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2014年6月13日 (金曜日)

370.CF-DP53)純損益とOCI~一時的な再測定

2014/6/13

今回のテーマは“一時的な再測定”。英語では‘transitory remeasurements’。‘remeasurements’の方は、“リ・メジャメンツ”ということで、“再測定”であることが分かる。一方、‘transitory’の方は、僕には聞き慣れない単語だ。しかし、“トランジット”といえば“乗り継ぎ”のことだから、“トランサトーリ”も、最終目的地に至らない、まだ、長い旅の途中にいるような感じだろうか。

 

まだ事象が確定していない、決着していない。固まるのはずっと先。でも決算が来たから評価しなくては。

 

この単語からは、そんなイメージが湧いてくる。

 

 

(一時的な再測定 ‘transitory remeasurements’)

 

ということで、今回の“一時的な再測定”は、IASBの3つのアプローチを紹介した 5/30 の記事に記載したように、アプローチ2B において、“橋渡し項目”や“ミスマッチのある再測定”と共にOCIを構成する。しかし、リサイクリングをするかどうかはIASBが基準開発時に個々に判断するとされている。即ち、“一時的な再測定”としてOCIに計上された項目のすべてが、リサイクリングの対象になるわけではない。

 

IASBは、“一時的な再測定”について、“橋渡し項目”や“ミスマッチのある再測定”ほど、純損益から除外する根拠が明らかではなく、ものによっては一旦OCIに計上したら純損益に振戻さなくても、資産が生み出すリターンの状況を表現し損なうことはないと考えているようだ。

 

“一時的な再測定”の説明に際して、IASBは次のような見方を紹介している。(DP8.86

 

・・・、一部の長期の資産又は負債の再測定は純損益の外で反映するのが最も適切であるという見方である。この見解を有する人々の考えでは、それらの項目の長期的な性質と、その結果としてインプット(割引率など)の小さな変動への感応度が高いことにより、再測定が、将来のリターンについての予測力が低いか、又は場合によっては、純損益の中の情報を不明瞭にしたり理解を困難にしたりするものとなるおそれがある。

 

即ち、一部の固定資産や固定負債の評価損益は、次のような点で、純損益を分かりにくくしているという見方だ。

 

・長期に渡って使用される資産、果たされていく義務であるため、決算のたびに評価損益を計上するのはおかしい。

 

・評価に利用される割引率などの指標のちょっとした変化が、多額の評価損益を発生させるのはおかしい。

 

この見方には、親近感を感じられる方が多いのではないだろうか。市場価格は絶えず変動している。上昇もすれば下落もするし、それが繰返される。それに応じて、長期性資産・負債について毎期評価損益を計上し、純損益をブレさせるのは、企業のキャッシュ・フロー獲得能力を分かりにくくし、企業の将来像を見えにくくしている。こんな意見を、IASBが取上げたと考えられなくもない。本当にそうなら、大久保選手を日本代表に選出したザッケローニ監督の決断のように素晴らしい!

 

問題は、どうやってそういう事象を識別し、純損益から除外していくかだ。これについてIASBは、“一時的な再測定”を、次のような特徴を手掛かりに識別すると述べている(DP8.88)。

 

・・・、アプローチ2B では、ミスマッチのある再測定と橋渡し項目の使用に加えて、収益及び費用の項目が次の特徴のすべてを有している場合にはOCI に認識することをIASB は検討すべきだと提案している。

 

(a) 資産の実現又は負債の決済が長期間にわたり行われる。

 

(b) 当期の再測定が、資産又は負債の保有期間にわたり、すべて元に戻るか又は著しく変動する(いずれかの方向に)可能性が高い。

 

(c) 当期の再測定の全部又は一部をOCI に認識することにより、企業が自らの経済的資源に対して得たリターンの主要な指標としての純損益の目的適合性と理解可能性が高まる。

 

この3つは並列的な条件ではないと僕は思う。ある会計事象に (a)(b) の特徴を見出すことは比較的簡単で、多くの人が同じ答えを出せる。だが、(c) は抽象的なので判断が必要だ。人によって判断が分かれる可能性が高い。そして、その判断は、IASBに委ねられることになる。喩えて表現すれば次のようになるのではないだろうか。

 

この3要件に合致すれば自動的に“一時的な再測定”になるというのではない。(a)(b) の2要件に該当するものをまな板に載せて、そこからIASBが美味しそうと思うものを (c) によって厳選する。

 

この点をIASBは次のように記載している(DP8.89)。

 

・・・8.88 項に列挙した特徴のすべてを有し、IASB OCI に認識すべきだと判断する項目を、総称して「一時的な再測定」と呼んでいる。

 

では、具体的にどのような項目が“一時的な再測定”とされているだろうか。それを見れば、“厳選”の程度が推量できるに違いない。しかし、残念ながら、このDPの表 8.3 や表 8.4 に挙げられた個別項目を検討し、IASBの判断の内容を探っていくことは、次回としたい。

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