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2014年4月22日 (火曜日)

358.CF-DP44)会計上の不確実性~まとめ

2014/4/22

「売却可能なノウハウや研究、データ」の公正価値については、3/28 の記事から始まった。だが、そもそもこの公正価値シリーズは、自己創設無形資産の資産性に関する検討の一部として 2/27 の記事 から始まったもので、さらに言えば、会計上の不確実性を考える一部であった。この会計上の不確実性をテーマに据えたのは、もう遙か以前、昨年のことだ(2013/10/31 の記事)。

 

なんて、自由なんだろう。

 

みなさんは、“ん?”って感じだろう。しかし、僕は自由を満喫している。これが監査であれば、自分の興味であちこちつまみ食いはできない。みなさんの仕事や勉強と同じだ。いやいや、つまみ食いどころではない、それぞれ時間をかけてしっかり食べてしまった。相当メタボになっている。これが監査であれば、予算制約、時間制約があるので、自分の担当範囲の監査調書を仕上げるために、自分の興味を抑制しなければならない。こんなメタボなことをしていたら、監査先から監査契約を打ち切られてしまう。ところが、今、僕にはそういう制約がない。

 

しかし、それに付き合わされるみなさんは大変だろう。「ひとつひとつ、ケリを付けてくれ!」とおっしゃるに違いない。もっと遡る『296.CF DP'13】「概念フレームワークのディスカッション・ペーパー」シリーズ開始』(2013/10/7)以来、“ケリ”らしい“ケリ”を付けることができていないのだから。(こんな昔の記事、もう、覚えている人もいないか・・・。)

 

こんな書き出しになったのは、今回、久々に「売却可能なノウハウや研究、データ」をまとめ、ケリを付けようと思うからだ。いや、そればかりではない。上述の通り、昨年 10/31 に不確実性をテーマに据えたが、そこまで遡ったまとめができそうな気がする。そのために、ちょっとここまでの流れを振返ってみよう。・・・と思ったが、「そんなまどろっこしいことは止めて、早く結論を述べよ!」、そんなみなさんの声が聞こえたような気がしたので、そうさせていただく。

 

1.IASBは、B/SやP/Lから不確実性を追い出そうとしている?

 

2.追い出された不確実性のリスクは、注記からもはみ出す?

 

3.結局、リスクは経営者・投資家が負う?(適正表示の枠組みなら監査人も同様だろう。)

 

ん~、こんな疑問形ではまだ結論になどとすることはできない。結論は、次の通りだ。

 

不確実性は“会計”が直面する大問題だが、“会計規準”にとってはほんの脇役、端役程度でしかない。よって、不確実性の程度・リスクの評価については、会計規準に頼らず、経営で解決してくれ! by IASB.

 

ということではないかと思う。日本基準では債権評価、非上場株式の評価など、会計基準が不確実性の程度やリスクの評価方法を示してくれている。果たしてこのIASBの姿勢は良いことか、悪いことか。少なくとも、僕は突き放されたような気がしてかなりショックだ。

 

 

IASBは、概念フレームワークの資産等の定義、認識規準から不確実性の記述を削除し、個別のIFRSの測定規準でのみ扱うようにしたいと提案している。ところが個別のIFRSでは、従来から、不確実性を設例に与件の確率として記すなどという軽い扱いであり、個別規準で直接的・積極的に扱う様子はあまり見られない。恐らく、個別のIFRSでは「不確実性やリスクを考慮せよ」というだけで、どうやって、とか、どの程度といった具体的な記載、こうやったらいいというような具体的な手順は、今後も示されないのではないだろうか。

 

それが意味するところは、経済実態を判断する責任は経営者にあるということだ。もっと言えば、経済実態を判断できるのは、唯一、経営者であるということだろう。(或いは、銀行業のように他の基準 (=BIS基準 ) があるので、重複を避けるという意味もあるかもしれない。現行では重複しているが、今後、IFRSの方が退いていくのではないか。)

 

では、経営者が判断したら、すべて認められるのか。IASBは性善説か?

 

恐らく違う。IFRSとしては“目的適合性”と“忠実な表現”という2つ基本的特性を定めれば足り、それ以上会計規準で扱う必要はないと考えているのだろう。会計規準よりは、監査制度や、日本でいえば金融商品取引法の経営者の情報開示責任の問題、会社法の善管注意義務とか民法の不法行為責任の問題、或いは、投資家が経営者を見る目を肥やすことで軽減できる問題と考えているのではないだろうか。

 

一方、経営者に対しては、日頃から不確実性を定量的に扱うよう暗に期待しているのではないか(或いは、欧米企業の経営手法は、既にそうなっているのかも)。決算時の経理処理だけで、即ち、経理部の能力だけで、こんな高等技術が磨かれ、高い目標が達成されるとは思えない。日常の経営の中に不確実性の評価を客観的に行う思考・仕組みを明示的に仕込まないと、IASBが期待するような精度で不確実性を定量化できないのではないだろうか。

 

将来の目標と現実とのギャップに不確実性が存在する。その不確実性をひとつひとつ識別し、固定化していく作業は経営そのものだから、不確実性を評価し、コントロールする能力・技術を磨くことは経営能力の向上に資することになる。これは意外と経営にポジティブな影響があるかもしれない。

 

ただ、すべての不確実性をコントロールするわけではない。そこには自ずと優先順位が求められ、優先順位を決めるために重要性の判断が行われる。そう、不確実性の評価には、重要性の判断がつきものだ。重要な課題は対処されるが、重要でないものは無視される。会計規準に関係なく保守主義があるように、IASBがすべての資産・負債を計上せよと規定しても、その前に企業が重要性の判断を行う。なぜなら、会計以前に不確実性の定量化に重要性の判断が不可欠だから。

