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2014年6月 3日 (火曜日)

367.CF-DP50)純損益とOCI~橋渡し項目

2014/6/3

昨日の日経平均終値は 14,935.92円、303 円高と大幅上昇した。これは 4/4 15,063.77円以来、約2か月ぶりの高値圏だ。昨日上昇した理由は次のようなものらしい。

 

 1.先週末の米国株高(といっても、NYダウはわずか18ドル高に過ぎない)

 2.円相場の下落(といっても、大引 15 時の比較で40銭ほどの円安にしか過ぎない)

 3.1日発表の中国製造購買担当者景気指数(PMI)の改善(前月の 50.4 から 50.8 へ僅かに改善)

(以上は、日経の国内株式概況の記事に、具体的な数値を拾って加えた。)

 

5/22 の記事の冒頭で触れた黒田日銀総裁会見中に円高に振れた件は、一端、一線を越えたものの、欧州市場・米国市場と時間が進むにつれ円安に転じ、翌日には元のレベルへ戻ってきた。そして、日経平均はそのときから 600 円も上昇したのだから、ようやくこの勝負は黒田総裁の“勝ち”ということで決着したのかもしれない。マーケットは「日銀の追加緩和は不要」という黒田総裁の主張を受入れ(て降参し)たのかもしれない。

 

ただ、米国の金利が“不思議と”低下したままで、最高値圏にある米国株式相場の上昇を抑制している。これは、債権投資家は経済の不調を予想し、株式投資家は経済の好調を予想していることを意味している。このようなケースの8割は債権投資家が正しいという専門家の意見を、WSJ 6/2 の記事は紹介している。米国株式相場は最高値圏にあるものの、取引は閑散としているそうで、少々おっかなびっくりな感じなのだろう。米国株式が下落は、ようやく反転上昇を始めた日本株のリスクとなる。

 

市場では、こんな具合に色々な人が様々な角度から予想して、需給の一致した点で価格が決定すると考えられている。とはいえ、何とも不安定な感じも受ける。この不安定さを「参加者が多いことの証であり、むしろ、信頼できる。」と考えるか、それとも「不安定は不安定でしょ。市場価格など一時的な妥協点に過ぎない。」と引いてみるか、この考え方や見方の違いが、今回のテーマに大きく影響しているように思う。IASB(やFASB)は、前者の見方をしている。

 

 

(橋渡し項目 ‘bridging items’)

 

“橋渡し”というのは、B/SとP/Lの橋渡しという意味で、B/Sでは公正価値ベースの測定を行い、P/Lでは原価ベースの測定を行うようなケースで、両者に差異が生じる。IASBは、その差異部分を“橋渡し項目”と呼んで、OCIに計上するとしている。具体的には、次のようなものが挙げられている(DP8.2)。

 

・満期保有の債券等(IFRS92012EDに提案されているもの)

 

より正確には“OCIを通じて公正価値で測定する金融資産”と表現されるものであり、具体的には次の2条件を満たすものが該当する(IFRS9 2012ED 4.1.2A)。

 

・契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて、資産が保有されている。

 

・金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。

 

上記に該当する金融資産は、まずP/L上は償却原価ベースの損益が計上されるが、B/S上は公正価値で計上される。両者の差額はOCIに計上される(と提案されている)。

 

・再評価モデルを採用した有形固定資産・無形資産(IAS16IAS38

 

これらの項目は、必ずしも毎期公正価値評価されるわけではないが、簿価が公正価値と大きく変わらない程度の頻度では再評価が実施される。同時に毎期減価償却も行われる。すると、P/L(=減価償却費)は原価ベース、B/Sは公正価値ベースとなる。そして、両者の差額(但し、評価益のみ)をOCIに計上する。

 

但し、上記のP/L計上額は、公正価値への再評価額を取得原価と見做して減価償却を実施するため、正確な原価ベースの減価償却費ではない。橋渡し項目に含めるには、現在のIAS16号や38号の規定を変更して、当初の取得価額をベースに減価償却するよう改める必要があるとされている(DP8.75)。

 

上記の他、次のものも、候補に挙げられている。

 

・保険契約(2013ED

 

・探査及び評価資産(IFRS6

 

・確定給付退職年金制度の資産及び負債(IAS19
  但し、現行規程では橋渡し項目には当たらないとされている(
DP8.73DP8.74)。

 

・投資不動産(IAS40

  但し、現行規程では再評価損益は純損益に計上しており、OCIではない(DP8.95 8.4)。

 

 

市場価格でB/S項目を測定するのは、期末時点の財政状態を表現する方法として分からないでもない。しかし、期中に獲得した利益や発生した損失を計算・表示するP/Lに、期末日に生じた評価損益をそのまま計上して良いものだろうか。冒頭に記載したように、市場価格は企業の内部要素や経営者の意思決定と離れたところで決まることも多いし、この先、上がることもあれば下がることもある。

 

僕なら、売買有価証券であっても公正価値測定による期末評価損益は、“橋渡し項目”として、OCIに計上すると主張するかもしれない(減損損失は純損益だが)。期末時点に多額の評価益があっても、それをまだ獲得したわけではないと思うからだ。恐らく僕は、市場価格というものをあまり信頼していないのかもしれない。

 

しかし、IASB(やFASB)は、純利益を「企業が自らの経済的資源に対して得たリターンに関する主要な指標」と考えているのに、売買有価証券の評価損益を純利益に計上する。これも期中に獲得したリターンと考えている。市場価格に対する信頼が厚いのに違いないと思う。

 

いやいや、まだ結論を出すのは早い。まだ“ミスマッチのある再測定”、“一時的な再測定”があるからだ。しかし、“橋渡し項目”に上記しか挙がっていないのは、OCI及びリサイクリング項目の範囲は、なかなか狭そうな気がする。これは、“純利益”に対するイメージの相違をも示唆していると思う。

 

 

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