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2014年10月28日 (火曜日)

411.【投資】投資の勧め~保守主義の活用

2014/10/28

この記事は番外編であって、このブログの目的から外れている。特に今回は、リスクの高い“投資”をみなさんに勧めるという異例中の異例の記事になる。もしかしたら、このブログには載せない方が良いかもしれない。しかし、“【製造業】加工貿易と円高 2012/10/15”を書いて以来、ずっと頭を離れないことがあって、もやもやしていた。それは次の問題だ。

 

今さら、英語を習得しようなどと思わない、そして、海外へ商売を広げようなどと思わない、ドメスティック、ローカルな人たちは、どうすればこれからの時代を乗り切って行けるだろう。

 

上記の“円高と加工貿易”の記事は、「みなさんのご子息にどのような教育を受けさせたいか」という問い掛けから始めたので、僕やみなさんの一部のように、もう社会人になって年数が経ち、これから英語を学び直そうなどと思わない人たちが、対象から外れている。外国でのコミュニケーションができる人は企業が海外進出する一翼を担い、企業の経営理念を広く実現し、利益を増やすことに貢献できるので、その貢献に応じた報酬を得られる。しかし、それができない我々のような人はどうすれば良いのだろうか。僕はどうすれば良いのだろうか。(輸入)インフレで、実質所得・資産が目減りするのを耐え忍ぶしかないのか。

 

今回は、これに関する僕なりの回答を書こうと思う。僕の専門外で、僕の能力を遙かに超える問題だが、“円高と加工貿易”を書いたこのブログに、この回答も書きたい。

 

 

結論は、タイトルにもある通り“投資をやろう”ということになる。投資にはリスクがある。だから慎重になる。では投資をしなければリスクもないか? この点が重要だ。なぜなら、“投資をしないこと”にリスクがあれば、「上手な投資ができないか?」という方向へ考えが向く。

 

この点を考えるために、僕が前提にするのは以下の法則、ないし、事実だ。

 

1.報酬は、(全体の傾向としては)増加した利益への貢献度合いに応じて支払われる。

2.ピケティ氏の“21世紀の資本論1”によれば、労働提供者より資本提供者の報酬の方が高い2

 

もし、上記2つがこれからの日本経済に成り立つのであれば、僕やみなさんの一部の方は、将来、経済的により辛い思いを強いられる。なぜなら・・・

 

企業が利益を増やせる場は、国内より海外である可能性が高い。しかし、僕やみなさんの一部の方は、そこには関われない。したがって、利益増加へ貢献できない可能性が高く、その結果、報酬は増えないことになる。報酬が増えないどころか、経理業務がIT化され、職がなくなることも考えなければならない。

 

しかし、実は、海外事業に貢献できる人達でさえ、安穏とはしていられない。なぜなら、過去の統計から事業利益は、労働提供者より資本提供者へ多く分配されることが分かっているから。即ち、企業内で海外事業へ貢献しても、株主や金融機関が受取る報酬には適わない。海外事業へ貢献できない我々は、さらに劣後する。

 

なかには、安倍首相が経済団体に賃上げのプレッシャーをかけているから大丈夫、と思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかし、僕は上記2つの法則、ないし、事実により信頼を置いているので、効果があっても一時的、即ち、時間稼ぎにとどまると思っている(が、もちろん、安倍首相が何もしないより遙かに良い)。要するに、当てにしていない。

 

また日銀は、輸入インフレ(=悪いインフレ)でも、(景気が良くなって)需要超過によるインフレ(=良いインフレ)でも、どちらでもインフレ率が上がることには変わりない、どちらでもよい、と思っている節があるようだ。米国FRBのイエレン議長は、失業率を単なる数字として見ず、その背景にいる失業中の人々、或いは、希望しない待遇で働いている人々の現実まで見ようとしているが、日銀の黒田総裁はそこまで優しくない。インフレ率という“数字”が目標へ向かっていれば良いと思っているように見える。日銀は、分配の問題、格差問題は、守備範囲外と思っているようだ。恐らく、我々が望まない形であっても、インフレは起こる。日銀が起こす。「金利をあまり上げないまま、インフレを起こす」ことは、国債を償還するために避けられない道だ。だがそれは、輸入インフレを激化させ、国内に格差の拡大をもたらす可能性がある。

 

これがリスクでなくて、何がリスクだろうか? このような不利な立場にいて、インフレ率以上の所得上昇率を確保できるだろうか。宮仕えを続ける限り、僕は無理だと思う(僕は宮仕えをしていないが)。それで我々は幸福でいられるだろうか。

