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2014年3月18日 (火曜日)

349.DP-CF37)公正価値~秩序ある取引

2014/3/18

クリミア半島住民によるロシア編入の是非を問う住民投票は、開票率 75% の段階で 95.7%が賛成したという。(3/17 朝日) 投票率は 83% と、意外と高い。(3/17 ロイター) 但し、いずれもクリミア自治共和国の選挙委員会の公表値であり、第三者によるチェックが適切に行われているかは不明だ。一応、国際監視団はあるが、本来その役割を果たすべき「欧州安全保障協力機構;OSCE」(リンク先は外務省HPは、ウクライナ憲法に反するとして参加を拒否した。(3/12 読売) ちなみにOSCE は、かつてヤヌコビッチ氏が大統領に当選したときの選挙でも監視団を派遣し、敗れた対立候補のティモシェンコ氏(親 EU 派)に敗北を受入れるよう促すなど(2010/2/9 ロイター)、権威がある組織だ。

 

欧米が国際法違反と言い、ロシアは完全に合法と言っている。15 日(NY 時間)、国連安保理では、クリミア住民投票の無効を宣言する決議案が討議された。無効の根拠は「ウクライナ政府が是認しない住民投票だから」だそうだ。結果は、理事国 15 か国のうち、13 か国の賛成を集めたが、拒否権を持つロシアの反対により否決された。中国は棄権した。(3/16 産経

 

この産経ニュースによれば、討議のあとロシアの国連大使は次のように述べたという。

 

われわれは(クリミアの)住民の意思を尊重する

 

そういえば、“民族自決の権利”なるものを、学校で学んだ。みなさんもご記憶にあると思う。これにより、多くの国が植民地支配を脱して独立を果たした。この権利は、水戸黄門の印籠のように、正義の光で輝いている印象がある。というわけで、実は、僕はロシアの主張の方が分かりやすい。みなさんはいかがだろうか。

 

しかし、15 か国中 13 か国が無効決議に賛成しているのだから、なにか理由があるのだろう。ということで、記事を探してみると、下記の記事に当たった。

 

[FT]クリミア住民投票は違法(社説)3/14 日経無料、Financial Times 翻訳)

 

ここでは、次の4つのポイントを挙げている。

 

1.ウクライナ憲法に違反している。

 

73 条で、ウクライナの国境は“全土の”国民投票で決まると定められているそうだ。即ち、クリミアだけの住民投票では国境を変えられない、クリミア共和国は独立できないということだ。

 

なるほど、これが無効決議案の「ウクライナ政府が是認しない」に意味を与えているのか。しかし、この憲法第 73 条は実質的に民族自決権を否定しているのではないか。そもそも、この憲法が国際法に違反しているのでは?と思えてしまう。

 

ちなみにこの記事でも、ロシア側の違法ではないとする法解釈?を紹介するとともに、過去の例はそれぞれの状況に左右されるとしている。最終的には、国際社会の判断が重要になるようだが、それに影響を与えるのは、残りの3つなのだろう。

 

2.ロシア軍の威嚇

 

ロシアの軍事的プレッシャーの下では、市民の自由意思による投票は期待できないとしている。

 

3.ロシア系住民の弾圧なし

 

コソボ紛争のときの“民族浄化の犠牲”ようなものはないとしている。

 

4.ロシア政策の矛盾

 

チェチェンの独立を弾圧している一方で、クリミアの独立を支持するのは矛盾している。

 

独立運動は世界中にあるが、ヨーロッパでは、みなさんもご存じのように、英国のスコットランド、スペインのカタルーニャ地方、バスク地方(一部フランス領にもかかる)が話題になる。

 

スコットランドでは、英国政府の協力の下、今年 9 月に住民投票が予定されている。最近は、そのまま英国ポンドを使い続けられるかとか、EUにそのまま加盟できるかといった論点が話題になっていた。しかし、確か英国もEUも、スコットランドにつれない対応をしていたように記憶している(独立後ポンドは使えない、EU加盟手続も特別扱いされない)。

 

一方、スペインでは、カタルーニャが今年の 11 月に住民投票を予定している。しかし、スペイン政府は憲法違反を理由に阻止しようとしている。カタルーニャはEUに助けを求めたようだが、やはり、EUはつれない対応だったと思う(スペイン政府を支持)。

 

どうやら、民族自決権は、ケースバイケースらしい。水戸黄門の印籠とは違うようだ。また、EUの立場は、“不介入”で一貫しているように思う。

 

基本的には、独立問題は当事者間、即ち、その国と独立を目指す地域との話し合いで解決するということのようだ。即ち、原則として国内問題だ。しかし、もしそこに人権弾圧や民族差別のような問題があれば、民族自決権を国際社会が後押しする、というイメージに思えてきた。

 

ということで、このイメージで、改めて、クリミア問題を考えてみると・・・

 

・クリミアの独立は、クリミアが独立するまでの間は、基本的にウクライナの国内問題。よって、ロシアの介入は独立国に対する侵害。しかも、軍事力を使っている。したがって、FTの社説の2の指摘は、選挙結果を歪める可能性を高めるし、それ以前になぜそこにロシアがいるのか、という問題になる。

