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2014年8月 8日 (金曜日)

384.CF-DP61)純損益とOCI~ASBJペーパー

2014/8/8

修正国際基準の公開草案がASBJから公表されたためそちらへ寄り道していたが、今回から、またIASBのディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」へ戻ることにする。

 

今回は、寄り道前の予定では“ASBJペーパー”についてとなるが、もうこのタイトルで書く必要はないか? 前回の修正国際基準(JMIS)の第2号“その他の包括利益の会計処理(案)”の記載(383. 8/6の記事)で、もう十分なのではないか? そんな気がしていた。

 

しかし、公表されていないと思っていたこのASBJペーパーが、実は、企業会計基準委員会の 2013/11/19 の審議資料として、ホームページに掲示されていたのを知って、気が変わった。読むと、凄く内容が濃い。さすが、としか言いようがない。関心をお持ちの方は、ご覧いただけると良いと思う。

 

第276回企業会計基準委員会の概要 の審議資料(1)-6  参考資料 純損益/OCI及び測定

 

冒頭に2ページの“要約”があるが、それを眺めるだけでも唸らされる。しかし、僕が注目したのは、“補足的な検討”として末尾に付け加えられたコメント「測定基礎の決定に関する追加的なコメント」だった。そこで、今回はこのコメントを紹介することにしたい。これで、ASBJの“純損益”に対する考え方がより具体的にイメージできるのではないかと思う。

 

 

このコメントの内容に入る前に、ちょっと事前準備が必要かもしれない。まず、次の2点について説明したい。

 

 ASBJはOCIを“連結環”と定義

 

●“測定基礎”とは、原価ベースとか公正価値価値ベースとか、いわゆる評価基準のこと

 

まず、前者についてだが、ASBJのOCIの正式な定義は次のとおり。

 

OCI とは、企業の財政状態の報告の観点から目的適合性のある測定値と企業の財務業績の報告の観点から目的適合性のある測定値が異なる場合に使用される「連結環」である。

 

ASBJは、単純にいえばB/Sが財政状態、P/Lが財務業績を表すと考えるので、B/S用に公正価値評価を行ったが、P/Lでは原価ベースを採用したら、その差異がOCIになると考えているようだ。例えば・・・、

 

売却を前提とせずに長期保有する株式は、財政状態の見地からは公正価値評価が良いが、業績評価の面では公正価値の変動を業績に含めたくないので、変動額をOCIへ計上する(結果的にP/L上は原価ベースになる、或いは、純損益としては原価ベースとなる)。

 

確定給付の退職給付債務は、B/Sでは毎期現在価値ベースの測定が行われるが、P/Lでは予定原価のような損益が計上される。その差が数理計算上の差異などとなり、OCIへ計上される。

 

しかし、これらも永遠に現状のままB/Sに残るわけではなく、いつかはP/Lへ、即ち、業績へ影響を与える。例えば、次のような場合だ。

 

・売却するとか、年金支給や退職給付制度廃止などによって、B/Sから取除かれる場合

 (=認識の中止)

 

・減損損失を計上する場合

 

・時の経過によって自動的にOCIが消滅する場合
 (数理計算上の差異等を期間按分で戻入れることを念頭に置いていると思われる。)

 

このような場合は、B/SとP/Lで差異が解消されるので、OCIは純損益に計上される(=リサイクリング)。このようにOCIは、B/SとP/Lの目的に照らして有用とされる測定基礎が異なる場合に発生し、その項目が消滅したり、減損されたりするまで資本の部に計上される。すべてのOCIは、最終的にはリサイクリングされる一時的なものであり、計上されている間はB/SとP/Lの関係を繋いでいる。即ち、B/SとP/Lの連結環であると考えている。

 

そして、“測定基礎”という言葉が聴き慣れないので、後者のとおり“評価基準”に置き換えてみると、上記のOCIの定義は次のように読める。

 

OCIは、B/SとP/Lの目的に照らして、有用とされる評価基準がそれぞれ異なる場合に使用される連結環である。

 

