418.【QC02-10】会計面の比較~継続性と単一性
2014/11/28
「解散に大義はあるか」との批判があるが、「大義を作るのは野党の役目ではないか?」と僕は思う。国民に選択肢を提示するのは野党だ。選挙時には野党にもマスコミがスポット・ライトを当てるから、主張を広めるチャンスだ。是非、建設的な議論を展開して盛上げて欲しい。選挙費用 700億が無駄になるかどうかは、野党にかかっている。
そんななか、みんなの党が解散してしまった。僕が唯一、微々たる金額だが献金したことのある政党だ。解党の原因は路線対立にあるとか、野党再編に向けた前向きな動き、などの評価があるようだが、テレビの政治番組からみんなの党の席がなくなるのは寂しい。彼らは、納得感のある現状認識を披露し、理屈の分かる政策を主張をしていたように思う。
さて、このシリーズでは、真実性の原則が他の原則を包括する、或いは、他の原則に支えられた包括的な規定であることを示し、次に、真実性の原則以外の一般原則について、意外に内部統制的な要素があるとして、それを見てきた。今回は、いよいよ、真実性の原則以外の一般原則について、不正防止など内部統制的な要素を除いた純粋な会計面の特徴を見ていくことにしたい。405(10/7の記事)で整理した表の会計部分を、多少加筆して再掲する。
|
関係する一般原則 |
“会計面”の内容 |
◯ |
資本・利益区別の原則 |
会計の基本計算理(損益計算) |
◯ |
明瞭性の原則 |
F/Sの表示、注記 |
? |
継続性の原則 |
同一事象には同一処理 |
◯ |
保守主義の原則 |
会計上の見積り |
N/A |
単一性の原則 |
複数のF/Sがあっても会計記録は同一 |
これらのうち、IFRSの概念フレームワークと比較・分析する意味がありそうなのは、◯のついた3つだ。
?の継続性の原則は、以前記載したように、同じような概念が概念フレームワークにはない(例えば、2012/2/23 の記事と2012/2/9 の記事など)。IFRSでも似たような用語として“比較可能性”や“首尾一貫性”があるが、日本の継続性の原則とは本質的に異なる(と、僕は考えている)。
以前記載したものの繰返しになる恐れはあるが、企業会計原則と概念フレームワークを比べるというこのシリーズの趣旨に照らして重要なので、簡単に記載する。
日本の継続性の原則は、「みだりに会計処理を変更してはならない」と作成者側の行為を規制している。その結果として、或いは、その効果として、読者側の比較可能性に役立つ。一方、IFRSでは、「比較可能性は、経済実態に忠実な表現をすることで達成される」と考えられている。会計処理が同かどうかではない。例え同じ会計処理が継続されても、経済実態が変化して会計処理と合わなくなっていれば、比較可能性が損なわれるからだ。IFRSでは、会計処理の継続性より、その会計処理が実態を忠実に描写するかどうかが重要視されている。このため、より適切な会計処理があれば、実態の変化に合わせてタイミングよく会計処理の変更を行わなければならない。タイミングが遅れると、(ペナルティとして)遡及調整が必要となる。日本基準の「合理的な理由があれば会計処理の変更が容認される」のとは、底流部分の考え方が違う。
「企業会計原則は、作成者の行為を規定する形で書かれ、概念フレームワークは開示する情報の性質を規定する形で記載されている。そのためにこのような印象を受けるが、言っていることは同じ」と思われる方もいると思う。しかし、僕は、経済実態を重視するIFRSと、会計処理の細部(=プロセス)に拘る日本基準の間に違いがあると思っているし、実際に会計処理や開示に違いが出てくると思う。
単一性の原則を N/A としたのは次の理由による。
IFRSは投資家用の財務報告しか対象としてないので、単一性の原則のように税務申告などの他の用途の財務諸表は想定外だ。端から、財務諸表が複数あると考えていない。したがって、単一性の原則はIFRSには出てこない。IFRSにとっては、該当なし(=N/A)だ。
ということで、ようやく◯のついた3つに入れるが、次回としたい。
ところで、冒頭のみんなの党の政策の中で、僕が最も注目したのは年金制度だ。現在の保険方式(賦課方式)から、積立方式へ変更するよう提案している。これは保険料の支払と年金の受取りの関係が分かりやすくて良い。しかし、この変更を行うと数百兆円も国の負債が増加するので現実的でないと批判されている。
実はこの増加する負債は、給付水準が上がるから増えるというものではないらしい。年金会計が、保険方式だとほぼ現金主義でどんぶり勘定(今のところ、保険料収入が年金支出を上回っているので年金資産だけが計上されているらしい。例のGPIF、年金積立金管理運用独立行政法人の運用資産)だが、積立方式にすると将来発生する年金支出が負債に見積り計上される発生主義になるので、負債が増加するということらしい。
ん~、なんか、退職給付会計を思い起こさせる話だが、企業会計ではすでに会計ビックバン以前から、不十分とはいえ少なくとも引当金は計上されていた。退職金や年金による将来キャッシュフローの流出額を、ちゃんと見積るようになったのは会計ビックバン以降だが、国の年金会計は、いまだに引当金さえも計上していない状況らしい。要するに、企業会計の常識から見れば、我が国の年金会計は数百兆円の簿外負債を抱える、経済実態を表わさない不正会計をしている。現在の常識では、保険方式も、積立方式も関係ない。どちらによるとしても、将来キャッシュフローの流出額の見積りという経済実態は変わらないのだから、負債計上が必要なはずだ。
政治家や官僚は、国民に経済実態を忠実に反映した分かりやすい年金財政情報を提供すべきなのに、民間の会計規準が変化しても一向に変える気配がない。それどころか、どちらでも実態は変わらないのに、積立方式だと負債が増えるなどというばかな議論をしている。まったく不思議な世界だ。なぜこんな議論がまかり通るのだろう。
もしかしたら、厚生労働省の官僚は、“継続性の原則”を盾に、実態を反映する会計処理の変更を拒んでいるのかもしれない。
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