 

不確実性とリスクは、表裏一体だ。だから、不確実性の定量化とは、リスク管理の一部だ。

 

日本の内部統制報告書制度には“リスク・アプローチ”が採用されたが、この“リスク”はちょっと焦点が違う。本来経営にとっては、将来の不確実性に対応する体制を向上させることこそが重要であったはず。即ち、“リスク評価と対応”こそが、直接的に最も重要な内部統制であり、これが会計上の見積りの精度にも大きく、強く影響する。しかし、“制度”では会計上の不正防止や間違い探しに焦点が当てられた。それはそれで重要だが、内部統制報告書制度の実践の中でそれが強調され過ぎたきらいがある。そのため折角の機会だったのに、本来の意味でのリスク管理の重要性が正しく認識されなかったかもしれない。

 

また、日本の内部統制報告書制度では、損失に対するリスク管理しか制度の対象に含めていない(実施基準は「組織目標の達成を阻害する要因」をリスクと定義している)が、それでは公正価値測定の内部統制が対象から漏れてしまう可能性がある。公正価値測定では利益が発生することもある。例えば、M&Aで取得するのれんや無形資産等の価値が正しいかどうかは、損失に対するリスク管理の内部統制だけでは保証できない。M&A時点ではまだ存在しない、買収会社と被買収会社の協働により実現が期待されるシナジー効果による将来収益の見積りが根拠になるからだ。前回まで見てきたような研究プロジェクトも、将来収益の見積りが公正価値測定の対象となる。これは利益管理の範疇だ。

 

とはいえ、企業は“制度対応”も重要だが、それ以前に経営の高度化を絶えず進めていく必要がある。制度とは関係なく、重要なものは重要として、独自の改革が求められる。IASBは、明示的に何も求めてはいないものの、そこに含まれる意味を、(IASBが意図するとかしないとかに関係なく)企業が汲み取っていくことが重要だと思う。僕は、そういう意味で、不確実性を会計規準の主役から脇役・端役へ引きずり下ろそうとする概念フレームワークのディスカッション・ペーパーの提案は、「企業のリスク管理を強化せよ」というメッセージだと理解した。このディスカッション・ペーパーによる提案が通れば、不確実性と重要性は、会計規準では軽く扱われるようになるが、企業経営にとっては相変わらず主役であり続ける。

 

ところで、従来、財務諸表の本表で表現できないリスクの開示は注記で行われてきたから、今後も注記でより詳細に開示することになるか?

 

どうやら、そういう方向ではないようだ。というのは、(ご存じの方も多いと思うが)IFRSは注記が多過ぎると財務諸表作成者などの関係者に注文を付けられているからだ。このディスカッション・ペーパーでも、「注記の重要性は作成者である企業が判断し、企業が注記を省略できる」という提案がなされている。日本基準では一部業種しか該当せず、それほど大きな扱いではない“リスク感応度の分析”の注記も、IFRSでは一般的な規定となっており、すこぶる評判が低いらしい。

 

従来、作成者側から見て「リスクは開示することで解除される」とされ、なかにはどうでもよいようなものまで開示してきた。有価証券報告書のリスク情報などは良い例だ。しかし、これは過去のものになりつつあるのかもしれない。むしろ、「量ばかりたくさんの書き過ぎはダメ」、「重要なものだけ書く」という雰囲気のようだ。IFRSでは今後、企業は、「自己の事業にとって本当に重要なものだけを分かりやすく書く」という基本に立ち戻ることが求められるようになると思う。恐らくIFRSにおける注記の量は減っていくが、何を書くかを選択する権利を与えられる企業の責任は減らないということだ。

 

 

さて、これで、このディスカッション・ペーパーの“不確実性”については、一応の締めとしたい。「自己創設のれんはなぜ資産計上しないか」といったテーマには、重要なのに整理がついていないが、それはまた追々検討させていただく、ということで勘弁願いたい。実は、このブログの累計アクセス数が、本日(4/22)、十万を超える見込みだ。それをきっかけに、実にキレの悪かった“不確実性”とそろそろお別れをし、次のテーマに進みたいと思っている。

 

ここで再び、みなさんは“ん?”かもしれない。この画面の右肩にアクセス・カウンターがあるが、まだ十万にはちょっと遠い。

 

実は、この表示は間違っていて、ココログのサポートに対応をお願いしているところだ。この数日間、日付が変わるたびにアクセス・カウンターがリセットされ「99001」に戻ってしまってるらしい。しかし、手元の集計では 4/21 24:00 現在、累計アクセス数が「99,969」となっている。あとわずかで十万だ。ということで、本日アクセスされるどなたかが、十万番目のアクセス者になる。

 

358 本の記事に十万アクセスということは、各記事に均して、数百のアクセスがあったことになる。もちろん、間違って来てしまった方もいるので、すべての方が記事を読んでいるわけではないが、それにしても、こんな自由な、勝手気ままなブログにこれだけアクセスがあったとは驚きだ。

 

アクセスしていただけると励みになる。みなさんに感謝したい。これがテーマ・パークなら、十万番目の方には記念品でも差し上げるところだが、残念ながら、僕にはそれが誰なのか分からない。その代り、これからもアクセスしていただけるよう、みなさんの興味を惹く記事を書く努力を続けると、お約束申し上げる。

 

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コメント

you use disallowed a designer to make the style? Superb vocation! ekdefkeefkec

Pharmc936 さん、コメントをありがとうございます。
おそらく、お褒めいただいたんだろうと解釈いたしました。
とてもうれしいです。

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