すると、どのようなときに“有用とされる評価基準が異なる”のだろうか。こんな疑問が頭をもたげてくる。しかし、ASBJはちゃんと回答を用意している。これが、僕が注目した上記「測定基礎の決定に関する追加的なコメント」だ。

 

 

・・・と、ここまで書いて、丸1日この記事を寝かせた。その間、チラチラこのASBJのコメントを眺めてみたが、ん~、どのように伝えたらよいか、方針が決まらない。「財政状態とは何か」、「“不可逆性”と“事業”が限定した範囲でしか使われていない(金融商品に対して使われていない)が、それはなぜか」といった疑問が解消・消化できず、このまま書いても、何が言いたいのか分からない変な記事になってしまいそうだからだ。

 

ASBJの“純損益とOCI”に関する考え方は、多分、前回と今回の記載でかなりクリアになったと思う。理論的にとてもスッキリしていて、IASBよりずっとシンプルだ。であれば、ここで記載をやめてしまうのも手かもしれない。

 

ということで、一応、今回はここまでお伝えして、先のことは改めて考えたい。即ち、このコメントを飛ばして FASBペーパーへ行ってしまうか、やはり、このコメントについて記事を書くかについて、さらに考えたい。

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IFRS全般(適正開示の枠組み、フレームワーク・・・)」カテゴリの記事

コメント

IFRSのOCIのリサイクリングで疑問があるのですが、
為替換算調整勘定をIFRSではなぜリサイクリングするのでしょうか?
個人的な考えですがIFRSのリサイクリングは「意味のあるものだけ」というような認識で見ています。
その点で繰延ヘッジ損益のリサイクリングは、リサイクリングしなければヘッジの意味がなくなってしまうので意味があると思います。
為替変動の影響額をリサイクリングして一時期に純損益に計上する意味はどこにあるのでしょうか。
為替換算調整勘定は投資の清算時にリサイクリングして、FVTOCIの有価証券は投資の清算時にリサイクリングしないと言うのもいまいち納得がいきません。
IASBは為替換算調整勘定はミスマッチのある再測定で、FVTOCIは一時的な再測定?だから、といいますが、
為替の差を一時的な再測定と見ることもできるし、市場価格の差も時価と原価のミスマッチという見方もできるのではないでしょうか。
個人的には為替換算調整勘定も投資の清算時は利益剰余金に振り替えてしまう方が自然なのではと思います。
為替の影響は一度に発生するものではなく徐々に累積していくものだから、清算時にいきなり巨額の純損益が計上されるのはどうかと思います。

コメントありがとうございます。ところで、お名前の記入がないので、Aさんとさせてください。

Aさんの問題提起は、奥が深そうですね。そして、その“清算時に巨額の純損益が計上される”理由として、為替レートの変動の影響が累積されることが挙げられています。

例えば、10$(100円/$で1000円)の土地を持つ海外事業体を取得して、毎年10円/$ずつ為替レートが円高に振れていくと、毎年100円ずつOCIへ為替差損が計上され、5年後には10$の土地は500円(10$ x 50円/$)、OCIへ振替える金額も500円になります。そこで清算すると、現行規程では、資本のOCIへ蓄えられていた500円が一挙に、P/LのOCIで利益側、純損益では損失側へ計上されることになりますね。ん~、確かに、これは痛そうです。もし撤退する場合だと、既に営業損失等の痛手を受けていますから、まさに、泣きっ面に蜂ですね。「え~、それも損失なの?」と驚く意味では、藪から棒ともいえるかもしれません。

ただ、投資は、そのリターンによる成果を測って、表示通貨ベースで純損益へ計上されなければならないですね。為替差額は表示通貨ベースのキャッシュ・フローの金額、即ち、投資のリターンへ影響を与えるので、為替差損はどこかのタイミングで純損益を通さなければならないと思います。

