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2014年12月 2日 (火曜日)

420.【QC02-11】会計面の比較~資本・利益区別の原則

2014/12/2

みなさんもご存じのとおり、11/30(日)夜、ジュビロ磐田はJ1昇格プレーオフでモンテディオ山形に劇的な敗戦を喫した。ゲーム終了間際のコーナー・キックで、なんと相手チームのゴール・キーパー山岸範宏選手にヘッディングで決勝ゴールを奪われ、ほぼ手中にしていたJ1昇格決定戦への挑戦権を逃した。

 

友人のジュビロ・サポーターは呼吸以外は何もできないほどに意気消沈し、翌朝ようやく生気を取戻した。そしてもう今期のジュビロの試合はなくなったことに気付き、スカパーの解約を思い立った。しかし、もう12月になっていたので、12月分の視聴料は徴収されるそうだ。もうジュビロの試合はないのに。

 

この友人はあの悲惨なゲームのことを忘れて、今は、スカパーへ怒りを集中している。というか、あの悲劇を忘れるためにスカパーを利用しているのかもしれない。

 

僕も他人ごとではない。清水エスパルスは、リーグ最終節まで残留争いを強いられている。運命の試合は 12/6(土) 15:30 から。ジュビロの試合より開始時間が早い分、より長時間の意気消沈を強いられるだろう。もちろん、それは最悪のケースに限ってのことだが。大前選手がいるから、きっと大丈夫に違いない。

 

 

さて、どうも悪い方、悪い方へ考えてしまうので、気分を変えて本題へ入ろう。企業会計原則の一般原則と、IFRSの概念フレームワークにある有用な財務情報の質的特性を比較するシリーズも、佳境に入ってきた。前回(41811/28の記事)は継続性の原則と単一性の原則について記載した。今回は残ったうちの“資本・利益区別の原則”に関して検討を行う。

                                   
 

 

 
 

関係する一般原則

 
 

“会計面”の内容

 
 

 
 

資本・利益区別の原則

 
 

会計の基本計算理(損益計算)

 
 

 
 

明瞭性の原則

 
 

F/Sの表示、注記

 
 

 
 

継続性の原則

 
 

同一事象には同一処理

 
 

 
 

保守主義の原則

 
 

会計上の見積り

 
 

N/A

 
 

単一性の原則

 
 

複数のF/Sがあっても会計記録は同一

 

 

(資本・利益区分の原則)

 

資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

 

会計を勉強し始めたころは、資本取引と損益取引を区別することにどれほどの意味があるのか良く分からなかったが、今では「これが会計の基本計算原理である」と実感を持って理解できる。出資者は、投資元本とその運用果実を区分できなければ投資の採算が良いのかどうかを評価できないから、これは絶対に必要な原則だ。両者を区別し、運用果実を測定することこそ、会計の基本計算原理だ。

 

ところが、これに、あまりに強いイメージとこだわりを持ってしまうと、実際の株式投資はできない。というか、実際の株式投資では、資本剰余金と利益剰余金の区別は、意識されていない。

 

こう書くと、みなさんは「何言ってんの?」と思われるかもしれないが、事実は事実だ。

 

例えば、過去の運用果実の累積値である利益剰余金の大きさや、その利益剰余金と投資元本である資本金及び資本剰余金の合計額との比率で、企業業績を評価する人はいない。最近よく耳にする“ROE(=Return On Equity、自己資本利益率)”も、利益を割る分母には、株主資本、即ち、“資本金+資本剰余金+利益剰余金”を使うが、分子に期間利益を使う。利益剰余金を使うことはない。要するに、利益剰余金は資本剰余金と同列に扱われており、区別する必要がない。

 

ROE”は“JPX日経400”という今年公表が始まった新しい株価指数でも中心的な役割を果たしている。東証のHPには、「・・グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした・・」と説明が記載されているが、その“グローバル”部分は、この“ROE”が負うところが大きい。“ROE”こそが、グローバルな投資尺度というわけだ。

 

