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2014年8月20日 (水曜日)

387.CF-DP62)純損益とOCI~FASBペーパー

2014/8/20

この数日、良く晴れて残暑が厳しい。お天気が優れない地域のみなさんも、湿度が高くて過ごしにくいと思う。体調と気分の管理には、くれぐれもお気をつけて。

 

こんな書き出しになったのは、今回のテーマの“FASBペーパー”が、真冬(2/24)の企業会計基準委員会で議論されたものであることに気付いたためだ。そのころ、僕は「早く暖かくなれ!」と思っていたから、今の暑さで、季節がちゃんと廻っていることが確認できたような気がして、逆に、ありがたい気分になった。すると不思議なもので、暑さに立向かおうという気になる。そんな気分を少しでも伝えられたら、と思ったのだ。しかし・・・

 

「え~、そんな昔の話なの? もっと早く紹介してよ」と思われたみなさんには申し訳ない。

 

ということで、ここからは、以下のASBJホーム・ページに掲載されている資料に基づいて記載して行く。不正確・不明瞭な点は、このページの資料を直接ご確認いただきたい。

 

第282回企業会計基準委員会の概要 の“審議資料(1)-2

 

ASBJは、既に昨年12月に会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF;詳しくは 2013/2/24の記事の後半を参照願いたい)において、このシリーズの前回(384. 8/8)の記事に記載した見解を披露している。米国FASB(のリンズマイヤー理事)はこれに刺激されて、3月のASAFで時間を確保したらしい(したがって、これはリンズマイヤー氏の個人見解)。2/24 の企業会計基準委員会では、これへ如何に対処するかを事前に話し合ったようだ。

 

 

(P/Lの形式)

 

“反復・非反復”、“営業・非営業”という視点で、P/Lに数種類の利益を表示しようという。但し、“営業利益”を計算する計算書と、“包括利益”を計算する計算書は、別表にすべきと主張している。これは「一表にすると大切な“営業利益”が途中に埋もれてしまうから」という理由。

 

⇒ このリンズマイヤー氏の主張は、一見、我々にも親しみやすい。まるで、経常利益が復活しそうな感じがするからだ(US-GAAPやIFRSでは経常利益は廃止されている)。しかし、実際には米国株式市場の慣行を強く意識したものだ。ご存じの方もいらっしゃると思うが、米国では、“異常項目抜き”の利益や一株あたり利益が、企業によって自主的に広く開示されている(実質利益や非GAAP利益などと呼ばれる。監査対象でもなく“恣意的”との批判が多い。一方で、投資家には重宝されている)。確かに、“反復して稼得される営業利益”が開示されれば、便利に違いない。会計規準が目指すべき方向だと思う。

 

⇒ 「あれっ、OCIは?」と思われた方は鋭い。その通りでOCIがP/Lに出てこない。この理由は、次の“測定基礎”をご覧いただきたい。

 

 

(測定基礎)

 

測定には次の3種類の基礎的な考え方があるという。そして、どの基礎をどの項目に割当てるかについては、(資産・負債評価の観点ではなく)P/Lの観点で決定すべきとしている。

 

⇒ この結果、ASBJペーパーとは異なり、各項目には、たった一つの測定基礎が割当てられる。ASBJペーパーでは、B/SとP/Lの2つの観点から測定基礎を割当てるので、それが異なる場合に連結環としてのOCIが生じるとされていた。ところが、FASBペーパーではP/Lの観点でのみ測定基礎を決めるので、OCIが生じないことになる。「区分できないなら、OCIをなくしてしまえ!」という発想らしい。斬新だ。

 

・再測定をせず、期間配分(取得原価項目。減価償却や棚卸資産の原価配分など)

 

・キャッシュ・フローは見直すが、割引率は変えない(金融商品の償却原価など)

 

・再測定する(公正価値測定や、その他の現在価値評価手法)

 

P/Lの観点における公正価値か原価かの選択は、未実現損益の情報をP/L本体で提供することで意思決定有用性が高まるかどうか(=目的適合性)の決定である、としている。高まる場合は、公正価値が選択される。

 

 

以上だけでも十分面白いが、実はもっと興味を惹かれたものがあった。後出しは僕の悪い癖だが、ここまで読まれた方は、次も是非お読みいただきたい。

 

 

(2つの誤解)

 

学術研究には、一般的に次のような誤り(というか、思い込み?)があるそうだ。

 

・取得原価は常に、公正価値よりも信頼性が高い(見積りの不確実性が低い)と推定される。取引価格が観察可能だからである。

 

・公正価値は常に取得原価よりも目的適合性が高いと推定される。

 

これらは主としてB/S重視の考えに由来しているので、P/Lの観点からは違った測定基礎の選択が導かれる可能性があるという。

 

⇒ なるほど、どちらも見覚えがある。前者はアンチ公正価値派、後者は公正価値派による主張(或いは、その前提や根拠)だ。言われてみれば、いずれも、極論の決め付けになっている。

 

例えば、前者について言えば、減損損失が生じていれば原価主義でも見積りが生じる。見積りを嫌って原価を維持すれば、減損損失を忠実に表現できないから、期間配分された原価に信頼性がないことになる。そして、冷静に考えてみれば、減損損失の見積りの不確実性は、公正価値の見積りと大差ないかもしれない。(但し、見積り項目が増えるのは手間だが。)

 

公正価値で評価すると未実現損益をP/Lへ計上することになるが、その未実現損益が、将来キャッシュ・フローとして実現する可能性が低ければ、公正価値の情報はP/Lの観点からで有用とはいえない(目的適合性が低い)。満期や耐用年数終了時まで保有する可能性の高い資産・負債は、これに該当する。P/Lの観点で考えると、その資産・負債の性質や事業でどのように使われるかが問題となる。これを概念フレームワークでも、もっと掘り下げるべし、としている。