 

みなさんの中には、もしかしたら、企業のオーナー経営者という方もいらっしゃるかもしれない。このような方は、元々大きなリスクを負っているので、それに追加して余分なリスクを背負う必要はなく、本業に邁進するのが良いと思う。

 

また、国内事業で目覚ましく伸びている企業へお勤めの方もいらっしゃると思う。そういう恵まれた境遇の方は、心配ないと思われるかもしれない。しかし、いつまでもそれが続くとは限らない。問題は、「安定した職を得ている」かのように錯覚して、リスクをリスクと思っていない我々のような一般小市民にある。我々の将来は安定しているわけではない。社会や経済の諸条件の変化に対応しなければジリ貧になるのは、我々個人の生活も企業と同じなのだと思う。上述のようなリスクが現実となってから「備えておけばよかった」と後悔しても遅い。“備え”が必要なのだ。

 

少子高齢化社会・人口減少と潜在成長率の低下、社会保障費の増大と多額の国債発行残高、インフレが常態となる経済、ITなど科学技術の進歩。課題先進国日本とそこに暮らす我々は、大きなリスクにさらされており、政府に任せておける状況ではない。個人による主体的な生活防衛が必要だ。

 

 

では、その“備え”とは何か? 話の流れからお分かりの通り、それが“投資”だ。ピケティ氏の調査にあるように、労働より、資本の収益性の方が良いというなら、我々が資本の出し手になるしかない。しかし、いきなり「投資しましょう」と言われても、多くの方は戸惑うばかりだろう。そこで、ちょっと僕の経験話を・・・。

 

実は、僕も“投資”を始めた。監査人時代には、株式保有は実質的に禁止されていたし、退職後も2年間は、自分の関与先の株を持つことは憚られた。しかし、もう退職して4年目なので、何を持とうと自由だ。最初はリートの投信(外貨建て)から始めて、日経225 などのインデックスもの(上場・非上場)、そして現在では個別株(日本株、米国株)も持つようになった。(だが結局、いまだに元関与先の株は持っていない。なんとなく気が退ける。)

 

僕の投資は、必ずしも成功しているとは言い難いし、まだまだ初心者の域を出ないが、それでも思うのは「何もしないリスクよりはマシ」ということだ。「何もしない」ことは、実質的にリスク管理を放棄しているようなものだと思う。一方、投資のリスクは、ある程度管理できると信じている。これから述べるように、忍耐が必要で難しいことには間違いないが、決して「必ず失敗する」ようなものではないと思っている。(例えば、今年の運用は現時点で僅かにプラス。その間、日経平均は 900円ほど下げている。)

 

もし、みなさんがその気になられたなら、次のことを心に刻みつけることをお薦めする。

 

・投資に“絶対”はない。

・相場が上がり続けることはない。もし上がり続けたら、必ず(辛い)下げがくる。

・重要なのは忍耐力。特に下げ相場(最近もあったが、これが非常に辛い)。

・情報収集(例えば、新聞、証券会社のセミナーなど)で自分なりの相場観を持つが、それに拘泥しない。

・少額でも投資はできる(積立を利用するなど、将来大きくする目標があれば良い)。

・失敗しても人のせいにしない。自分の判断を改善する材料、教訓にする。

・デイ・トレードはしない。本業ができなくなる。

 

個別株は夢があって面白いが、情報収集も相場変動への忍耐も大変で手間がかかる。投信は、自分のテーマに沿って選べるし信頼できる投信に出会えると楽で有難いが、各種手数料が高い。この点、インデックスものなどの上場投信は手数料が安いが、商品種類が限られている。一長一短があるので、やりながら、自分のスタイルに合うものを選ぶのが良いと思う。

 

株や上場投信なども、予め「この価格になったら売る」とか、「この価格で買う」といった申込方法があるので、相場表示板の前に張付いている必要はない。ネット証券で自分のPCから申し込めば、手数料も驚くほど安い。投信は、一日一回時価が決まり、それでのみ取引されるので、もともと相場表示板などないから、張付いている必要はない。

 

ここからは、僕が感じている投資の勘所、大事なポイントを書きたい。キーワードは“忍耐”だ。

 

