえない。ところが2011EDでは、進行基準をも“検収基準のようなものの枠組み”に入れてしまおうといった感じの規定になっている。(その分進行基準が適用される取引の範囲は狭まると思う。)

 

原則は、「財・サービスの移転による履行義務の充足」が収益を認識する要件だ。これだけ見ると“検収基準”のように見えるが、そこに「履行義務を充足するにつれて収益認識をする」というパターンを組込んでいる(2011ED.31)。この部分がいわゆる進行基準に当たる。

 

この 2011ED の進行基準の特徴を概観すると以下のとおり。

 

・選択適用ではない。取引の契約内容や経済実態が進行基準の要件に該当するか否かを、契約開始時に判断し、該当するなら進行基準の適用を決定する。(2011ED.34

 

・その要件は次の通り(いずれかに該当すれば進行基準の適用となる)。(2011ED.35

 

 財・サービス提供をするやいなや、それが顧客に支配される。

 

 その顧客以外に転用できない財・サービスであり、かつ、次の1つ以上の条件に該当する。

 

・履行の都度、顧客が受領する(主にサービス提供を想定していると思われる)。

・顧客が途中で供給者を変更しても、やり直しが生じない。

・途中までの請求をやろうと思えばできる(顧客に補償を請求する形でもよい)。

 

 

ここまで読んで、みなさんもお気付きかもしれない。2011ED の進行基準は、我々のイメージとちょっと違う。我々のイメージでは、「完成・完了することを前提とした見込額」を計上するが、2011ED は、期末時点で請求可能な金額を計上する。即ち、完成・完了は関係なく、進行基準であっても、回収がほぼ確実な金額が資産計上されるのであり、初めから不確実性の高いものは排除されている(要件を満たさないものは、一般の売掛金として、履行義務を充足した時点で全額一括計上される)。即ち、IFRSの進行基準売掛金は、一般の売掛金と確実性が大差ない資産になることが予定されていることが分かる。う~む、これはまずい。

 

ということで、IASBとASBJの主張の違いを、具体的な資産、進行基準売掛金で明らかにしたかったが、残念ながら、2011ED を前提にすると進行基準売掛金も不確実性の程度が一般売掛金と大きく変わらないので、その目的を達成できなかった。

 

「それなら、2011EDではなく現行のIAS18を検討対象にすれば良かったではないか」とみなさんは思われたかもしれない。確かに、現行のIAS18の進行基準であれば、日本基準とほぼ同じなので、この目的に合っていた。ただ、上述の通り、収益認識はもう新規準が公表間近だ。このディスカッション・ペーパーが形になって概念フレームワークが改正される頃には、恐らくIAS18はもうなくなっている。残念だが、それと比較しても意味がない。

 

或いは、もしかしたら、「目的は達成できなかったが、新規準における進行基準の考え方が一つ明確になった」と感じられた方がいらっしゃったかもしれない。が、残念ながら新規準では、上記の 34 項や 35 項は変わっているかもしれない。したがって、新規準が公表されたらもう一度内容を確認する必要がある。

 

 

「前回『混迷脱出宣言』したのに、相変わらず進路が定まってないじゃないか。」

 

もしかしたら、このようにお怒りの方もいらっしゃるかもしれない。そういう方は、次のリンクをご覧いただきたい。僕の気持ちをご理解いただける。

 

https://twitter.com/densya_dame/status/435202550472527872/photo/1

Twitter にアカウントをお持ちでない方もご覧いただけると思う)

 

“台風”じゃなくて、“南岸低気圧”だったらもっとピッタリだった。

 

 

 

1

2/25 に受け取った「IASB Update」では、収益認識規準の公表スケジュールが「2014 Q2」にずれていた。(上記の「今年の第1四半期に公表される予定」という記載は、この記事を記載した時点のIFRS財団HPの情報に依った。)

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