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2014年6月19日 (木曜日)

371.CF-DP54)純損益とOCI~一時的な再測定“確定給付債務(純額)に係る再測定”

2014/6/19

“史上最強”は悪夢の前兆か。この言葉、中田英寿選手、高原直泰選手や稲本潤一選手を擁したドイツ大会の日本代表チームを評して使われていたが、このブラジル大会の直前にも聞かれた。そして、ドイツ大会と同様、今回も初戦を落とした。みなさんもご存じのとおり、W杯の初戦で敗れた場合、過去の SUMURAI BLUE はすべて第一次リーグで敗退している。

 

みなさんは、もう、あの試合のことは忘れて次のギリシャ戦に目を向けていらっしゃるだろう。「自分たちのサッカーができなかった」と語る監督や選手たちは、既に“なすべきこと”を理解し、取組んでいるに違いない。

 

このチームはメンタルも強い。プレッシャーに押潰されるようなことはないと信じている。「初戦に敗れても、決勝トーナメントに進出する」という新しいページを開き、さらに、文字通り“史上最強”の結果を出すことを、僕は、思いっきり、期待し続けようと思う。

 

ん、「当たり前じゃないか! 分かり切ったことを書くな!!」という声が聞こえてきそうだ。では、当たり前じゃないことを一つ。やはり、6/7 の記事に記載した通り、「先制点はくれてやる」のは良い作戦だと思う。そして、守りに入った相手を攻立てて疲れさせるのだ。

 

しかし、この作戦はコロンビア戦にとっておこう。というのは、ギリシャは得点力がないので、先取点を取らせるのに時間がかかり過ぎてしまうからだ。それでは、攻立てて相手を疲れさせる時間が無くなってしまう。だからギリシャ戦は最初から徹底的に攻めまくって欲しい・・・ん、これでは当たり前の作戦か?

 

 

では、(気を取り直して)今回の本題に。

 

前回(6/13 の記事)記載したように、IASBは、“一時的な再測定”を次の特徴で識別するとしている。

 

(a) 資産の実現又は負債の決済が長期間にわたり行われる。

 

(b) 当期の再測定が、資産又は負債の保有期間にわたり、すべて元に戻るか又は著しく変動する(いずれかの方向に)可能性が高い。

 

(c) 当期の再測定の全部又は一部をOCI に認識することにより、企業が自らの経済的資源に対して得たリターンの主要な指標としての純損益の目的適合性と理解可能性が高まる。

 

しかし、これでは抽象的過ぎるので、具体的にどのような項目が“一時的な再測定”とされているか、DPに挙げられた項目を見てみよう。これで前回記載した“厳選”の程度が分かるはずだ。このDPの表 8.3 や表 8.4 の中から、今回は、確定給付年金制度に係る負債(=年金資産と退職給付債務の純額)の再測定を取上げる。これについては、このDPにおけるIASBの書き振りが、ちょっと、というか、とても難しいが頑張ってみよう。IASBの判断は次の通り。

 

(確定給付退職年金制度に係る負債の再測定(概ね、数理計算上の差異)・・・IAS19

 

これは、“橋渡し項目”として扱う候補のリストにも挙げられていた(6/3 の記事)。しかし、現行規程のままでは“橋渡し項目”ではないとされていた。一方で、“一時的な再測定”として扱うのは、現行規程のままでも問題ない。但し、リサイクリングについては否定されている。なぜだろう。今回、この点を深掘りしてみようと思う。それにより、IASBが上記の (c) をどのように判断しているかについて、より深く触れられるように思う。

 

橋渡し項目とは、6/3 の記事で説明した通り、B/SとP/Lで測定規準が異なる場合に生じる差異のこと。例えば、B/Sが公正価値なのにP/Lが原価ベースいう場合の差異。

 

IASBは、再測定による変動額を上記 (a)(b)(c) に該当すると判断し、OCIに計上することを認めている。(a)(b) に該当することは容易に理解できるので、説明は不要と思う。しかし、問題は (c) だ。IASBは、(c) に該当する理由を次のように記載している(DP8.90)。

 

再測定は将来キャッシュ・フローの不確実性とリスクに関する情報を提供し、それらの不確実性とリスクを財政状態計算書に反映する。しかし、再測定が当該キャッシュ・フローの可能性の高い金額及び時期に関して提供する情報は少ない。したがって、再測定をOCI に認識することにより、それらの各項目の予測価値の間の相違が透明となり、それらを予測価値がより高い純損益の項目と区別し、純損益の理解可能性を高めることになる。

