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2014年7月28日 (月曜日)

379.IFRSへ のれん償却再導入? ~ASBJらが意見書公表

2014/7/28

ASBJのホームページによると、ASBJは、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)及びイタリアの会計基準設定主体(OIC)と共に、のれんの会計処理と開示のあり方に関するグローバルな議論に寄与するために、ディスカッション・ペーパー「のれんはなお償却しなくてよいかのれんの会計処理及び開示」を公表した。“ディスカッション・ペーパー”とされているが、のれんの償却をIFRSへ復活させようという明確な主張が展開・提案されている。

 

のれんはなお償却しなくてよいか―のれんの会計処理及び開示ASBJ 7/22

 

僕は一応全 55 ページを読んでみたが、主な内容は“序文”(たった 1 ページ半)にまとめられている。是非ご一読されることをお薦めするが、その雰囲気を伝えるために、そこから一段落だけを下記に紹介する。

 

分析の結果、リサーチ・グループは、のれんの償却を再導入することが適切であろうという結論を下している。なぜならば、のれんの償却は、企業結合で取得した経済的資源の一定期間にわたる消費を合理的に反映するものであり、適切なレベルの検証可能性と信頼性を達成する方法により適用できるからである。さらに、リサーチ・グループは、開示要求の領域においてより一層の改善を検討すべきであると結論を下した。

 

“リサーチ・グループ”とは、ASBJ、EFRAG 及び OIC のメンバーによってこのリサーチのために結成されたグループだ。また、EFRAG は、EUの内閣に当たる欧州委員会(EC)に対し、IFRSの個別規準ごとにその採用の是非を判断し勧告する民間団体だ(民間団体なのは、ASBJやIASBが民間団体であるのと同じ位置づけで、政治色を排するための工夫)。ASBJと同様に、ASAF(IFRS財団会計基準アドバイザリー・フォーラム)のメンバーでもある。要するに、IASBにとっては、無視できない大切なお客様の筆頭といった存在だ。

 

提案は、上記に関連して、下記の領域に及んでいる。

 

(a) のれんの会計処理の変更(償却の再導入を含む)(第 2 章)

 

(b) 減損テストの要求事項の改善(第 3 章)

 

(c) IAS 36 号における開示要求の改善(第 4 章)

 

(d) 無形資産(IAS38)の会計処理の変更(第 5 章)

 

ASBJは 2001 年の設立だから、SAMURAI BLUE が初めてW杯に出場した 1998 年より最近だ。そして日本でIFRSの任意適用を認められたのはつい数年前のこと。しかし、グローバルでの活躍の程度は、SAMURAI BLUE よりASBJの方が一枚も二枚も上手のようだ。

 

 

さて、内容についてだが、概ね次のような感じになっている。

 

(a) のれんの会計処理の変更(償却の再導入を含む)(第 2 章)

 

・“識別可能要素アプローチ”の棄却

 

このブログでも紹介したのれんの構成要素(2012/11/17の記事)を分解して、それぞれについて会計処理を決めて行こうとするアイディアは、理論的には面白いが、実務的に困難として棄却している。したがって、すべてコアのれんであるとの前提で、以下の議論が進められている。

 

・“のれんの一時償却・直接償却”の否定

 

コアのれん以外は、一時償却・直接償却すべきものもあるが、上記のとおり、それはあまり重要でないと考えてこれらも否定されている。コアのれんは、資産の定義に合致するので、一時償却・直接償却は否定されている。

 

・のれんの償却について

 

IASB(やFASB)は、のれんの償却期間を合理的に見積ることができないことを一つの根拠にしてのれんの償却処理を廃止した。この意見書でも、確かに償却期間について完全に正確な見積りは困難であるとしながらも、“合理的”なレベルであれば可能としている。

 

償却期間は、実証研究論文等の分析から、10 年又は、20 年といった上限を規準に設定することを提案している。

 

償却方法は、のれんから得られる便益の消費パターンの予測が困難で、それに合った方法を決定するのは難しいとしながらも、定額法による規則的な償却が、忠実な表現とコストの間の適切なバランスを達成させるとして、定額法を支持している。

 

(b) 減損テストの要求事項の改善(第 3 章)