ところが、“ROE”には批判も多い。“ROE”を良くするには、分子の利益を増やすだけでなく、分母の株主資本を減らすという手もあり、それが株主からの多額の配当要求や自己株買い要求に結び付き企業経営の手かせ・足かせになったり、手許現金を減らしたり負債を増やすことに繋がり企業の財務的健全性を阻害するというのだ。

 

以上について、順に整理していこう。

 

 投資では“資本剰余金と利益剰余金は区別されない”について

 

この問題を理解するには、「B/Sに計上された利益剰余金は“過去の”運用果実」という点に着目する必要があると思う。投資家は「将来いくら果実を生むか」に関心を持つのであって、「既にこれだけ儲けた」という情報については、「過去に効率よく儲けた」+「今後もそのペースを継続できる」という条件が伴わない限り価値を感じない。ところが、利益剰余金残高にはこの条件を示す情報がない。

 

投資家は、この条件を確認するために、今後の業績予想や過去数年の利益の状況を見るが、その際に預金でいうところの“複利計算の利回り”の推移に注目する。即ち、当初の投資額(=資本金+資本準備金)に対してではなく、それに毎年の期初の利益剰余金残高を加えた期初株主資本に対していくら利益を上げたか(=ROE)を、経営者の能力評価やその企業の業績評価の基礎にする。

 

期間損益を計算するために資本取引と損益取引の区分は重要だ。しかし、投資家が複利計算の利回りを重視する限り、資本剰余金と利益剰余金の区別は重要でない。

 

では、投資家が複利計算の利回りで企業業績を評価することがおかしいのだろうか。むしろ、当初投資額(=資本金+資本剰余金)と稼得果実(=利益剰余金や期間利益)の比率で企業評価すべきだろうか。もしそうなら、企業会計原則のいうとおり「資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」ということになる。しかし、残念ながら、この問いの答えは“No”だ。

 

資本剰余金は、欠損填補や利益剰余金からの振替で変動するし、更には会社法改正で配当原資としても使えるようになった。もはや“資本金+資本剰余金”は一定ではなく、“当初投資額”ともいえない。“資本金+資本剰余金”を分母にしても、企業経営の効率性・有効性を測る理論的に有意義な指標にならないのだ。

 

また、上場企業の投資家はいつでも企業の株を購入できるので、はるか昔の企業設立時や増資時の資本金や資本剰余金を基準に企業業績を考えることはない。直近の株主資本に対して、いくら利益を稼ぐかに着目する方が、上場企業の投資家の視点として合理的だ。

 

したがって、「期間損益を計算するために資本取引と損益取引の区分は重要だ。しかし、資本剰余金と利益剰余金の区別は重要でない」ということになる。

 

 ROE”を良くするために、株主資本を減らしたり負債を増やすことは問題か

 

この問題は奥深い。①は単なる計算上の理屈の問題にすぎないが、こちらの方は一概に決め付けができない、企業の状況ごとに判断が必要な複雑なものだと思う。即ち、“ROE”はそれのみで企業評価ができる指標ではなく、他の足りない情報を補いながら利用する必要があるということだと思う。

 

言い換えると、「株主資本を減らしたり負債を増やす」ことが正当化されるケースもあれば、上述の批判のように正当化されないケースもあるということだ。ではどういう時に正当化されるのだろうか。

 

①を含めて今回の記載は僕の考えに過ぎないが、これから書くことは特にそうだ。色々異なる意見があると思う。だが、次に書くことは、みなさんも合意してもらえると思う。

 

投資家や株主は、経営者に対し、預けた資源を有効かつ効率的に使用してもらい、なるべく多くの利益を上げてもらいたいと思っている。

 

気を付けていただきたい。もしみなさんが、「キャッシュ・リッチな会社は、財務が健全だから投資したい」と思われるなら、上記に合意していない可能性がある。なぜなら、キャッシュ・リッチな会社は、事業投資したくなるような価値ある案件が不足しており、キャッシュという経営資源が活用されずに眠っている会社である可能性が高いからだ。そういう会社に投資したいと思われる方は、投資額を回収できない可能性がある。いくらキャッシュが豊富でも、有効な事業投資を継続できない会社はジリ貧だ。(余談だが、今の日本の民間経済は、現預金ばかり一杯あって、こういう状況に似ていなくもない。)