 

早速分かりにくいので、僕流の解釈で記載する。

 

「純損益は“資産が生み出すリターンを示す主要な指標”」であることが求められている。そしてそれは、次の2つに役立つことが期待されている。(この2つは、概ね、同じことを別の表現で言っていると考えて良いと思う。)

 

・将来キャッシュ・フローの可能性の高い金額及び時期に関して提供する情報になること。

 

・予測価値の高さ。

 

予測価値については、現行の概念フレームワークの QC8 に次のように説明されている。

 

財務情報は、利用者が将来の結果を予測するために用いるプロセスへのインプットとして使用できる場合には、予測価値を有する。

 

数理計算上の差異の変動額は、この2つの期待に合わないので、資産を生み出す主要な指標となるべき純損益に含めず、OCIに計上するという考え方に、IASBは理解を示している。即ち、割引率や死亡率、年金選択率、昇給率等々の仮定の変化による再測定値の変動は、会社業績の予想に役立たないことが多いことに、IASBも共感している。

 

一方で、このOCIをリサイクリングの対象とすることには否定的だ。その理由を以下のように述べている(DP8.9192)。

 

一時的な再測定がリサイクルされるのは、リサイクリング調整が、リサイクリングにより財務報告に加わるコストと複雑性を正当化するのに十分な目的適合性のある情報を提供する場合だけである。したがって、IASB は、OCI に含まれるそれぞれの具体的な種類の一時的な再測定を扱う基準において、これをリサイクルすべきかどうか、及びいつすべきかを決定することになる。

 

例えば、確定給付負債の純額の再測定について、運用可能であるとともに目的適合性のある情報を提供するリサイクリングの適切な基礎を識別することは困難である(8.73 (b)参照)ため、IASB は、それらの一時的な再測定をリサイクルすべきではないと判断する可能性がある。

 

簡単にいえば「手間がかかり過ぎるし、やっても意味のあるリサイクリング額を計算できない」と言っていると思う。これは、日本で考えられていることと非常に大きな開きがある。

 

ちなみに上記引用文中で参照されている“8.73 (b)”は、数理計算上の差異が橋渡し項目ではない理由を説明しているところで、その理由は次のようになる(原文は表現が難しくて分かりにくいので、次の記載は相当“意訳”している。厳密に知りたい方は、ASBJのHPに掲載されているDPをご覧いただきたい)。

 

() 純損益としてP/L計上される費用(日本基準式に言えば勤務費用や利息費用)は、毎期首再設定される割引率等の影響を受けた見積額であり、かつ、非常に長期に渡ってB/Sの負債へ累積され残存する。したがって、このB/Sの負債額(=純損益に計上された費用の累積額)がなんであるか、明確に説明することは困難。

 

() OCI(日本式に言えば数理計算上の差異に当たるものが累積計上される)部分に、実際の給付支出する金額と過去の見積額との差額が累積されるはずだが、この差額を実際に算出することは手間がかかり過ぎてできないか、見積るにしても恣意性が入り過ぎる。

 

これでも、まだまだ難しい・・・。そこで、さらに僕の勝手な解釈を入れると次のようになる。

 

(退職給付に係る負債の構成)

       
 

=B/S=

 

 

 

 

 

退職給付に係る負債

 

= 負債の現在
    価値

 

 

 
 

=P/L=

 

(上記ⅰ)

 

純損益(累積額)

 

    

 

(上記ⅱ)

 

OCI(累積額)

 

(=再測定による現在価値変動の累積額)

 

 

 
 

=P/Lの内訳=

 

・勤務費用や過去勤務費用

 

・利息費用

 

 

 

・数理計算上の差異

 

・制度資産に係る収益等の変動額

 

 

 
 

=IASBのコメント=

 

各期首の予定割引率で算定されるなど、原価ベースでも時価ベースでもなく、期ごとに算定基礎が変わる説明不能な費用の累積額。

 

見積将来キャッシュ・フローと実績収支(=退職給付・年金給付などによる支出や資産運用益の実績)との差額を算出することは実務上困難。

 

 