 

・外国の介入が正当化されるには、クリミアにおける重大な人権問題が発生しているなどの国際社会が理解できる理由が必要。上記の3の指摘の状況では、ロシアの介入の正当化は困難。

 

・外国が介入するにしても、誰が介入するかが問題になる。国連か、EUか、CIS(=独立国家共同体。旧ソ連 15 か国のうちの 12 か国で構成)か。ロシア単独介入が国際社会から認められるには高いハードルがあると思うが、上記4の指摘のように、チェチェンと正反対の対応をしていては、理解は得られない。特に、独立後にクリミアをロシアに併合しようというのだから、下心が見え過ぎる。

 

ということにならないだろうか。

 

もし、この理解で正しいとすると、欧米の主張や無効決議の意味も分かってくる。国内問題なので、ウクライナ憲法が重要になるし、人権侵害などの重大な問題がない場合は、他国の干渉は余計なお世話ということになる。

 

考えてみれば、一地域が独立するのは協議離婚のようなもので、色々な経済的なものや精神的なものの取扱いを決めなければならない。当事者による長期間に渡る冷静な話合いが必要になるだろう。たった2週間後の住民投票で、すべてを一方的に決められるようなものではない。今回のロシアの介入は、離婚協議の場に浮気相手が刃物をちらつかせて座っているようなもので、これじゃ、ウクライナの立場はない。やはり、肩を持つならウクライナだろう。

 

 

う~む、今回は、公正価値の“秩序ある取引”の仮定をテーマにしようと思っていたが、話が全く逸れてしまった。ここから本題に入ると、非常に長文になると心配される方がいらっしゃるかもしれない。しかし、なるべく簡潔に記載したい。まず、“秩序ある取引”についてIFRS13号の記載(用語の定義)を紹介しよう。

 

秩序ある取引(orderly transaction

 

当該資産又は負債に係る取引に関する通常の慣習的なマーケティング活動ができるように、測定日前の一定期間にわたる市場へのエクスポージャーを仮定する取引。すなわち、強制された取引(例えば、強制清算又は投売り)ではない。

 

ぱっと読んで「エクスポージャーってなに?」と思われた方が多いと思う。この言葉が全体の意味を難しくしている。しかし、実際は難しいことはないと思う。「exposure」とは、晒すとか陳列するなどという意味で、商品を店の棚に並べておくことをイメージすればよい。全体としては、「通常なら売却できる十分な売込期間を想定する」という意味だと思う。それが、強制清算や投売りを想定から除外することに繋がっている。

 

この売込期間は、対象となる資産(や負債)によって異なり、例えば、事業を売却するなら、金融商品を売却するより相当長い期間を想定することになる。また、金融商品でも組成が複雑な合成証券は、金融危機のような特殊な時期には評価に時間がかかることがある。例えば、リーマン・ショック後の金融危機で、一部の金融商品市場が機能マヒして、適切な資産評価ができないことが問題になった。通常は豊富な取引量があるのにそれが著しく低下し、たまに成立する取引や気配値を参考にして無理して評価すれば、投売価格や強制清算を仮定したような価格しか付けられなくなってしまった。このような場合、明らかに合理的に価値があるはずなのに、評価額はそれを著しく下回ってしまう。そういう時には、単純に市場価格を公正価値にするのではなく、調整することを要求しているのが、この“秩序ある取引”の仮定だ。

 

しかし、「どのようになったら秩序を失ったと判断するのか」は難しい。単に、市場価格が急落したというだけ、取引量が急減したというだけでは、秩序を失ったとはされない。しかし、そうなった理由は判断材料になる。例えば、観察された著しい低価格の取引が、清算会社の管財人によって行われたためだったなど(IFRS13.B43 に例示列挙されている)。そういう判断材料がない限り、秩序を失ったと判断することはできない(IFRS13.B44(C)BC181)。

 

したがって、「秩序を失った」という判断は、安易にできないレア・ケースになる。正直言ってかなりハードルが高いと思う。どのくらい高いかというと、ロシアのクリミア介入の正当性を証明するくらい、即ち、離婚協議の席に浮気相手が同席することが正当化されるくらい、と思っておいた方が良いと思う。

 

但し、たまたま、そういう情報を入手している場合は「秩序を失っている」と判断し、必要な調整を行わなければならない(B44最終段落)。

 

最後に、もう1点付け加えさせていただきたい。この“秩序ある取引”の仮定は、市場が混乱して取引量が激減したようなケースを扱っているが、逆に、バブルで通常ではありえないような高価格がつくケースを扱っていない。僕が思うには、これも市場が“秩序を失う”一つの形だと思う。例えば、WhatsApp 社の買収価格は、過去に急成長してきた米国のIT業界が包まれている強気と熱気のなかで、Google 社と競ったバブル的な価格ではなかったか。これについては、再三予告している「WhatsApp 社が、もし、自己創設無形資産を計上するとしたら」の検討の中で扱ってみたい(かするだけだが)。

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