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2014年5月22日 (木曜日)

364.CF-DP48)純損益とOCI~OCIリサイクリング

2014/5/22

昨日は、またしても黒田日銀総裁の会見中に円高が進んだ。追加金融緩和の可能性に触れなかったためだという。報道によれば、101 10銭ぐらいに市場参加者が共有する“一線”があり、これを超えて円高が進むと、さらに円高に振れやすくなるという。

 

このような“一線”があるのは便利だ。判断の助けになる。スポーツでも、サッカーならボールがゴール・ラインを超えてゴール・マウスの内側に入れば得点になるし、相撲なら土俵を先に割った方が負けだ。明確な線であればあるほど、みんなに分かりやすい。会計の世界でも、多くの人の判断に役立つように、純損益とOCIの間に“一線”を設けようと苦心している。が、難航している。

 

今回と次回は、その難航の象徴ともいえる問題“リサイクリング”について、このディスカッション・ペーパー『「財務報告に関する概念フレームワーク」の見直し』(以下、DPと記載する)の第8章に記載されている内容を紹介したい。

 

 

ところで、“リサイクリング”ってなに? と思われている方もいるかもしれない。“資源のリサイクル”といえば、資源を「再利用すること」だ。会計上の意味も同様で、いったん計上した利益にちょっと手を加えて再計上することだ。「え~っ、そんなことしたらダメでしょ」と驚かれた方の感覚は正しい。だから、規準に記載のある限定された取引にしか認められないし、リサイクリングを禁止すべきという意見も根強くある。実務をやられている方はご存じのとおり、実際には、利益の平準化につながる可能性はあるものの、「一粒で二度おいしい」みたいなことはないし、OCIの内訳を管理したり、税務調整や税効果会計に手間のかかる厄介な面が多い処理だ。

 

具体的には、リサイクリングは、いったんOCIに計上したものを、改めて純損益に組替調整する会計処理であり、対象となる取引には退職給付会計の数理計算上の差異(IAS26)や、有形固定資産について再評価モデルを採用した場合の評価益(IAS16)、有効なキャッシュフロー・ヘッジにおける公正価値の変動(IAS39)などがある。

 

さて、IASBは、「リサイクリングがない場合には、純損益は他の合計又は小計と内容の相違がないことになる」(DP8.23)と述べている。即ち、純損益が売上総利益や営業利益より重要なのは、“リサイクリングがあるため”と認識している。このため、もし「リサイクリングは不要だ」と決められるのであれば、純損益を概念フレームワークで定める必要はなく、個別規準で扱えば足りるとしている。

 

ん~、リサイクリングが純利益に重要性を与えてるのか。どういうこと?

 

ひとつには、リサイクリング項目が、上記のリサイクリング項目の例のように複数規準にまたがっていることもあるだろう。複数規準にまたがる項目は、規準間の整合性を図るためにも概念フレームワークで扱う可能性が出てくる。しかし、より重要な理由は、IASBが純利益の重要性を認識したためだと思う。リサイクリングが重要というより、純利益が重要なので、純利益とOCIの間の一線が重要であり、それには、両者を組替調整するリサイクリングの理屈付けが重要なのだ。

 

しかし、前回(5/21 の記事)も記載したように、IASBは純利益を会計理論上重要とは考えていない。ただ、財務情報の利用者が、包括利益より純利益を重用しているという現実を見て、純利益の存在価値を見直しただけだ。そのせいか、純利益がなんであるかを直接議論するのではなく、リサイクリングについて詳細に議論し、それによってOCIの性質を炙り出し、結果的に純利益の内容を決めようとしている。包括利益からOCIを控除すれば純利益が求まる。前々回(5/14 の記事)記載したように、包括利益にはかっちりした定義がある。あとはOCIが決まれば、純利益も自ずと定まるという考えだ。

 

すると、「重要なのはリサイクリングに関するこのDPの詳細な議論の内容を理解すること」ということになる。ところが、どうやらDPへコメントでは、このIASBの議論があまり評価されなかったようだ。じゃあ、この議論はあまり重要じゃないってことになる。同時に、リサイクリングについてだけでなく、純損益とOCIの間に一線を引く議論の方向性を、まだ固められないということにもなる。難航しているのだ。

 

僕が思うに、より重要なのは、「財務諸表の利用者が重用している現実」に重きを置くのか、それとも、「会計理論としての純利益の重要性」に拘るのかの違いにあるような気がする。前者の典型は、このDPに対しFASB(米国)の委員から個人的に提出された意見で、これが通れば前回記載したように純利益が変質していくことになる。一方、後者の代表はASBJ(日本)が提出した意見だ。両者の純利益観は全く違うし、必然的にリサイクリングに対する意見も相違する。

 

今後の展開を想像すると、これらの典型的な意見のとちらかをそのままIASBが採用するのではなく、両者の良い点を取り入れられるように議論が進んでいくのではないか。少なくともASBJはそういうスタンスに違いない。するとその過程で、IASBの議論が部分的に再浮上してくるかもしれない。まったく無視もできないか。

 

ということで、次回はIASBのリサイクリングに関する議論を一応紹介することにして、FASBとASBJの意見はその後ということにしたい。

 

 

今回はちょっと短めの記事になったが、それじゃ物足りないという方のために、下記を紹介する。

 

思わず笑ってしまったテレビのテロップ画像

(ガールズちゃんねる 2013/9/4~)

 

但し、注意点が2つある。ひとつは、予め何分読むかを決めてからリンクをクリックしていただくこと。5分なら5分と決めておかないと、いつの間にか時間が過ぎていく。もう一つは、声をたてて笑わないこと。周囲の人に怪しまれないようお気を付けいただきたい。しかし、堪えても顔が緩むのはどうにもならない。

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