頭では、儲けるために「安く買って高く売る」と分かっている。しかし実際には、そうできない。僕は、「買ったら下がって、売ったら上がる」経験を何度もした。今もしている。下がっていると「もっと下がる」と思うから買えないし、上がっているときは、「もっと上がる」と思うから売れない。“楽観”という甘い誘惑に逆らえないのだ。買うにも、売るにも、忍耐が足りない。下がり始めるとおろおろし、上がり始めるとそわそわし、いずれも程好いタイミングを外してしまう。

 

確かに、「底で買い、天井で売る」のは理想だが、それは神様でない限り不可能だ。しかし、なるべく良いタイミングで売買したい。それには目先の動きに捉われず、大きな流れを冷静に読める“忍耐力”を養うことだと今は思っている。

 

例えば、個別株やインデックスものの投信は、相場の上下に一喜一憂せず、数か月から一年単位で買い場(調整局面)を探し、上がり続けたら少しずつ売っていくのが良いようだ(その銘柄に特別な悪材料がない限り、その銘柄の売買を繰返す)。今年の日本株は、1月から2月にかけてと、9月から10月にかけて、数週間続く、比較的大きな調整局面(=下げ相場)があった。この他、3月、4月、5月、7月の終わりから8月の上旬にも、数日から10日ほどのミニ調整局面があった。調整局面は、待っていれば必ず来る。相場が上がり続けると買いたい衝動に駆られるが、そこで買うと高値づかみになる。辛抱が必要だ。

 

逆に相場が下がり続ける調整局面では、売りたい衝動に駆られる。毎日、含み益が減ったり、含み損が増えていく様子を見るのは辛いからだ。このような場合、売った方が良い場合もあれば、我慢が必要な場合もある。

 

例えば、中国の金融危機が現実味を帯びてくるような大きな情報があった場合は、すべての銘柄について持ち続けるかどうか考えざるえないだろう。とはいえ、そういう情報が間違っている場合もある。特に最初は悲観的な報道がされがちだ。ところが、急に楽観的なニュースが流れ、気付いたら高値に戻していて、売ったものをもう買戻せないということがある。そうしたら、また半年・一年を覚悟して待つ。忍耐だ。それが嫌なら、悲観的な情報に接したとき、その情報の信頼性を疑ってみることだ。但し、その検証作業の間に、含み損は増えていく。それを耐えるのだ。楽観も、悲観もNGで、自分で「これが実態だ」という感触を得て、売るか持ち続けるかを判断する。平静を保つのは、かなり難しい。

 

“調整局面”とは、あとから見ての“調整”なのであって、下がっている最中は、どこまで下がるか分からず、永遠に下がり続けるような錯覚に襲われる。売りそびれて保有したまま調整局面を迎えた場合は(というか、必ず売りそびれるのだが)、本当に辛い。下げている理由が新聞や証券会社のセミナー(例えばオンライン・セミナー)などで語られるので、それが本物の経済危機につながるかどうかを、冷静に自分で判断する必要がある。本物なら、どれだけ損になろうとも売るしかない。杞憂に過ぎないと判断すれば、我慢して下げ止まるのを持ち続ける。忍耐だ。

 

特定のテーマを持つ投信は、そのテーマに沿ったタイミングを探す。例えば、原油価格が安い今なら、エネルギー生産関連の投信も安くなっている。エネルギー生産関連企業が利益を上げにくい環境だからだ。しかし、「冬になれば価格が上がるだろう」、「原油相場は今が底、或いは底に近い」と見れば、今が買い場だ。「いやいや、ロシアやイスラム国を困らせるために、余力の大きいサウジは原油相場の低迷を放置するだろう」とか、「今年は暖冬で、エネルギー需要は高まらない」と見れば、待った方が良い。この背景には、世界景気の減速で、将来需要が従来予想ほど増えないという IEA などの見通しの改定がある。したがって、中国や欧州の景気が予想外に上向いてくると、原油相場も、この種の投信も価格を上げることになる。

 

どちらのシナリオをメインにするか、判断は冷静にしなければならない。「こうあって欲しい」という期待や願望を紛れ込ませてはいけない。楽観は禁物。だが、悲観し過ぎてもリターンは良くならない。会計と同様、保守主義の態度を貫く必要がある。これぞ忍耐。ちなみに、同じテーマの投信でも、発行会社が違うとパフォーマンスも違ってくる。

 

以上について、みなさんは「大袈裟な。そんな難しいことじゃないでしょ」と簡単に思われるかもしれないが、僕にはなかなか難しい。難しかった。でも、“信頼のおける情報源”或いは“情報源の信頼度”をある程度特定できると、情報収集・分析コストも下がるし、自分の見通しにそれまでより自信を持てるようになる。これは大きな助けだ。

