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2014年7月24日 (木曜日)

378.CF-DP60)純損益とOCI~その他の“一時的な再測定”項目

2014/7/24

みなさんもご存じのように、最近、株式市場や為替市場などの金融市場のボラティリティ(=価格の変動率)が非常に下がっている。昨日の日経平均は14円安の 15,328 円となったが、取引時間中の最高値と最安値の差がたった58円で、1年7か月ぶりの値幅の狭さだったという(日経電子版有料記事 7/23)。

 

「ボラティリティが低いと投資機会が得られず儲からない」と嘆く投資家も多いらしいが、僕のような門外漢からすると、市場価格が安定しているのは悪くない。もちろん、理由があって変動するのはあるべき姿だが、企業や一国の経済、通貨の価値が、一日で1%も(東証一部の時価総額は約450兆円だから、その1%は4.5兆円)、しかもしょっちゅう動くのは信じがたい。

 

最近では今年1月に“新興国通貨危機”で日経平均は8.5%下落したが、そのとき時価総額は40兆円も減少した。なんと、東日本大震災の被害額(原発除く)の倍だ。「そんな簡単に富が増えたり減ったりするのか?」と思ってしまう。むしろ、最近のように安定している方が、市場価格は信頼性できる気がする。公正価値へ重きを置くIFRSの信頼感も、その方が高まるのではないだろうか。

 

 

さて、このシリーズの前回(376. 7/16の記事)では、ずるずる3回にも亘った“有価証券の一時的な再測定”シリーズに終止符を打った。残る“一時的な再測定”項目として、このディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」(以下、“DP”と記載)に挙げられているのは下記の2つがあるが、こちらについても、そろそろ、終止符を打ちたい。

 

・資産除去債務等の長期性引当金の変動・・・IAS37

 

・収穫前の生物資産の公正価値の変動・・・IAS41

 

ちなみに後者の生物資産については、JICPAのホームページ(7/1付)にあるように、「IASBが、果実生成型植物の会計処理に関してIAS16号とIAS41号を修正」しており、この種類の生物資産は“一時的な再測定”の条件である“長期性”がなくなって、この議論の対象外となった。但し、育成期間が長期となる林業、畜産業、養殖業などの生物資産は、決算ごとに公正価値で再測定され続けるので、依然として“一時的な再測定”項目だ。

 

 

今回は、シンプルにIASBの記述を転記して、それについて分析するパターンにしたい。

 

(長期性引当金)

 

-IASBの記述(DP8.4)-

 

引当金は長期の性質のものとなる可能性があり、これは、市場ベースのインプット(割引率など)の小さな変動が、当期に認識される再測定に重大な影響を与え得ることを意味する。これらの再測定(例えば、割引率の変更の影響)の諸側面は、引当金の存続期間にわたり著しく変動するか又は元に戻る可能性が高い。これらの項目を区分してOCI に認識することは、再測定の他の内訳項目(例えば、コストの増加)の影響の理解可能性を高めるのに役立つ可能性がある。しかし、当初認識時に認識する損失を事後の再測定と異なる方法で扱うことは不整合かもしれない。

 

引当金残高の変動を、その会計上の見積りにおける市場価格要素(の一部)とそれ以外に分解し、前者についてOCIへ計上することを想定している。どうやらIASBにも、(一部の)市場価格要素の変動は企業業績にとってノイズになるという認識があるらしい。この点については、僕だけじゃなく、みなさんの多くの方も、同じ感覚ではないだろうか。

 

一方で、最後の一文では「でも、結局純損益でしょ」と言われているような気がする。なぜなら、僕は会計規準で工夫できる問題と思うからだ。例えば、割引率の変動により計上したOCIは、時の経過による巻戻しのタイミングでリサイクリングすれば、問題にならないのではないかと思う。それを敢えて指摘したところに、IASBの「簡単にはリサイクリングを認めませんよ」という“構え”があるように感じられる。(そうはっきり書いてあるわけではないので、あくまで“感じる”に過ぎないが。)

 

 

(生物資産)

 

-IASBの記述(DP8.4)-

 

生物資産は長期である場合があり、これは、市場ベースのインプット(商品価格や割引率など)の小さな変動が当期に認識される再測定に重大な影響を与え得るが、一定期間にわたり著しく変動する可能性が高いことを意味する。これらの項目を区分してOCI に認識することは、純損益に認識される再測定の他の内訳項目に関する情報の理解可能性を高める可能性がある(例えば、成長による価値の変動で純損益に認識されるもの)。

 

これについても引当金と同様に、会計上の見積りにおける(一部の)市場価格要素の変動の影響をOCIへ計上させる想定をしている。しかし、引当金にはあった“最後の一文”に当たるものがない。恐らく、こちらはリサイクリングが前提ではないかと思う。

 

 

というわけで、この生物資産と引当金の間には、リサイクリングする・しないという一線がありそうだ。リサイクリングする・しないの一線とは、純損益とOCIの境界線に他ならない。一体、生物資産と引当金の間にどんな差異があるのだろうか?

 

まあ、「引当金についてリサイクリングは容認しない」とはっきり書いてあるわけではないので、あまり深く追及しても仕方がないが、僕は、退職給付でリサイクリングを容認しない理由(371. 6/19の記事)と同種の臭いを感じる。即ち、(退職給付と違って“できない”ことはないが、)引当金についてリサイクリングを行っても、財務諸表の作成者の手間に見合う情報価値の向上がないし、さらにいえば、市場価格の変動を会計上の見積りに反映することは、企業業績の実態描写に積極的な意味がある、とIASBは考えているのかもしれない。

 

ん~、最近のように、いつも市場が安定していればなあ、と僕は思う。←これが終止符。

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