391.CF-DP65)純損益とOCI~まとめ~FVTOCIリサイクリング禁止の実害その1
2014/9/2
この週末、日本でいう“その他有価証券”の売却益を純損益にリサイクリングしないIFRSの規程の意味を考えた。いや違う、それは既に前回(390-8/29)の記事に記載した。考えていたのは、次の2つだ。
A.“好ましくない取引の抑制”は、会計の目的に相応しいか
B.それをこっそり(=概念フレームワークに記載せずに)会計の目的に加えることの正当性
この2つから、FVTOCI のリサイクリングを禁止したIFRS9の規程や、概念フレームワークに関するディスカッション・ペーパーでのIASBの主張に対する評価(=僕の結論)が得られると思ったのだ。
結論から書くと次の通り。
A.相応しいか・・・相応しくない。即ち、×。
B.正当性・・・好ましくはないが、否定もできない。したがって、△。
総合評価・・・マル。
×と△を総合して、“マル”とはどういうことか? まったく理不尽な結論だが、その理由は一言でいえば次の通り。
(理屈では×だが)実害がない。しかし、実利はあるので、あった方が良い。よって“マル”。
僕は悩んだ。理屈では、×以外の結論はありえないように思う。
会計は実態を表現するものだ。そして、その実態を見て、価値判断が行われるべきだ。災害が発生する確率を判断する人・部署が、それに集中すべきであるように、会計は実態を表現することに集中すべきだ。他の判断を入れることは、実態の表現を歪める可能性に繋がる。ところが、FVTOCI に関しては、“好ましくない取引”などという価値判断が、予め会計の中へ取込まれてしまい、その結果その“好ましくない取引”が、会計で見えなくなっている。即ち、P/Lを見ても、益出しの実態は簡単には分からない。
おまけに、このことをIASBは明確に説明していない。やろうと思えば、概念フレームワークでなくても、IFRS9の結論の根拠にでも記載できるはずだが、そこには、分かりにくいことが書いてあるだけだ。IASBにも、なにか後ろめたい気持ちがあるのだろうか。
では、それにどんな実害はあるだろうか? 益出し取引が純損益から除外されると、何が困るだろうか。ん~、何か困るだろうか?
マンチェスター・ユナイテッドから古巣のドルトムントへ移籍する香川選手も大変に悩んだという。しかし、それに負けないぐらい、いや、それは言い過ぎだが、そう言いたくなるぐらい悩んだ。しかし結局、実害らしい実害を考え付かなかった。それで上記の結論を出さざるえなかったのだ。
次回、その考えたことを記載するが、もし、みなさんにもっと良い考えがあれば、是非教えて欲しい。「理屈で×なのに実害がないなんて、本当はおかしい」と思うのだが・・・ ん~、どうしても、思い浮かばない。
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