すると、毎年純損益を通すか。それとも、為替レートは一方的な動きではなく、上がったり、下がったりすると考えて、為替差額が最小の影響となるように最後だけにするか。

現行規程は、後者になっていると思います。重要なのは、投資の管理をするために、OCIへ計上された為替差額をも意識しておくことだと思います。損益ベースではなく、キャッシュ・フロー・ベースの投資管理ですね。

回答ありがとうございます。名無しですみませんでした。
キャッシュフローをベースにするならリサイクリング、と言うのは理解できます。
でもそうするとその他有価証券評価差額金のようなOCI科目もキャッシュフローベースでは清算時にリサイクリングするべきなんじゃないかなと思うのです。
どっちも中身は投資なのだからリサイクリングするかしないかは統一すべきなのではないか、区別するならどう理由づけしているのかがわからなくて混乱しています。
為替の変動→ミスマッチ、市場価格の変動→一時的と分けるのはなぜなのでしょうか?

Aさん、またコメントをありがとうございます。

そうなんです!! それが「Aさんの質問の奥深さ」ですね。僕も気になってしょうがなかったので、この純損益とOCIシリーズの有価証券を3回も書いてしまいました(374~376)。長文過ぎて反って分かり難かったと思いますが、簡単にいえば、IASBは持合い株という日本の慣行に「正当な事業目的があるの?」と疑念を持っているということだと思います。「事業目的に関係ない活動であれば、純損益に計上する必要はない。」と考えていると思います。まあ、あくまで想像ですが。

そこで、日本としては「正当な事業目的に適う」活動であると主張するわけですが、今のところ、IASBに認められたのは、IFRS9の公開草案で新たにリサイクリングが認められた例示、即ち、“設備投資資金の待機資金の運用”と“金融機関における日常的な流動性管理のための運用”あたり、ということになります。

少なくとも、株主総会による企業統治機能を減退させる可能性がある“持合い”とか、“安定株主”といったところは、経営者にメリットがあっても株主にはメリットがないと、IASBに判断されているのかもしれません。

さらに言えば、「営業利益が出ないときに含み益のある株式を一時的に売却して純損益を整える」みたいな利益の平準化の手段に利用されると、IASBは粉飾の一種と思うらしいです。事業が悪い時は悪いように見えるのが、忠実な表現ですから。それでリサイクリングを認めないとしているように思えます。

IASBは、現行IFRS9で、有価証券投資の事業目的として次の3タイプ想定しています。
 ・市場リスクを積極的にとって将来キャッシュ・フローを最大化する売買有価証券タイプ
 ・市場リスクを限定して契約によるキャッシュ・フロー確実に受取る満期保有目的有価証券タイプ
 ・そしてこの両者を状況によって使い分ける折衷タイプ
焦点が、将来キャッシュ・フローへ向けられていることが分かりますね。一方、“持合い”とか、“安定株主”では、将来キャッシュ・フローを予想できないので、そういう意味でもIASBの理解を得るのは難しそうですね。

この問題に関しては、IASBは“正当な事業目的の有無”という全然違う観点を持ち込んでいるということですね。一方、ASBJは、純損益とOCIの区分を“不確実性”とか“不可逆性”といった概念で、シンプルかつ統一的に整理しようとしました(僕も、実は、凄く期待しました)。しかし、なぜか、金融商品に関しては、それを適用しようとしていません(それで、今回のASBJペーパーの記事が中途半端になりました)。ASBJも、この問題に関してはIASBと同意見なのかもしれません。しかし、“正当かどうか”という価値判断を会計に持ち込むことが良いことなのか、僕にはまだよく分かりません。

確かに益出しやスムージングはすごく嫌っている印象ですね。
リサイクリングじゃなくても、のれんの償却なんかもスムージングの一種と言えそうですし。
投資の意思のはっきりしている外国子会社等の為替差額はキャッシュフローベースだけど、
投資の意思のあいまいな有価証券は益出しを防ぐためにもリサイクリングは認めない。
それなら納得できそうな気がしてきました。ありがとうございます。
これからも更新楽しみにしていますね。

Aさん、コメントをありがとうございます。

こちらこそ、コメントを頂いて、整理がつきました。また、よろしくお願いします。

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