360.CF-DP45)純損益と OCI ~昭和の日にスタート
2014/4/29
今日は“昭和の日”。2007 年(平成 19 年)より“みどりの日”が 5/4 に移動し、4/29 は祝日のまま、名称が変わった。祝日法には『激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす』と書いてある(内閣府HP)が、この“復興”とは“戦争の焼け野原からの”という趣旨だろう。確かに、僕のように戦争を直接知らない世代は、言われないと昭和を“戦争と復興の時代”とイメージすることは難しい。むしろ最後の頃の“お立ち台で扇子を振るワンレン・ボディコン女子”の印象が強烈で、“昭和=バブル時代”が先に浮かぶ。
考えてみると、昭和と戦争を自然に結びつけてイメージできるのは、戦前・戦後の混乱期を体験している高齢の方々か、昭和を先入観なく教科書で習った若い世代だ。ということは、“昭和の日”は我々のようなその間の世代のためにあるのかもしれない。
とはいえ、(我々の頃もそうだったが)学校では近代史を教えないという。中国や韓国は教科書の記述を問題にするが、そもそも、何が書いてあろうが生徒は知らなかったりする。中国や韓国が外交問題にするので、ニュースとして知る生徒の方が多いのではないか。しかし、これは正常ではない。こんな国の一大事をちゃんと習わないなんて。
何故学校では教えないのか。
僕らの頃は、「時間がないから」とか「入試に出ないから」などと先生が言い訳していたのを覚えている。教えようにも「定説がない」、だから「入学試験にも出ない」、「(試験に出る)もっと前の時代に時間をかける」ということかもしれない。
僕は田原総一朗氏を尊敬している。そして氏は、しばしば「日本は戦争の総括をしてない」と言われる。しかし、これに関しては、僕はピーンとこない。“総括”の意味が分からないのだ(“総括”というと、昭和 40 年代の過激派の内ゲバ事件が先に頭に浮かんでしまう)。「どうすれば“総括”になるの?」と思っていた。しかし、近代史を学校で教えない理由を考えていたら、どうやら「総括してない=定説がない」、「総括しないと定説が生まれない」ということではないかと気が付いた。
となると、“定説”を作れるようにしなければならない。しかし、「“戦争の定説”ってどいういうこと?」とまた疑問が浮かんでくる。「戦争を定義すれば良いのか?」と思った時に、ハタと閃いた。「自衛戦争と侵略戦争の線引きができればよいのではないか」、「明治以降の戦争を分析して自衛と侵略に分け、今後その一線を超えないための教訓にできるといいなあ」と。
そういえば、最近話題の“集団的自衛権”の議論が、いまいち噛み合わないのも、「やってはいけない侵略戦争とは何か」、「自衛と認められるのはどこまでか」が明確でないことに原因があるように思う。ん~、しかし、グレーゾーンが広すぎて、そんな線引きはできない、或いは、やっても意味がないだろうか。
そろそろ、みなさんは不安を感じられていると思う。「純利益とその他の包括利益(Other Comprehensive Income 以下 OCI と記載)の話はどうなっているのか」と。「また、悪い癖が出たか」と。
そうそう、今回から“純利益と OCI”という新しいシリーズだ。確かに“侵略戦争と自衛戦争”とは全く関係がない。強いて共通点を挙げれば、「1つのものを2つに区切ることが問題」というところか。
このディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」では、この区切り方について3つの考え方が提示されているが、ASBJの webcast を聴くと、現在IASBではまったく異なる切り口の議論がされているようだ。要するにまだ混沌状態といって良いと思う。
1つものを2つに区切ることは想像以上に難しい。即ち、損益或いは利益を、純利益と OCI に区分するのは難しい。ところが良く考えてみると、難しいのは“純利益”の定義だ。OCI は“その他”即ち“純利益以外の損益”なのだから、純利益を決めれば OCI も決まる。しかし、ASBJは実に面白い、全く異なる発想の提案をIASBに対して行っている。
みなさんは、意外に思われるかもしれない。今まで散々使い古してきたはずの“純利益”を決められないなんて、そんなことがあるのかと。いままで業績を表すとされていた“純利益”とはなんだったのか? そもそも、“純利益”を計算することが会計の目的ではなかったのかと。それが混沌としているなんて・・・。
これは、単なるP/Lの表示区分の問題に納まらない、意外に根深い、奥深い問題だ。経営者の通信簿の在り方についての考え方や、会計リテラシーの違いともいうべき根本問題が横たわっているように思う。
このブログでは、淡々と、ディスカッション・ペーパーの考え方の紹介、ASBJの webcast から、ASBJ案や(IASBで関心を持たれている)その他の案の紹介をしていこうと思う。但し、その前に、なぜ純利益と OCI の区分が問題なのか、どうしてこの問題が生じたか、というところから始めたい。それは次回から。
会計については、ロンドンに本拠地を置く国際組織のIASBで議論が始まった。戦争についても国際組織を置いて“定説”を追求できないか。もちろん、本拠地は日本に置いて、まずは日本の近代史を材料にして。日中韓だけでなく、もっと広く人材を集めて「国を守る」ことの意味を深められたら、世界と日本の未来に大きな貢献ができるように思う。もっとも、「そんなことは他人(外国人)に決められるものではなく、日本人が自分で決めるものだ」と怒られそうな気もするが、それが未だにできないのだからしょうがない。誰かこの組織にお金を出してくれる日本人の大富豪がいると良いのだけど。ん~、日本に大富豪なんていないか?
復興要素がないので“昭和の日”の趣旨には合わないが、そんなことを夢想した。
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