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2014年3月13日 (木曜日)

347.DP-CF36)公正価値~最有効使用と不確実性

2014/3/13

最近は、世界が狭く感じられることが多い。例えば、インターネットでは(言語の問題さえ克服できれば)世界と繋がれるし、Skype のように個別のコミュニケーションもできる。東日本大震災では世界中から義捐金(=義援金)が寄せられたし、フィリピンの台風被害のように日本からも外国へ義捐金を送る。

 

しかし、そんな中で、久しぶりに「まだまだ世界は広いなあ」と感じさせるニュースがあった。マレーシア航空機の消息不明事件だ。8日に 238 人を乗せ、連絡を絶ったままレーダーからも機影が消え、その後近隣諸国も捜索に協力しているのに、まだ所在が明らかになっていない。理由は、捜索範囲が広すぎるからだという。

 

これに対し、日本も自衛隊機派遣を決めた。消息不明の航空機に 150 人以上の自国民が搭乗していた中国政府から、間接的ではあるが謝意が示されたという(3/12 ロイター)。これで思い出されるのは、昨年末の国連南スーダン派遣団に参加している自衛隊が、同じ活動をしている韓国軍の要請に応じて銃弾1万発を提供したときの韓国政府の反応だ。謝意どころか「政治利用している」と強い遺憾の意が日本政府へ伝えられた(2013/12/25 日経無料記事)。

 

僕は、韓国政府の反応を批判したいのではなく(もちろん、残念な反応だと思うが)、同じような人道的なサポートであっても、相手の反応は一様でないことを強調したい。良い、悪い、を言っているのではない。相手はそれぞれ異なる状況を抱えており、それに応じた反応をする。色々な考え方を持つ政府がある。ある意味、世界は広いのだ。それを「人道的サポートだから」と一括りにすると、思わぬクレームを頂戴する。

 

同じように、市場参加者も、色々な反応をする可能性がある。僕は“市場価格”というと、需要と供給が一致した価格なので、みんながそれで取引するというイメージを持っていた。したがって公正価値もそういうものと思っていたが、どうやら、それは狭い見方のようだ。

 

前回(3/11の記事)記載した公正価値を見積る際の“最有効使用の仮定”は、市場参加者の多様性を認め、誰が一番高く購入するかを想定する。その結果、見積られた公正価値は、いわゆる均衡価格や平均価格ではない。売却可能な最も高い値段だ。そのために、市場参加者をそれぞれ異なる個性・属性を持つものと見る。市場参加者の平均像ではなく、個別の姿を捉える。ある意味、市場を広く、深みを持ったものとして捉えているように思う。

 

但し、一番高く買ってくれるその相手は他社であり(当たり前だが)、その他社の考え方や状況をすべて把握できることはない。そのため、“最有効使用の仮定”を使うにあたっては、想定したその他社の考え方や状況が外れる可能性を考慮する必要がある。そう、“不確実性”だ。したがって、公正価値を見積るためには、“不確実性”が必須の考慮事項になる。

 

上記の韓国政府の反応は、不幸にもこの不確実性が実現してしまった例といえるかもしれない。「リスクへの対応には、リスクの回避、低減、移転、受容又はその組み合わせ等がある(企業会計審議会「内部統制の枠組み」平成19215日)」とされるが、日本政府の対応はどれだったのだろう。僕は正直びっくりして思わず眉間に皺がよったが、政府までが「考慮外の反応でびっくりした」というのでは心許ない気がする。

 

前回、WhatsApp 社のケースを深掘りすると予告したが、それは次回へ繰越させていただく。

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