 

⇒ この主張は、IASBやASBJと基本的に共通するところが多いように思うが、個々の具体的資産・負債に対する判断になると、分かれてくるような気がする。

 

 

リンズマイヤー氏の意見には不思議な魅力を感じるが、みなさんはいかがだろうか。

 

ちなみに僕は、市場価格を付して計上した売買有価証券の未実現損益も、市場価格変動の大きさ・激しさに鑑み実現可能性が低いと思うので、純損益ではなくOCIへ計上するのが良いと思う。

 

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IFRS全般(適正開示の枠組み、フレームワーク・・・)」カテゴリの記事

コメント

たびたびすみません。
IFRSでも日本基準でも所謂繰延ヘッジ損益はリサイクリングする、この認識は同じかと思います。
ただその他有価証券の時価変動リスクをヘッジしている場合、日本では繰延ヘッジ損益も選択できますが、IFRSの場合公正価値ヘッジであるとしてそれはできなかったかと思います。
新しいIFRS9を読んだのですが、FVTOCIで評価している有価証券に対応するヘッジ手段の損益はOCIで繰り延べると言うことになっていたかと思います。
この場合、当該有価証券を売却したときに、ヘッジ対象の売却損益はリサイクリングされません。
ヘッジ手段の損益もリサイクリングしないのでしょうか?基準を読んでもよくわかりませんでした…理屈上はリサイクリングしないと思うのですが。
はみだしさんはどうお考えになるかお聞きしたいです。

Aさん、こんばんは。

今回も、コメントをありがとうございます。大歓迎です!
でも、最初に一つ質問させてください。
Aさんが読まれた“新しいIFRS9”って、7/24にリリースされたやつですか?
http://www.ifrs.org/Alerts/PressRelease/Pages/IASB-completes-reform-of-financial-instruments-accounting-July-2014.aspx

もしこれだとすると、まだ英語なので、僕は歯が立ちません。(#^.^#)
もし、2012年リリースのものであれば良いのですが・・・。

その一番新しいのでなくて、ヘッジについて改定された2013年11月のものです。
私も英語だと手が出ないので、この辺のいくつかの解説を読んだくらいでちゃんと理解できてるかあやしいのですが…
http://www.kpmg.com/jp/ja/topics/ifrs/topics/financial-instruments/Pages/final-standards.aspx

了解しました。明日読んでみます!

Aさん、大変申し訳ありませんが、昨日から IFRS Foundation が運営している有料のWeb-Site にアクセスできなくなってしまいました。僕は、いつもそこでIFRSの翻訳を入手しているのですが、まだ2013のIFRS9を読めていません。もうしばらくお待ちください。

Aさん、お待たせしました。
結論から申しますと、Aさんの理解の通りと思います。但し、規準は読んでおらず、暫定的な意見です。

ちょっと経緯を説明させていただくと、IFRS9の2013版は、まだ読めていません。その代り、Aさんが紹介してくれたHPで次の文書の一部を読みました。

http://www.kpmg.com/jp/ja/knowledge/article/Documents/ifrs-hedge-2014-02.pdf

P5に次のように記載されています。

IFRS9.6.5.2(a)
公正価値ヘッジとは、ヘッジ対象のこうせ価値の変動のうち、特定のリスクに起因して変動し、かつ、その変動が純損益に影響を与えうる場合における、当該公正価値変動のエクスポージャーに対するヘッジである。・・・

IFRS9.6.5.3
なお、IFRS9号において、公正価値で測定し、評価差額をその他の包括利益に計上することを選択した(FVTOCI区分の)資本性金融商品を公正価値ヘッジの対象とする場合には、上記の純損益をその他の包括利益と読み替えることとされている。

ということで、次のように理解しました。
公正価値ヘッジは、ヘッジ対象に評価損益が純損益へ計上されると、それを打消すような評価損益がヘッジ手段によって計上されます。ヘッジ対象を売却したら、直近に計上されていた評価損益の累積額と売却損益の差額分が、純損益に計上されます。(同時にそれを打消すようにヘッジ手段の売却損益も計上されるはず。) この過程に、特にリサイクリングは必要ないと思います。

Aさんの想定するケースでは、これを、純損益でなくOCIで行えば良いので、リサイクリングは起こらないのではないか、というのが僕の意見です。但し、P/Lを通さない資本の部内での組替調整は可能と思います。

但し、これは上記のHPの解説を見た限りの話で、IFRS9(2013)を読んだものではありません。昨日25日は、英国は休日とのことで、今日26日になって、ようやくeIFRSへログインできたのですが、そこにはIFRS9(2013)の日本語版はありませんでした。まだ翻訳されてないのかもしれません。したがって、規準を読んだ結果の意見ではないのです。そのところは、ご了解ください。

旧IAS39号のヘッジ会計は、純損益に与える影響のみが対象となっていて、OCIが想定外だったんですね(85項)。今回初めて知りました。面白いですね。

すみません、せっかく回答いただいたのに遅くなりました。
やはりその場合リサイクリングは恐らくしないですよね。
そうならばリサイクリングを説明するときには「繰延ヘッジ損益に計上しているならばIFRSでもリサイクリングしますよ」と安易に説明できなくなりますね。
どちらにしてもキャッシュフローヘッジと公正価値ヘッジの違いは理解していないといけないのは変わらないですが。

Aさん、お待ちしていました。(o^-^o)
そうですね、やはり、OCIオプションは「好ましくない取引の抑制」みたいな特殊な目的がついているようなので、ちょっと区別して考えた方が良さそうです。

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