IASBは、確定給付退職金制度に係る負債(純額)について、上記(ⅰ)と(ⅱ)の両方を合算しないと、説明可能で意味のある金額(=現在価値)にならないと考えている。P/L側の都合で(=割引率等の変動の影響が企業業績に大きな影響を与えないようにするため)、純損益とOCIに区分して計上するようにしたものの、その結果、B/Sに計上されたそれぞれの累積金額は、訳の分からない説明不能な金額になってしまったと考えているらしい。即ち、「(ⅰ)と(ⅱ)は合算すれば、現在価値という意味を持つが、各々単独では説明不能」と考えている。

 

さらに・・・

 

リサイクルするには、いくらリサイクルしたらよいか適正な金額を決めなければならない。通常この金額は、あるべき金額と実際の残高との差額を求めればよい。しかし、このような説明不能な金額のあるべき金額など求められないし、何らかの分析をしようにも複雑すぎて手に負えない。したがって、IASBは「リサイクルしようにもできないし、やる意味もない」と主張している。

 

ということではないかと思う。

 

これに対し、僕は次のようなイメージを持っていた。みなさんはどうだろうか。恐らく、日本基準に慣れ親しんでいると、こういうイメージを持ちやすいと思う。

 

イ.純損益に計上された費用は各期における最良の費用発生額の見積りである一方で、B/Sには負債の現在価値を計上する。ならば、OCIに計上された数理計算上の差異等は、B/SとP/Lの測定方法の違いによる差異だから、橋渡し項目そのものではないか。

 

ロ.OCIを定額法のような規則的な方法で純損益に戻入ればよい(=リサイクリング)。

 

極めてシンプルだ。これで良いではないですか!

 

とはいえ、IASBの上記意見とその緻密さを理解したうえで改めて考えてみると、このイメージはいかにもラフだ。しかし、ラフでも良いものは良い。逆に、IASBが細かいことを考えすぎているのではないか。では、細かく考えすぎている相手を説得するには、どうしたらよいのだろう?

 

それを考えるのに、もう一つ問題がある。スムージング(=利益の平準化)に対するIASBの厳しい姿勢だ。日本で一般的に考えられているように、甘くはない。

 

IASBは、スムージングを嫌う。粉飾の一形態と思っているからだ。そして、の方法にはスムージングの効果がある。したがって、定額法が経済実態を反映しているという説明がつかない限り、この方法は利益の平準化と見做されて、受入れられないと思う。

 

ということで、「数理計算上の差異が、一定期間に、一定のパターンで解消される」という合理的な説明 ~ 少なくとも固定資産の減価償却方法の選択と同レベルの合理性を持った説明 ~ ができるかどうか、という問題もある。IASBに、OCIに計上した数理計算上の差異等についてリサイクリングの適用を認めさせるのは、相当、ハードルが高そうだ。

 

 

う~ん、ちょっと話が逸れすぎたので、元へ戻そう。

 

冒頭の (c) の判断をIASBがどのように行っているかを、なるべく具体的に知りたいと思って深掘りしてみたが、分かったのは、リサイクルしないという判断は「実務上できないし、意味がない」という「純損益とは何か」という問題とは全然違う次元の理由であったということだ。残念ながら、これではIASBが考える“純損益”或いは“OCI”を、より深く理解することにはつながらない。無駄骨だったか?

 

ただ、ちょっと興味を惹いたのは、過去勤務費用の扱いだ。過去勤務費用こそ、冒頭の (c) に該当するのではないか。しかし、純損益に計上されるので、OCIではないし、このDPでもまったく触れられていない。そこで、もう少し過去勤務費用について考えてみると、過去勤務費用は退職給付制度自体の変化により発生するものなので、(a) には該当するが、(b) には該当しない。

 

即ち、IASBは、「単なる一時的な変動に過ぎず、予測価値がない」という理由だけでは、その項目を純損益から排除しない。「その項目が、今後も変動の可能性が高い見積り上の仮定や条件によるもの」でなければ、OCIとは考えないということらしい。これで、一つ、IASBが考える“純損益”と“OCI”の具体的な線引きのイメージが見えた気がする。

 

 

どうやら、退職給付に係る負債の再測定に関しては、期待通りの成果をあげられず大きな空振りに終わったが、かろうじて過去勤務費用によって救われた。危なかった。おまけに、この項目のDPの記載ぶりは分かり難くてとても苦労したので、もし得るものがなかったら、コートジボワール戦に続き大きな喪失感を味わっていたはずだ。が、一応、一生懸命考えた甲斐はあって、ホッとした。これで、心置きなく、明日のギリシャ戦へ集中できる。

 

 

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