 

融資をするなら、こういう会社でもよいかもしれない(キャッシュ・リッチなので融資は不要だが)。しかし、投資をするならこれでは困る。企業価値が上がってくれないと困る。通常、企業価値を上げるには、経営者が経営資源を有効活用し続けてくれなくてはならない。キャッシュはキャッシュ以上の価値にならないから、キャッシュを事業に投資し、果実を獲得して価値を上げてほしい。しかし、それでもキャッシュが余っているということは、経営者が経営資源を活用しきるアイディアと能力がないということだろう、という推定が成立つ。即ち、その経営者にキャッシュを預けておくのは不効率、もったいないということになる。

 

ここでも重要なのは、「投資家や株主は、過去の成果ではなく将来の果実に重きを置く」という観点だ。経営者や幹部従業員には非常にプレッシャーになると思うが、そのプレッシャーが企業に改革を促し、企業の永続性を高めていく。その具体的なプレッシャーこそが、「有益な事業投資案件がないのであれば、キャッシュを株主へ返せ(=配当や自社株買いの要求)」ということになる。これは、投資家や株主の正当な要求であって、逆にこういう発想をしない投資家や株主では、企業に良い刺激を与えることができない。したがって、上記の“ROE”を高める方法のうち「株主資本を減らす」方法が正当化されるケースがありえる。

 

しかし、「良い事業投資案件があるのに、それより配当や自社株買いを優先せよ」と経営者へ要求するのは、間違っている。また、キャッシュ・リッチでない企業に「配当や自社株買いを増やせ」と要求するのもおかしい。配当や自社株買いのために、社債を発行したり借入するケースもあるらしいが、僕はおかしいと思う。そういう株主提案には賛成しないし、そういうプレッシャーに負けて負債を増やす経営者がいる企業の株は、売ってしまった方が良いかもしれない。

 

ただ、仮にキャッシュ・リッチでない会社に対してであっても、「借入を増やしてもペイするような事業投資を企画し実行せよ、そういうリスクを取れ」とプレッシャーをかけるのは、正しいケースがあると思う。企業の内部からは、意外と自らの強みが見えていないケースがあるからだ。或いは、企業自身で考えるより、他の企業の経営資源を利用することで簡単に弱みが補強できるケースもある。したがって、“ROE”を高める方法のうち「負債を増やす」方法が正当化されることもありえる。

 

さて、ここでもう一度①の問題を考えてみよう。キャッシュ・リッチな会社の典型は、過去に高い利益率でキャッシュを稼いできたが、今は事業が成熟し新しい投資案件がなく、収益性も成長性も頭打ちというより低下してしまったような会社だろう。恐らく自己資本の構成は、“資本金+資本剰余金”は比較的少なく、“利益剰余金”はたくさんあることが想像される。

 

もし、このような会社について、資本剰余金と利益剰余金を厳格に区別し、利益剰余金を資本金+資本剰余金で割った比率で評価したとすると、かなり良い会社と判定されるだろう。しかし、“ROE”で評価すると、株主資本が大きいのに収益性が低いので、良くない会社と判定される。投資の尺度としてどちら有効か、明らかだと思う。やはり、資本剰余金と利益剰余金を区分することにあまり意味はない。株主資本の構成項目の過去の結果にはあまり意味がないのだ。(蓄積や処分の“プロセス”には、また別の重要な意味があるが。)

 

ということで、企業会計原則の“資本・利益区別の原則”は、前半は今も重要な意味を持つが、後半については企業会計原則の制定当時は重要だったかもしれないが、今は意味を失っていると思う。いよいよ日本でも、アベノミクスの第三の矢の成長戦略『「日本再興戦略」改訂 2014(4ページなど)』で、“ROE”による企業のガバナンス改革が強調されるようになった。上記は投資家サイドに立って記載してきたが、経営サイドでも意識すべきは“ROE”であり、株主資本の構成内容ではない。

 

では、この点IFRSはどのようになっているだろうか。今回は既に長文となったので、続きは次回へ送る。

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