 

参考までに、僕の情報源を紹介しよう。毎週月曜のマネックス証券チーフ・ストラテジストによる“広木隆のマーケット展望(Weekly)”と、不定期の日経新聞コラム“豊島逸夫の金のつぶやき”が、双璧だ。前者は証券会社の Webのオン・ライン、或いは、オン・ディマンドで無料で視聴できる。後者は日経電子版の購読料がかかる。実は、今回の記事である“投資の勧め”も広木隆氏のレポート『21 世紀の資本論』 に大きな影響を受けている。実は、今まで何度も“投資の勧め”を書こうと思ったものの、踏み切れなかった。しかし、今回は、このレポートに背を押された。このほか、WSJ やロイター、日経電子版のその他の記事も、景気の先行き判断や個々の投資に当たって参考にしている。

 

 

長くなるが、大切な税金の話も書いておこう。僕はすべて“特定口座”で取引を行っている。これは、税務当局に証券会社から口座の動きが情報提供され、かつ、所得税などが源泉徴収される口座だ。したがって、確定申告が不要で、とても楽だ。銀行預金の受取利息の確定申告が不要なのと同じ感覚だ。

 

但し、すべての投資にこの“特定口座”が利用できるわけではない。例えば、信用取引や指数取引、オプション取引などを行いたい場合は、“特定口座”が利用できないので、確定申告が必要になる。外国株取引については、証券会社によって、“特定口座”対応をしているところもある。証券会社サービス内容の確認については、ホームページを探すのもよいが、直接サポートに電話を掛けた方が遙かに早いと思う(電話番号はホームページにある)。証券会社は、お客様が増えると思って快く対応してくれる。

 

“特定口座”では、信用取引等ができないので相場の下落に備えたヘッジ取引ができない。そこまでやりたくなったら、確定申告の手間と比較考量して、将来的には手を広げるかもしれない。しかし、現段階では経済危機が来たら、全部売って相場から数か月か数年か、離れようと思っている。

 

ちなみに米国株は、過去長期的に見て日本株よりパフォーマンスが良いし馴染みのある会社も多いから、円相場の見通しによっては外せない分野だ。僕が取引している証券会社では、一部の米国上場投信を買うことも可能だ。ちなみに、中国株も“特定口座”対応しているが、僕は購入していない。僕にはそこまでの度胸はない。

 

 

今回は久しぶりに長文になったが、最後にもう一つ強調しておきたい。

 

日本はもはや、貿易収支で食っていける国ではなくなった。企業も、個人も、資本収支で稼ぐ時代になったのではないかと思う。最初は少額で忍耐力を鍛え、感覚が身に着いたら、貯金増やすように徐々に投資を増やしていく。この選択肢は、真剣に考える価値があると思う。決して簡単ではない、むしろ茨の道かもしれない。しかし、現実は変化しているし、そこにチャンスもある。このままが良いか、変化に対応するか、選択するならインフレが進む前の早い段階が良い。(或いは、中国危機が納まったあとの方が良いという考え方もあるかもしれない。) いずれにしても、みなさんが社会変化の実態を見通す保守主義的な態度をお持ちであること、そして、リスクを識別したら果敢に対応できる実行力を備えていること期待したい。保守主義を理解しているみなさんなら、きっと良い結果が期待できる。健闘をお祈りする。

 

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1 ピケティ氏の“21世紀の資本論”の内容についてより詳細に知りたい方には、以下のような情報がある。この本の日本語での出版は、2017年になるらしい。

ピケティ『21世紀の資本論』はなぜ論争を呼んでいるのか(日経BP 5/20 齋藤精一郎氏のコラム)

日本でも格差は広がる―欧米で話題『21世紀の資本論』WSJ 5/13 JAPAN REALTIME 無料記事)

【オピニオン】「21世紀の資本論」ピケティ氏は急進的なのかWSJ 5/26 無料記事)

この他、本文中に紹介した広木隆氏のレポートにも記載されている。

 

 

2 より正確な表現としては、「資産の収益率が長期的には経済全体の成長率より高い」とか、「高所得層の国民所得シェアの上昇している」というような書き方らしい。要するに、資産家に益々資産が集まり、格差が拡大する。過去 200年の日本や欧米の税務書類などから確認しているらしい。

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