 

・現行の減損テストの欠点

 

減損テストを実施する単位(=資金生成単位)の解釈・適用にばらつきがあり、規程通りになされていない可能性がある。(例えば、セグメントより大きい単位で減損テストを行うなど。)

 

減損テストの方法について、経営者の裁量・解釈・判断・偏向の余地があり、適切に行われない可能性がある(少なすぎるし、遅すぎる)。例えば、金融危機のときには、主に翌年以降に減損損失が計上されていた。

 

・改善提案-取得したのれんのみによる減損テスト

 

のれんは、取得後に徐々に自己創設のれんに置き換わっていく。ならば、減損テストは自己創設のれんの影響を排して、取得時点ののれんから生じる将来キャッシュ・フローのみで行うべきというアイディアだが、実務的に困難なので棄却。

 

・改善提案-見積りの前提に関するより厳格なガイダンスの導入

 

資金生成単位の決定、評価アプローチ(売却コスト控除後の公正価値か、使用価値の大きい方)、使用価値の計算(割引率、予測期間とターミナル・バリューなど)について、改善可能ではないかとしている。

 

なお、ターミナル・バリュー(永遠に事業が継続すると仮定した事業価値)の使用については、この意見書は否定はしていないものの、懐疑的な、或いは使用するのであれば厳格なガイドラインの下で、という立場であり、積極的に認めているわけではないように思う。

 

(c) IAS 36 号における開示要求の改善(第 4 章)

 

・現在の開示への批判

 

色々書いてあるが、一つ、僕が一番注目した記述を紹介したい。(127項)

 

2013 1 月に、欧州証券市場監督局(ESMA19は次のように結論を下している。「のれんの減損テストに関して主要な開示は概ね提供されているが、多くの場合、定型的な性質のものであり、企業固有のものではない。これは、発行者が基準の要求事項に準拠していないことと、おそらく、基準の中で特定性に欠けている(特に感応度分析の領域において)ことの組合せから生じしている。また、これは、多くの場合、財務諸表利用者が、使用されている仮定の信頼性を、提供されている開示から評価する(それらの開示の主要な目的である)ことができないことを意味する。」

 

「形式的に、(すべての)企業が同じ項目を開示しても、利用者にとって価値のある情報にならない。それより、その企業の状況に合った開示が必要。」ということだと思う。僕も同意見だ。ただ、日本では企業間の“比較可能性”が強調され、同じ項目が開示されるべきという意見が強いように思う。経営戦略も、ビジネス・モデルも違えば、開示内容(項目それ自体や各説明の深さ)が異なるのは当然と思う。みなさんは、いかがお考えだろうか。

 

・開示面での提案

 

開示によって、次のような目的を達成・拡充させたいと考えているようだ。(134項~)

 

(b) 利用者がモデルの堅牢さ及び企業の仮定を理解するのに役立つ情報

 

・使用価値のタイミング・プロファイル(例えば、ターミナル・バリューの開示)

・割引率へのインプット(資金生成単位ごとの割引率がどのように算定されたか)

 

(c) 企業による過去の仮定の「合理性」の確認を提供する情報

 

・差異の分析

 

(d) 利用者が将来の減損を予測するのに役立つ情報

 

・取得した事業の業績に関する情報

・減損の予想時期(のれんの効果が及ぶ期間の予想)

・将来の減損を示す取得の特徴 (例えば、コアのれん以外の要素が多額となるなど)

・のれん合計額の調整表

 

(a)”があるのだが、これについては、現行の開示で達成されているとしているので、ここでは省略した。また、“(e)”もあるが、この意見書としては否定している。ちなみに“(e)”は、「利用者が経営者の減損テストを結果論で批判することを可能にすべきである」という内容と解説されている。

 

(d) 無形資産(IAS38)の会計処理の変更(第 5 章)

 

IFRSでは、のれんの非償却化に伴い、耐用年数を決められない無形資産についても非償却化された。そののれんの再償却を提案するにあたって、無形資産にも見直しの検討を求めている。

 

 

まるで“のれんW杯の決勝トーナメント”が始まるようだ。また一つ、楽しみが増えた気がする。

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